No.34 失敗
「「どうしたらいい?」」
頭を垂れたカンナの頭にはその言葉しか思い浮かばなかった。
もう手遅れなのかもしれない。
心臓を鷲掴みされるような恐怖と不安が胸を締め付けた。
カンナは一言で言うと“気づいてしまった”のだ。自分の異常性を。
自分は正しい事をしてきたと思っていた。
思い込んでいた。
しかし、結局の所救えたものなど何一つ無かったのだ。
大切な人の死が“その証拠”だ。
自分が一年生の時、自殺したミランダは学園の秘密に近づき耐えられなかった。
だからこそ、カンナはその跡を継いで学園の秘密を暴き、悪を倒そうとした。
少しでも彼女の魂が報われるように...
しかし、事態は深刻だった。
学園の真実を知れば知るほど多くの生徒達が操り人形にされ、仕掛け作った大人達はそれを外側からニヤニヤと眺めている。
それに気づいたカンナは涙をポロポロと零した。
“自分が内側から学園を変えようとしてもそれは不可能だったと”
本当に学園を変えたいと願うのなら、外側の人間である必要があったと。
“自分自身が誰かにとって理想の操り人形”である事を自覚しなければならなかったのだ。
「「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」」
「何っ!?いきなり!?」
声が枯れるまで叫び続けるカンナをダイスは変なモノを見るような目で見ていた。
叫び終えると「ゼェ...ゼェ...」と肩を鳴らしながら彼の肩を掴んだ。
「ひっ!?」
怖がるダイスだったが、カンナの表情を見た瞬間素面に戻った。
何故なら彼女が彼以上に肩を震わせ怯えているからだ。
「お願い...私達を助けて...。誰か、外側の人間を呼んで。じゃないと全部無くなっちゃう。お願い...」
そう言い終えるとカンナは急に力を弱めダイスの服にしがみつきながらもズルズルと倒れこんだ。
相手が倒れ込んだ。
殺すチャンスじゃないか?とダイスは思ったが何故かそれは出来なかった。
彼女の言葉が自分の心の奥底に響いたのだ。
「助けてほしい」
それはダイスの心の中にも僅かに存在する感情だった。
側にいたタマミもシュンもカンナの態度と言葉の異常性に気づき、倒れ込んだ彼女を凝視していた。
3人が出来る事はただ一つ、涙を流す事だけだった。
No.34を読んでいただきありがとうございました。
次はNo.35「救済」をお送りします。




