No.28 来客
シャトランス・19階 校長室
壁を破壊した犯人は武器を縮小させるとペルケレの前に立ち尽くした。
「ギリッ」と歯を鳴らし、獣の様に威嚇している。
その正体は先程まで庭園にいたシャンランだった。
如意棒を使い、ここまで直接侵入してきたのだ。
それを見たペルケレは訝しげながらも、内心高揚していた。
歪んでいるが、彼女が異常性に気づきここまでやって来てくれた事に感謝しているのだ。
「シャンランさん、どうされましたか?私に何か用事でも?」
「惚けるな!可笑しいと思ったネ。学園の内側でも外側でも可笑しい事が起こっているのに傍観者面して何もしようとしない。私が休学した時も引き止めようともしなかったネ!」
レイカの言葉に気づかされ、纏まらないながらも言葉を発するシャンランに対しペルケレはゆっくりと落ち着いて言葉を発した。
「止めた所で貴方の決心が変わる事は無かったでしょう?私は生徒の意見を尊重したまでです。何か不満でも?」
その静かな怒りをシャンランは察したのか武器を構え直す。
しかし、ペルケレは武器を展開しようとはしないし思わない。
彼の背後で様子を見守るオッツォと目を合わせ、少し待って欲しいと指示している。
「っ...この!!いつまで白けた顔してるネ!!」
戦えと訴えるように、ペルケレの体の周りの物を破壊していく。
「シャンラン、落ち着いてください。貴方の実力はそんな物じゃないでしょう。感情的になると武器を上手く扱えなくなりますよ。貴方が得意な体術なら良いと思いますがね。「武器を戻してください」」
次の瞬間、如意棒が強制解除され守護霊の姿に戻される。
慌てて掴むもののシャンランは間に合わずすり抜けてしまった。
混乱しながらも本能からか彼女は危機感と絶望感を感じた。
顔を青ざめ、微かに震えている。
これでようやく、ペルケレが何も手を出さない理由が理解できた。
ここでは、彼が一番強い。
だから何もしない。
しかし、シャンランは疑問に思った。
「...何で、私を殺そうとしないネ。何で、ここにいる全員を自分の思い通りにしようとしない!お前なら今すぐ武器をコントロールしてこの戦いを終わらせる事が出来るのに!」
「勘違いしないでください。私は人が死ぬ事を望んではいません。それはシャンランさん、貴方もです。私が殺したいのはたった1人だけですから」
やっぱりレイカの言う通りだ。
コイツは何かがずれている。
狂っている。
コイツを何とかしない限り、この戦いに決着はつかない。
思考しながらシャンランは歩を後ろに下げた。
No.28を読んでいただきありがとうございました。
次はNo.29「手がかり」をお送りします。




