No.27 お目見え
校舎19階の一室、ペルケレは真顔で監視映像を見続けていた。
その表情からは何も読み取れない。
ペルケレは逃げ惑う教師や生徒に対して恐怖や警戒心を抱いている訳ではない。
オクトール諸島内では守護霊の管理も思いのままだ。
しかし、ペルケレはそれを現在施行する予定はない。
彼は気づいて欲しいのだ。抵抗して欲しいのだ。
今、彼は小さな王国の王のようなものだ。
誰も歯向かうものはいない。
自分の思い通りに人が動く。
それがペルケレにとって一番退屈な事だった。
頭の中で不快な感情が巡る。
それをかき消す様に彼は深呼吸した。
自分の感情を誤魔化すように頭の中を整理する。
BIG7と守護者達は北の島に残っている。
幸いにもまだ負傷者は出ていない。
自分の思惑に気づいて抵抗しようとする人物も出てくるだろう。
ペルケレはそれをずっと昔から待っていたのだ。
何故なら、レイカを殺した事が誰も証明出来ない“完全犯罪”となってしまったからだ。
誰が守護霊を召喚して、その武器を凶器にしたと信じてくれる?
霊感のある人ならまだしも一般人では証明できない。
死人に口なし、被害者が犯人の名を口にする事もない。
そのあと、ペルケレはニヤリと笑った。
シャトランスは自分にとっての理想郷だ。
彼が手塩にかけて作った自殺装置だ。
霊感のある人達が集まり、証人が腐る程いる。
殺した女は生き返った。
これ以上に都合の良い事はあるだろうか?
ペルケレが殺人を隠さないのも、少量の罪悪感から解放される為。
しかし、女の娘は激怒し恨むかと思ったが思った以上に冷静だった。
それどころか、協力して欲しいとさえ言ってきた。
その時、彼は「つまらないな」と心の底では感じていた。
自分がどこかで間違ったのだろうか?
こんなにも露骨におかしな事をしているのに大半の生徒達は気づかず非日常を送っている。
誰か、悲鳴を上げ、可笑しいと訴えても良いはずなのにこれまで一度もなかった。一度もだ。
その前に自滅してしまった者もいたのかもしれない。
ペルケレは哀れに思った。
深いため息をしようとした時だった。
自分の後ろで物体の気配がする。
その直感は正解だった。
「ガシャャャャャンンンン!!!!」
ガラス張りの壁を貫通する大きな音にペルケレは笑みを浮かべていた。
No.27を読んでいただきありがとうございました。
次はNo.28「来客」をお送りします。




