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No.26 これから

「…」


静寂が空間を満たす。

止められたシャンランは悔しい顔をしながらも手を離した。

その側ではヴァニラは泣き崩れている状態だった。


ヒデキチはシャンランを怒る事はなかった。

彼女の気持ちも良く分かるからだ。


「ごめん」


「シャンラン殿、謝らなくていい。この状況下で正しいも間違いもない。だが、現実は変わらない。シャンラン殿、貴殿はどうする?」


文脈を見るにシャンランも2人と同じように守護霊を帰還させるかどうかを聞きたいのだろう。

シャンランは、涙を流すヴァニラとそれを慰めるラトゥーシュカを眺めた後、口を開いた。


「もう戦うつもりはないヨ。でも、我にはやる事があるネ。それが終わるまではココから出られないよ」


意を決して、家屋から出るとレイカとケンシロウが入り口近くで待っていた。


「話は終わった?」


「聞いてたなら何で我に教えてくれなかったネ」


「教えても教えなくても変わらないと思って。話し合った結果、貴女が出て来たんでしょ?じゃあ、どうするの?これから」


そのあと、レイカは黙り込む。

シャンランの言葉を待っているようだ。

彼女は頭の中を整理しながらポツリポツリと呟きだした。


「戦える仲間はいない。でも、戦いは終わってはいないネ。今もこうしてカンナやシュンが我達を探してる。2人を逃す手段もない」


その言葉にレイカは相槌を打つ。


「正直言って、この戦いは勝ち負けがついた所で止まるものじゃなくなってるのよね。勝敗じゃない。“自分が誰を殺したいか?”この島が自分にとっての居場所で、今残ってる子達はそれでしか自分の存在意義を示せない。戦う事=会話であり交渉手段になりつつある。外から見た人は何て言うでしょうね?」


「不毛な戦いをしているとしか思えないネ。やっぱり、休学して正解だったよ。物事が客観的に見えて楽ネ」


そのあと、レイカがクスリと笑みをこぼした。


「カンナはね、悪い子だから私の言う事を聞いてくれなかったわ。足を踏み込み過ぎたんでしょうね。戦う事も、人を殺す事も当たり前になってしまった。恐ろしいとは思わない?人間って環境によってあんなにも冷酷で残酷になれるんですもの。それより、狂った人もいるけど」


そう言いながらレイカはケンシロウを見つめている。

相変わらずバツの悪そうな顔をしているが、それは誤解だ。

レイカはケンシロウを責めているのではない。

ケンシロウを”利用した人物“を軽蔑しているのだ。


「分かって、反省しているならいいのよ。自分がおかしくなっている事を自覚していないのは仕方がないわ。でも、世の中には自分が狂ってるって自覚した上で沢山の犠牲を出してでも自分の理想郷を作りあげようとするクズがいる事が一番の問題なのよ」


「…ペルケレ校長、あの人をなんとかしないとこの理想郷(オクトール諸島)もこの戦いも終わらないネ」





No.26を読んでいただきありがとうございました。

次はNo.27「お目見え」をお送りします。

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