No.19 人質
「なら、いい考えがありますよ?」
ペルケレに意見を求めたコテツは彼のその言葉と表情に嫌な予感がした。
ペルケレの居場所はわかりやすかった。
こんな混乱の中、1人だけ校長室で複数のモニターを眺めている。
校内に設置した監視カメラの映像だろう。
その中でペルケレは地下の映像に指さした。
「シャンランさんが一時期休学した事があるんです。あまりにも急な事だったので調査したんですが、亡霊の彼女に何か吹き込まれたようなんです」
「では、そこに映る女性を人質にとればいいと?」
ペルケレはコテツの言葉に頷きながら笑みを浮かべる。
コテツは何度もペルケレとこうして会話をした事があるが、穏やかで怒る事もない。
だからこそ、怖いのだ。この人の本心が分からない。
しかし、分かる事もある。
ペルケレ校長にとってその女性は消したい存在なのだろう。
じっと彼を見つめていると、カードキーを手渡してくれる。
いや、そのフリをしたのだ。
コテツが彼に近づき、手を広げた拍子にこう言った。
「貴方が手を汚す必要はありませんよ。脅すのなら私にもできますから、私が直々に亡霊の所へ行きましょうか?」
「…いえ、結構です。貴方は此処にいてください」
ペルケレ校長は思ったより分かりやすい人だった。
彼はつまらなそうな表情をしながらコテツを見送った。
シャトランス・地下4階
「誰だお前は!?何をしに来た!?」
4階の一室にベットに横たわる女性とそれを守る男性がいた。
コテツに向かって怒鳴ったのは男性の方だった。
「ヤシロ理事長、その女性を私に渡してください。外の状況を貴方はご存知ですよね?交渉材料に彼女を使いたいのです」
「何を言って」
「分かったわ、それで?私は何をすればいいの?」
理事長の言葉を遮る様に女性がフラフラと立ち上がりながら口を開いた。
「外にシャンランという女性がいます。貴方が上手く誘導して隙を作って欲しいのです」
「あなた、イブが使っていた車椅子があったでしょう。あれを出して」
「…分かった。だが、一緒にいかせてもらうぞ」
3人はそれぞれ、航路と空路を使い北の島に向かった。
No.19を読んでいただきありがとうございました。
次はNo.20「脅迫」をお送りします。




