No.16 ヒット
オクトール諸島・北の島 海中
タマミに連絡し、辺りを見渡していたキョウは遠くで海中に相応しく無い異物を見つけた。
「何だあれ?」
と口にした瞬間だった。
「バリリリッッ!!」
豪速球で白い弾丸が水槽を破壊し、水槽の水と海水が入れ替わっていく。
「不味い」と思ったキョウは咄嗟に水槽を解除し、海面に浮上した。
「2人は!?無事!?」
慌てて左右を見渡すとジェットスキーに攀じ登るヴァニラとラトゥーシュカの姿があった。
しかし良くみるとヴァニラは頭部を押さえている。
赤黒い血液が彼女から流れ出している。危険な状態だ。
ダイスの次の攻撃を伺いながらも、キョウは2人に近づく。
その時だった、優しい風が吹き荒れる。
その時、キョウは勝利を確信した。
キョウは2人に寄り添うとこう言った。
「タマミがダイスさんの攻撃を食い止めてるから今の内に!」
その言葉にラトゥーシュカは反応したが、ヴァニラは虚ろだった。
「…寒いわ。ビィーン、早く中央の島に…」
「ヴァニラが危ないな、急がないと」
オクトール諸島・北の島
「ちっ、攻撃が無効される。誰だ!どこにいる!どこから妨害してるんだ!」
ダイスはタマミの存在を知らない。
しかし、戦いに予測不可能な事など日常茶飯事だ。
すぐさま彼はコテツとヴィクトリアに連絡し、自身の守護霊も交え偵察を開始した。
シャトランス・校舎
「お兄ちゃん、大丈夫かなー」
「無事だといいんだけど…取り敢えず私達はバレない様に」
しかし、カンナは何かに気づいたのかどこかへと走り出した。
「カンナさん!?」
それを見たシュンはカンナの後を追いかけている。
追いかけた先にいたのはびしょ濡れになったヴァニラとラトゥーシュカがいた。
ヴァニラは彼に支えられているが、身体がピクリとも動いていない。
足が完全に引きずられており、生きているのか死んでいるのかも分からないのだ。
カンナは2人を発見したものの何も出来ずにいた。
言い換えれば何をすればいいのか分からないのだ。
ヴァニラが危険な状態なのは分かっている。
側頭部から血が流れ出しているのは分かっている。
“仲間であれば”今すぐにでも手当てをし、暖かい物を与えるべきだろう。
じっと2人を見ているとラトゥーシュカがこう言った。
「助けてもらわなくていい。自分達が何をしたのか分かっている。裏切り者に親切にしなくていい」
「そうですね。じゃあ自己満足で貴方達を助けます。人殺しにはなりたくないですから」
No.16を読んでいただきありがとうございました。
次はNo.17「猿と鳥」をお送りします。




