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No.10 飽和

オクトール諸島・北の島 


「《数字指定:2 津波》キョウ君、僕も囲って!」


「ケイ君、《葉》に顕現して!」


賽の目一つで作られた津波に黒服達は次第に呑まれていく。

慌てふためく奴らを他所にキョウとダイスは冷静だった。


「いやー、キョウ君の武器は便利だね。僕も色々な事が出来るけど防御力なら君達が1番だよ」


「お褒めに預かり光栄です(ドヤ顔)」


そのあと波が引いたのを見計らい、水槽から出てダイスがヴィクトリアに電話をし、お互いに状況を確認し合う。



>「コロシアム内の雑魚どもは粗方片付いている。頼もしい守護者達のお陰だ。しかし、肝心の“奴ら”が見つからない。気を抜くなよダイス」


  「うん、ありがとうヴィクトリア...っ」<


その刹那、ダイスは自分にむかって放たれた刃を見逃さなかった。

咄嗟に離した携帯に刃が貫通し、地面に落ちる。

通話を邪魔された彼は珍しく怒っていた。



「あのさ、邪魔しないでくれない?黒服君?」


目の前には短剣を持ったラトゥーシュカがいた。



ロシアのBIG7を「オプリチニキ」と呼ぶのはロシア皇帝、イヴァン4世に仕えた黒服の集団を彷彿とさせるからだろう。


その後、荒波をジェットスキーで乗り越えてきたヴァニラも援護に向かおうとしている。


「ダイスとクロフネだな。まさかこんなところで会えるとは思わなかった。光栄な事だ」


「それはどうも。にしても、ロシアは見栄っ張りだよね。強力な守護霊使いを集めた組織がコレ?雑魚と餓鬼しかいないんだけど?どうなってるかな?」


その言葉にラトゥーシュカは怒るどころか、笑みを浮かべている。

そんな事、自分が一番良く知っているからだ。



この様子を見て、キョウがダイスにこう呟いた。


「彼らを保護しませんか?妹が友人達と一緒に全ての守護霊を霊界に戻すと言っているんです。無力になればこちらに危害を加えてこないと思います」


その言葉にダイスは頷く事なく、首を横に振った。


「それは無理だよ。それじゃあ、根本的な解決にならないでしょ?守護霊召喚の技術は各国が持ってるんだよ?同じ事を繰り返すだけ。必要なのは“見せしめ”なんだよ。最高責任者が酷い目にあったら誰だって怖気付くでしょう?それが目の前にいる彼ら、そう思わない?キョウ君」


冷静で冷酷な判断を下すダイスにキョウは自分も妹達が救ってくれなければBIG7のようにこうなっていたのかもしれないと感謝しながら恐怖を隠しきれずにいた。





No.10を読んでいただきありがとうございました。

次はNo.11「言い訳」をお送りします。

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