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第1話

初投稿の米処こめどころです。

よろしくお願いします。

 「…きて! …起きて! 起きてください!」

 何者かの声によって、次第に意識が覚醒していく。

 いつの間に寝ていたのだろうか、とてもとても長い夢を見ていた気がする。


 ---えっ!?

 目覚めによって平衡感覚が取り戻され、あることに気がついた。

 ありえないことに、自分が立ったまま意識を失っていたのだ。


 冷や水を浴びせられたように一気に意識を取り戻し辺りを見回すが、そこには何もない。

 床も天井も壁も何一つない。しかし明るい。壁も見えないはずなのにその空間の先が白い色をしていることだけが分かるのだ。

 そのようなとてつもなく広い空間に自分が立っていることに気がついた。

 上下の感覚があるという事は、重力も確かに存在しているのだろう。

 しかし立っているはずの足には地面を踏みしめる手ごたえは無く、かと言って浮遊感もない。

 全くもって不思議な感覚である。

 

 「目が覚めたようですね」

 

 突然声が聞こえる。

 そうだ!まどろみの中で自分を呼んでいた声である。

 なぜそれまで気がつかなかったのか、目の前に女性が立っているではないか。

 金色のようにも銀色のようにも見える長い髪が印象的なその女性は恐ろしいほど綺麗な顔立ちをしていた。

 人間が美しさを感じるといわれる黄金比も白銀比も彼女のためにある言葉であろう。

 長い睫に大きな瞳、まっすぐと伸びる鼻筋に、優し気な唇。

 彼女の顔は一目見たら決して忘れないだろう。

 そこにあるべきパーツが、あるべき形で整然と並べられた芸術品のように思われた。

 顔だけではない。その体も、姿勢も、雰囲気すらも人間の在り方の極致であるように思えるのだ。

 

 「突然のことで驚いているでしょう。どうか落ち着いて聞いてくださいね。貴方は先ほど生涯を終えたのです。」

 

 彼女が自分に向かって鈴の音のような心地よい声で話しかけてくる。

 これほどまでに美しいのに声も綺麗だなんて。自分の心臓の高鳴りを自覚する。

 ん?何か大切なことを言っていたような。

 

 「突然のことで気が動転しているのでしょう。無理もありません。しかし貴方にはこれから私の管理する世界へ行っていただきます。」

 

 まさか。彼女は何を言っているのか。俺はさっきまで部屋で酒を飲んでいたはずだ!

 大学の課題のレポートを仕上げた解放感から、冷蔵庫の冷えたビールを確かに飲んでいたのだ。

 飲みたがるくせに酒に弱い俺はビール1缶で酔っ払って、ベランダに出て夜風に当たって黄昏ていたことを思い出す。

 そういえば黄昏ていたら急に目の前が真っ白になったような…。 ダメだ。そこから先は思い出せない。

 

 「本来であれば地球と同じ世界の中で輪廻転生をして新たな命として生まれ変わるはずだったのですが、地球の神の意向で我が”ヨージア”にお招きすることになったのです。」

 

 彼女が語り掛けてくる。

 まさか本当に自分が死んでしまったのか。

 夢を見ているという感覚は無い。

 親よりも先に死んでしまうなんて… 育ててもらった恩をまだ何も返せていないのに…。

 

 …ん?スルーしてしまったが大切なことを言っていたような気がする。

 「私の管理する世界?地球の神?我がヨージア?」

 

 「ええ、その通りです。私はヨージアという世界を管理しています。貴方の感覚で言うところの神様のようなものにあたるのでしょうか。」

 

 どうやら無意識に声を出してしまっていたようだ。

 それよりもなんだって?この女神のような女性は本物の女神様であったらしい。

 呆けた顔で女神様を見ているとニコッとこちらに笑いかけてくる。

 惚れてまうやろ。

 

 女神が話を続ける。

 「貴方にはそのヨージアで、今生の続きを好きに生きていただきたいのです。地球の神からとある加護も授かっていますし、私も貴方の望むかごを何でも差し上げましょう。きっと充実した残りの人生を送れることでしょう。」

 

 な…なんでもだと…!

 小さい頃には受験勉強、大学進学後は大学の勉強にかまけて21年間のこれまでの人生で女性と付き合った経験はなく、かといって風俗に行くような度胸もなく生涯を終えてしまった。

 これはとんでもないチャンスなのではないだろうか。

 しかも相手は正しく神のような美貌で優しいときている。

 

 更に女神が続ける。

 「因みにですが、地球の神からは知識の加護を与えられています。その加護によって貴方はヨージアでの生活で言語で悩まされることは無いでしょう。また、目で見た物の情報が頭に入ってくる“鑑定”という技能も使えます。さあ、私からの加護にはどんなものを望みますか?」

 

 俺が…俺が望むことは…

 「女神様とお話がしたいです!!!」

 

 女性経験皆無の自分にはこれが精一杯であった。


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