7.二人の勇者の出会い
勇者は布団の中で何かが動いているのを感じた。
「これは…」
布団をめくるとマリーがいた。
「おい勇者、私はそこのサキュバスと話しているのよ」
股間のクレアが不機嫌そうな声をだした。
「勇者様、おはようございます。今クレア様と話してました」
「話すのは勝手だが、俺の布団の中では止めてくれ」
「なら私を解放しなさいよ」
クレアは怒りの感情をだしている。
「そうだよな。サテラに相談してみるか」
といい部屋に備え付けのバケツに朝の小便をだしている。
クレアの口から勇者の小便が勢いよくでてくる。
クレアは慣れたのか諦めたのか、最近は静かになった。
そしてそのバケツの中身を窓から投げ捨てる。
そして虹ができる。今日もすがすがしい朝だ。
マリーは体をもじもじさせている。
「マリーどうしたんだ?」
「私もその…」
カレンが早く部屋からでろと騒ぎ出す。仕方ないので、部屋からでていき数分すると
マリーが何事もなかったかのように部屋からでてきた。
別室のサテラも合流して朝食を食べ終えた。
「サテラ、股間のこれの位置を変更したいんだが、どうだろうか?」
「そうね。肛門と直結してお尻にするとか?」
「嫌よ。お腹にして」
「それだと俺がデブみたいじゃないか」
「足に着けると片方だけ大きな膨らみあるのは違和感あるわね」
サテラはクレアの顔の位置を悩んでいた。
「今のままだと股間が一番よ。新しい強い魔物の素材を入手してから再度考えましょう」
「そうするしかないな」
「あんたたち、私を外す選択肢はないわけ?」
クレアの問いは無視された。
マリーはクレアが話題になっている間に用意していた手紙に追加の文章を書いて、黒い火でそれを燃やした。
魔王の城に手紙が届く。
「サキュバスからの途中報告の手紙が着ました」
魔王はその手紙を読む。良い報告として勇者パーティーに入って信頼関係を築いている途中ということ。悪い報告で、勇者にはチャームがきかないこと。別件で意識のあるクレア様からの救援要請が書かれていた。
魔王はその手紙を人狼にも読ませる。
「これはどう思う?」
魔王は作戦が順調か否かの判断に迷っていた。
「失敗はしてないかと。クレア様の救出は後回しで良いと思われます」
勇者は剣を鍛冶屋にいって謝罪したうえで鍛えなおすことにした。
マリーとサテラ、ぬいぐるみを連れて宿屋を出た。
すると屈強な男たちが、怖い顔で勇者をみている。
「その隣の魔物は何ですか? 勇者殿」
マリーを指さして隊長らしき男は質問してくる。
「サキュバスだ」
「なら殺すべきです。昨晩宿屋のものからタレコミがありました」
「この子は無害だ」
「サキュバスは直接的には無害ですよ。ですが、魅了して男たちを従順な奴隷にします」
するとサテラは収納魔法から鎖と首輪をだして、
「これでこのサキュバスを拘束して勇者様直々に鎖を持てばいいんじゃないのかしら」
サテラは昨晩の仕返しとばかりに嫌味をこめて言い放った。
「ですが勇者様も漢ですよ」
隊長らしき男は食い下がらない。
マリーは勇者のスカートをまくり上げた。
屈強な男たちはそこにあるはずのものがなくて代わりに少女の顔がついているのを見てしまった。
「私は吸血鬼よ」
隊長たちは目の前の光景が信じられない。
「勇者早く避けなさい」
勇者は全く避けない。隊長がその美少女の顔に槍をさす。
槍を抜くと信じられない速度で傷が塞がっていく。
「申し訳ありませんでした」
隊長一同、誠意を込めて勇者に謝罪した。
マリーには首輪がはめられて鎖をつけて、服従の証で犬のように街中では歩くことに警備兵たちと話はまとまった。
勇者はマリーを鎖をつけてお散歩して、彼のとなりには巨大なぬいぐるみが歩き、それをゴーレムの腕がモフモフを楽しんでいる。カニの腕の範囲外になるようにサテラはついていく。
ふとサテラは気づいてしまった。
町の人たちに何故かあのサキュバスと勇者様がとても注目されていることにだ。
「悔しいわ。あれじゃ愛し合っている変態カップルじゃないの」
街中で噂がサテラの耳にはいる。
きっとアノ角の生えている少女が勇者様のお気に入りなんだわ。そして、セカンドが隣のぬいぐるみ。後ろについているピンクの髪の少女は全く眼中になしよ。私の目に間違いはないわ。
外野のおば様方がサテラは圏外だという。そういうおばさまのグループがいくつもあった。
「我慢ならないわ。あんなまな板のサキュバスに負けるはずがないわ」
収納魔法から首輪と鎖を取り出して
「勇者様、サテラも飼い犬にしてください」
笑顔で勇者に懇願しだした。
「俺にそんな趣味はない」
「おい、サテラの言う通りにして鎖を私によこしな」
カレンは勇者にささやいた。特に断る理由もないので
「仕方ないな」
サテラに首輪と鎖をつけた。
鎖をカレンの腕に渡す。カレンはこんな姿にされた恨みからサテラに対して復讐の機会を待っていた。
「勇者様、カレンに渡さないで」
既に遅かった。鎖を引っ張り、サテラが壊れない程度に痛めつけ始めた。
「痛い。助けて…げふ」
道にはし尿がまとまっている部分もある。
「そこは嫌、そこは嫌」
サテラは必死に顔を振る。でもカレンは止める気配がない。
鎖でサテラを誘導して、彼女の顔面をし尿にダイブさせた。
サテラの顔は糞まみれの鼻血垂れ流しになった。
「許して、何でもするから…カレン助けて」
「勇者、私とマリアの体はどうなってるか聞け」
「カレンとマリアの体はどうなっている?」
「それなら時間凍結魔法と収納魔法で保管してるわ」
「次に、どうしたら元の姿に戻れるか聞け。この姿にされた直後は嘘ついてたかもしれない」
「マリアとカレンはその体に戻すことはできないんだな?」
「そうよ」
鎖で勇者の背中に引き寄せられて、サテラの眼球の前には勇者の背中の針の寸前のとこで止まった。
サテラは恐怖で失禁しだした。
「本当よ。でも戻せるように研究するから助けてください」
どうやらサテラは嘘はついていないようだと勇者、マリア、カレンは判断した。
しかし、カレンはその後もネチネチとサテラを痛めつけたりしていく。
「その胸が許せない。巨乳は敵よ」
普段は無口なカレンは興奮してるのかヒステリックに騒ぎ出している。
カニのハサミでサテラの乳を切り落とすようなジェスチャーをする。
サテラは助けてとわめき散らす。
「そこの悪漢、止まれ!!!」
勇者の前に、正統派の勇者のようなさわやか系の男が出てきた。
勇者は周りを見渡す。しかしどこにも悪漢らしきものはいない。
「私の名前は正幸だ。女神に召喚されて、この世界を救う使命を背負っている。隣にいるのが女神のディーネだ」
「これはご丁寧にどうも。俺はこの国の王に召喚されて、この糞まみれでお漏らしまでしてる糞アマにこんな姿に変えられた勇者だ。俺の名前はこっちの世界にきて初めて名乗るが卓也だ」
「その女性を離せ」
「無理な相談だな。俺の意思ではどうにもならん」
「正幸、あいつやばいわ。とんでもない力を秘めてるわ。魂が4つもあるのよ。あんなの人間じゃない」
「ディーネありがとう。つまり4回殺さないと倒せない敵なんだね。いつも君の的確なアドバイスのおかげで、僕は勝てるよ」
正幸は聖剣を抜き始めた。聖剣は光輝いている。
マリーとロザリーは卓也から離れた。
「この聖剣は異世界転生の特典で女神様から頂いたものだ。善人は切っても切ることはできずに、悪しきものだけを切断できる優れものなのさ。君のように人質をとった相手も、この聖剣で人質ごと切断して、敵を倒してきたのさ。もちろん人質は善人なら無傷さ」
その説明を受けて、
サテラは
「私を切らないで。切ったら、多分私死んじゃう。全部正直に罪を白状するから助けて」
と命乞いをし始めた。
クレアは未来視で正幸がサテラを切り、血が飛び散る未来が見えた。
「勇者、サテラがこのままだと死ぬよ」
勇者卓也は刃こぼれした剣を構えた。
その途端クレアの未来視は変わった。
カレンはマリアの説得に応じて、サテラを地面に放り投げた。
2人の勇者が構えていた。先に動いたのは正幸だった。
正幸は聖剣に魔力を込めて、切断力を上昇させ、6本腕を1本ずつ切り落とす作戦でいた。
後方からはディーネが何かを詠唱して、正幸の身体能力が飛躍的に上昇していく。
卓也は前方から切りかかってきた正幸に対処できなかった。
「やばい切り落とされる」
ゴーレムの腕が聖剣を止める。マリアが止めてくれたのだった。
衝撃でゴーレムの腕にヒビが入る。
「なんだと、なぜ切断できない」
「正幸、そのゴーレムの腕から無垢な少女の精神エネルギーを感じるわ」
「なんだと…ならどうして貫通できないんだ。」
「無垢なものと魔のものが混ざっていて、聖剣が機能してないみたい」
正幸はゲームで体内に少女を取り込む魔物を知っていた。
「そうなるとあいつの体の中に少女が取り込まれているのか」
卓也のスカートが幸村の斬撃でボロボロになっていた。
股間に少女の顔があった。それを正幸は見てしまった。
正幸が少女にの顔に視線が移っている間にゴーレムの腕はクレアから奪った再生能力で完全回復した。
「ディーネあいつの股間に少女の顔がある。あれを分離できないか?」
「きっとそこに少女の魂があるはずよ。その聖剣でその少女の顔を貫けば大丈夫よ」
クレアはとんでもない未来が見えた。
聖剣で顔面が突き刺されるのである。
クレアは顔が一気に青ざめた。
「あいつ、私を狙ってるわ。助けろ勇者」
「俺はお前が死んでも痛くもなんともないぞ」
「黙りなさい。私は未来が見えるの。私がいなくなればあいつに負けるわよ」
卓也は不本意ではあるが、未来を見えているというのには心あたりがあったため、クレアの指示に従うことにした。
「あいつはフェイントをかまして、私を攻撃するわ。だから、フェイントした時にその腕であいつを地面にたたきつけるのよ」
正幸はまた素早い動きで近づいてくる。背面をとられたが、卓也には問題なく見えている。
正幸はフェイントをいれたが、次の瞬間地面に叩きつけられた。
砂煙が当たりを包んだ。