1.召喚失敗
巨大な魔法陣の周りに術者たちが何かを唱えていた。
すると魔法陣が光出した。そこから黒髪の男の頭がでてきた。
「誰か助けてくれーーー」
黒髪の男は悲鳴を上げていた。その時地震が発生して術者たちが、倒れてしまった。
魔法陣の光がなくなる。
黒髪の男は悲鳴を上げる前に激痛で意識を失った。
「早く勇者様に回復魔法を」
「勇者様の両足がないぞ」
術者たちは召喚した黒髪の男に回復魔法をかけてどうにか延命させることに成功した。
「ここはどこだ」
黒髪の男は大きな部屋で目覚めた。柔らかいベットの上で寝ていた。
小便がしたいので立ち上がろうとする。なぜか、立ち上がれない。
「…嘘だろ…」
黒髪の男の目には自分の両足がないようにしか見えなかった。
「おいおい、足がないとか…これは夢だな。早く起きて、リアルタイムでみた魔法少女サリーたんを録画したブルーレイで再度みないとな」
顔をつねっても痛みがあるだけだった。尿意が我慢できず、漏らした。
「まぁ、夢だからな。起きたら後片付けが大変だな」
部屋にメイド服の婆さんが入ってきた。
「勇者様、お目覚めになられたのですね」
「……婆さんにメイド服とかダレ得だよ」
「若いメイドもおりますが、メイド道を究めた私が勇者様のお世話係を拝命されております」
「下手でもいいから若い子が…」
「いえ、勇者様に無礼があってはいけません。決まりですので」
「ところで、勇者様って俺のこと?」
「そうです。1週間前に勇者召喚で両足のみ向こうの世界に置いて行かれた状態でいらっしゃいました」
「…………笑えない夢なんだけど」
「現実であります」
勇者は泣き出した。メイドの婆さんは赤子のお守りをするように勇者を抱きしめた。
部屋に誰かが入ってきた。
「勇者様、王がお話したいことがあるとのことです」
するとメイドの婆さんは離れて、屈強な男が勇者をお姫様抱っこして、王座の間に運ばれた。
「実はこの世界は魔王によって、滅ぼされようとしている。そこでお主を召喚した」
「かえして…家に帰してください」
「それはできん。勇者を送り返す方法は書物には書いてなかった。魔王を倒したら一生わが国の英雄として歓迎するから安心するがよかろう」
勇者は泣き出した
「おい、大臣。これが本当に勇者なのか?」
「これを見てください」
王様は水晶のついた道具で勇者をみた。
「確かに基本能力値は高いのう。事故で足がなくても本当に戦えるのか、大臣よ」
「この国の誇る大魔術師が、人と魔獣の融合を何度も成功させています。
勇者殿の足もあの方の手にかかれば、問題ないでしょう」
「そうか。なら良かった。勇者よ、お主の足は何とかなるから安心せよ」
「本当で…すか?」
「本当じゃとも」
数時間後、新鮮な魔獣の死体が王城に運ばれた。
ゴブリン、ケロべロス、巨大カマキリなど様々な死体があった。
「勇者よ、どれでも好きな足を選ぶがよい」
「………嫌だ!!!俺の足を返してくれ」
「我儘な勇者じゃのう。大魔術師サテラよ、好き放題やって構わんぞ」
「仰せのままに」
見た目10代後半のピンクの髪をした女性が、杖で勇者を思い切り殴った。
勇者は気を失った。
翌日、また柔らかいベットの上で目覚めた。
体を起こすと、なぜか前だけでなく後ろも見える。
「なんじゃこりゃ!!!」
自分の体をみると、
腕は6本に増えている。カニのような腕2本、毛の生えた太い腕が2本、石みたいな素材でできた腕が2本あった。
背中には、大きい針がたくさんついている。
足は芋虫の胴体みたいな気持ち悪いものになっていた。
「これは悪夢だ」
部屋にメイド姿の婆さんが入ってきて、大きな鏡を台車で運んできた。
「勇者様、かっこいいです」
笑顔でメイドは褒めたたえた。
鏡に映る顔には、目が正面に2つ、振り返ると裏にも2つ計4つあり、魚のえらみたいなものまで顔についている。
「まるで化け物じゃないか…」
その時、ピンクの髪の少女が入ってきた。
「私の名前はサテラ。王様の許可を得て、私好みの姿に変えたわ。気に入ってくれたかしら?」
「お前が…お前が俺をこんなに姿にしたんか!!!」
サテラを殴ろと思い切り足でベットから飛び出すと、勢い余って、部屋の壁を突き破り城外へと勇者は飛んで行ってしまった。
「さすがです、サテラ様。壁を突き破るほどの勇者は前代未聞です」
「なにせ私は大魔術師よ。勇者を好き放題いじれるなら喜んで体中をいじるにきまってるじゃないの」
サテラは誇らしげな顔をしながら勇者が飛んだ方角を確認した。
「勇者様を迎えにいってくるわ」
ある物体が飛んでいた。正しくは落下していた。
「誰か助けてくれーーー、げほ」
巨大な水しぶきを上げて落ちた。
「溺れる、誰かー」
勇者は水の中へと落ちていく。息が苦しくな……らない。
「どうしてなんだ」
その時顔のえらを思い出した。まさか飾りじゃなくて本物なのか?…それなら話は分かる。
湖の底にまで勇者は落ちた。なんだこの感覚は…視界が悪いのに岩や魚の位置がわかる。
これもあのくそ女のしたことか。
それにしても体が上手く動かせない。足の動かし方や増えた腕の動きが全く制御できていない。
「くそが。ゆっくりと動くしかないのか」
勇者は湖底から時間をかけて砂場まではいでた。




