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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

勇者とは

作者: ゆーき

初投稿です。読んでばかりでしたが、書いてみたくなったので書いてみた作品です。拙い文章ですが楽しんでいただければ幸いです。

これは遠い遠い昔のはなし。

一人の勇者と言われる者がいた。聖剣を操れる唯一の存在として名を馳せていた勇者は所謂魔王という者を倒しに行った。魔王は聖剣でしか息の音を止めることができない最強の存在。当時、魔王は悪者と世界が認めていた。実際に侵略戦争を行おうとしていたからだ。勇者は一人で戦うには無謀だと感じ仲間を集めた。世界で三本の指に入るような魔術師と戦闘狂で有名な槍士を味方につけたのだ。


しかし二人はあまりにも強すぎた。聖剣を操れるという事がなければ勇者は何の役にも立たなかった。勇者は嘆いた。嘆き悲しんだ。そしてここが勇者にとって人生の分岐点となることに気づかぬまま時は過ぎていった。勇者はなにもしなかった。役立たずだと気づきつつも見ないふりをしていつも通り過ごしていた。

ある夜、勇者は知ってしまった。勇者の必要性はすでになくなっていた事を。いや、そもそも勇者という存在は最初から要らなかったことを。


なぜ勇者は聖剣を操れるのか。なぜ他の者は聖剣を操れないと言われているのか。世界は聖剣に選ばれたからだと考えていた。しかし違ったのだ。勇者は聖剣に憐れまれていたのだ。他の事がなにもできない。何かしらの才能があるわけでもなく努力している訳でもない。そんな要らない存在。それを憐れんだ。最強の武器を使いやすくし、勇者は世界に必要な存在だと思ってもらえるように。役立たずだと気づいたときに努力してくれると少しの期待をしながら聖剣は使われていた。


勇者はそれに気づかなかった。そして、勇者は知らない内に期待を裏切った。聖剣は悲しんだ。これで決心がついた。他の者に使われてもいいと。これまでは拒んできた。勇者がいるからと言って。それはこれからはしない。聖剣はやはり使ってもらいたかった。強い者に。力を全て引き出して使ってもらいたかった。聖剣は勇者以外だと使い勝手が悪く使いづらいだけで誰でも使えるのだから希望は残ってると。


そのまま、勇者の知らない内に聖剣は自分だけの特権ではなくなった。気づけば槍士が聖剣を操れるようになっていた。魔術師が聖剣の手入れを手伝いつつ聖剣直伝の魔術を使っていた。槍士と魔術師は才能はなかったが努力家だった。そして勇者の必要性はなくなった。どうすればいいのかわからなかった。魔王を倒せてもどんな顔をすればいいのかわからなかった。そもそも勇者は魔王を倒す為に必要なのか。魔術師の空間魔法により荷物持ちも要らない。即死魔法だって防げるので身代わりも要らない。ほとんど手入れをしていない元々持っていた剣一本でなにができるのか。魔術師に頼んで家に帰るわけには行かない。どんな顔をすればいいのかわからない。わからない。それに、誰なんだ。勇者は勇者ではなくなった。ならなんなんだ。わからない。わからない。わからない。わかりたくもない。


勇者はいなくなった。消え去った。勇者はなんだったのか。勇者は何のためのものだったのか。勇者は最後までわからなかった。いや、わかっていたのかもしれない。見えないようにしていただけだったのかもしれない。少なくとも、三人は知っていた。そして改めて三人は憐れんだ。勇者を。勇者と言われた何かを。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 勇者と聖剣の関係についての新しい考察で、興味深いものがありました。 [気になる点] 自分的には、勇者の方に同情します。 一度高く上がったモチベーションの大前提が壊れた時に、再び立ち上がれる…
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