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Schwarz Drache ~黒き竜の少女と果て無き旅の果てに~  作者: 戦艦ちくわぶ
Ⅰ La ragazza nera(黒き竜の乙女)
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Hogbertteh(ホーベルッテの導きに)

「なんなのさっきの!!」

 人ごみに紛れ頭を低くしながら進むエリアは、怒りも露わにそうドレスに尋ねるが彼も知るはずもなくただ言えることと言えばあの状況を鑑みるにあの男の仲間と見るのが妥当であろう。しかし、本当に惜しいことをしたものだ、貴重な情報源を逃してしまっただけでなくこれが拉致集団に知れ渡ることでしばらくの間目立つ行動を避けてしまうかもしれない。そうなれば、ライマを探す手段は無くなってしまうというもの。どうすればよいのだろうか。

「あいつらの仲間だろうさ」

「あーもうっ!なんかいい案ないの?」

「……あることにはあるが……」

 そう口走る彼の顔は気が進まないというようであったため、エリアは一応聞いておくだけ聞いておくことにしたが、聞いてすぐに論外だと首を横に振った。

「町を焼き払う、変身してな……」

 そんなことできるわけがない、罪なき人々が身を寄せ合っているというのにそんな住処を奪うわけにはいかないのだ、いくらライマを探すためとは言え。それに、故郷を焼き払われた身としてこの町を同じ目に遭わせたくなどないのだ。皆が焼き払われる経験などさせたくない。

「無理でしょそりゃさあ……サビーナにも恩があるし」

 かといって、ライマを迅速に探し出す手段を今の時点では思いつくことはできないのが現状で、急がねば彼女が下衆な男の下に売り払われてしまうという逼迫した現状で、何か考えを捻りださねばという焦りばかりが意識を持っていく。

「ならばどうする?」

 ドレスの問いかけに、今のエリアには最善の答えを出すことはできなかった。



 その夕方、誰もライマを見つけることのできなかった六人は失意の元一旦宿に集まると作戦会議を開いた。

 各々が少しながらも情報を得ることが出来たようだったが、中でも一番深く反抗集団と接触したのはエリア&ドレス組であり、彼女らの(もっぱらエリアが話した)情報を皆注意深く聞き入っては怒りに打ち震えていた。

「なんと、なんとふざけたことをっ!!」

 よもやそのような目にライマが遭っていようとは想像だにしなかったエマーヘルは、話を聞くや声を荒げて立ち上がると、何やら聞き慣れぬ言葉でがなり立て始めたので三人がかりで沈めさせるほどであった。

「他のお客に迷惑でしょ!サビーナに迷惑かける気!」

 エリアにきつく叱られたことで多少は冷静さを取り戻したのか、エマーヘルは小さな声で謝るとようやく腰を下ろした。

「落ち着けエマーヘル、今怒りを上げても何のことにもならない」

 ドレスにまで諭されてしまう。

「ああっ……そうだな、クソ……何故リガーラはそんなことをするんだっ……何故だサビーナよ!」

 エマーヘルは悔しそうにそうサビーナに縋りつくので、彼の言葉を彼女に翻訳して伝えると彼女はとても困ったような顔を浮かべてどううまく言葉を返したものかと迷っているように見えた。ここで、エリアがうまいこと取り成せればよかったのかもしれないが、彼女もまたサビーナと同様に良い言葉が思いつくことは無かったのである。

 だが、それを思わぬ人物が分かりやすく一言で示してくれた。それはサビーナの護衛の一人フサンであった。彼は豊かに蓄えた口ひげの奥に隠れた口からとても低い声で、そしてたどたどしい英語でこう答えてくれた。

「だから、人間は滅びた……かもしれない」

 まさか彼からそんな言葉が飛び出るとは思っていなかったエリアとサビーナは、驚き固まって彼の方をマジマジと見つめてしまった。彼としては、そこまで大したことを言うつもりではなかったのかもしれないが予想外の反応を周りから受けてしまったために彼自身でも動揺を見せていた。

「どうした?」

 何が起きたのかよくわかっていないエマーヘルは、何故二人してフサンのほうを見つめているのか気になっていたようなので、ドレスと合わせて伝えてあげると、二人は各々の反応を見せる。

 エマーヘルはよくわかるという顔でうんうんと頷いており、先ほどまでの怒りが嘘のようである。対してドレスは片眉をピクリとさせたくらいで、これといって目に見えて反応というものを示さないので面白くないというものだ。感情がないわけではないようだが、だからと言って露わとするわけでもない。何が楽しいのだろうか。感情の豊かなエリアだからこそそう思える、その幸せの何物にも変えがたさ。

「人は……かつて今の数千倍もいたそうよ。ほんの二百年ほど前だかその位までは」

 唐突に、サビーナが遠くを見つめるようにして語り始めたので、一同は聞き入りつつエリアはそっと翻訳をした。

「それも億単位でね……でも人間ってやっぱり増えすぎたのがいけなかったのかしら、皆で同じように仲良く暮らせないのよ、嫌よね。でもね今だってそうなんだもの、そりゃもっと多くいらその分争うわ。あなた達はただの人間ではないのよね……?でも、人間によく似てるし言動だって変わらない……」

 そこで彼女は口をつぐむと語りをすっぱりとやめてしまった。いったい彼女は何を言いたかったのだろうか、彼女の言わんとしていることを理解できる日がエリアに来るのはまだまだ先のようだ。

「さて、と」

 とエマーヘルは場を仕切り直すと、再びライマを探すための案を募った。

「もうエリアは割れているだろうから、エリアを使った囮は不可能だろうな。だとするとサビーナだが、彼女を危険に晒すわけにもいかん……」

 ならば、とドレス。

「どうした。何かあるのか」

「占いはどうなんだ、祈祷師だろう」

「なるほど」

 言われてみればそうだ、彼もライマ同様祈祷師なのだから当たるかどうかはともかく占いで道を開くことはできないのだろうか。だが彼はあまり気乗りしないようで、そのわけを聞いてみる。

「やりたくないの?」

「そういうわけじゃない、ただあまり人探しの占いなど滅多にしたことがないからな。精度が当てにならんのだ。めっぽう天候や収穫に関する占いばかりやらされていたものでね」

 どうやら、祈祷師と言えども一枚ではないらしい。あまり当てにならない彼にがっかりしつつも、それでも一応試してみる価値はあると、ドレスは説得を試みる。

「やらないよりは、やったほうがいい」

「そうそう」

 エリアもそれに乗る。すると、サビーナが何を話しているのか気になったようで、エリアの肩を叩いて何をするのか尋ねてきたのでこれからエマーヘルにライマの居場所を占ってもらおうということを伝えると、彼女は興味深そうにまじめな顔をした。

「それ、私にも見せてもらえないかしら?」

「いい、と思うけど……」

「面白そうだもの、湖畔村にもあるけど他所のも気になるわ」

「聞いてみるね。ねえエマーヘル、サビーナが占い見てみたいって言ってるけどいいよね?」

 そう聞くと、ドレスの説得に占いをする方に傾いていたエマーヘルはつい生返事で良いと返してしまったため占いをする羽目となってしまった。リガーラとは言え恩人の頼みである、占いを見せたところで悪いこともあるまい、そう自分を納得させた彼は、荷物から袋を取り出し一枚の巻かれた布を取り出した。

「これはホーベルッテ。探し物をするときや良い漁場を決めるときに使う。本来人探しをするものではないが、応用はできるだろう、では」

 彼は縛っていた紐を解くと布を床に広げておいた。残り物はその周りに集まってその様子を静かに見守っていた。中から出てきたのは木の枝が一本と黒曜石のような小さく黒い石が三つ、それから細い骨らしきもの。

 それらを手に取ると彼は占いを開始した。さて、鬼が出るか蛇が出るか……

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