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Schwarz Drache ~黒き竜の少女と果て無き旅の果てに~  作者: 戦艦ちくわぶ
Ⅰ La ragazza nera(黒き竜の乙女)
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Strum Strum(荒れ狂う時)

 ハワード・ゲイツはある一人の若い空軍伍長の男と二人で尋問室にいた。男を問い詰める彼の表情は実に険しく、そして輝いていた。対して男の方はというと、階級があまりにも異なる上に自分の所属する軍でもトップの人間にここまで近づいたのは初めてで、その顔は恐怖というよりも緊張で固まってしまっていた。

 はたから見れば、これは秘密を知ってしまった若い兵士が直接黒幕から脅迫され今にも撃ち殺されそうな雰囲気を持っているかもしれない。だが、現実はそうではない。話は既に佳境に入ろうとしていた。

「メラーラ伍長、はっきりと言わせてもらうが、君を我が直属の戦闘機大隊所属のパイロットとしたい」

「はあ?」

 ヒュー・メラーラにはゲイツが言っていることが最初理解できなかった。どうにかこうにか救出され基地まで帰還した矢先、簡単な検査を受けるや休む間もなくこうして尋問室に閉じ込められ、将軍と一対一で自分が見たものをありのままに話したのである。当初は自分たちを襲ったものを正直に述べたとして誰が信じるだろうかと言うのを躊躇ったが、ほかならぬ将軍自身がそのままを話すことを命令したため、仕方なく全てを話したのだ。

 偵察中に敵機を発見したこと、それがどう見ても無機物の塊ではなかったこと、神話のドラゴンのようであったこと、そして自分以外の皆がその怪物に殺されてしまったこと。全てを。話している最中はゲイツは黙ってメモを取り続けており、一度も頷くことすらなかったためこのまま話していいのか迷った。だが命令と言われれば話すしかない。そうしてところどころしどろもどろになりながらも、彼が話し終えると、メモを終えたゲイツはペンを置き先ほどまでの重苦しい表情から一変、好奇心に満ちた顔でドラゴンの特徴について問うてきたのだ。その勢いに圧されつつも覚えている限りを話したヒューは、何故このような重鎮がそんな幻覚のような話を信じてくれるのだろうと不思議でたまらなかった。だが、彼の質問に答えていくにつれ、ヒューはゲイツという人物はドラゴンという存在に魅入られてしまっているのだと理解するようになっていた。

「君は偵察機のコパイだったね?君は仲間をドラゴンに奪われた、そうだろう。つまり今君は復讐という執念を腹の底に抱いているはずだ。したいだろう?ならばさせてやろう。第一〇一戦闘機大隊のパイロットとしてね」

 端的に言えば、そうだ。安全だった任務の最中突然現れたあの怪物によって先輩たちを殺された。彼らの中には本国に家庭を持っている者は多かったし、小さな子供がいる者もいた。それをあれは!

「しかし、しかしですね」

 戸惑う。そんな彼にゲイツは首を傾げ、何が不満かね、と尋ねる。

「い、いえ不満では……」

「だったらどうした」

「その、私は偵察機の操縦は経験がありますが戦闘機なんてとても。単座機に乗ったのは訓練時代に数回だけです」

 元から偵察機や爆撃機といった科で操縦技術を学んでいたヒューは、副座式の操縦経験はあっても単座戦闘機の経験はない。つまりそんな将軍直属の戦闘機隊で操縦できるほどの腕前の自信がまったくもってないのだ。彼の言いたいことを汲んだゲイツは、ささやかに笑って説明を付け加えた。

「戦闘機大隊とは言え、ストームヴァイパー(※1)のみの編成というわけではない。この部隊はバラエティに富んだいわばマルチプルな戦闘機を擁する航空隊だ。ストームヴァイパーを始めウッコネン(※2)やブラスター(※3)のような水上機もいる。そして近々正式量産が開始されるオーバーハリケーンもだ」

「オーバーハリケーン?」

 初めて聞く名前の機体だ。それは当然だが、それが単発なのか双発なのかすらわからない。ただわかるのは戦闘機ということくらいだ。

「オーバーハリケーン。それは我が軍初の双発複座重戦闘機でね。君にはその中隊の第二小隊の隊長を務めてもらいたいということなのだよ」

「わ、私が!」

 つい数日前まではただのいっぱしの空軍新兵、それが唐突に一小隊を率いる、それも最新鋭機の隊長を?理解し難い現実に、彼の脳内は非常に混乱してしまっていた。

※1 ストームヴァイパー:シュバステン空軍主力の単座式戦闘機。両翼に計四門の20㎜機関銃、機首に二門の14㎜機関銃を備えている。装甲はあまりなく、この時代に空軍戦力を持った敵対する勢力がないという現状を表している。プロペラの翅は四枚。最高速度 時速741km 


※2 ウッコネン シュバステン空軍の戦闘爆撃機。三発。最初は爆撃機として運用するが、爆弾投下後は戦闘を行うことのできる機体。いいとこどりに思えるかもしれないが、中型機のため速度が遅い上に爆撃機が攻撃を受けやすい機首部分に機銃を置けないため戦闘機に襲われた際は弱い。また器用貧乏な点がいなめない。だが、戦闘機に襲われることがないため、この弱点は大して弱点とならなかったのがこの機体の幸運であった。機体正面両翼に20㎜機関銃計10門、操縦席後部に14㎜機関銃1門を備えている。最高速度 時速511km


※3 ブラスター:シュバステン海軍の単葉水上観測戦闘機。基地のほか艦艇にも配備されている。機首に14㎜機銃二門、両翼に14㎜機銃二門、後部機銃座に14㎜機銃1門。最高速度 時速403km

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