Prologo(始まり)
初投稿です。
なんとなく書いてみました。いつか賞に応募できたらいいなと思って書いていたのですが、こっちでいいかなと。
ハーレムだとかチートだとか、異世界とかではないです。少し変なSFもののつもりです。
タイトルは以前設定が定まらないうちにつけたものなのでドイツ語になっていますが、他にしっくりするタイトルがなかったため、このタイトルのままにしました。
西暦2454年、かつて北欧と呼ばれた地域の一角で、シュバステンという小さな帝政国家が誕生した。小さくとも若いその国家は、秘めたる野望を腹に懐に収めたる刃を世界に向けて振りぬいた。
その頃の世界は度重なる世界大戦や紛争、環境汚染を経て多くの国が亡び、また多くの人間が死に絶えていた。それは実に人類の総人口が2億程となっているような惨状であった。かつて栄えたアメリカやロシア、EU。そしてアジアなどのほぼすべての国が姿を消していた為に、その国の発足を阻む者など、いないに等しかった。一応かつての姿と似たような国は各地にごろごろと存在していたのだが。
だが一つだけその国が違ったのは、失われし科学技術、いわばロストテクノロジーを有していたことだった。他の地域は戦乱によってかつて人類が築き上げてきた技術の殆どが失われ、人々の暮らしの水準は良くても二〇世紀そこらにまで落ちてしまっていたのにだ。酷いところでは一ケタ台にまで落ちてしまったところもあったという。
人類がいる限りいざこざというものは絶えないもので、争いと言えば剣や弓、よくてライフル銃が出て来る程度のものであった。まあ紛争レベルの物で、得物を振り上げ全軍突撃というお粗末なものであった。が、それに対し、シュバステンは驚くべきことに飛行機や戦車を繰り出してきたのだ。とはいっても、飛行機はレシプロ機で戦車も精々第二次世界大戦時の物と同程度だったのだが。いずれにせよこの時代の人々にとってそれらは太刀打ちできない脅威であり、為す術無く侵略を受けたのであった。
時は少し遡り2440年、どこかの国のどこかの村で一つの小さな命がこの世に生を受けた。彼女は親の愛情をたっぷり受け、周囲の人々からも見守られすくすくと育っていった……ということは無く、訳あってかつてのイタリアとフランスの境目にあるそれなりの規模の町で、ラマーカスとその妻マンダナという、孤児を引き取って育てている黒人夫婦の手によって彼女は育てられた。少女はそれはそれは美しい黒髪を持ち、かつてエーゲ海の海岸線に立っていたというギリシアの家の白壁のように綺麗な肌をしており、利発で気の利いた優しい子に育ち、他の者達と変わらぬ健康な体で成長していった。ただ違ったのは、十六歳ながらにして成人男性と同等、あるいはそれ以上の身体能力と、炎のように真っ赤な左目と全てを吸い込む夜のような真っ黒い右目、そして顔の左側に刻まれた紋章のような、これまた真っ黒い印であった。それと、先の尖った耳。
当然始めは人々の注目を浴び、胡散臭い宗教の襲来を受けたりしたのだが、夫妻や周囲の人々の尽力、そして時の経過によって次第に彼女は受け入れられていった。そんな彼女はそのまま大人へと成長し、夫を見つけ、やがては家庭を持つはずであった。そう、シュバステンの攻撃を受けるまでは。
これはそのシュバステンの襲撃を受けた直後のことである。