【千文字作文】せんせい、しつもんです
小学校の頃、授業というものが本当に嫌いだった。
とにかく退屈で、教壇に立つ教師の話がさっぱり理解することが出来ない。少しヒステリー気味の女の教師の声がどうしようもなく聞き取りづらかったせいかもしれない。
四十五分と今に思えば短い時間だが、当時の私は延々の時間理解し難い呪文を聞かされている気分だった。
九九が早く言えることも、漢字がきちんと書けることも、大昔に起きた話もそれが一体何の役に立つのか全く理解が出来なかった。二桁の引き算が人一倍早く解く事が出来るとか、上手にリコーダーが吹けるとか、誰もが当たり前に出来る事をみんなで同じようにする意味を知りたかった。
そんな毎日を過ごしていたら、自分は一体何を教え込まれていて、どうなるように『製造』されようとしているのか。そんな事を可愛げもなく、うすらぼんやり考えた事すらある。今思えば笑えて来る。
そんな色褪せた毎日を過ごしていた中で、印象に残っているものがある。
その授業は確か理科だった。生き物には体温がある、そんな授業を受けたような気がするからきっと理科の授業だろう。もしくは保険体育だろうか? いいや、きっと理科だ。間違いない。
そんなある日、恒星と惑星の授業を受けた。
太陽は高温を発していて、その熱が地球を暖めているのだと聞いた時、子供ながらに太陽の力に感動した覚えがある。想像もつかない遠い場所の熱がこんな所にまで届くものなのかと、心から感動した。
だがふと、以前の授業を思い出した私は疑問を先生に質問した。
「せんせい、たいようは生きているんですか?」
もの凄く呆れた顔をされたのは、今でも覚えている。
そしてその当時、私はどうしてそんな顔をされているのかさっぱり解らなかった。
だからだろうか。先生の答えは苛立っていた。
「そんなわけがないでしょう? 太陽は燃えているんですから」 と。
今になってみると、そんなこと聞かれてしまえば誰だって辟易してしまうのも無理はない。
しかし当時の私は本当に解っていなかった。
太陽は暖かいのに生きていない。では、この前の授業で言っていた事は何だったのだろう、と。
疑問は解決しなかった。
太陽は生きていないが暖かい。
生き物は生きているから暖かい。
暫く考えたのちに余計に解らなくなったので、また幼い私は先生に質問した。
「せんせい、ふとんがあたたかいのはどうしてですか?」
疑問は解決しなかった。
だが、先生に嫌われた事だけははっきりと理解した。