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神の賽子  作者: 小工枝 攻臣
異能力
7/24

天井

見慣れた天井がそこにあった。天井がいつもより近く感じる。

朝がきたのか。

左手を棚のフィギュアに伸ばす。フィギュアがぽとっと落ちた。

どうやら夢じゃないらしい。



「煌。」

放課後、帰りの支度をしているときに佐野鷹之に声をかけられた。

鷹に目を向ける。

「一年の女子がお前に用があるんだと。」

鷹が教室の出口を指す。

見ると、冨上閑子が居心地悪そうに立っている。


「先輩、その・・・・・・。」

バツが悪そうにして言葉が続かない冨上。

冨上に呼ばれ、南校舎の屋上に来ていた。

「昨日は取り乱してしまい、申し訳ありません。」

冨上が静かに頭を下げる。

「いや、俺もびっくりさせて、悪い。」

正直、冨上のことはあまり考えていなかった。自分の超能力に頭がいっぱいだった。

まさか、こういう風に謝ってくるとは思っていなかった。

「なぁ冨上、この能力について何か知っているのか?」

冨上が額に手をあて考える。

「いえ、・・・・・・知りません。昨日はおそらく私の勘違いでした。」

少し大きく息を吸い、続ける。

「先輩、もう一度その能力、見せてもらっていいですか?」

目を見つめる。目がキラキラとしている。だがそれは好奇心によるキラキラではない。覚悟を決めたようにその目は煌めいていた。

「分かった。」

俺はバックから筆箱を取り出し、鳥の糞等で汚れていない下に落とす。

冨上がそばに近寄る。

右手を伸ばす。


動かない。

筆箱はうんともすんともしなかった。

「あれ?」

俺の動揺を見てか、何も起きないのを見てか、冨上が不思議そうにしている。

筆箱はちょっと重かったか。

俺はバックからノートを取り出し、下に置く。

右手を伸ばし、力を籠める。

浮かべ。浮かべ。浮かべ。


しかし、ノートは動かない。

「先輩?」

冨上がきょとんとして問いかける。

「ふん! ふん! うおおおおおおおおお!」

声をあげて力を籠める。しかし、ノートは動かない。


風が吹いた・・・・・・気がした。

冨上のスカートが揺れたのでそう感じたのだろう。


スカートがばっとめくれた。

しかし、それほどの風が吹いたとは思えない。なぜなら、ノートがめくれていなかったからだ。

ということは、これは・・・・・・。

「せ、ん・・・・・・ぱぃ・・・・・・」

冨上の肩がわなわなと震えている。顔が真っ赤だ。

そこでようやく自分のしたことに気がつく。いやしかし、スカートめくっただけでパンツは見えてないんだけど。

「そういう問題じゃありません!」

どうやら口に出してしまっていたようだ。





「能力・・・・・・。」

屋上から聞こえてきた煌の言葉に、頭がついていかない。

冗談だろ。そんなアニメみたいな、漫画みたいなことが。

そんなの、そんなの、そんなの――――――――――


「うらやましいじゃないか」

口から言葉がこぼれた。

こいつはそう、言い訳だ。この世界への。

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