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勇者なんていらない~幼馴染のせいで異世界に拉致されました 編~

続きはありません。

現在、私は私を生んだ人たちとその子どもから引き離されています。

それは、私を生んだ人たちの子どもの女の子が魅了の術を無意識に使っている子で、自分を特別扱いしない私を含む周囲の人たちに被害を及ぼしたからです。

私は魅了の術の影響で、私を生んだ人たちとその周りの大人たちから蔑ろにされました。

簡単に言うと、存在しない者として扱われたのです。

私はどうこう足掻くよりも、はじめから周囲の人たちに期待しなかった。


私を生んだ人たちの家は陰陽師の分家。

私の現状を陰陽師本家の宵闇家当主が知ることになり、本家に引き取られることになりました。

もちろん、私の陰陽師の資質が関係していたというのは言うまでもありません。

そしてその時に、私を生んだ人たちの子どもの女の子の魅了の術にかかった陰陽師たちと魅了の術を使った女の子は、宵闇家当主により『陰陽師としての能力の永久封印』をされ、破門されました。

もう二度と、陰陽師に戻ることができません。

私は、私を生んだ人たちが付けた名前を捨て『宵闇雫』となりました。


宵闇家当主には、息子が二人います。

兄が暁さんで、弟が勇気さんです。

暁さんは私より一つ上で、勇気さんは私より一つ下です。

勇気さんは、かなりウザイ。

私が自分のことを好きだと思い込んで、ちょっかいをかけてきます。

それに奴が迷惑極まりない存在だと認識しているのは、『ターゲットを不幸にし、自分が幸せになる』術を無意識に使っていることです。

これは魅了の術よりも厄介で、簡単に封印できるものではありません。

これが当たり前の状況だと思っているので、本人は絶対に自覚できない。

陰陽師は特殊な職業ですので、このままというのはありえないのですが...


学校では、暁さんと勇気さんはかなりモテます。

高校に入ってからは、さらにスゴイことに。

勇気さんに絡まれると女子の視線がものすごい。

視線で人を殺せるなら、私は確実にあの世に逝ってます。

そんなある日、勇気さんがこの世界からいなくなりました。

束の間の平和です。

もう少しで、私が殺るところでした。残念。

私が平和を満喫して噛みしめていると、

「勇者様を助けて、異世界の少女よ」

という声が聞こえた瞬間、どこかの空間に飛ばされました。

「私はあなたにとっての異世界、ウサピョッピョwwwの女神。お願いします。どうか、どうかこの世界に召喚された勇者様を救って!」

なんでやねん!

世界を救うために召喚した勇者を救ってって!

私の疑問が顔に出ていたのでしょう。

女神様は、

「勇者様は、魔王に捕えられたのです。仲間たちは必死に何とか逃げ切ったのですが、このままでは勇者様が。お願いします、異世界の少女よ」

このままでは話が進みません。

もっともな疑問を女神様に訊くことにします。

「なぜ、私?」

これ、一番の疑問ですよね。

勇者様とやらが倒せなかった魔王を倒して、勇者様を救うんですよね?

「実は勇者様が魔王に捕まったあと、意識を共有してお話したのです。その...勇者様は自分のことを愛している幼馴染がいるから、その子に頼めば、絶対自分を助けに来てくれると言ったのです」

なんですか?、そのお花畑思考。

ものすごーく、心当たりしかないのですが。

「つまり、あなたは私を問答無用に拉致した揚句、危険に放り込んで無償で働けというのですね?」

私は殺意溢れる笑顔で、ニッコリ笑いかけました。

「そ、そのようなことは!ちゃんと元の世界に返します。ですから、どうか」

「つまり、何の報酬も与えずに、危険な目にあわせて役目を終えたらおさらばと」

「そんなことはしません!あなたを召喚した時間で元の世界に戻して、一つだけ願いを叶えます!ですから、勇者様を」

「本当に、願いを叶えてくれるのですか?」

「もちろんです。だから、勇者様を!」

「どんな願いでもいいんですよね?」

「はい!」

「後から拒否とかはナシですよ。もし、できないとほざくのなら、相応の覚悟をしてくださいね?」

殺意溢れる爽やかな笑顔で、女神様に迫りました。

女神様はもはや涙目です。

「ウサピョッピョwwwの女神の名にかけて、どんな願いだろうとあなたの願いを叶えて見せます!ですから、勇者様を」

ヤッタ――――!しっかりはっきりと女神様から言質を取りました。

「忘れないでくださいね、女神様。忘れたら、死ぬより怖い目にあわせてあげますよ?それでは、その世界に送ってください」

「分かりました、異世界の少女よ。どうか、勇者様をお救いください。それでは、送ります」

次の瞬間、ウサピョッピョwwwの世界の勇者様のハーレム女たちのもとにつきました。

勇者様のハーレム女となれるだけあって、いろんな種類の美女と美少女だらけです。

女の子だけど、羨ましいぞ。

まあ、そんなことを言ってる暇はありません。

とっとと用を済ませて、元の世界に戻らないと。

さっきは、陰陽師としてのお仕事の途中だったんですよね。

遅れると、青狸特製の『伝説のワッフル』をご当主様と暁さんだけで食べてしまわれます。

私の分が、残らない!

なので、彼女たちのいい分を聞かずに一方的に話します。

「あなたたちが、勇者様と旅をしている方たちですね?」

どうやら、彼女たちの反応がそうであると物語っています。

「では、魔王のもとに行きましょう。大丈夫です、転移すればすぐですから」

やっと逃げてきたのに!という表情をする彼女を無視して、勇気さんの気配をたどって魔王の転移しました。

「お前、何奴じゃ!」

あれは、合法ロリ?

「魔王様ですか?」

「そうじゃ。妾がいかにも魔王じゃ」

すごいな、勇気さん。とうとう、合法ロリもゲットか。

「雫、来てくれたか。俺を助けてくれ!」

勇者が言う台詞じゃないですね、勇気さん。

今の勇気さんは、椅子に鎖で繋がれて動けない状態になっています。

仮にも勇者なのだから、それぐらい逃げないと。

呆れてしまいますね。

「とりあえず、魔王様」

「なんじゃ?」

「魔王様の目的はなんですか?」

「むぅ?もちろん、妾の目的は、勇者様を手に入れることじゃ!」

「そうですか。もう一つ、人間の世界とその他の世界と平和を築く力をする気はありますか?」

「そうじゃな。むろん、魔族もこのままでいいとは思うておらん。他種族と争っても、得られるものがないしな。お互い、戦いに疲れているのは分かっておる」

「なら、どうでしょう。勇者ハーレムの中には、他種族のお姫様たちも混ざっています。まず、お互い話し合い、いろんな道を模索しては?」

「そうじゃな」

私は後ろを振り返り、ものすごい笑顔で勇者ハーレムに同意を求めました。

勇者ハーレムは、ものすごい勢いで頷いて同意してくれました。

「では、戦いはいったん終結ということでよろしいですね」

「うむ」

「おい、魔王!俺を解放しろよ!」

空気の読めない男が割りこんできました。

ちゃんと、空気を読んでくださいよ!

「魔王様、そのままで」

「う、うむ」

魔王様は、勇者様の拘束を解くのを制止する私に戸惑っています。

「最後の仕上げをしないといけないのです」

「そ、そうか」

私は、女神様に呼びかけます。

「女神様―――!終わりましたよ―――!」

そして、女神様がこの世界に降臨する。

「異世界の少女よ、ご苦労様です。あっという間でしたね。ウサピョッピョwwwの世界を見守る女神として、この状況を憂いていました。これからは、私もこの世界の者たちを手伝って、より良い世界を目指します。本当に、本当にありがとうございました」

女神様は、感極まって泣いてしまわれました。

ここで、空気の読めない男再び。

「おい、女神様。俺の拘束を解いてくれ!」

「分かりました」

「女神様?」

私は、絶対零度の声で女神様の行動を制止しました。

「い、い、い、い、い、異世界の少女。なんですか?」

「その前に、やることありますよね?」

これ以上ないくらい、私は笑顔です。

「私の願い、叶えてくれるんですよね?」

女神様は落ち着き払って、

「もちろんです。異世界の少女よ。あなたの願いはなんですか?」

「その前に一つお尋ねします、女神様。あなたは、勇者様のことを好きですよね」

直接ストレートに、ド直球に。

女神様は、真っ赤になってしまわれました。

「好きだってとってもいいんですね」

女神様は、そうだと言って頷きました。

この時、私はものすごく悪い笑顔だったのでしょう。

勇者ハーレムの女性陣がドン引きしています。

ついでに、魔王様もドン引き。

「では、願いは一つです。『勇者様を引き続きこの世界に。私の人生に一ミクロンたりとも関わりなくして欲しいです』。だって、女神様も、魔王様も、ここにいる私以外の女性の方も、勇者様を愛しているんですよ!これは、異世界ハーレムするしかありません!」

力強く、私はそう言いました。

散々迷惑をかけられているんだから、馬鹿を異世界に捨ててもいいですよね!宵闇家当主様!

実は、陰陽師宵闇家。

勇気さんと同じ能力を過去に持つ方がいたらしいのですが、その人たちは全員、異世界に召喚され生涯異世界で過ごすらしいですよ。

陰陽師なので、人に迷惑をかけてはいけませんということですね!

めでたし、めでたし、ですね!

「では、私を元の世界のあの時間に戻してください。女神様、魔王様、皆様、勇者様をこれからもよろしくお願いしますね。彼の両親は、了承済みですよ!」

私はこれ以上ないくらい爽やかな笑顔で、異世界から元の世界に戻りました。

その時に「ふざけるな―――!」と聞こえたのは、きっと、絶対、絶対確実に、気のせいでしょう。

女神様は約束通り、私が拉致された時間に戻してくれました。

これで、青狸特製の『伝説のワッフル』を食べる時間に間に合います。



この後、ウサピョッピョwwwという異世界から勇気さんはこの世界に戻って来ることはありませんでした。

私というと、宵闇家次期当主になるよう打診されたのですが、辞退して暁さんを推薦しました。

だって、私は才能があっても当主になる性格をしていませんから。

読んでくださり、ありがとうございました。

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