そして、世界は終わり、始まる。
人は、生きることと死ぬことを許されている。
だがそれは、決して当たり前などではなく、いつ覆るか否か推し量る事のできないものである。
だから俺たち人間はそんなことなど気にもかけずに過ごしてきたのだ。
だが、ある日その常識は覆った。
神様はお怒りになったのだ。
これは、そんな世界での俺の日常の記録だと、考えてほしい。
20xx年4月1日
「あー、よく寝たぁ。」
「あんたは寝すぎなのよ!働け!カスが!」
「まぁまぁ、そうかっかすんなって。」
あぁ、今日も今日とて一日は変わんねぇなぁ。
「なにぼうっとしてんのよ!ほら、学校行くわよ急いで。」
「はいはい。」
うちは四人家族二人兄弟で形成されている。
だから女の声など母ちゃんの声くらいしか聞こえないはずなのだ。
そう、だからきっとこいつは女の子じゃない。
これは持論だが、女の子というものはおしとやかであるべきだと思う。
うん、だから俺の兄貴最強だよね。
お兄ちゃん属性を生まれながらにして授かっているうちの兄貴こと雨錦春斗くんは容姿端麗成績優秀頭脳明晰スポーツ万能という素晴らしいスペックをもってらっしゃる。
あれ、折角途中までお経みたいに漢字で続いてたんだからスポーツ万能も全部漢字で表現できるようにするべきだろ。うん。
いやいやいやいや、違う違う。いつもの癖がでてしまった。
くだらないことを考え出すとやめられない止まらない。
あれ?何の話してたんだっけな・・そうそう!うちの可愛い兄貴についてだ!うん!
全体的に中の上くらいのできの俺とは格が違うのだ。
そう、雨錦春斗は容姿と声だけならどこからどうみても女子なのである。
もう女の子より女の子。
ほんとうちの兄貴最高。
そんなことを考えてると、上からアツアツのフライパンが降ってきた。
あ、いや、うん。
どう考えてもこいつが振り下ろしただけなんだろうけどね!?
「おい千夏。危ないだろ。ただでさえお前は女の子としてうちの兄貴に負けてるのに・・」
その時、何かが切れた音がしたのはきっと気のせいではない
「雪斗ぉぉぉぉ?覚悟はできてるのよねぇ?」
これは、逃げるが勝ちだな。
「覚悟を決めるために俺は先に学校行ってるわ!!じゃあな!」
そうしていつものごとく俺は早着替えを終え学校へと急ぐ。
それが、俺の、俺たちの日常だった。
そう、この日常はもうすぐ日常としての終わりを迎え、非日常として生まれ変わる。
神様が、怒るのだ。
この、人が自ら命を落とす世界と、それを受け入れて生活している俺たち人間に。
だから神様は新しい世界を創る。
人が自分では終わることのできない世界を。
人はその世界に少しずつ、だが着実に行くことになる。
その様を人は島流しのようだと言い、
そこに入った人はまるで生き地獄だと言った。