落ちたもん負け
ショッピングモールで、一緒に買い物。
映画を観たあとは、コーヒーを片手に2人で感想を語り合う。
周りの人からは、私たちは何処にでもいる普通のカップルに違いない。
でも、違うんだ。
「ねえ、梨乃ちゃんとはどう?」
映画の感想もそこそこに、私はそう切り出した。
「順調だよ。昨日、向こうの誕生日だったから、一緒にお祝いしたよ」
「そっちは?」
「いつも通りよ」
「部活一直線…か。さみしくないの?」
「ないよ。そういうところが好きだから」
「健気だな」
健気。そう言われるとなんだか、照れる。
私はあの人の応援でさえ直接できやしないのに。
「どっちが。そっちだって尽くしまくってるくせに」
「彼女は笑顔が1番だからな」
そういって、彼は幸せそうに笑った。
彼には、彼女がいる。
私には、好きな人がいる。
まあ、その相手は…二次元にいるんだけど。
彼は恋愛シュミレーションゲームのキャラクターに。
私は漫画のキャラクターに、恋してる。
私と彼の関係は恋人なんていう甘い関係ではなくて。
ただのパートナーだ。
世間体に雁字搦めになっている今世を生き抜くための。
馬鹿げてる?
だってしょうがないじゃない。
あの日、あの瞬間。
恋に落ちちゃったんだもん。
私の遺伝子がこの人だといっている。
たとえ、二次元の世界にいたとしても、
私は全身全霊で貴方に恋をする。