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魔法少女はじめました   作者: ながしー
第一章 朱莉編

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Arrogant Valentine 7

『…それでなんで私のところに電話してくるのよ』

「柚那は協力してくれないし、セナと彩夏ちゃんは愛純が協力して欲しいって言うなら協力するけど勝手にやりたいっていうことなら協力しないって言われちゃったし、朝陽は恋愛事ポンコツだし、狂華さんとチアキさんはいないんだもん」

『だもん。じゃないわよ!あんた達の中で誰と誰がくっつこうが私にはまったく関係ないでしょうが……』

 そう言ってユウは電話越しでもはっきりわかるくらい大きなため息をついた。

「まあまあ、そう言わず。最終決戦を控えた敵に塩を送るくらいの寛大な気持ちでひとつ」

『ひとつ。じゃないわよ。あんたのせいでこっちはガンガン戦力を削られて頭が痛いってのに。特に先月の橙子に関しちゃ完全に計算外よ。てっきり傲慢とか憤怒のほうが先に落ちるかと思ってたのに』

「いや、憤怒に関しちゃもう完全に俺の手を離れてるから、こっちに寝返ったとしても俺のせいじゃないよ。ていうか、色々あってもちゃんと電話で話してくれるのな。意外ににユウももうこっちに来る気まんまんだったりして」

『…そんなこと言うならもう切ろうか?』

「あ、うそうそ。神様仏様ユウ様。で、恋愛マスターのユウとしては、なんかいい案ない?」

『バレンタインだし、それ絡みでなんかすればいいんじゃない?というか、私その柿崎って人のこと何一つ知らないんだけど』

 まあ、彼裏方だから戦闘中は全く出てこないしな。

「バレンタイン絡みっていうと、例えばどんな?」

『チョコ渡させてラブレターでも書かせなさいよ。というか、別にバレンタインだからって女の子からアプローチしなきゃいけないなんてことないんだから男の方にうまく接触してさ』

「やっぱりそれしかないよなあ…あ、そうだ。アプローチで思い出した。ごめん、ユウに一つお願いがあるんだけど」

『なに?』

「バレンタインの日の…というか、バレンタインが終わった15日の0時。この間の新宿上空の座標にアユを呼び出して欲しいんだ」

『は?なにいきなり。あの子にチョコでもあげるの?』

 まあ、普通はそういう発想になるか。

「実は今、幸せ魔法少女計画ってのやっててさ。アユがそっちを辞めたいって思うくらい幸せにして、自主的に七罪の離脱をさせるっていうキャンペーンしてるんだ、もちろん柚那と俺と寿ちゃんと楓さん以外には内緒で」

『つまり、何?』

「もし、七罪としてこの先俺達と敵対するつもりなら、決着をつけるために来てほしい。もしこのまま俺達の仲間として戦ってくれるなら来ないでほしいって伝えてくれ」

『……それ、あんたをだますために行かないで七罪続けるって発想にはならないわけ?というか、そもそも要求を飲んであんたと戦うことでどんなメリットがあるのよ』

「メリットはこっちの戦力をそげるってことだろ。それに騙すとかそういうことする子じゃないだろ。アユもユウもさ」

 少なくとも、今まで七罪として対峙したアユはそういうことはしなかったはずだ。

『ま、いいわ。籠絡するなら勝手にやれって言ったのは私の方だし…ただ、あの子はちょっと難しいわよ』

「わかってる」

『わかってる、ね。ま、いいわその伝言は引き受けるけど、どうなっても知らないわよ』

「すまん。恩に着る」

『大分貸しが溜まってきたし、そろそろ返してもらいたいもんだけどね』

「お前が仲間になったら、一杯奢るよ」

『あら、私17歳なのに。いけない大人ね』

 お前みたいな中年臭い17歳がいてたまるか!とは、もちろん口には出さない。

「はいはい、ユウさんじゅうななさいな」

 これでわかるまい。

『なんか言い方に裏がありそうでムカつくわね』

 気取られた!

『まあいいわ。それで?他には?』

「ああ、そうだ。まだ見たことないんだけどさ、怠惰ってどんな子?」

『前に私と一緒に学校に行ったでしょ、あんな子よ』

「いや、あれ自体も怠惰の子の出したダミーでしょ?だったら実際の姿は違うんじゃないかなって思ってるんだけど」

『確かに違うわね。ただ、情報はここまで。これ以上の情報は出さないわよ』

「最後に一つだけ!……アユ以外、魔法少女の中には七罪はいないんだよな?」

『……いないわ』

「そっか。ありがとう」


 電話が終わってから愛純の件が何も解決していない事に気がついたが、アユを呼び出すことだけはできたのでよしとしよう。

 よしとするったらするんだって。

「朱莉さん、電話終わりました?」

 部屋の入口に目を向けると、柚那がドアの隙間から顔を覗かせた。

「ああ、ごめんな待たせて」

「いえ、お願いしたのはこっちですから」

 柚那はそう言って部屋に入ってくると、すぐに変身してステッキを取り出す。

「じゃあ、とりあえずまたがってみようか」

 幸せ魔法少女計画で、柚那が願ったのは空を飛ぶ方法を教えること。別にそのくらい彩夏ちゃんと一緒にいつでも教えてあげると言ったのだが、柚那の希望は二人っきりでのレッスンということで、どうも二人っきりでというところのほうが重要であるらしい。

「またがるんですか?横座りじゃダメですか?」

 まあ、横座りのほうが女の子らしいと言えばらしいけど。

「慣れたらそれでもいいと思うけど、最初はまたがるほうがイメージつかみやすいと思うよ」

「わかりました!」

 柚那はそう言ってステッキにまたがると、俺の方を見た。

「さあ!」

「さあ!と言われてもなあ……感覚的なものだし、俺が彩夏ちゃんに習ったとおりに教えると怒られそうでなあ……」

「え?どういうことですか?なんか性的なことですか?」

 そういう顔やめなさいよ本当に。

「違うって。はあ…、絶対怒るなよ?」

 うーん…絶対怒ると思うんだよなあ。

「絶対怒りませんから!」

「絶対だからな?……こう、足にギュイーンと魔力をタメて、それを腰からステッキにブーンと流し込んで。十分にたまったらステッキの後ろから噴射するんだ。豪快にブワーッとおならする感じで!」

「私、おならなんかしません!元アイドルですから!」

 昭和か…。

「というか真面目な話、漠然としすぎててどうしたら良いかわからないです」

 とは言っても実際やってみると何一つ間違ってないだけに始末が悪いんだよなあ。

「じゃあ、とりあえず実際おならをするところから……」

 ちょっと聞いてみたいし。

「バカなんじゃないですか!?」

「だって俺とか彩夏ちゃんの方法はおならとしか言いようが無いんだからしょうがないだろ!」

「じゃあ朱莉さんが愛純とか楓さんに習ってきてくださいよ。それでその方法を私に教えてください」

 まあ、確かにあれはおならとかそういう感じではないし、俺や彩夏ちゃんの方法と違って間違って落ちることもないと思うんだけど……

「あれは空を飛ぶっていうよりは空を歩くって感じだから、俺を後ろに乗せて夜空をツーリングって感じにはならないぞ」

 それこそ楓さんみたいにアホみたいに早く走れるとかなら別だけど、たとえそれができても柚那が俺を抱えて空中を走るとか、たとえお姫様抱っこだとしても絵面が面白すぎてロマンチックとは程遠い。

 かと言って喜乃ちゃんのホバリングを身につけても、地上スレスレを移動するので、走るのと同じくらいかなりシュールな絵面だ。

 結局やり方の内側はともかく、俺と彩夏ちゃんの方法が結局一番かっこいいと思う。

「なんかもう俺が飛ぶんじゃだめなのか?」

「ダメです!私が朱莉さんを後ろに乗せたいんです!」

 わがままちゃんだなあ。

「まあ、おならとは言わないまでも、魔力で後ろを攻撃する感じで放出してみたらどうだ?原理的にはそれでいけるはずだし」

「放出ですか……」

「あ、そうか。やったことないのか」

 柚那は回復魔法も格闘も実際に相手に触れて使うので放出系の魔力の使い方をしたことが殆ど無いはずだ。一応蔦なんかは放出系と言えなくもないけど、あれはどっちかって言うと放出というよりはないものを具現化する使い方なのでちょっと違う。研修ではちらっと座学をやったけど、やったことないとイメージしづらいとは思う。

「回復魔法を使う要領で指先に魔力をためてみ」

「えーっと…手のひら全体でいいですか?」

「OK」

「……はい、やりました」

 見ると、柚那の手は青白く光っている。

「じゃあ次は、手を伸ばして、その魔力でテーブルの上のコップを倒すように念じる」

「はい……」

 パンと大きな音がして棚の上においてあったチアキさんのフィギュアがはじけ飛んだ。ちなみにテーブルの上のコップは無事だ。

 わざとか!?わざとなのか柚那!?

「あれ?」

「あれじゃなくて……でもまあその要領だよ。いきなり後ろから全力で出すとすっ飛んでくから、とりあえず下に向けて垂れ流すようにしてみ」

「えーっと……」

 柚那が集中すると、ふわりと柚那のステッキと身体が宙に浮かんだ。

「これで、後ろから出す感じですよね?」

 そう言って柚那が少し身体を前に倒すと、ステッキは緩々と前進を始めた。

 最初はおっかなびっくりしていた柚那だったが、3分もしないうちにコツを掴んだらしく、部屋の中を自由に飛び回るようになった。

「正直、自信なくすわ……」

 俺が習った時は彩夏ちゃんの言う感覚的な方法だったせいでいきなりすっ飛んでいくわ、箒から落ちそうになるわ、空中で静止できないわで大変だったのに。

「これで、一緒に色んな所に行けますねっ」

 飛ぶのをやめて変身を解いた柚那はそう言って俺に抱きついてきた。

「ああ、そうだな」

 ……あと、3日。俺がやったことでアユが満足してくれれば、だけどな。


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