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魔法少女はじめました   作者: ながしー
第一章 朱莉編

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Arrogant Valentine 4

学校で拾ったみつきちゃんとあかりを連れて実家に戻ると、ちょっと首をかしげてしまうような事態になっていた。


「おかえり」


「おかえり~」


 この時間、下の二人の姪っ子は大体友だちと遊びに行っていて留守。

 おやじと義兄さんは仕事に行っていて、家にはおふくろと姉貴しかいないはずだ。

 にも関わらず家に入った時に聞こえた『おかえり』は姉貴と、おふくろ以外の誰かの二人分。

 まあ、二人分なんてもったいぶった言い方をするまでもなく俺はその声の主を知っているし、ハッキリ言ってしまえばその声の主は深谷さんなのだが、なぜあの人がうちにいるのかが理解できなかった。


「いやあ、実は紫さんと高校同じなんだよね、時期はかぶってないんだけど、紫さんって結構伝説残している人で私らの世代でも結構有名でさ。最近いろいろ話を聞かせてもらったりしているんだ」


 なんでいるの?と聞いた俺に深谷さんは理由になっているようないないような回答を返してきた。


「やめてよ夏樹。もうだいぶ昔の話なんだからさ」


 そういって笑う姉貴はまんざらでもなさそうな表情をしている。


 たしかに姉貴は高校時代はバレー部で春高とかもでてたし、義兄さんにちらっと聞いたところだと高校三年間で男女合わせて告白お断り100人斬りとかしたらしいし、名前が後世に残っててもおかしくはない。


「伝説ってどんなの?」


「一番有名なのはバレー部のエースで高校三年間でふった人数が100人以上だとか」


 みつきちゃんの質問に深谷さんが間髪入れずに答えると、みつきちゃんは「おおっ」と驚きの声を上げる


「すごいね!ふられまくってるあかりとは全然違う!」


 ああ、みつきちゃん。どうして君はそう迂闊なんだ……


「……みつき。宿題やろうか」


「え?なにいきなり。そもそも今日宿題なんて……」


「みつきには人付き合いという科目の宿題が山ほどあるのよ」


「な、なに?あかり怖い!なんで怒ってるの!?」


「それについてもこれからたっぷり話してあげる」


 妹が鬼になった瞬間だった。


「やだ、お兄ちゃん助け…わわわっ」


 最後まで助けを求めることもできずにみつきちゃんはあかりに手を引かれてリビングから退場した。


「さて…深谷さん」


「あ、みつきちゃんスルーするんだ」


「ああなった時のあかりには近づかないに限るからね。それで、バレンタイン企画なんだけどさ……」


「うんうん」


「却下」


「ええええつ!?なんでさ!みんなばっかりキャラソン出してずるい!」


「いや、キャラソン自体は別にいいんだよ。深谷さんは営業とかもこなしてるからご当地としはそこそこ知名度もあるし、埼玉では結構売れると思うんだ……」


「じゃあなんで?」


「一人なのになんでユニットなんだよ!しかもまたネギからめるし!そもそもおんなじ名前のアイドルが存在してたよ!」


 確か新潟のほうに。


「ネギのアピールしたいのにネギ絡めなかったら本末転倒でしょ!」


「前から聞きたかったんだけど、深谷さんってなんでそんなにネギネギしてるの?」


「私は昔ネギの神様にあったことがあるのよ。そして瀕死だった私はネギの神様に救われたの!朱莉ちゃんと同じ方法で!」


 ……この人がやたら人の尻にネギを挿したがるのはそのせいか。


「まあ、とにかく代案な。ユニット名はなしだけど、個人名でネギアピールができるようなオリジナルソングをつくるのはOK。営業で歌って踊るのもOK」


「じゃあ、却下なのはユニット名だけ?」


「そういうこと。深谷さんはいつも歌ったりしてるから、ボイトレもそんなにいらないっしょ?とりあえずこれが楽譜と歌詞カード。あとデモテープね。来月には録れるらしいから練習しておいてね」


「仕事はやっ!」


「まあ、実はキャラソンで味をしめた都さんが、そのうちご当地もやろうと計画してたらしくてね。一応作詞と作曲は依頼済みだったんだよ。それが早まっただけになっちゃって悪いけど、これでいいかな?」


「もちろん!ありがとうね、苦節29年……やっと私にも歌手デビューの時が!」


 あ、深谷さん29歳なんだ……そりゃ姉貴とは時期かぶらないはずだわ。つか、そんなに年下じゃないじゃん。


「とりあえず深谷さんはこれでよし。と。あとはあかりとみつきちゃんか……柚那、お願いしていい?」


「二人を仲直りさせてプレゼント渡せばいいんですね?」


「そう」


「任せておいてください」


 柚那はそう言って胸を叩いてから二人のプレゼントを持つと、腕まくりしてリビングを出ていった。


 ちょっと前は子供っぽくて、むしろ一緒に喧嘩しそうな危なっかしさがあってこういうこと頼めなかった柚那だけど、最近はちゃんと大人として振る舞ってくれるようになったので色々頼みことができるようになってありがたい。

 ……まあ、まだまだ危なっかしいところもあるにはあるけれど、それでもだいぶ成長したと思う


「あんた、なんか親みたいな顔してるよ」


 姉貴が笑いながら言う。


「まあ、元々親子って形で始まった関係だからね。最初に柚那から求められた役割が父親だったから、どうしてもそういう顔になっちゃうのかも」

「去年の今頃は柚那ちゃんに超嫌われてたのに、よくもまあ父親だの恋人だの婚約者だのまで関係が進んだもんだよね」

「そこは俺の魅力のなせる技ってことで……それはそうと、ちょうどいいから二人に話しておきたいことがある」

「珍しいね、あんたがそういう顔するの」

「これは真剣に聞かなきゃダメな話っぽいね」


 俺の表情を見た二人は頷きあうと視線で俺に話しの続きを促す。

 そこで俺はこの幸せ魔法少女計画の真の目的とアユのこと、それに万が一の時には深谷さんが異動になる可能性を伝えた。


「なるほどね、わかった。私が朱莉ちゃんの分まで頑張るよ」

「まあ、あんたはどうせ殺したって死なないだろうけど、今度は見舞いくらいはいってあげるよ」

「失敗する前提で話をするのやめてくれませんかね」

「え?成功すると思ってるの?」

「フィフティ・フィフティかな。いや、ロクヨン……シチサンで失敗かなあ……」


 半ば呆れ顔で聞いてくる姉貴の表情に押されて、なんとなく俺の自信が萎えてくる。


「自信なくなってるじゃん!」

「自信あったら善後策なんて用意しないですって。……あ、そうだ深谷さん温泉好きでしたよね。都さんが来月撮影抜きでご当地も含めた魔法少女で草津温泉行くっていってましたよ」

「草津……群馬か……」


 温泉好きの深谷さんは目的地が気に入らないのか、考えこむようにして腕を組んで俯いてしまった。


「どうしたんです?」

「群馬は、いやグンマー帝国は彩の国の敵じゃん?」

「いや、そんなことないでしょ。チバラギとか群馬内での高崎・前橋の内紛に比べたら友好関係なんじゃないですか?」

「いやいや敵だよ!だって……あそこには下仁田ネギがあるじゃない!」

「それはあんたにとっての敵であって、埼玉の敵じゃねえよ!」


 ていうかこの人は結局ネギかよ……。






 翌朝。結局うちに泊ったみつきちゃんとあかりを送り出した後、なぜか今日も朝からやってきたネギの人と姉貴に見送られて実家を出た俺と柚那は群馬県高崎市へとやってきた。

 ちなみに、今日ここで会う予定の群馬と栃木の魔法少女には俺も柚那もあったことがないので、ちょっとドキドキだ。

 駅前のパーキングに車を停めて待ち合わせの場所に向かうと、同じデザインの黒と白のコートを着て髪型を左右対称にしてある二人の女の子が立っていた。

 正直言って超目立っている。何が目立つって、左右対称の髪型をしていて同じデザインのコートを着ているという一見仲良しさんなのにもかかわらず、顔をそむけあって一言もしゃべらないでいるのだ。

 もしかして、これ昨日深谷さんが言ってた県同士の小競り合い系か?だとしたら一緒に呼び出したの間違いだったかな。


「えーっと……群馬の安中はるなちゃんと栃木の東宮光ちゃんでいいかな?」

「はい!私が安中はるなです!」

「はい!私が東宮光です!」


 二人は同時に言ってから顔を見合わせて睨み合い、「フン」と、言って顔をそむけた。


「な、仲いいね」

「やめてください、誰がこんな未開の地の子と」

「嫌ですね、こんな地味で何もないところの子と一緒にしないでください」


  仲いいなあ…………はあ、ダメだ。帰りたい。


「頑張ってください、朱莉さん」

「お、おう」


 俺は柚那に励まされて、気持ちを奮い立たせる。


「今日はバレンタイン企画で来たんだけどね」

「「はい!私のメイン回のことですね!」」


 そう。この二人バラバラにアンケートを取ったはずなのに、全く同じ希望を出してきたのだ。てっきり俺はすごい仲良しでアンケート結果もわざわざ合わせたんだろうと思っていたのだが……


「「はぁっ!?なんでおんなじこと書くのよこのストーカー女!」」


 ほんと、息ぴったりだなこの二人。

 しばらく放っておいて沈静化するのを待ってもいいんだけど、こっちも時間が有り余ってるわけじゃないからなあ。


「取り込み中にごめんね。はるなちゃん、この間電話でお願いしたことなんだけど」

「はい!頼まれていたお部屋ですね。大丈夫です、用意出来ています!」


 そう言ってはるなちゃんは光ちゃんを小馬鹿にしたような表情で見て舌を出す。

 その表情は私のほうが朱莉さん、ひいては中央に近いんだからねとでも誇示しているようにも見える。

 もちろんこっちとしてはそんなつもりはなく、ただ地元だからお願いしただけなんだけどね。


 はるなちゃんの案内で通されたのはホテルのスイート・ルームだった。

 正直貸し会議室くらいでよかったんだけど、ゆったりリラックスをして話をするにはいいかもしれない。


「じゃあ、改めて。邑田朱莉です」

「伊東柚那です」

「ご丁寧に。安中はるなです。よろしくお願いします」

「うん。よろしく。『あんなか』じゃなくて『やすなか』なんだね。この間電話するまでずっと『あんなか』だと思ってたよ」

「実は本名なんです。昔っから『あんなか』って言われて微妙な思いをすることが多かったので、できれば覚えていただけると嬉しいです」

「大丈夫。ちゃんと覚えたよ」

「私は東宮光。栃木のご当地魔法少女です。よろしくお願いします」

「光ちゃんも『ヒカリ』じゃないんだね『アキラ』ちゃん…珍しいね」

「わかりにくいとよく言われるのですが……」

「そんなことないよ。すごく覚えやすいし、いい名前だと思う。光ちゃんも本名?」

「光はそうですけど、東宮は東照宮からいただきました。栃木なので」


 グイグイ栃木押してくるな、この子。


「なるほどね。それで、二人の希望しているメイン回なんだけど……」

「「二人のって言わないでください!こんな気の合わない人と一緒にされたくないです!」」


 息ピッタリに身を乗り出して、お互いを指さしながらはるなちゃんと光ちゃんはそう言って抗議する。

 ……どう考えてもこの二人は気があうと思うんだけどなあ。


「まあ、仲が悪いところ本当に申し訳ないんだけど、尺がね、取れて1話なんだ。だから、二人で一緒にっていう形になっちゃうんだけどさ……それで大丈夫かな?」


 それがダメだったらメイン回の話はボツ。他の希望を聞きなおさなきゃいけないから正直ちょっと面倒臭い。


「「私がこの人をぶちのめす話ならいいです!」」

「そういう内容じゃないけど、シナリオがあるからとりあえず読んでみてよ」


 かばんから俺が取り出したのは、友人同士が些細な行き違いから喧嘩して仲直りするという、わりとよくあるストーリーのシナリオだ。

 ドラマパートに未出演の二人用のシナリオだったため、二人の性格が掴みづらく難産だったらしいので、脚本家さんのためにもこの一本で決めてほしいところなんだけど。


「……私は別にこれで構いませんよ」


 パラパラとシナリオを流し読みしたはるなちゃんがそう言って台本を机の上に置いた。


「ちょ、もう読んだの?」


 じっくりと読んでいたせいでまだ2、3ページしか進んでいなかった光ちゃんがそう言って先を急ぐ。


「どうせあんたのことだから、自分が良い役だったから……ん?あれ?これだと…」


 そう、実はこのシナリオ、勘違いして友情を壊すのははるなちゃんのほうで、どちらかと言うと視聴者から反感買うのははるなちゃんの役だ。だから渋るとしたらはるなちゃんだと思っていた。


「別に、シナリオはシナリオ。私は辺境だとか、海無し県だとか、地味だとかそういうイメージを払拭できて、群馬には私がいるんだってアピールできればいいだけだから。もともと光なんて眼中にないし」

「私だってはるなのことなんて全然眼中にないし!それに二人でメインだっていったって、私が演技であんたを食っちゃえばいいだけでしょ楽勝だし!」


 うーん…本当に仲が悪いのかと思いはじめていたけど、やっぱりはるなちゃんが主導権を握ってる感じだな。多分この二人の関係はこまちちゃんと寿ちゃんの関係と似てて、東北の二人と違うのは、光ちゃんのほうに全く自覚がないというところだろうか。

 こまちちゃんをもっと黒くしてツンデレにしたのがはるなちゃんで、寿ちゃんをもっと単純にした、いわばタンデレとも言うべきなのが光ちゃんって感じだ。


「じゃあ、光ちゃんもそれでOKかな?」

「もちろんです!これ撮影は…あ、4月ですか。撮影まで結構ありますね」

「ごめん、実はもう3月までの分はストーリーができちゃっててね。撮影も放映も……4月の奪還作戦の後になるんだ」


 奪還作戦と聞いて、二人の表情が少し引きしまる。


「とは言っても、最前線では教導隊の四人が頑張ってくれるし、俺達もいる。撮影も放映も必ずできるようにするから安心して大丈夫だよ」

「「…あの、私、4月の時にはお役にはたてないかもしれないですけど、それでもみなさんと一緒に撮影をしたいです!」」


 またハモった。仲いいなあ本当に。


「もちろん、俺も柚那もそのつもりだよ。な?」


 俺が話を振ると、柚那はニッコリと笑ってから口を開いた。


「シナリオだと、二人は一年生ってことになってるからクラスメイトだね。撮影の時はよろしくね」

「演技次第じゃ、準レギュラー化もあるらしいから頑張ってな」

「「ほんとですか!?」」

「仲いいね…」

「「よくありません!!」」


 いや、本当に仲いいな君たち。


 


 諸々のスケジュール詰めや、懇親会を兼ねた軽い食事(食事中も二人はずっと喧嘩してた)を終えて光ちゃんが帰った後、長野方面へ移動するために荷物を片付け始めた俺達をはるなちゃんが制止した。


「実は、長野と新潟の魔法少女を今日ここに呼んであるんです」

「え!?マジで?でも二人とも大変なんじゃない?」

「いや、むしろ、この時期に車で新潟や長野なんて行ったら、南関東出身で雪道に慣れてない朱莉さんじゃ事故起こしちゃうかもしれませんよ」


 言われてみれば、俺の車まだ夏用タイヤだった。


「朱莉さん……もしかして」

「うん。ごめん、長野も新潟も雪深いって忘れてたからスタットレスどころか、チェーンも積んでないや」

「でしょうね。私も一時期東京にいたので気持ちはよくわかります」

「でもこっちが喜ばせる側なのに遠いとこをを呼び出すっていうのもなあ」

「いえいえ、高崎なら長野も新潟も新幹線一本ですしそんなに大変じゃないんですよ。なので二人共快諾してくれました。……まあ、もし宇都宮じゃこうは行きませんけどね」


 ……訂正、もしかしたらはるなちゃんと光ちゃんは本当に仲が悪いのかもしれない。


「そういえば、はるなちゃんって来月の旅行の幹事もやってるよね」


 柚那が思い出したようにそう言うと、はるなちゃんは満面の笑みで胸を張る。


「はい、地元ということもあって、私がみなさんをおもてなしすることになっていて、地元の商工会とも打ち合わせ済みです。料金についても、草津のCMをするっていうことで、大分割り引いてもらっています。撮影抜きっていう話だったんで、本当はそれも無しでいきたかったんですけどね。でも司令にも褒められたので及第点かなと思ってます」


 ああ、はるなちゃんが有能すぎて秘書にほしい。

 そこについては柚那も同じだったのだろう。関心したように口を開く。


「はるなちゃんは働き者だね。どこかの朝陽に爪の垢でも煎じて飲ませてあげたいくらいだよ…」


 どこかもなにも、ハッキリ朝陽って言っちゃってるし。


「でもはるなちゃん、そんなに頑張って大丈夫?疲れない?」

「はい!はるなは大丈―」

「それ以上いけない!」

「え?何がですか?」

「いや、なんかそれ以上は言ってはいけない気がして」


 はるなちゃんは黒髪だけど髪型はサイドテールで、容姿はどこかの高速戦艦とは似ても似つかないんだけどね。


「ま、まあそれはともかく、はるなちゃんは長野の子と新潟の子に会ったことあるの?」

「はい。一応隣のシマ……じゃなくて、県ですし」


 シマとか言ったことは聞かなかったことにしよう。


「どんな子達なの?」

「新潟の深雪たんは狂華さん並みの幼女で、ちっちゃくてとてもかわいいです。なのでわたしはあえて深雪たんと読んでいます」


 いや、体型が幼児体型なだけで、狂華さんは別に幼女じゃねえよ?ねえよな?どうだったっけ?


「……性格というか、最大の特徴は、偉そうな口調ですね!あと、肌が雪のように白いです。色素が薄いんで、目も紅くて綺麗なんですよ」


 深雪たんの事を語るはるなちゃんには先程までの光ちゃんに対するツンケンした態度も、有能な秘書のようなオーラも感じることができない。ハッキリ言ってただの残念な女の子だ。


「深雪たんの事好きなんだね」

「大好きです!」


 即答だった。


「長野のほうは?」

「ああ……彼女はかなり独特ですよ」


 むしろはるなちゃんを含めて俺は独特じゃない魔法少女に会ったことがない。強いて言えば……やっぱり会ったことないな。


「何か……上手く言えないんですけど。ちょっと思い込みが激しいというか。話が噛み合ってる時は問題ないんですけど、一回ズレるととことんズレていく感じですね」

「なかなか難しそうだね」

「お気楽でしつこい深谷さんが交渉で音を上げるくらいには難しいです」

「あれ?深谷さんと知り合い?」

「顔を合わせる度にすごい絡まれるんですよ……私、別にそこまでネギにこだわりないのに。この間なんかネギをつかったチャンバラで勝負だ!とか言われて下仁田ネギ投げつけられましたし」


 卑怯すぎんだろ。あの人のネギってステッキじゃねえか。


「この先、キャベツ好きとかこんにゃくマニアな魔法少女が出てきたらその人達にも絡まれるんでしょうか」

「あと、小麦とかうどん関係もじゃない?」


 群馬って意外と名産とか名物多いんだよなあ。というか、こんにゃくマニアの魔法少女ってなんか嫌だな。ああ、でもなんか楓さんに特効持ってそう。


「うわあ…会ったことないですけど、香川の人とか絶対会いたくないです……」

「こだわりある人からすると、放っておけないことってあるからね。俺なんかうどんにうといから、駅の立ち食いそばで十分だと思っちゃうし、鍋に入れるネギも特に産地にはこだわらないから、深谷さんが熱くなるのがよくわからないんだよなあ」

「それはよくわからないとかそういう次元の話じゃないです!手配するんで帰る前に水沢うどんと下仁田ネギを使った上州牛のすき焼きうどんを食べていってください!」


 結局はるなちゃんも地元大好きなんじゃん……。

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