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魔法少女はじめました   作者: ながしー
第二章 朔夜編

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ex.JK夏の祭典 幕間 2 ももねとももねる



「あんたさあ、ちょっと顔がかわいいからって調子乗るのやめてくんない?」

「それなー、マジ目障り」

「つーか聞いてる?アタシ達の話」

「芋臭いの我慢してせっかく仲良くしてやってたのにアタシの好きなオトコ取るとかさぁ」


 そういって、元トモダチは地面に転がされていた私の前髪を握って引っ張り上げる。


「あんたみたいに顔だけで生きていけると思ってる奴見るとムカつくんだよね」






「――ということがあって、学校辞めて、昔お兄・・・兄ももが通ってた通信制の高校に転入したんだ。で、ちょっと暇な時間ができたしってことで配信をはじめたんだけどね」


 翠の家からの帰り、駅前まで送っていく途中の夜道でのある事件がきっかけでももねちゃんがしてくれた身の上話は想像の斜め上というか、かなり壮絶なものだった。

 幸いにも私はここまで凄惨ないじめにあったことはなかったし、周りにも被害者はいなかった。強いて言えば近い状況にあったのはこころだが、こころは徹底して自衛していたということもあってももねちゃんのようにはならなかった。


「まあ、今となってはむしろいじめてくれて、学校やめてさせてくれてありがとうって思ってる」


 私だったら友達4人に囲まれてももねちゃんみたいなことされたら数年引きこもりかねないので、こうして転校してさらに動画の投稿までしつつ魔法少女をやろうなんて思えるのは正直すごいなと思う。


「・・・ももねるに酷えことしやがって・・・マジそいつら殴りに行きてえ・・・」


 私達の後ろで話を黙って聞いていた、ももねちゃんが身の上話をするきっかけになった仁がそう言って拳を握る。


「あはは、怒ってくれるのは嬉しいけど、そういうのはダメだよ、仁くん」


 そう言ってももねちゃんは昼間の訓練の時とも、翠の家で顔を赤くして慌てていたのとも、たまたま通りかかった仁がももねるのファンを名乗って『ファンです!』と言って握手を求めた時の、青ざめて私を見た時の表情とも違う、ももねるの顔で仁をたしなめた。


「くっ・・・ももねるに言われたら俺もこの拳をひっこめざるをえない」


 無念そうにそう言ってから拳を解く仁。

 うわ、なにこれ恥ずかしっ。なにが「拳をひっこめざるをえない」だよ。サムいよ。中学生かよ。

ああもうなんか一周回ってサムいのが面白い気がするから動画撮っといてナギサ先輩とか緒方先輩に見せたかった。


「さっきはひどいこと言ってごめんね。仁くんが蜂子ちゃんの彼氏とかじゃないなら、ファンでいてくれるのは嬉しいなって思うよ」

「はいっ!大丈夫です!」


 私に声をかけてきた仁がももねちゃんに気づき、『ファンです!握手してください』と言った次の瞬間、仁を拒否して私に対して必死に弁解してきたももねちゃんの顔は真っ青で、とても『いじめてくれてありがとう』などと思っている人の顔には見えなかったけれど、多分それは私の指摘することじゃないだろうし、ももねちゃんの中ではそういう風に言うことで折り合いをつけている話なんだと思う。

 まあ、そんな勘違いしたももねちゃんに私と仁はただの腐れ縁の友人だということを説明してから何を焦っていたのか聞いたところももねちゃんがポツポツと語ってくれたのが前述のいじめの話だった。

 彼女の話を簡単にまとめると、仲良しグループのリーダー格の好きだった男子がももねちゃんに告白してきた。そしてそれが原因でももねちゃんはグループ内でいじめを受けて転校し今に至ると、そういう話だったのだけど、そのいじめの内容が詩子の比ではなく、ももねちゃんの話の中での桃花さんの印象も、朱莉さんや愛純さんから聞いていたのとは随分違う、端的に言えば『桃花さん超かっこいい!!』って感じの話だった。


「でもなあ、やっぱり悔しいなあ。俺がその場に居たら絶対ももねるのこと守ったのになあ」

「いや、そんなこと言ってあんたは絶対あっさり負けるでしょ」


 仁はこう、周りの大切な人に対する気持ちがあるのはわかるんだけど、勇んで出ていく割にはあっさりやられて捕まって左右澤先輩やナギサ先輩、それに緒方先輩なんかが出ていく羽目になるのがお約束のパターンだったわけだし。


「ちょ、東條!!・・・確かに俺は弱いけどさぁ、もうちょっとこうさ、友達だろ俺たち」

「そうだったかしら?」

「フフ、ありがとね、仁くん。そういう風に言ってもらえるだけで、ももねるはうれしいよ」


 そう言った後、ももねるは私たちに向かって一度ペコリと頭を下げた。


「ふたりともありがとうね。ここまでくれば大丈夫だから」


 言われて気がついたけど、いつのまにか私達は駅前まで来ていた。


「ホテルも見えてるし、ここからはもう一人で行けるから」

「・・・・・・」


 んー・・・まあ、一応友達だしな。うん。


「じゃああとはよろしくね、仁」

「え?」

「え!?何が?なんか頼まれてたっけ?」


 なんでこいつこんなに察しが悪いんだ!?朔夜といい勝負だぞ!?


「こう見えてこいつ黒服見習いなんで、こき使って大丈夫だから。ももねちゃん確か荷物まだコインロッカーなんでしょ?ホテルまで荷物持ちに使ってやって」

「え、でもそんな、悪いよ」

「ぜ、全然悪くないっす!お荷物お持ちするっす!」


 誰だよお前。ガチガチ過ぎて口調まで変わってるじゃないの。


(ももねるをももねちゃんにできるかどうかはあんた次第だからね、頑張れ!)

(え?どういうこと?)

(良いからさっさと行く!失礼なことしたり言わないようにね)


 ほんと察しが悪いなこいつは。マジで朔夜レベルだぞ!?


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