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魔法少女はじめました   作者: ながしー
第二章 朔夜編

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JK1+αの新年会

今回、この話を更新していく形で進めます。




 今日はJK1の新年会と、あとは今年の三月に新一年生として入ってくるJC組との親睦会も兼ねた会…具体的な参加者はJC組がタマと高山、それに高橋と井上妹(従姉妹だが便宜上こう呼ぶ)で、JK1が俺と真白、みつきにあかりだ。

 最初はJK1だけじゃなくて月組も先輩達もJC組も全員で集まってという話だったが、月組が報告会、JK2は毎度おなじみディストラリーランドのタダ券が今週までとかでそっちに行くと言い出し、うちも茉莉花と来宮がミーナの経過観察の付添で本部行きだったりしたのでいわゆる初期メンとフォロワーのみの出席となった。

 そんな感じでメンバーは少なめだけど、良くも悪くも付き合いの長くなったメンツなので、和気あいあいとした楽しい会になるだろう。俺はそう思っていたのだけど――





 今回の食べ物・飲み物担当はタマとみつきで、二人が作ってくれた料理は話しながらつまみやすいのももちろんだが、何より味がいい。 まあ、こと料理に関してはみつきは俺達の中で抜きん出ているし、次に美味いのがタマの料理なので、ここに関しては鉄板だと思っていた。

 


「この料理、多摩境が作ったんだろ?さすがだな」

「だよね!惚れた?惚れたよね!?」

「うんうん、惚れちゃうよな。その気持ちわかるぞ高橋」

「え?いや…その…それは」

「ちょっと、亜紀も高山もやめなよ、高橋困ってる」


 もちろん高橋だって、井上妹だって高山だってそのことは知っているわけで、だからこそこんなあからさまなタマアピールを井上妹と高山がしかけるのはおかしい。

 煮え切らない高橋のせいでタマがクリスマスにやさぐれていたのも見てきたし、俺達としてもタマの恋は応援してやりたいとはおもっていたし、多分井上妹と高山も同じようなことを考えての行動なんだろうけどいくらなんでもわざとらしすぎる。


「ねえ和希、なんか聞いてる?」


 隣に座っていた真白も違和感を覚えたらしくコソッと耳打ちをしてきた。


「いや、俺は聞いてない。みつきは?」

「んー、私も聞いてないかな。さっき料理してるときもタマは普通だったし、亜紀と高山くんだけがなんか焦ってる感じに見えるよね。あかりは――あ、ダメだね。うん。ダメだ」


 あかりはさっき高山が言った「(タマに)惚れちゃうよな」が引っかかったらしく、さっきまで座っていたところにはすでにおらず、丁度高山の首根っこを捕まえて部屋を出ていくところだった。


「あ、ダメね」

「ダメだな」


 あかりの気持ちもわからないでもないけれど、そういうことばかりしてるとそのうち愛想を尽かされるような気がするんだけどな。

 まあ、高山がああやって連れて行かれてしまった以上、井上妹に聞くしかないんだけど……


「タマぁ、ほらあーんして」

「……なに?今日の亜紀はなにかおかしい気がする」

「そんなことないって。ほらあーん」


 お前は高橋とタマをくっつけたいのか、自分がタマとくっつきたいのかどっちなんだ?

 完全においてきぼりにされている高橋が居心地悪そうにしているじゃないか。

 って、あ、そうか。とりあえず高橋から話を聞けばいいのか。井上妹と高山がやっていることとはいえ、高橋にだってなにか心当たりがあるかもしれないわけだし。

 よし、ここはタマが井上妹といちゃついているうちにと


(高橋。たーかーはーしー)

(なんです?)

(ちょっと話があるから廊下来て廊下)

(あ、はい)


「単刀直入に聞くんだけど、タマとお前、もしくは井上妹か高山との間になにかあったのか?」


 廊下にでてすぐにそう尋ねると、高橋はうーんと言いながら首を傾げる。


「実は自分もそれがわからないんです。去年の末くらいから井上と高山が自分と多摩境をくっつけようくっつけようとしてくるんですけど、特にその前後になにかあったとかそういうことはないんですよね」

「じゃあやっぱり高山か井上妹から直接聞くしかないか」

「一応聞いてみてはいるんですけど教えてくれなくて。自分も多摩境もちょっと困惑しているんです」

「じゃあタマも二人の異常には気づいてはいるわけか」

「はい。でもやっぱり心当たりはないらしいです。最初は高山が邑田先輩と別れて井上と付き合い出したとかなのかなという話もしていたんですけど、そういうわけでもないみたいですし」


 まあそんなことになってたら今日の会なんて開催すらできずに俺たちを巻き込んでギスギスしまくっていただろうしな。


「じゃあやっぱり高山に聞いてみるか。俺はあかりと高山を探して話を聞いてから戻るから先に戻っててくれ」

「え、死ぬ気ですか?」

「うーん、まあさすがに死にはしないだろう…多分…きっと」


 二人の時間を邪魔したっていうことであかりはめちゃくちゃ怒りそうな気がするが、一応俺には魔力無効化の魔法もあるわけだし、最悪でも死にはしないはずだ。

 え?魔力無効がなかったら?そんなこと考えたくもない。


「えっと…自分も一緒に行きましょうか?」

「タマまで不機嫌になられても困るから一人でいいって。ところで高橋、お前タマのこと好きってことでいいんだよな?」

「ええと…はい」

「じゃあもう付き合っちゃえよっていうのはナシなのか?タマの気持ちもわかってるんだろ?」

「……今のタイミングだと誰かのおかげで付き合えたみたいで悔しいじゃないですか」

「ちょっと前のタマと全く同じ事言うのやめろ、この負けず嫌い共め」


 ふたりともそんなんじゃ絶対に先に進まんだろうが。


「まあいいや。お前はとりあえず先に戻ってろ」

「うっす」





 高橋を戻らせた後、あかりと高山を探しに動き始めた俺は廊下を曲がった先ですぐに二人を見つけた。


「それで?一体なにがあったんだ?」

「井上が少し前に職員室で聞いた話なんですけど、実は多摩境は中学を出たら引っ越してお父さんと一緒に暮らすらしいんです」

「……は?なんだそれ、俺聞いてないけど?」

「俺も直接聞いたわけじゃないし、あかりちゃんも聞いてなかったらしいんで、今確認してもらったら退寮届けが出ているそうで」

「そうなのか、あかり」

「時計坂さんに聞いたから間違いないと思う、お父さんと暮らすんだって」


おいおい、タマのやつ冷てえな。出ていくなら出ていくでちゃんと言ってくれればいいのに……って、時計坂さん情報か…うーん…


「…ああ、そうか。それで高山と井上妹が変だったのか。二人をくっつけるにはもう時間がない的な」

「そうなんです。この一年ちょっと明らかに好き同士なのにずっともどかしい感じだった二人がこのまま別れるなんてなんかこう、やりきれないじゃないっすか」

「確かに」


 どうせ引っ越していなくなってしまうならいい思い出を作ってからにしてもらいたい。


「そういうことなら俺も協力するよ。真白とみつきも多分賛成してくれるだろうし」

「うんうん、全員で協力すればきっと今日中に付き合う気にさせることができるよね」

「はい!みんなでがんばりましょう!」



 なんて、みんなで頑張ればなんとかなるなんていうのは甘い考えだったということを俺たちはすぐに思い知ることになった。

 戻ってすぐにあかりのテレパシーで真白とみつきに協力を要請したところ、真白はタマ自身のことだから余計なことはしたくない、みつきもとりあえず協力しないという返事が返ってきた。

 つまり、この場でやる気なのは俺とあかり、高山、井上妹だけということになった。

 その上当事者二人、つまりタマと高橋はこちらの動きを警戒しているという状況。正直言って勝率は高いとは言えない状況だ。


 とはいえ、俺達にはタマと高橋に有無を言わせず言うことを聞かせることできるカードがある。

 以前の林間学校でも実績のあるその名は――


「王様ゲームやろうぜ!」

「却下」

「嫌です」

「えええっ!?やろうよふたりとも」

「そうだよタマ、やろうよ」

「前にひどい目にあったから嫌だ」

「自分も多摩境と同じく嫌な思い出があるので」

「ということで他のゲームで」



 うん。万策尽きた。



「え、和希諦めちゃうの?」

「いや、二人が嫌なら無理だろ、というか真白はタマに任せるみたいなスタンスなんだろ?」

「それはそれとして王様ゲームはやってみたいのよ」

「え、やりたいの?」

「やりたい」


 よし真白がこっち側についてくれるなら多数決をすれば勝てるな。


「まあ待て、じゃあここは多数決で決めようぜ!」

「ちょっと待って。それだと絶対に王様ゲームになる」

「日本は民主主義だから仕方ないな」

「そうだよ、民主主義なんだから!」

「亜紀と高山はちょっと黙っててくれないかな」

「いや、待て多摩境。むしろこれは受けたほうがいい勝負かもしれない」

「高橋、もしかしてさっき和希先輩になにか言われた…?」


 タマは高橋を責めるようなことを言いながら怖い顔でこっち睨むのやめてもらえませんかね。


「違う、違うからな。この勝負で俺と多摩境が勝てば今日は王様ゲームの類をしないって命令もできるだろう?」

「ああそうか、好きだの嫌いだのっていう面倒くさい話を禁止にすることもできるわけだ」


 それを禁止されてしまうとマジでなにもできなくなってしまうのでやめてほしいんだけど。


「ふはははっ、果たしてタマと高橋にそれができるかな!?」

「井上の言う通りだぞ、こっちが何人いると思ってるんだ?」


 おいやめろ。どう聞いても負けフラグだろそれ。




 高山と井上妹の負けフラグのせいであっさりと決着がつくかと思われた、戦技研版王様ゲーム「魔法少女ゲーム」は3回めまでタマ、高橋のどちらも役職『都さん』を引くことなく進んでいて、今回の俺の役職は『愛純さん』

 今回のゲームに入っている役職は『都さん』を除けば、『朔夜先輩』『正宗』『愛純さん』『あかり』『みつき』『華絵先輩』『エリス先輩』だ。

 誰が『都さん』を手にしているのかはわからないが、あまり札の中には『朔夜先輩』『正宗』との間で性的な命令がしやすい『那奈先輩』『蜂子先輩』があることを考えるとあまりいい状況ではない


「「「「「「「都さんだーれだ!」」」」」」」


「私ね」


 そう言って立ち上がったのは真白。

 俺の『愛純さん』ははっきり言ってしまえば安全枠。せいぜい絡むとしても『朔夜先輩』あたりだろう。

 これが正宗だったりしたら――


「正宗と朔夜先輩はキス」


 まあ真白ならそう言うわな。


「ちょ」

「え!?」

「あの、甲斐田先輩、このゲームって組み合わせでできない命令はできないってルールなんですけど…」


 真白の命令に反応したのは順に高山、高橋、井上妹だ。


「あら亜紀、じゃああなたは正宗と朔夜先輩がキスをしたことがないって言い切れるのかしら?言い切れないわよね?なんて言ったって正宗は前に和希の部屋に夜這いに来たことがあるんだから、そういうことが起こりうる素養は十分なんだから!」


 おい、真白はなんで今ここで俺を巻き込んだんだよ。


「そんなことが…それならもしかして……」


 いやいやいや、井上妹もなんで押し切られそうになってるんだよ。そこは押し返せよ。


「確かにその二人ならないとは言い切れない」

「そうね、朔夜くんなら『や…やめろ…』とか言いながら結局唇を許しちゃうくらいのことありえる」

「多摩境!?」

「あかりちゃん!?」

「う…ううーん、まあ私がするわけじゃないし、先輩達もタマもそう言うなら…」


 体育会系の井上妹の悪いところが出てる!!たまには先輩たちに逆らったっていいんだぞ!?


「じゃああかりちゃんのを採用して、嫌がる『朔夜先輩』に『正宗』がキスをする……まあ、実際にするのはアレだから直前まででいいわよ」


 なんで偉そうなんだよ真白は。


「で、結局どっちが『朔夜先輩』でどっちが『正宗』なの?」

「俺が『朔夜先輩』で」

「自分が『正宗先輩』です…」

「よき」

「ばっちりね」

「悪くない」

「じゃあ早速やってみようか、ね?二人共」


 『どっちなの?』『よき』じゃねえよ、いつのまにかみつきもノリノリなのやめろ。




 ノンケの男二人によるキス寸止め選手権を強制的に堪能させられた俺たちは、次のゲームへと移った。

 ………若干、井上妹の顔が紅潮してない?なんかハアハアしてない?大丈夫?


 今回の俺の役職は『俺』みんなに馴染みのある人の名前しか書いてないので仕方ないが、なんか面白くない。

 

「あ、私『都さん』だー!」


 そう言ってみんなのコールを待たずに手を挙げたのはみつき。


「『和希』」

「うん?なんだ?」

「なるほど、和希は『和希』じゃない、と」


唐突に俺の名前を読んだ後、みつきは小さい声でそんなことをブツブツと…ってあっぶね、今のってカマかけだったのか。普通に返事しちゃったけどそれが逆によかったっぽい。


「……賭けてみるか」


 そう言って真剣な表情で一つうなづくとみつきはグッと拳を突き上げる。


「『狂華』が『都さん』にハグ!!」

「って、みつき。お前、相手が高橋とか高山だったらどうするんだよ」

「それはそれで!私だって男子に興味がないわけじゃないからね!」


 みつきの発言を聞いたあかりとタマがすごい顔してるんだけど、死ぬ気かみつき。

 というか、そう命令だと高橋とタマをくっつける感じにならないんだけど…って、ああそうか。みつきは別に二人をくっつける派じゃなかったんだった。


「まあ私なんだけどね」

「なんだ、あかりかー……ちょ、え、あかりちょっと力入れすぎ…痛い、痛いって!」

「男子っぽい力強い抱擁がご希望なんでしょう?」


 そう言ってその場で変身するあかり。


「おうっ!?ちょ、あかり、ほんとやめ…やめろって言ってるでしょ!?」


 当然そうなればみつきも変身して対抗する。


「和希、暴れられると面倒だから二人共強制変身解除で」

「はいよー」



 魔法で二人の魔力を強制的にゼロにして変身解除をさせた後、次のゲームへ。

 そんな感じで何度かのゲームを繰り返し、今回の俺の役職は『タマ』だ。

 そして『都さん』は―


「あ、私が『都さん』だ」


 タマだった。

 つまりこれでゲームオーバー。魔法少女ゲームでタマと高橋をくっつけよう大作戦は失敗ということになる。


「じゃあ、『亜紀』と『高山』、年末からの怪しい動きについて説明してもらえる?」


 タマは井上妹と高山がその役職を持っていることを確信しているかのような強い口調で二人を見据えながら続ける。


「ふざけ半分なんだったら、本気で怒るけど」

「ふざけ半分なんかじゃないよ!私達、タマが転校しちゃうって知ってたから、だからタマに心残りがないようにしようって、そう思って」

「いや、私転校しないけど」

「転校じゃないかもしれないけど、高校は別の所行くんでしょ!?」

「亜紀、ちょっと落ち着いて、意味がわからない」

「タマ、とぼけなくていいんだよ。私もさっき確認して、タマが3月で寮を出るってこと知ってるんだから」


 井上妹に続いてあかりがそう言うと、タマは納得したような表情でポンと手を打って頷いた。


「ああ、そういうことか。私、寮は出るけど転校はしないよ。パ……お父さんがこっちで一緒に住もうって言い出したからそうなるってだけで、学校は予定通り先輩たちと同じ高校に行くし、あと3年はみんなと一緒にいるつもり」

「……井上?」

「いや、ちょっと待って、間違いなく聞いたんだってば!ねえタマ、先生が言ってたでしょ?『多摩境は中学を出たら引っ越してお父さんと一緒に暮らすんだよな、よかったな』って」

「それのどこに私が転校するという情報が?」

「え?」その時、私は先生とどこに引っ越すのかって話もしたし、そもそもその時亜紀は私の隣りにいたよね?」

「居たけど……え?引っ越し先の話した?」

「した。華絵先輩とエリス先輩と同じマンション」

「あ!…えーっと、聞いた気が…しないでも…ない…ような…」

「………井上」

「お前なぁ…」

「…ゴメン。先輩たちもすみませんでした」

「ま、まあ私は最初からどうせそんなことだろうと思ってたけどね!」

「あかり、流石にそれはかっこ悪いよ?」

「う…」

「時計坂さんはあかりちゃんの話を聞いて悪ノリしたんでしょうね」

「多分な」

「多分なっていうか、和希は気づいてたんじゃないの?」

「まあ、あかりの話を聞いた時計坂さんが何か悪巧みしてるだろうなってのは思ってた」


 あの人物事を面白いほうに転がすの大好きだし、退寮届けは鷽じゃなかったとしてもそれ以外のところで嘘をついている可能性はあると思っていた。


「気づいてたんなら和希のほうが私より悪質じゃん!?」

「いや、亜紀からしたらあかりのほうが悪質だからね」

「そうね、タマが怒るならわかるけどあかりちゃんは違うわね」

「二人共ひどい!」


 いや、酷くはないよ。

 さっきのあかりのほうがよっぽどひでえよ。

 真白の言う通りタマに責められるってんならわからないでもないけど、あかりから追求されるようなことじゃない。


「安心しているところ悪いけど、和希先輩には後でお話があります」


 ひぃっ。




 あかり達が帰った後、タマの部屋で行われたお説教会には、何故か真白とみつきも参加して一時間にわたって俺に対する苦情が述べられた。


「―ということで、今回は亜紀が元凶だったけど、和希先輩も気をつけるように」

「そうだよ、あかりとおんなじくらいアレなんだからね」

「はい、なんかすみませんでした」

「というか、そもそも私が亜紀や先輩たちに何も言わずに居なくなるわけがない」

「デレタマだ」

「デレタマね」

「デレタマだな」

「…やっぱりパパに言ってここから居なくなろうか」

「冗談だってばー」

「つーか、タマってパパっていうんだな、小金沢さんのこと」

「……」


 お、恥ずかしそうに顔を真っ赤にしちゃって。タマもそういう顔してると年下の女の子って感じでかわいいじゃないか。


「和希はそういうところだよほんと」

「そうね。和希、今の追い打ちはだめよ」


 みつきは朱莉さんに駄目だしするみたいに『そういうところ』の一言で済ますのやめて欲しいんだけども。


「タマ虐するならそういうところ本当に気をつけてやらないとね」

「そうそう、追い打ちしていいときとしちゃダメな時があるの。そういうところを考えてやらないと」

「いや、最初からしないでそんなこと」


 失言から立ち直ったタマが二人をジト目で見ながら抗議の声を上げるが二人共『はいはい』って感じの顔でまともに聞いている感じはしない。


「まあ、でも今回は私の話だったけど、先輩たちのほうが先に卒業していくわけで」

「ああ、確かにね。私達でも2年ちょっと、蜂子先輩達はもう来年には卒業だもんね。私は一応…まあ、なんとか、頑張ってこう…どっかの大学行きたいなとは思ってるけど二人は?」

「私は地元の大学かしらね。女将修行も始めないといけないし多分実家に戻ると思う」

「あー、真白はそうだよね。和希は?」

「俺は……真白と同じ大学に行くつもりだ」

「え、じゃあ私もそこ行こうかな」

「茉莉花も来るって言い出すのが容易に想像できるわね…」


 そう言って眉間をおさえてため息をつく真白。


「というか、長野が魔法少女密集地域になるな」

「うちのチームがほとんどそのまま異動する感じだものね」

「いいじゃん、それならそれで蜂子先輩達みたいに普段は街のパトロールとかしてさ、それで和希の部屋にみんなで入り浸ってただれたせいかつ?を送ろうよ」

「今と同じただれない生活にしかならないわよ」


 それはそれで俺がかわいそうだとは思わないだろうか。

 みつきと茉莉花が入り浸るかどうかはともかく俺は真白とは今よりはもうちょっとただれた生活を送りたいっていう願望があるんだけど。


「でも茉莉花先輩はともかく、みつき先輩と和希先輩はそもそも真白先輩と同じところに入れるの?」

「入れなかったら和希と一緒に予備校生活するもん」

「いや、二人で入れないって可能性で話をふくらませるより入れるように頑張ろうな」

「本気でやるなら私も茉莉花も、あと多分あかりちゃんと来宮さんもちゃんと教えるから」

「ん?あれ?むしろ私としては和希と二人の予備校ライフのほうが得…?」

「それだと、二人がただれた予備校ライフを過ごした結果、3年ちょっと後には二人より私のほうが上級生になってそうだけど」


 そんなことねえよって反論できないのが辛い。

 俺とみつきだけだったら予備校サボったり真面目に聞かない気がするし。


「そしたら大学行かずに戦技研に就職するからいいや」

「前向きなんだか後ろ向きなんだか」

「というか、みつきはそれでいいかもしれんが俺は経営の勉強したいんだよ」

「え、先輩それって」

「ああ。将来、真白の力になりたいからな」

「うわデレた」

「デレ和希だ」

「デレ和希ね」

「それはもういいっちゅうねん!」

「まあ、そうやって勉強して身につけた知識は、甲斐田屋さんのためじゃなくて私との将来に役立ててもらうけどね」


 そう言ってフフンと鼻を鳴らしドヤ顔をするみつき。


「あのね、みつき先輩」

「ん?」

「今まで言ったことなかったと思うけど、実は私、みつき先輩のそういう負けヒロインムーブ結構好き」

「私も結構好きよそのムーブ」

「負けヒロインムーブって言うな!!」





終わりでーす。

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