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魔法少女はじめました   作者: ながしー
第二章 朔夜編

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545/809

ex.真夏の夜の夢 1 

ももねと彩葉のキャラがいまいち固まらないので詩子編は一回引っ込めます。




 暑い。

 地元の夏も暑かったけれど、ここはさらに暑い。

 気温もそうだけど――


「ん?なんスか正宗センパイ。あ、おっぱいならあててるんで気にしなくていいんスよ?」


 ――雅弓がずっとくっついてるせいで本当に暑い。


「・・・・・・」


 あと、ちょっと離れているところでこっちを睨んでいる那奈の顔がめっちゃ怖い。


 本当だったら今頃艦に向かっているはずの俺達が雅弓の地元、京都に来ているのには理由がある。

 その理由が今、那奈の隣に立ってこっちを見ながらニヤニヤしているおっさん。というか俺の親父だ。

 始まりは昨日。那奈と俺が、一個下の学年にいる艦の連中を連れて種子島宇宙センターへ行き、艦から来ていた迎えの船に乗ってさあ出発だと思った矢先、俺の親父が船から降りてきて日本を案内しろと言い出した。

 俺が艦に戻る理由自体が親父と会うことだったので、こうして降りてこられてしまえば戻る理由もないということで、雅弓に頼んでいた件もあったし、京都なら日本らしいところも見られるだろうと、俺と那奈、そして親父は京都へやってきたというわけだ。

 本当は今回雅弓との約束については一旦保留にしてもらって頼み事のほうだけ叶えてもらうつもりだったんだけど『そうは問屋が卸さないっス』ということで、こうして雅弓に連れ回されているというわけだ。

 朝一から始まったこのデートはまず雅弓の友達に紹介され、その後雅弓的に鉄板らしい京都観光コースを四人で回り、ついさっき昼食を食べ終わって今に至るという感じだ。

 ちなみに四人で回っているのは、今日は親父の護衛に回せるような魔法少女がこのあたりにいないので親父の警護をしなければならないという事情があるからだと思う。

 というか、実質那奈と雅弓の二人しか護衛がいないんだけど大丈夫なんだろうか。

 俺も親父も反撃できないというわけではないので、万が一はないだろうけど、反撃してしまえば後々面倒なことになる可能性は高い。


「もー、さっきからなんでそんなむすっとしてるんスか?こう見えて私那奈センパイより胸あるっスよ?」

「大きさじゃないだろ、胸は」


 いや、大きさも大事だとは思うし、大きいならそれにこしたことはないけれど。だからといって大きければ良いかと言えばそんなことはない。

 俺は那奈のおっぱ――じゃない。那奈が好きなのだ。


「・・・ま、そういうことにしておいてあげるっス。で?何か気になることでもあるっスか?」

「いや、護衛が那奈と雅弓だけってちょっと不安かなって思って。あのほらお前らのところの大路さんとか来てくれないかなって」

「うえぇ・・・保護者付きのデートとか私としてはマジ勘弁って感じなんスけど・・・まあ、センパイって私とのデートに彼女とお父さん連れてきちゃう人っスもんね」


 いや、そもそもこのデートに関しては那奈の監視という条件がついていたはずだし、親父に関しては俺が喜び勇んで連れてきたわけじゃない。というか不可抗力だ。


「ちなみに姫センセーはなんか来週から埼玉のほう行くとかって聞きましたよ。なので、KJKの担当からは外れるみたいっス。今日も休暇取ってましたし」

「それってまさかとはおもうけど、うちの担任と付き合うため・・・とかなのか?」

「それもあるみたいっスけど、今の研修生を使って埼玉にもう1チームつくるとかって話あったじゃないですか。なんかKJK立ち上げの実績を買われてとかなんとか」

「なんとかって、ちゃんと話聞かなかったのか?」

「うーん、私って、去る者追わずなんスよね。だから遠くに行っちゃう人にはあんまり興味がないっていうか」

「なんか意外とドライだな、雅弓って」

「そんなことないっスよ。二学期の終わりあたり・・・具体的にはクリスマス頃っスかね、に姫センセーがフラれて戻ってきたらちゃんと今まで通り仲良くするっスよ」


 いや、そこは幸せを祈ってあげような。


「でもそうなると本当に護衛が不安だよな」

「いや、普通にご当地の人達が見てくれてるっスよ。ええと・・・ほら、あの人見覚えないっスか?あのカップルの女の人のほう」

「むしろ男の方に見覚えがあるんだが」


 なんで猫センパイが護衛の魔法少女と一緒に歩いているんだよ!

 護衛対象増やしちゃだめだろ!!俺と親父に割くリソースが減るだろ!?


「と、まあ、あんな感じで通行人に紛れ込んでくれてるっスよ」

「状況は理解した。理解したけどやっぱり猫センパイの行動は理解出来ない」

「あー・・・何回か会っただけっスけど、私もあの人よくわからないっス」


 だよな。

 結構長い付き合いの俺・・・というか、それ以上に長い付き合いの斗真さんですら『意味がわからん』と言って匙を投げるくらいの人だからな、あの人。


「それはそうと、センパイのお父さんって一人なんスか?よく知らないんスけど、艦の人達って無性生殖とかなんスか?」

「いや、親父のほかにパパがいるんだけどな」

「・・・・・・」

「え、なにその顔」

「パパっていうの、あんまりセンパイの柄じゃない感じがして」

「まあ柄じゃないってのは認めるけど本人がそう呼べってうるさいからさ」

「で、そのパパさんは来てないんスか?」

「来るはずだったらしいんだけど、何か地球から取り寄せた変な本読んで、怖いから行かないって言い出したらしいぞ」

「確かに今はちょっと艦の人とか月の人にとっては物騒かもしれないっスけど諸外国に比べたらまだまだ平和なんスけどね、この国」


 雅弓はそう言ってやれやれと嘆息した。

 他の国に比べてというのもあるけど、今この国で例の組織に狙われる対象は基地詰め(詰めてないセンパイもいるが)のメンバーと俺と親父しかいないので、俺達のところだけ固めていれば普段よりも安全と言える状態と言えるわけだしな。


「ちなみに、コスモと華音もあんな感じで護衛してくれてるのか?」

「あー・・・あの二人は荒療治で仲直りさせることにしたんスよ。だから今この街にはいないっス」

「荒療治って?」

「あのホラ、あれっスよ、セックスしないと出られない部屋的な・・・・・・どしたんスか?変な顔して」

「いや、おま――ええー、言うかそれ・・・」


 言っちゃうか。年ごろの女子がサラッと言っちゃうのかそういうこと。


「・・・あ、セックスっスか?」

「言うなって」

「フヒヒヒ・・・ってか、センパイまだDOの者なんスね。この二週間くらいなにしてたんスか?」

「色々忙しかったんだよ。本当は那奈と二人で艦に行くはずだったからその研修とかあったし。それよりも、コスモと華音の件だよ。そういうことしたからって仲良くなるわけじゃないだろ。むしろ無理矢理そんなことさせられたら変にギクシャクするんじゃないか?」

「大丈夫っスよ、私達の年代なんて大体下半身で物事考えてるんスから、一発ヤってすっきりすれば万事解決っス。ほら、ヤったあとってすっきりして頭が良くなるじゃないですか。そうなれば普段は素直じゃないあの二人も自分の本当の気持ちに気づくってもんスよ」


 ・・・・・・・・・こいつは何を言っているんだ?

 俺がコスモだったら冷静になって『やっちまったー』って落ち込むだろうし、そんなコスモの反応を見れば華音がどんな反応を示すのかなんて大体想像が付く。

 変なツンデレの部分以外は那奈に似ている華音の事だ、コスモが落ち込んでるのを見て『私はやっぱり魅力ないんや・・・』とかって二人揃ってずっとしょげているに違いない。


「あ、もしかしてセンパイ知らないんスか?賢者タイムってのがあるんスよ」

「・・・・・・・・・」


 それはそういう意味じゃねえよ。


 ・・・あ、さてはこいつ、自分が経験者であるかのような口調や態度で散々俺のコトをDOだの帝だの馬鹿にしたりしてたけど、さては耳年増なだけで経験はないな?

 でもまあ、そりゃそうか。初めて会った日に雅弓が自分で言っていたようにいいところのお嬢さんなら、男をとっかえひっかえ・・・どころか、こうしてデートをするのだって家の人とかに邪魔されそうだし。

 そう考えると、見張りの魔法少女に混じって雅弓の家の人もいるのかもしれない。


「あー、やっぱりセンパイは知らないんスね?これだからDOの者は」

「はいはい」


 まあ、ここで追求しても仕方ないことだし今日の所は雅弓の経験については追求しないことにしよう。

 だけど――


「ちょ、なんスか、センパイ、なんでそんな力一杯撫でるんで――やめ、やめるっスよ!なんなんスかー!!」

「うるせー!なんかもう色んなもんが自分の中で渦巻いてて自分でもわからんわ!」

「そんなよくわからない理由で女の子の髪をぐしゃぐしゃにしないでほしいっスー!」


 もちろん俺は雅弓が憎くて力一杯撫でているわけじゃない。

 『雅弓ってがんばって背伸びしてるのかー』と思ったら、なんだか雅弓が可愛く見えてきてしまったというだけだ。

 こう、雅弓って今までにない仲の良い『後輩』っていう感じで、なんかすごく可愛いんだよな。

だって今まで仲良くしていた後輩って、真白とかみつきとか、あとは男友達に近い和希なわけで、雅弓みたいな『可愛い女子の後輩』って感じはなかったし。


「ちょっと、ほんとやめてくださいよー」

「ええい、撫でさせろ。もっと後輩を愛でさせろっ」


 そんなことを言いながら俺がさらに雅弓の頭を撫でようとしたときだった。

 ポンと軽く肩を叩かれて、俺が振り返ると鬼の形相をした那奈が立っていた。


「――ねえ、さすがにベタベタしすぎだと思うんだけど」

「いやこれはそういうんじゃなくてだな」

「つか、ぐしゃぐしゃにされると直すの面倒なんだからマジやめろや」

「ま、雅弓!?」


 二人とも顔がものすごい怖いんですけど・・・?


「ったくもう、私ちょっとあそこのコンビニで髪を直してくるんで、那奈センパイしばらく護衛お願いしますね」


 そう言って雅弓は肩を怒らせて『マジないわー』とか言いながらコンビニの方へ歩いて行った。


「・・・あ!もしかして雅弓、あーしに気を使ってくれたのかな!?」

「いや、俺に対して普通にキレただけだと思うぞ」


 やめろやと言われて睨まれたときに掴まれた腕がまだちょっと痛いし。

 ちなみに、那奈が離れた途端、すぐに猫先輩とペアの魔法少女が素早く親父のガードに入っている・・・って、だから猫先輩でいいのか?本当にいいのか!?


「そういえば那奈、親父はどうだ?一緒に居づらいとかあれば雅弓に言ってデートの件は延期にしてもらうってのもできると思うんだけど。

「あ、それは全然平気。正宗のお父さんって、正宗のお父さんって感じだから一緒にいても変な緊張しないんだ」

「そういうものか?」


 この間那奈の艦行きが決まったあと説明と挨拶をしに言った時、俺は那奈の親父さんからのプレッシャーがすごくて変な汗をかきまくっていたんだけど。

 ああでも、那奈のお母さんはお母さんって感じだったし、そういうことなんだろうか。


「それにあーしたちの知らない正宗の小さい頃の話とか教えてくれるから人見知りとかしてらんないっていうのもあるんだよね」

「ちょっとまて、俺の小さい頃の話ってなんだ?」

「正宗にも可愛い頃があったんだねぇ」

「おい、ほんと何聞いたんだよ。っていうかクソ親父は一体なにを那奈に吹き込んだんだ!?」

「えへへ、お父さんと約束したからないしょー」


 そう言って口元に人差し指をあてて笑う那奈はすっかり機嫌が直った様子だった。




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