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魔法少女はじめました   作者: ながしー
第二章 朔夜編

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531/809

ex.修学旅行に行こう エンディング 2 外道勇者

前回後書きで、次回は那奈と正宗の話だと言ったな?アレはウソだ。

あ、今回ラストでキャラ画像あるんで3D苦手な人は注意です。



 正宗と別れた詩子が階段を降りると、自分の部屋の前に人が座っているのに気づいた。

 座っていた人物も詩子が戻ってきたことに気づいたらしく、立ち上がって詩子を見る。


「どうしたの()の部屋の前に座り込んだりして」

「えっと・・・その・・・」


 立ち上がった人物・・・栄子は、いつも通りの表情、いつも通りの口調の詩子の様子に戸惑いを隠せずに言葉を詰まらせる。


「あ・・・もしかしてまだ復讐とか考えてる?もし今回の事件でやけになってるならやめときなよ。せっかく蜂子と那奈がかばってくれてるのに全部無駄になっちゃうからさ」


 戸惑っている様子の栄子を見た詩子は、どうやら栄子が後ろ暗いことを考えて自分の部屋にいたのではなさそうだと理解して、冗談めかした口調でそう言った。


「え?なんであの二人が?っていうか、庇ってくれているってどういうこと?」

「栄子と彼氏くんはあくまで被害者。主犯は雫石さんってことでねじ込もうとしてくれてるんだってさ。だからやけを起こしたりしないで、明日にでもみんなにちゃんと謝って、夏休みがあけたらまたいつも通りの日常を過ごしてね。あ、もし彼氏君が浮気しても、もう今回みたいなことしちゃだめだからね?次はないらしいから」

「過ごしてねって・・・何よそれ、それじゃあんたはそこにいないみたいじゃない」

「私転校するからさ。だからまあ、あとは皆と仲良く楽しく過ごすんだよ。もしまたあの雫石さん達の組織が声をかけてきたりしてもついて行っちゃダメだからね」

「・・・・・・あんた、それでいいの?なんかこう、私に文句とかそういうのないの?」

「いいんじゃないの。私はこの先部外者だからね。残る人達が仲良くやってくれるのが一番だよ。だから蜂子達とも、彼氏くんとも今まで通り仲良く――」

「別れた」

「え?」

「喧嘩してフラれて・・・さっき別れた。まあ、当然よね。あんたとの事で半ば脅すような感じで巻き込んだんだし、そんなことするような女、愛想尽かされて当然よ」


 そう言ってうつむいた栄子の目に涙が浮かぶ。


「う・・・うーん、と、とり合えず私の部屋に行こうか。こんなとこ彼氏君に見られたら気まずいじゃん?」

「うん・・・」


 栄子は一つ頷くと、詩子の後に続いて、詩子が使っている部屋に入る。


「えっと、その。ごめんね、栄子。私のせいだよね。私の、魔法のせいだ・・・」


 詩子はそう言って栄子をベッドに座らせてから、翠に聞いた今回の件についての考察を栄子に話し、それを聞いた栄子はうつむいたまましばらく黙っていた。

 栄子はそのまましばらく黙り続けた後「ごめん」と小さな声で言った。


「ごめん・・・それ詩子のせいじゃないよね。なのに八つ当たりするようなことして、殺してやろうなんて思ったりして・・・」

「うーん、私のせいじゃないと言えば私のせいじゃないし、私のせいと言えば私のせいって感じかなあ。制御できなかった私のせいっていうのもあるし、制御できなかったのは仕方がなかったっていう見方もできるし。でも迷惑をかけた栄子とか他の子には悪かったなって思うよ。ああでも、すぐ『殺す』みたいなの本当にもうだめだからね。私以外の子に対してもだよ」

「わかってる。あのときはあいつを詩子に取られて、詩子とあいつが幸せそうにしている光景を見せられるなんて地獄だって思ってたけど・・・実際別れてみたらそうでもなかったし。多分私が思い詰める程度の事なんて、その程度の事なんだと思う」

「そもそも私が彼を取るとかさぁ・・・あの人、全然私の好みじゃないからね。というか、栄子って酷い趣味してるなあって思ってたまであるし」

「人の元彼を捕まえて酷い言い草ね」

「私の友達を振ったひどい男だからね。ひどく言われても仕方ないよ」

「元凶が言うな」


 そう言って二人が笑い合った後、少しの間が空いた。


「・・・それでね、詩子。一つお願いがあるの」

「うん?」

「私を思い切り殴って」

「は・・・はぁ・・・?私女の子を殴る趣味はない・・・と思うんだけど」

「詩子に酷いことをしようとした私には罰が必要だと思うの」

「いや、殴ったこっちも痛いんだよ。暴力って。というか、私が殴っても多分普通に回復しちゃうだけだと思うよ」


 襲撃後に行った検査の結果、栄子と彼氏には微弱ではあるものの、魔法少女化の可能性、兆候のようなものが見えた。それはつまり、詩子の回復魔法は栄子に効くということだ。

 とはいえ、魔法を使わずに殴れば回復するようなことはないが詩子が言ったように詩子には別に女子を殴る趣味はない。

 どちらかと言えば――


「じゃあ何か、何でもいいから私に罰を科して。あんたが転校してこの先償うことができないっていうならなおさら、なにか罰を頂戴。そうじゃなきゃこの先今まで通りの生活なんて送れない」

「ん?今何でもするって言った?」

「なんでもするわっ!」

「そっか・・・」

(そっかぁぁぁぁ♥♥♥)


 詩子は心の声を押し殺すようにして小さく呟くと、そのまま覆い被さるようにして栄子をベッドに押し倒した。


「ちょ、え・・・?詩子?」

「魔法少女化のせい・・・かな、なんだかさっきから身体が火照っちゃってさ。ちょっと相手してよ」


 ウソである。

 魔法少女化にそんな副作用はない。しかし栄子にはそんなことを知るすべがない。


「その・・・え?相手?え?」


 詩子はまだ状況がうまく飲み込めていない栄子の首に顔を寄せ、小さく舌を出してうなじをチロリと舐める。


「少し、しょっぱいね。汗の味かな?」


 耳元でそうささやかれた栄子は恥ずかしさからびくっと身体をこわばらせた。

 詩子はこわばって少し固くなった栄子の首筋を、筋肉に沿ってそっと舐め上げる。


「う、詩子・・・?あの・・・んっ・・・ふぅ・・・っ」

「栄子の味、って感じだね」

「やぁ・・・」

「ん?嫌ならやめるよ?」

「・・・・・・」


 恥ずかしそうに目をそらしているものの、栄子ははっきりとノーとは言わなかったし、腕をつかんでいる詩子の手を振り払おうともしなかった。

 それは、詩子に対する贖罪の気持ちか、それとも栄子自身もまんざらでもないのか。

 どちらにしても詩子にとっては好都合だった。

 栄子の事を愛しているのかと言われればノーだが、さりとて性的な魅力を感じないかと問われればそれもノー。

 ましてや、相手は詩子に傷つけられることを望んでいて、現在フリー。詩子的には何の問題もない。

 栄子がまったく抵抗する気がないことを見て取った詩子は、両腕の拘束をしていた手を放し、逃げられないように左手を栄子の頭の後ろに、そして右手を栄子の背中とベッドの間に滑り込ませる。

 そして右手を器用に動かして栄子のブラのホックを外す。


「ふぇっ・・・?ええっ!?」

「やめる?」

「・・・・・・」


 あっという間にホックを外されたことで驚きの声を上げた栄子だったが、詩子の確認には小さく首を振った。


「あ・・・でも、先にお風呂入りたい・・・」


 汗の味を指摘されたことが恥ずかしかったのか、それとも詩子に対してその気になっているのか、頬を紅潮させた栄子が小さな声でそう言うと、詩子はニヤァっと口角を上げていやらしい笑みを浮かべた。


「じゃあ先にお風呂入ろうか」


 そう言って詩子は手際よく栄子のブラウスを脱がしていき、先ほどホックを外したブラも取り去ってしまった。


「さあ、下も脱いで」

「な、何言ってんの?この部屋お風呂ないでしょ!?お風呂行かなきゃいけないんだから上も返してよ」

「だーめ。ここで全部脱ぐんだよ」

「・・・・・・」


 どちらかと言えばクラスの女子のまとめ役、小学生の時分には詩子や那奈の面倒をよく見、蜂子も従わせていた栄子。その栄子が自分の命令に逆らわない。

 その事実がもたらすゾクゾクとした感覚は詩子にとって新鮮な感覚だった。いや新鮮な快楽だったと言っても良い。そしてその快楽は栄子が渋々スカートを脱ぎだしたところでさらに高まっていく。


 逆に、栄子にとってもこの感覚は新鮮だった。元々はクラスの女子のリーダー格・・・最近はそうでもなくなっていたが、どちらかと言えば自分はSっ気の強い人間だと思っていたし、彼氏に対しても常にマウントを取ってきていた。そんな自分が、どちらかといえばおとなしめの女子である詩子に従わされている。その事実と、この後詩子にされるであろう命令への期待は栄子の顔だけではなく、へその奥も熱くさせていた。


「じゃあそのまま廊下に出ようか・・・大丈夫大丈夫。お風呂は廊下を挟んですぐだし、誰にも見られないって」


 そう言って詩子は栄子の肩を抱いて一緒に歩き出し、部屋のドアを開けると栄子を突き飛ばしてドアを閉め、すぐに鍵をかけた。


「――――?うたっ―――――」


 一瞬状況が飲み込めなくなり、思わず詩子に対して抗議の声を上げそうになったところで、栄子は自分がどんな格好でどこにいるのか思いだし、声を押さえ込んだ。

 とはいえ、このまま廊下にいれば誰かに見つかるかもしれない。そんなことになれば自分は社会的に終わる。栄子は必死に、大きな音を立てないように、小声で詩子の名前を呼びながら部屋のドアを撫でるようにノックする。



(ああそうだ、お風呂に逃げこもう)


 栄子はそう思って貸し切り温泉のドアノブをひねるが、貸し切り温泉の扉は各自のルームキーがなければ開かない。その事実に気づき、絶望した栄子が再び廊下でしゃがみ込むと、小さくカチャっと扉が開く音がした。


「ヒッ・・・」

「ごめんごめん、ルームキー持ってこないと開かないの忘れていたよ」


 そう言って人差し指でクルクルとルームキーのキーホルダーを回してみせる詩子に栄子は――――


「ありがとう、ありがとうございます詩子様っ」


 ――そう言ってすがりつく。


「あはは、いいこいいこ。じゃあ一緒にお風呂入ろうねー」

「はいっ!」

「そんな大きな声出すと、誰か来ちゃうよ――」


 すっかり主人が帰って来て喜んでいる犬のようになってしまった栄子の頭を撫でながら、詩子があたりを見回すと少し離れた部屋のドアがうっすらと開いているのに気がついた。


(ふうん・・・)


 昨日まで空き部屋だったその部屋を今日あてがわれているのはたしか――


「返してなんてあげないよーだ」

「え?」

「なんでもない。ほら、お風呂入るよー。流しっこするよー」


 詩子はそう言ってうっすらと開いているドアの方を見ながら、見せつけるように栄子を後ろから抱きしめた。











「――という夢を見たのよ」


 大室山の山頂で遙か彼方に望む富士山を眺めながら、昨晩見た夢について蜂子と那奈に語った栄子は、少し隈の出来た顔に昨日までとは少し違う大人の笑みを浮かべてフッと鼻で笑った。


「いやそれ夢じゃないでしょ。てかあんまり寝てないでしょあんた。隈すごいわよ」

「やっぱりしー子って怖えー・・・」

「・・・やっぱり夢じゃないよね?」

「詩子のベッドで目覚めてそれが夢だと思えるならそれでもいいけど、そうやって逃げていると後で自分が辛くなるわよ」

「あ、その・・・夢じゃないなら夢じゃないでそれでもいいっていうか・・・」


 そう言って、少し顔をあからめて頬をかく栄子。


「うーん、まあ詩子と付き合った経験のある私がとやかく言えたことじゃないけど、あの外道勇者でいいの?」

「外道なんかじゃないわ。詩子は私の勇者よ。私のピンチにはちゃんと助けに来てくれるんだもの」

「ピンチってまさか廊下に裸で出されたくだり?」

「そう」

「うわぁ・・・ひどいマッチポンプを見た」

「まっちぽんぷ?」

「あんたにはあとで説明してあげる・・・まあ、栄子がいいって言うならいいけどね」

「何々?何の話?ボクも混ぜてよ」


 華絵達と一緒に山頂一周をしにいっていた詩子がそう言いながら三人のほうに駆け寄ってきた。


「お、来たわね外道勇者」

「え・・・ああ、昨日のこと?でもボクは栄子が嫌だって言ったらちゃんとやめるつもりだったんだよ?外道ってほどじゃないでしょ?」

「というか、あんたが栄子を好きだなんて話、私一回も聞いたことなかったんだけど?」

「順番が入れ替わっただけで今はちゃんと栄子のこと好きだよ」

「詩子・・・」

「いや、そこ顔を赤らめるところじゃないからね」

「てか、シー子は気持ちの切り替えがはやいよね。この修学旅行の期間だけでハチにフラれ、朔夜にフラれ、んで最後はエー子とゴールとか、もはや意味わかんないよ」

「まあ、最終的にみんな幸せなんだしいいじゃない・・・ってそういえば那奈ちゃんは昨日の夜どうだったの?」

「・・・・・・さーて、あーしエー子とシー子の猥談も聞けたしあーしも愛しの正宗の所に帰ろーっと」

「猥談じゃないよ」

「そうよ恋バナよ」

「いや、猥談でしょ・・・で?那奈、昨日の夜はお楽しみだったの?」


 山を下りるリフトの方へ歩き出そうとしていた那奈の肩をがっちりとつかんでにこやかに蜂子が訪ねると、那奈はしばらく固まったあと、三人のほうに向き直った。


「そ・・・そんなに聞きたいなら教えてやらー!」

「なになにー?何を教えてくれるのー?」


 と、華絵と一緒に戻ってきたエリスが首をかしげる。


「正宗と那奈が昨日の夜何してたかって話よ。あんた達も聞くでしょ?」

「それは興味あるわね」

「あるねー」

「ちょ、エリスとハナも聞くつもりなの!?」

「当然」

「あたしたちだけ仲間はずれとか寂しいこといわないでよ」

「うう・・・し、しかたねー・・・昨日の夜はね――」












今日の生けにe――キャラクター紹介


北原栄子


挿絵(By みてみん)


新聞部の敏腕記者。

一年生のころは生徒のスキャンダルから教師のスキャンダルまで多くのスクープを物にしたが詩子と彼氏のゴタゴタのあたりから調子を落とし、特ダネも拾えず新聞部内での地位は凋落の一途をたどっていた。それもこれもあれもすべて詩子のせいと思い込むことで自我を保っていたが、そんな思い込みを雫石にまんまと利用され、さらに詩子の調教によって最終的にこんなことに。

修学旅行後は遠距離恋愛(?)となった詩子と会うための交通費を得るために、新聞部を辞め、JK2のフォロワーとなって身を粉にして働くようになる。


また、彼氏には詩子によって深いトラウマ(寝取られ)と言う名の特殊性癖が刻み込まれた。



実はお風呂以降も書いたんですけど多分運営に怒られるので大幅カットとあいなりました。

あ、詩子はちょこちょこ出てくると思いますが、多分栄子は今後あまり出番ありません。


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