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魔法少女はじめました   作者: ながしー
第二章 朔夜編

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501/809

ex.修学旅行に行こう・インターミッション~女子会~

3/6後半をちょっぴり追記。

重そうな引きになっちゃってたのでちょっと緩和。

なんだか楽しいことが自粛されてばかりの毎日ですが、少しでも楽しんでいただけたら幸いです。


「・・・とかなんとか、どうせ今頃男同士でそんなことをやっているにきまってんのよ!!!」

「まあまあ蜂子、確かに朔夜が詩子にデレデレしていたのが悪いとは思うし、気持ちはわかるけど決めつけはよくないの。もしかしたら朔夜は今頃反省して一人寂しく部屋で膝を抱えて泣いているかも知れないの」

「それはそれで萌えるわね!」

「はあ、もうどうしたらいいのかわからないの・・・」


 私だってこの気持ちをどうしたらいいのかわからんわ!


「那奈、そろそろ蜂子をなだめ係交代してほしいの」

「あー、ハレちゃんかーいーねー。あーしが男子だったらほっとかないよー」

「キャッキャッ」

「現実逃避してないでこの面倒くさいのなんとかしてほしいの」


 そう言って翠は那奈と遊んでいた晴ちゃんを抱き上げると、少し離れたところに座って晴ちゃんに授乳を始めた。


「ってかさ、考えればあーし何年もハチに隠し事されてたんだよね?ハチはなんか自分が一番傷ついてるみたいな顔してるけど、あーしのほうが傷ついてね?」


 変なところでばかり頭が回るというか、那奈はどうしてこういう時に限って正論を言うのだろうか。


「それはその、悪かったわよ」

「うん。じゃあ黙ってたのはもういいや、で?そもそもなんでシーコと付き合ってたわけ?」

「それはその若気の至りというか」


 前世の血の盟約というか。


「どうせアレなの、前世がどうとか運命の輪がどうとかそんな感じの痛々しい理由なの」

「ちょっと!見てきたように言うのやめてくれない!?」

「でもきっとそんなとこなの」

「まあ、そんなとこだけどさ」

「すげー・・・ハチとシーコって前世の記憶があるんだ・・・」

「やめて!そんな曇りなきまなこで私を見ないで!!」


 恥ずかしいを通り越してもうなんか申し訳なくなるから!!!


「ちなみにどんな記憶だったの?」

「い、言わなきゃだめ?」


 できれば言いたくないんだけどなあ・・・


「だめなの」

「聞きたーい!」

「・・・面白い話じゃないわよ」





「・・・ハチとかシーコって、そういうのどうやって考えんの?」


 私とC子のなれそめというか、二人で大盛り上がりした黒歴史の妄想を聞き終わった後、一拍おいて那奈はまっすぐ私を見ながらそんなことを聞いてきた。


「まっすぐそういうこと聞くのやめてってば!だから話したくなかったのよ!!」

「まあまあ、みんな若い頃は黒歴史の一つや二つつくるものなの。あんまり気にしちゃだめなの」

「って言うか!おかしいでしょ!?私だけ黒歴史披露するのおかしいでしょ!?」

「そう言われても誰しも黒歴史を持っているわけじゃないの」

「つい数秒前に誰しも黒歴史の一つや二つ持ってるって言ってたのに矛盾してるでしょうが!ほらっ、なんかないの!?那奈も翠も誰にも話してない恥ずかしい秘密の一つや二つあるでしょ!?」

「うーん・・・あーしは別にないと思うけど、翠は?」

「ああ!そういえばあったの」

「おおっ、どんなこと?」

「二年くらい前に戦技研吹っ飛ばしかけたの」

「・・・・・・え?」

「実験中にうっかり失敗しちゃって、難しい話を全部端折って簡単に言うとナノマシンが暴走したことがあったの」

「お、おう」


 思ったよりガチの黒歴史じゃないか。というか、私が求めている黒歴史となんか違うぞ。


「翠でも失敗すんだねー」

「で、私も吹っ飛びかけたんだけど、そのときにかっこ良く現れて助けてくれたのが今の旦那なの」


 ただのノロケだった。


「もっと私のノロケを聞きたいというのなら話すけど、どうするの?」

「それを聞いても私も那奈も楽しくなさそうだからやめとく」

「だねー」

「じゃあ蜂子のターンなの。どうして詩子と別れたの?」

「それは、クラスが離れたから・・・」

「そんな理由で恋人と別れるとは思えないの。ねえ那奈、那奈は来年正宗とクラスが別れたら付き合うのやめる?」

「やめないねー」 

「だと思うの。流れで別れるにしても何かしらきっかけがあるはずなの」

「・・・なんというかね。まあその、他の人達に興味が移ったというか」

「え!?まさかあーしの知らないところで男とも付き合ってた的な!?」

「違う違う!中三の時に色々あって左右澤先輩達と知り合ってさ、それでその――」

「まさかの組み合わせなの。エリス的にも朔夜的にも修羅場になること間違いなしなの」

「だから、そういうんじゃないんだって。受験勉強のストレスで夜中にフラフラ街を歩いてたら変なのに絡まれてね、そこを助けてくれたのが左右澤先輩達だったのよ。で、なんとなく放課後とか休日につるむようになって、こう・・・男同士の友情って尊いなって」

「とおとい?」


 あんな強面なのに、なんだかんだ強引に迫・・・強くお願いされると断れない左右澤先輩とか、よわっちい癖に皆に認められるために色々走り回って状況をややこしくして必ず敵に捕まって半泣きになる仁とか。そんな仁を見捨てられない緒方先輩とか。

 とにかく色々――


「尊いのよ」

「ちょ、何か顔怖いよ、ハチ」

「まあ、蜂子のそういう趣味はよくわからないからおいておくの、で?」

「で、って?」

「あの子が蜂子に執着する原因はなんなの?」


 ――は?


「いやいやいや、C子が私に執着してる!?ないない、ないって。絶対ない」

「じゃあなんで一人で国内コースに変更してきたの?」

「いや、それは仰木だってそうでしょ」

「仰木くんは正宗が誘ったの。だから国内コースがあるって知ってたの」

「え?」

「誰も誘ってないし、そもそも他のクラスでは多分話題にもならないだろう話を一体あの子はどこで聞いてきたの?ただでさえクラスで浮いているのに、一体どこから情報を仕入れてきたの?しかも自分と関係ないクラスの数人が国内コースになったからって、自分まで変更する必要があるの?だとしたらそのキーになるのは誰なの?」


 私。か・・・


「でもさ、本当に普通に自然消滅って感じだったのよ。左右澤先輩達と遊ぶのが楽しくて、何回か週末の誘いをパスしてて、そしたら誘われなくなってそれっきりっていうか」

「浮いている子とそんな別れ方したらストーキングされてもしょうがないの」

「いや、でもシーコって中学の頃はそんな浮いてなかったよ。女子の間では変な子扱いだったけど男子にはもててたし、クラス別れてからも何回か裏庭で告られてるのみたし、ハチを誘わなくなったあたりで誰か男子と付き合ったりしてたのかもしんないよ」


 そう。

 あいつは自称転生勇者のくせにけっこうモテるし、男子と話せないという訳でもないので、私と疎遠になった後、C子自身や私と同じような痛々しい妄想を抱えた中二病の男子と付き合っていたとしてもおかしくはない。

 実際スマホで私と一緒に写っているC子の写真を見て、緒方先輩なんかは紹介してほしがっていたし。


「んー・・・まあ確かに詩子は男子受けよさそうだしそういうこともあったのかもしれないけど、だとすると今回こっちに来た動機がわからないの」

「あーしとかハチとまたつるみたかったとかじゃないのかなぁ」

「私もその線じゃないかなと思う。クラスで浮いてるとか言ってたしさ」

「まあ、私も何か確信があって言っているわけじゃないし、詩子のことをよく知ってる二人がそう言うなら多分そうなの」


 翠はそう言って立ち上がると、授乳している最中に寝てしまった晴ちゃんをベビーベッドに寝かせた。


「そういえばハチ、シーコと付き合ってたときってどこまでいったの?もしかしてファーストキスは朔夜じゃなくてシーコとだったりして」

「え?ああ、まあね。あとは二人で日帰り温泉とか行ってイチャイチャしたりしてたわよ」

「あー、なるほどねー・・・って、そういうことはっきり言うんかーい!」

「どうせ隠してたってそのうちC子が言うでしょ」

「もしや、最近ハチの胸があーしより大きいのはその頃C子に色々されたせいとか」

「自分で言うのもあれだけど、あの頃はピュアだったからね。お互いの身体を見るだけでドキドキしてたのよ」

「あはは、なんかその話聞いたら朔夜いじけそうじゃね?『蜂子と初めてお風呂に入ったのが僕じゃなかったなんて・・・』とか言って」

「いや、さすがに朔夜はそこまでアレな奴じゃないわよ。というか女同士なんだし、そういう意味じゃ那奈となんて何度も入ってるじゃないの」

「まあ、それはそうかもね」


 そう、あれはノーカン・・・とは言わないけれどもう終わったことだ。

 そんなことをいつまでも気にしていたって仕方がない。





 翠の家からの帰り道、交差点で那奈と別れてしばらく行ったところでC子と出くわした。

 いや、出くわす程度は何度かあったし、以前はこうして偶然会ったときはすれ違いざまに軽く手を振ったり少しだけ話したりすることもあった。

 なのに今は会話をするための言葉が全然出てこない。

 一体――

 

「――いつからだろうね、なんとなくビーちゃんと私の距離が空いちゃったのは」


 私と同じ疑問を持っていたのか、はたまた実は私のガードを突破できるほどの高レベルなテレパスなのか、私が口を開く前にC子はそう言って苦笑した。

 まあテレパスなんてことはないだろうけど、どちらにしてもC子の昔から変わらない、少し寂しそうな色をたたえた笑顔を見て、なんとなく私は毒気を抜かれてしまった。


「・・・あのさC子、とりあえずその、ビーちゃんって呼ぶのそろそろやめてほしいんだけど」

「えー・・・今更じゃない?」

「今更でも」

「もう、しかたないなぁ。コホン・・・フッ、突然改まってどうしたのだ我が終生のライバル魔王ビクトーリア――」

「そっちじゃねえよ。本名で呼べつってんだよクソ勇者シルヴィア!」


 今のところ那奈も他の皆も私達の間の呼び名は那奈がつけたB子、C子から来ていると思っているが、実際の所それにかこつけて私達はソウルネームをもじって呼び合っていた。というのが本当の所だったりする。

 これを朔夜に知られるのはさすがに恥ずかしいので皆に知られる前に過去の恥ずかしい記憶ごとこの呼び名も封印してしまいたい。


「え!?前世の盟約を果たすためにもう一度私と付き合おうと思ってくれたんじゃないの!?」

「私は朔夜と付き合ってるんだからあんたとは付き合えないわよ」

「じゃあ蜂子ちゃんは朔夜君と付き合って、ビクトーリアは私と付き合ったらいいんじゃない?」

「どこかで聞いたようなこと言わないで」


 あのときは確か、咲はハナので、朔夜が私のとかって話だった気がするからちょっと違う気もするけど。


「ええっ、ビーちゃんまさかもうすでに私と朔夜君以外の三人目がいるの!?」

「じゃなくて、去年の年末にハナが朔夜を半分ほしいみたいな話してたのよ!っていうか、そもそもあんた別に今私と付き合ってるわけじゃないでしょ!」


 魔法少女云々は今や公然の秘密ではあるけれど、朔夜は別に好き好んで公開してないので朔夜の変身の姿である“咲”についてわざわざC子に言う必要はないだろう。


「あはは、ビーちゃんは関ちゃんとも朔夜くんとも仲良しなんだね」

「那奈ともエリスとも翠とも正宗とも仲良しよ・・・あんたはどうなの、最近」

「私?私はほら、さっきいった通りだよ。結構浮いてる」


 そう言って、詩子は何か物欲しそうな、何かを期待しているような目で私を見る。


「そっか」

「そっかって・・・それはちょっと冷たくないかな?」

「だって今の私があんたにしてあげられることはないもの」

「・・・」


 自分でも冷たい物言いだということは解っている。解っているけど、違うクラスの人間とだけ仲良くしていては、この先まだ二年間近くある彼女の学校生活は決して楽しいものにはならないと思う。

 今、ほんの少し会話しただけで、さっき翠が言っていた通り、詩子が私に対して何らかの執着を持っているということを感じた。

 それは別に良い。私だって、那奈と正宗が仲良くしているのを見て、那奈を取られたような気持ちになってちょっとつまらないなと思うことはあるし、朔夜と付き合っている今だって、昔からファンだった朱莉さんや、中学生ながらTKOで単推ししていたゆあちーこと柚那さんに対して執着というか思いはあるし、朔夜だってなんだかんだと言いながら、まだ愛純さんや朝陽ちゃん、それに翠を未来の彼女達と重ね合わせてに執着していたり、思いを持っている部分がある。

 それはいいんだ。少なくとも私達は執着を持ちながらも、前に進んでいるから。

 でも多分、詩子は前に進んでいない。


「私は、今からでもハワイにしたほうがあんたのためなんじゃないかって思っている」

「それはないよ。そうしたって、別に周りは何も変わらないし私も変わらない」

「変えようとしないから変わらないのよ!」

「それは・・・それは変えられる人の言い分だよ。そういうことを言われたことがない人の言い分だよ!」

「でも、やってみなきゃわからないでしょ!」


 私がそう言って逃げようとする詩子の腕をつかもうとしたとき、突然後ろから肩をつかまれた。


「状況がよくわからないけど、ちょっと落ち着け。詩子さん嫌がってるだろ?」

「朔夜!?あんたなんでこんなとこにいるのよ」

「僕は忘れ物を届けようと思って来たんだけど、蜂子達こそなんでこんなところで言い合ってるんだ?」

「私達は――って、忘れ物なんてあった?」

「ああ」


 おかしいな。

 私は別にファミレスに忘れ物なんて――


「詩子さん、さっき家にこれ忘れていったよね?」


 そう言って朔夜がポケットから取り出したのは、さっきファミレスで詩子が左腕にしていた腕時計だった。




「それでそこから逃げたくなる気持ちはわからないではないが、俺の所に来るんじゃ本末転倒だろ。邑田とかわらんぞ、それじゃ」


 そう言ってドリンクバーのコーヒーを飲んだあと、左右澤先輩はエリスの隣で大きなため息をついた。


「そうだよ。買い物に行った日の夜に住くんがハチとの関係を話しておいてくれなかったらこっちまでこじれるところだよ」

「そうは言ってもこんな話、ハナは話を聞いてくれそうにないし、翠には面白がられた上に傷をえぐられそうだし、那奈は夜に正宗とやりとりしてるときに割り込むと超機嫌悪くなるし」

「あたしがいるじゃん」

「エリスは寝るの早いし」

「そんな時間まで人の彼氏と一緒にいるつもりだったの・・・?」

「いや、あんた九時にはもうおねむじゃん」

「最近は11時までは起きていられるようになったもん」

「まあ、どっちにしてもいつまでも俺に頼るのは関心しないぞ」

「そうだよ。さっき仰木に確認したら朔夜の家には詩子だけじゃなくて正宗も仰木もいたっていうし、ちゃんと確認するのが大事だよ」


 そう言ってエリスは仰木とのやりとりが表示されたスマホの画面を私の方に向けた。


「なんで仰木に確認したの?」

「みんなして仰木とハナをくっつけようとしてるみたいだし、どうせ男子は集まって相談してたんだろうなって思って。正宗に聞いても良かったんだけど、変なタイミングで割り込んで那奈とのやりとりを邪魔すると、後が面倒くさいからね」


 まあ、私達がというよりは、『返信が遅かったときに何してたの』と鬼のような追求をされる正宗が面倒くさい目にあうんだけど。


「気づいてたの!?」

「そりゃあ、ファミレスであんだけハナをチラチラみながらあたしとか翠にばっかり話しかけてきてたら『ああ、こいつハナが好きなんだな』って思うよ。席の分け方も男子三人しかいないのに仰木だけ別テーブルにしたりしてなんか意図的だったし」

「じゃあまさかハナも?」


 私達がそんなことをしようとしていることがハナに気づかれたら、ハナの性格からして意地でも付き合わないとか言い出しかねない。それはつまら――仰木に悪い。


「ううん。ハナの奴は何故か仰木があたしのことを好きだと思ってる」

「相変わらずなわけね・・・」

「まあね、今でもジュリの正体に気がつかないわけだし」

「田村の正体?」

「あれ?言ってなかったっけ?ジュリって朱莉さんが変身した姿なんだよ。これ一応ハナには内緒ね」

「・・・・・・」


 お、普段あまり表情が変わらない左右澤先輩の顔が、あまりの驚きに作画崩壊を起こしてるぞ。これは面白い。後で何かに使えるかも知れないからスマホで撮っておこう。


「写真を撮ろうとするな!・・・まあ、それなら俺達全員でかかっても手も足も出なかったのも納得だ」

「あの人あれでこの国で4番目に強いですからね」


 というか、ナンバーワンの狂華さんをぶん殴って勝っちゃったこともあるので実質ナンバーワンと言ってもいいかもしれない。


「そうなんだよね、それに朱莉さんって上層部とのつながりも強いから、バトルも強くてあたし達を甘やかしてくれるあの人が戦技研辞めちゃうっていうのはJKチーム的にはちょっと危機感あるっていうか」

「あの人がやめてもハナのバックにはこまちさんがいるし、あんたの後ろにもなんだかんだで顔の広い深谷さんがいるでしょ。チームってことで考えればみつきの後ろにはひなたさんがいるし茉莉花の親なんて狂華さんと都さんじゃないの。それに正宗とかえり達なんてこの国からしたら国賓やVIPみたいなもんだし、ぞんざいな扱いを受けるようなことはないわよ」

「そう言われると、あたしとハナだけだった頃に比べて大きくなったなあ、JK」

「それより、今は東條の話じゃないのか」

「あ、そうだった。で、ハチはどうしたいの?詩子を追い出したいとか?」

「・・・別に、詩子のことは嫌いじゃないのよ。いや、嫌いなんだけど大嫌いじゃなくて、あの子の間が悪いのはよく知っているし、前は仲良かったからあの子がハブられてたり浮いている状況は改善してあげたいと思う」


 少し時間が経ってみれば、朔夜の性格からして詩子と浮気するようなことはまずないだろうし、さっきのもたまたま朔夜の家に集まったときに忘れただけなんだろう。

 自分の彼女の前で他の女の忘れ物を出しちゃうのも、うっかり友人の彼氏の家に忘れ物して来ちゃうのも朔夜と詩子の性格的には全然あり得ることで、一歩引いて考えてみれば笑って流せるくらいのことなのだ。


「うんうん。で?」

「修学旅行中はもうどうしようもないから、とりあえず終わるまで愚痴を聞いてもらえると助かる・・・」

「え、それだけ?」

「勢いで逃げて来ちゃったけどそれ以外に現実的な方法がないっていうのもあるのよ」

「まあ、話を聞いている限りその奈南といると、東條のストレスが溜まるだろうが、さりとてエリスの言うように追い出すというわけにもいかんし、そのあたりが現実的なところだろうな」

「でもさ、ハチは今回なんで詩子や朔夜の心を読まないの?読めば何があったかなんてすぐわかるし、変なストレスもないんじゃない?」

「これよ」


 私が二人に見せた左腕には腕時計型の魔力封印ブレスレットがはめられている。


「朔夜がしばらく心を読むなっていうから、毎朝朔夜に封印してもらってるの」


 朔夜が、というより自主的にみたいなところのほうが大きいのでやめてって言えば朔夜は辞めてくれるだろうけどそれはそれで私のプライドが許さない。

 自分で言い出した以上、少なくとも修学旅行が終わるくらいまでは封印を続けるべきだろう。


「え、朔夜すごいじゃん」

「うむ。まさかあいつが東條に言うことを聞かせることができるとはな」

「ちょっとそれどういう意味!?」

「言葉通りだぞ」

「言葉通りだよ」

「ええと、二人の言い方だと私がまるで朔夜を尻に敷いているように聞こえるんだけど」

「その通りだろ」

「その通りだよね」

「そんな風に見られてたのか!?」


 あれは外むけのポーズみたいなものなんだけどなあ・・・いや、まあ100%ポーズとは言い切れないけれど。


「まあ、なんにしても愚痴ならエリスに聞いてもらえば良い。事情も知っているし、結構聞き上手だからな。俺もなんだかんだで色々と聞き出されてしまったしな」

「もう、住くんたらぁ。そんなに褒めても何もでないよぉ?」


 いや、でも聞き上手な割には今日まで私との関係とか、先輩の本当の一人称とか聞けてなかったんでしょう?


「でもそれだったら住くんも一緒に聞いてもらってアドバイスもらったらいいんじゃないかな。間の悪い詩子がいても朔夜とうまく行く方法がわかればストレスも軽くなるんだろうしさ」


 いやいや、それでなんで私の愚痴を左右澤先輩に聞いてもらったりアドバイスをもらうってことにつながるんだ?

 この人、昔からそっち方面は全然――


「だって、住くんって百戦錬磨の恋愛マスターじゃん!」


 ほーん。なるほどなるほど、確かにエリスは聞き上手なようだ。なんて言ったってありもしない左右澤先輩の経歴を聞き出しているんだから。


「ちなみに、エリス的にそれはいいの?それって、左右澤先輩がエリスの前に色んな女と付き合ってたってコトだよ?」

「昔じゃなくて、大事なのは今だもん」

「そうだよねぇっ!昔のことでウソついて今をないがしろにするなんてよくないわよねぇっ!!」

「ウッ・・・」


 おお、効いてる効いてる。

 これに懲りたら彼女にへんな見栄を張っちゃダメですよー・・・って、魔法が使えないから伝わらないか。


「と、とにかく、これからは俺に相談するときはエリスも一緒にな」

「はいはい。わかりました」






補足

お家の位置関係。

蜂子、那奈、詩子は中学の学区が同じ(あかり達と同じ中学)で

朔夜、正宗、華絵、エリス、仰木は隣の学区(歩いて行き来できる程度の距離)って感じです。(仰木以外そこの中学行ってないですけど)

ちなみに翠の家は最近買ったばかりなのでさらに遠い。市内の隣駅くらいの距離です。



※ちょっと真面目な今後の魔法少女はじめましたの予定。(3/1現在)


修学旅行編、本当はどっか取材がてら旅行に行ってネタを拾ってこようと思っていたんですけど、完全に不要不急の用事だしご時世的にフラフラ旅に出られるような状況じゃないなーということでしばらく修学旅行編はインターバルを置いて、まずは結婚前夜を終わらせようかなといった感じです。

とは言っても、結婚前夜を1話書いている間に例のアレが収束するとも思えないので、全体的な手直し(誤字脱字、ちょっと補足を入れたり言い回しを変える程度)をしようかなと思ってます。

 もしこんな話が読みたいというリクエスト等あれば感想欄かツイッターにでもいただければと思います。出来は保証しかねますがなんとなくそんな感じの話を書かせていただきます。


 あとはチマチマ書いていた新作も少し溜まってきたので近々出す予定です。

 もしよろしければそちらも読んでいただけたら嬉しいです。

 内容はちょっと残念な女子3人が主人公の異世界転移モノで、1話でウ○コの話とかしてるんで、女子が多めとはいえ、お色気的なものはあまり期待しないで下さい(されてないでしょうけど)

 あと別にずっとウ○コの話しているわけでもないのでそっち方面を期待するのもやめてくださいね!?

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