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魔法少女はじめました   作者: ながしー
第二章 朔夜編

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ex.修学旅行に行こう~準備編6~


「じゃあ修学旅行の行程を話し合う会議を始めます」


 何故か司会に選ばれてしまった私がそう言ってメンバーの顔を見回すと、それぞれ思うところがあるらしく全員が神妙に頷いた。

 ちなみに私達のせいで引率にさせられてしまったと言うことで、一応担任にも行き先のリクエストを聞いたのだが『先生は気にしてないからお前らも別に気にする必要ないぞー』と、妙に大人な対応をされてしまった。


「えっと、じゃあプランのある人から順番に発表してもらって、くっつけられそうなところはくっつけていって、最終的に一番賛成人数の多いプランを先生に提出するってことでいい?」

「いいと思うぞ。じゃあ俺からな」


 そう言うが早いか、正宗が模造紙らしき巻かれた紙を持って立ち上がろうとする。

 しかし――


「ちょっと待つの正宗。私は二人のことを知らないから、自己紹介から始めたいの」


 翠がすかさずそう言って正宗の襟首をつかんで座らせた


「私と那奈は両方知ってるから他の皆どうぞ。って言っても仰木のことは翠以外知っていると思うけど」

「あ、じゃあ私から自己紹介するの。私は川上翠。こう見えて子持ちの人妻なの。今年から蜂子達と同じクラスで勉強しているの。よろしくなの」


 翠はそう言って仰木他一名を見る。


「じゃあ、俺も。川上さんと奈南さんだっけ?以外は知ってると思うけど、俺の名前は仰木風馬。この秋からサッカー部のキャプテン・・・になれたらいいなと思ってる。よろしく」


 そう言って、主にハナに視線を送る仰木。

 だがハナはエリスとプランについて話しているらしく全く聞いていない。


「じゃあ私の番だねー。私の名前は奈南詩子。読みはうたこだけど、ななちゃんにあだ名を付けてもらってからは、しいこって呼ばれることが多いかな。私はどっちで呼ばれるのも好きだからみんなも好きな方で呼んでねぇ」


 奈南がそう言って椅子に座ると、奈南と面識のないメンバーが順番に自己紹介をしていく。と言っても、奈南と面識があるのはおそらく私と那奈だけだ。

 一年の頃は別のクラスで、体育も合同ではなかったし、今も仰木とは別のクラスだったはずだ。

 中学三年の時に別のクラスになれて、やっと縁が切れたと思ったのに、まさかこんなところでまた一緒になるとは。

 本当に、なんというか腐れ縁っていう奴は――


「僕の番だな。僕は邑田朔夜」

「あ!君のことは知ってる!ビーちゃんの今彼なんだよねぇ、ビーちゃんから聞いてるよね?私が元カノのC子だよー」

「え!?何それ」

「あれっ!?聞いてない!?」


 ――本当にやっかいだ。

 っていうか、それをここで言うか普通!!!!!





 思春期という奴は本当に厄介だと思う。

 中学一年生の頃、異世界から転生してきた魔王という設定だった私は、同じような痛々しい設定を背負ったC子と意気投合し、その後ハマった百合マンガの影響で、クラスメイトや家族に隠れて陰で隠れて付き合っていた。

 とはいえ、中学生の一時の気の迷い、若気の至りというやつで、基本的にはストレートな性癖の私達の関係は中学三年生になってクラスが別れ、私が深夜徘徊を始めたあたりからどちらからともなく自然消滅し、なんとなくお互いを避けるように・・・いや、避けていたのは私だけだな。




「っていうことがあってねぇ、私はもうぜんぜん気にしてないのに、ビーちゃんはまだなんか引きずってるみたいでぇ、私のこと避けるんだよー」

「変に仲良くするとあんたがそういうことペラペラ話して回りそうだったから避けてたのよ!」

「つーか、中学で二年間同じクラスだったあーしも知らなかったってすごくね?全然そんな感じなかったじゃん」

「だから隠れてつきあってたんだよー」


 C子の発言で場が混乱しはじめたのが解ったので、とりあえず今日は懇親会ということで急いで場所を近所のファミレスに移して今に至る。

 ちなみに席割は私と朔夜、那奈と正宗そしてC子が同じテーブルで、ハナとエリス、それに翠と仰木が少し離れたところで同じテーブルに座っている。

 ぶっちゃけ私的にはこいつと離れてあっちのテーブルに行きたいところだけど、そんなことしてC子が朔夜にあることないこと吹き込んでも後々面倒だ。


「んでんで?朔夜くんはビーちゃんとどこまでいったのかなぁ?」

「ど、どこまでって、それは・・・その、なあ?」

「なあ、じゃないわよ。っていうかC子、あんたなんで国内コースなのよ」

「あー・・・私飛行機怖いからもともと修学旅行休むつもりだったんだよ。そこに丁度ビーちゃんたちの事情で国内コースが復活するって聞いたから、じゃあ私もそっちにいこーって思って」

「ちょ、シー子、あーしもいるんだけどさっきからハチのことばっか言ってない?」

「そういえばナナちゃんも正宗くんと付き合ってるんだよね?どこまでいったの?」

「ディストラリーランド」

「いやいやぁ、私が聞きたいのはそういうのじゃなくて、二人の関係はどこまで進んでるのかなって――」

「あ、そういうのはハチ達にだけしてれば良いから」


 久しぶりに見たけど、無表情な那奈の顔怖っ!

 直前までニコニコしてたのに、スッと表情が消えるこの感じ、滅多にないだけに本当に怖い。

 まあ、比較的緩くて、多少のうざ絡みくらいなら笑って許してくれる那奈をしてこうなってしまうくらい、特に恋愛絡みで絡み始めたC子が面倒くさいというのはあるのだけど。

 で、そういう性格もあってC子は比較的昔からクラスの中で浮きやすい。

 飛行機がどうのこうのと言っていたけど、今回、班単位ではなくC子だけ国内コースに変更したのも、おそらくは同じ班の中でも浮いていたからではないだろうか。

 

「なあに?ビーちゃん」

「いや、相変わらずクラスで浮いてるのかなって思っただけ」

「あ、相変わらず言うこときっついなあ、ビーちゃんは」

「じゃあきついことついでにもう一つ、あんた何が目的なの?」

「目的って・・・私は、どうせなら休むより修学旅行に行きたいなって、そう思って」

「それだけ?」

「おい、蜂子。奈南さんにあんまりきついこと言うなって」

「はぁ・・・」


 C子がクラスの女子の中で浮きやすい理由。それがこれだ。

 C子は相手に強く出られると弱々しい態度で周囲の同情を引く。その態度はとくに女子と揉めたときに男子の同情を引く。そしてうちの彼氏はそんなC子にまんまと同情をしてしまっている。


(正宗、絶対に朔夜みたいに余計な口挟むんじゃないわよ。じゃないとあんたと那奈、本気で揉めることになるからね。絶対C子を庇わないこと)


「お、おう」

「ん?どしたの正宗」

「い、いや。何でもない。愛してるぞ那奈」

「お、おー、あーしも愛してるけど、どした突然」

「俺は朔夜とは違うってことだ」

「なんで今僕ディスられたんだ!?」


 とりあえず揉め事が増える事態は防ぐことができたが、朔夜がC子に同情してしまった以上、大なり小なり私と朔夜は揉めるだろう。

 だったらここはちゃんと解決してしまおう。


「飛行機云々はウソでしょ?」

「・・・・・・うん。実は私、クラスで浮いてて、あ、別に嫌がらせされてるとかいじめられてるとかじゃないし、そもそも自分が悪いって解っているからいいんだけど、多分ハワイに行っても班の皆の迷惑になっちゃうかなって思って、ビーちゃん達とだったら、一緒に楽しく・・過ごせるかなって・・」


 はいはい、出た出た。

 そんなのにひっかかるのは――


「大変だったんだな、奈南さん」


 ――うちの彼氏くらいだっつーの。


「そうだ、クラスに居づらいんだったら昼休みとか哲学部の部室で僕達と一緒に過ごせばいいんじゃないかな」

「え、いいの?」


 よくねーよ。

 あと、翠は『なんかそっち面白そーな話してんの』とかって顔でこっち見てないで仰木のフォローしてやりなさいよ。そのためにそっちのテーブルに座らせてるんだから。


「むかし蜂子と何があったかは解らないけど、仲が悪いままなんて寂しいじゃないか」


 前々から思ってたけど、朔夜ってお人好しすぎてエネ夫とかになるタイプだよなあ。

 姑が柚那さんじゃなかったら将来絶対嫁姑で揉める家庭だったわ。

 ああ本当に朔夜があの二人の子でよかった。


「ありがとう、朔夜君!」

「気にしないでくれ、奈南さん」

「その、できれば奈南じゃなくて、名前で呼んでもらえると嬉しい、かな」

「ええと、それは・・・」

「勝手にすれば?」

「うん。よろしく、詩子さん」


 ふーーーーーーーーーーーーーーーーん。本当に下の名前で呼んじゃうんだ。

 ふぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅん。


修学旅行どこ行かせようかまだ悩み中。

あ、久々の長編&バトルもありますよ!

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