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魔法少女はじめました   作者: ながしー
第二章 朔夜編

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ex.修学旅行に行こう~準備編5~


「で、その後どうなったんだ?」

「どう、って?」


 僕が昨日の帰り道での一件を話すと、部室で向かい合って弁当を食べていた正宗が身を乗り出して食いついてきた


「蜂子を弱らせてその後良い感じの雰囲気を作れたんだろ?そんでもって朔夜は一人暮らしなわけだしさ」

「言い方ぁ・・・」


 僕は別にそういう目的で蜂子を弱らせたり励ましたりした訳じゃない。

 いやまあ、そりゃあちょっとは僕だって蜂子と進展したいなと思っていないわけじゃない。いや、思い切り思っているわけだけど、弱り目に祟り目・・・いや、僕と進展することは別に蜂子にとっては祟り目じゃないな。泣きっ面に蜂・・・泣いたのは蜂子だな。

 ええと、とにかく


「上手い言い方が見つからないけど、昨日はそういうつもりでああいう対応した訳じゃないんだって」

「じゃあどういうつもりで対応したんだよ。ぶっちゃけやれたろ!?というかそのつもりだったろ!?」

「思春期かな?」


 最近西澤との距離が詰まらなくて煮詰まっているらしい正宗はこういう話をよく振ってくるようになった。『那奈ともっと仲良くなるためのヒントにしたい』とかなんとか言っていたけど、まあそれも半分くらいあるかもしれないが、本音の所ははただ猥談がしたいだけだろう。


「なー、どうなんだよ、やったのかよー」

「あー・・・みんな遅いなあ・・・」

「お前って、そうやってすぐ逃げるよな。男同士、ここは腹を割って話をするところだろ!?」


 変身っと


「あ、汚ねえ!!お前はほんとそういうところ!!!蜂子じゃないけどそういう所だと思うぞ!!!」

「やかましいわ!真っ昼間からこんなところでそんな話できるか!!」


 大体そんな話をしている時に限って誰かドアの外にいて、入ってくるなり冷たい目でこっちを見ながら『最低ね』と罵倒されたりとか、『あはは・・・』と苦笑いされたりとか、『ほんと男子ってガキなの。さっさと童貞捨ててこいなの』とあざ笑われたりとか、『正宗はあーしとそういうことすればよくない!?』といいつつ何もさせなかったりとか『じゃあ今夜行くわね』と言いつつ本当に来るだけだったりとかするんだ。あれは本当になんなんだよ、期待を持たせるだけ・・・って、うん。僕も十分思春期だな。


「こうやって男同士の時しかこんな話できないだろ」

「残念だったな、今の僕は女だ」

「くっ・・・ちなみに朔夜」

「ん?」

「その格好の時って――――」

「大変だよ正宗!朔夜!」


 息を切らせた西澤がドアを外れそうなほどの勢いで開いて部室に飛び込んできた。


「修学旅行行けない!!」

「は?」

「え?」

「てかなんで朔夜女になってんの!?あーしのいないところで正宗ゆーわくすんのやめてよね!!」

「そうよ!そういうのは私の目の前でやりなさいよ」


 うん。蜂子は昨日の今日でもうすっかり通常運転だな。逆に安心したよ。

 って、そうじゃなくて


「修学旅行に行けないってどういうことだ?」

「それについては私と翠から話をするわ」

「するの」


 後から入ってきた関と翠の話によれば、購買帰りに担任に捕まった四人はその場で驚くべき・・・というか、よくよく考えてみればそうなるよな。という話をされたらしい。

 曰く、僕と蜂子と正宗は海外へ渡航できない。

 今現在、僕も蜂子も、当然正宗も国内トップ10には入ってない(僕はそもそも戦技研には正式に所属していないので半分民間人、蜂子は戦闘系の魔法がからきしなので戦力にはならない、正宗は将来的にはともかく、今日現在日本人ではない)ので、本来は海外旅行に問題はないのだが、出身国のトップ10相当の魔力というのがネックで、現地で実力が解った場合、最悪拘束される可能性があるらしい。

 現在もアメリカは友好国なのでそう簡単に拘束とはならないだろうけれど、万が一のことを考えると僕らがハワイに行くのはやめておいたほうがいいというのが国と学校の見解だ。


「じゃあ俺と朔夜と蜂子は留守番ってことか」

「まあ、仕方ないな」

「留守番はともかく補習とかは勘弁してほしいよな」

「だな」

「そうじゃなくて!!正宗と朔夜はあーしとかハチと一緒に旅行行けなくて寂しくないの!?」

「蜂子と僕は結局一緒だしなあ・・・」

「あ!そうじゃん!ハチずるい!!!」


 まあ、それが解っているから蜂子は西澤ほど大騒ぎしてないわけだ。

 ・・・ここで『そうよ』って返ってこないのがホッとするやら、ちょっと寂しいやら。って、いかんいかん。蜂子に毒されているぞ、僕。


「俺も那奈と離れるのは寂しいけど、騒いでも仕方ないわけだしな」

「ところが、そうでもないのよ」

「那奈と蜂子が最後まで話を聞かずに走って行っちゃったあとに先生が言ってたの。『だからお前達の班は国内コースに変更するか?』って」

「え、何それ、そんなのあったっけ?」

「ああ、言われてみれば最初にそんな話があったわね。確か参加者希望者が少なすぎて、中止だかなくなったかしたって」

「そうなの。私もさっき聞くまで忘れてたけどそんなのがあったの」

「そうだっけか?」


 確かにそんな話があったのを今思い出した。

 最初にHRで担任が『一応聞いておくけど』と前置きしてから話をしてたけど、誰も聞いてなかったやつだ。


「ちなみにその場合、うちの担任が引率らしいの。あとなんかそわそわしながら『そろそろまた田村が転入してきたりしないのかな』って言ってたから丁寧に『さすがにしてこねーの。いい歳こいて妙な期待していないで婚活始めた方がいいの』って言っておいたの」


 なんか知らないけど、あの人って父さんのこと好きだよなあ・・・。

 

「じゃあ私と朔夜と正宗は国内コースね」

「あーしもそっちにする!!」

「私とエリスもそっちにするわよ。あんたたちがいない旅行なんて楽しくなさそうだからね」

「私も別にハワイに行きたかったわけじゃないからそれでかまわないの」

「いや、華絵はともかくエリスは・・・ってあれ?エリスは?」

「今日も左右澤と一緒に食べるって言うから購買で別れたわよ」

「そっか・・・」

「ちょ、なんで寂しそうなの正宗!あーしがいるんだからよくない!?」

「いや、那奈とエリスは別枠っていうかだな。妹に彼氏ができるってこんな感じなのかなって思っただけで」

「は?その件はエリスが長女で私が次女であんたが末っ子ってことで落ち着いたでしょ」

「今はその話じゃないだろ?エリスの行き先を華絵が勝手に決めていいのかってことを聞きたかったんであって・・それに華絵はハワイ行くの楽しみにしてたじゃないか」

「あんたが私やエリスと逆の立場だったらあんたはハワイ行く?」

「――行かない」

「ならそういうことよ」

「むー・・・ハナと正宗ってやっぱり仲良くない?」

「良いわよ。家族としてね」

「ああ。華絵とエリスは家族で、恋人は那奈だけだぞ」

「わーい!正宗すきー!!!」


 いや、だから西澤は本当にそれでいいのか?

 





 

「私、参上!!」


 国内コースへの変更をした翌々日。

 国内コースがあるならそっちがいいと言い出した僕達以外の2人の生徒を含めての説明会に、戦技研から派遣されてきたジュリがそう言って黒板の前で何かのポーズを決めた。

 今日は戦技研の用事でやってきたということで、学校の制服ではなく、自衛隊の制服を着て・・・・・・って階級章が一尉なんだけど。関に正体がバレるのが嫌だとか言いながらそういうところ本当に父さんは詰めが甘いと思う。

 しかたない、ここは蜂子を通してそれとなく注意を・・・しまった!!蜂子は今常にこっちの心を読んでいるわけじゃないんだった!!


「あれ?ジュリ、昇進したの!?」


 ああっ、対応する前に関が気づいてしまった!!!


「え?ああ・・・これ、ちょっと事情があって朱莉さんの制服借りて来ちゃったから。特に昇進とかはしてないよ」


 そう言って若干引きつった笑顔を浮かべながらジュリは見事な(?)リカバリーを決めて見せる。


「言ってくれれば私の制服貸したのに」

「あ、うん・・・今日は緊急だったから借りて来ちゃったけど、ちゃんと自分のもあるから大丈夫だよー」


 相変わらずジュリ相手だとぐいぐい行くなあ、関は。


「やっぱり先生はうちの学校の制服を着ている田村が好きだなあ。あと、先生は電○よりWが好きだな」

「先生、ちょっと黙って自分の罪でも数えていてもらっていいですか?」


 よくわからないけど、ジュリがらみだと関の圧がすごい件。

 ・・・・・・・・・・いや、別にここで『そうね』って蜂子の相槌が入らないのなんて寂しくないぞ。


「え、ええとそれでね。諸々の事情でみんなには諸々の事情で国内コースへの変更をしてもらったわけなんだけど、もうほとんど時間もなくて、今からツアーを組むっていうのがすごく難しい状況なの」


 僕も蜂子も翠も村雨も正体を知っているせいか、やりづらそうにジュリの口調で話す父さんちょっと萌えるな。

 ・・・・・・いや、だから寂しくない。寂しくないぞ。


「だからというわけではないんだけど、皆の積み立てに戦技研から少し予算を足して、その範囲でみんなで行き先や行程を決めてもらおうっていうことになったんだけど」

「質問いい?」

「はい、ハッチ・・・って、あれ?」

「どうしたの?」

「いや、テレパシーじゃなくてちゃんと手を上げるの珍しいなって思って」

「失礼な、私だっていつもいつも心を読んでいるって訳じゃないんだからね」

「そ、そう?」

「当然。他人のプライバシーは尊重するわよ」


 数日前からだけどな。


「ええと、それで質問は何かな?」

「私達で決めるってことは、つまり終日自由行動っていうこと?」

「そう!・・・という訳にはさすがにいかなくてね。どこかで一日戦技研支部の見学をしてもらうっていうのが条件だね。だから宮城のほうとか、愛知近辺、大阪とか京都、ああそうそう、福岡でもOKだよ」

「えーっほんとーに見学?そんなこと言って訓練させる気でしょ、あの薄い本みたいに!あーしはそーいうのちゃんと解ってるんだからね!」


 そんな薄い本はないと思うけど。

 さては西澤の奴、意味もわからず蜂子や翠のマネをして使っているな。


「いやいや、本当に見学だって。施設見学とか、あとは魔法少女の成り立ちとかを支部で誰かに講師をしてもらって聞くくらいだよ、まあ、模擬戦くらいは見せられるかもしれないけど、JKチームのみんなだけじゃなくて今回は普通の生徒もいるからそんなにディープなことはやれないよ」


 そう言って、チラリと仰木ともう一人の女子生徒のほうを見るジュリ。


「田村、俺からも質問いいかな?」

「ん、なにかな仰木くん」

「人数的に全員で1班ってことになるのかなって思うんだけど、間違いない?」

「ええと、それは私じゃなくて先生の領分かな。どうなんですか、先生」

「そうだな。引率は俺一人だし、1班でまとまってもらっていた方が助かる」

「だ、そうだよ」

「っしゃあ」


 小さな声でそう言ってガッツポーズを取る仰木。

 そしてそんな仰木を見て、正宗と西澤、そして蜂子と翠が満足げにアイコンタクトを交わす。

 ちなみに、僕らが国内コースへの変更を決めてすぐ、蜂子と翠の指示で正宗がすぐに仰木を誘いに行ったという裏話があったりする。


「あ、なんか放置するみたいになっちゃってごめんね、ええと・・・奈南さんは何か質問とかあるかな?」

「大丈夫ですぅ」


 少しカールのかかったふわっとした髪型や、全体的に丸めの、それでいて太っているわけではないフォルムから感じる印象の通り、奈南さんはどうやらゆるふわ系らしい。


「チッ」


 え?あれ?蜂子?今蜂子舌打ちした?

 もしかして僕の心読んでる?いや、読んでても別に舌打ちするようなことはないはずだけど。別に僕は彼女のゆるふわ系な感じが良いともなんとも考えていないわけだし。


「じゃあ私の方からは以上です。先生、あとはお願いします」

「なんだ、田村はもう帰っちゃうのか?せっかくだし放課後までいればいいじゃないか」

「あはは・・・ええと、その、仕事がありますんで。じゃあみんなも修学旅行楽しんできてね」


 どうやら父さんも担任の熱視線に気がついていたらしく、そう言ってそそくさと荷物をまとめると、さっさと教室を出て行った。


「さすがジュリ、危機回避も迅速ね」


 ・・・口には出さないでおくけど、最近父さんは若干関のジュリに対する盲目さ加減にもひいているということを、一応付け加えておこう。





え、ええと・・・ハワイには行きませんが一応水着回はあります。きっと、多分。

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