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魔法少女はじめました   作者: ながしー
第一章 朱莉編

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最終話 十年後の僕たちは 4

「ユータ、むっちゃん、油断しないでね。この人達、こんな顔して結構強いからね!」


 そう言って咲月は僕達の先頭に立って川上先輩たちのチームと対峙した。

 っておい。川上先輩のパーフェクトなご尊顔をつかまえてこんな顔とはなんだ、こんな顔とは。


 現在僕達が対峙しているのは川上先輩率いる、おそらくは生徒会チーム。

 川上先輩と、尾形先輩。そして二名の女子チームメイトだ。

 尾形先輩が川上先輩とチームを組んでいるのはまあ、幼馴染で僕と咲月のような関係だからだろう。

 そして残りの二名も同じ中学の生徒会の先輩だ


「え、ええとね、さっちゃん。やる気満々になっているところ申し訳ないのだけど、まだ開始前だし、とりあえずこちらの話を聞いてもらってもいいかしら?」

「ふっ…ハレちゃん。ここまで来て私達の間に言葉は不よ――痛ったぁっ!!!なにすんの護!」

「先輩は話があるっていうんだからちゃんと聞けって」

「だからっていきなり髪引っ張らなくてもいいでしょ!?っていうか護はハレちゃん相手だと甘いんだよ!!」

「そういうわけじゃないよ」


 そのとおりだよ。


「それで川上先輩、話ってなんですか?」

「あ、ええとね…できれば、わざと負けてもらえると、助かるかなって」


 ・・・え?


「あ、違うの違うの。そういうことじゃなくて、これはデモンストレーションみたいなものだから、もともとシナリオがあってね、上級生は強いんだぞーっていうことを示すっていうか、先輩達に追いつけ追い越せで実力を磨いていきましょうっていう趣旨のイベントだから、その体裁が崩れちゃうのはまずいのよ。もちろん私達四人はみんな魔法少女になれるからさっちゃんたち相手でも負けることはないとおもうけれど、さっちゃんたち三人相手だと、もしかするともしかする可能性があるでしょう?それに君は佐藤雄太君だよね?うちのママからも聞いているよ。君のお母さんの深谷夏樹さんって朱莉さんと同期で、かなり競っていたんでしょう?さらに関君や綾瀬ちゃんまでいるとなると、念には念を入れたほうがいいかなと思って」

「やだ・・・」

「え?」

「そんなのやだよハレちゃん。私達だって頑張ってここまで来たんだから、頑張ってきたことでわざと負けるなんてやだよ」


 咲月がそう言うと、ユータと綾瀬も神妙な顔で頷いた。

 確かに僕としても、川上先輩のためとはいえわざと負けるというのはさすがに気が引ける。

 オマケだの、ジゴロだのネカマジゴロEXだの言われていたとしても、僕は僕なりに咲月達と一緒に頑張ってきたし、このチームの一員なのだか――


「仕方ありませんね・・・関君」

「は、はい!?」

「生徒会に入りませんか?生徒会なら学年もクラスも関係なくチームが組めますよ」


 それイイね!!


「ちょ、護!?何、その顔は何!?」

「か、顔?顔って何だよ。僕は別にそんな、なあ、別に普通だし」

「これは裏切る顔ですわ」

「俺もそう思う」


 綾瀬とユータの言葉を聞いて、咲月の顔が険しくなる。


「裏切らないよね!護はそんなことしないよね!?」

「う、裏切らないともさ」

「関君、私達の力になってくださいっ!一緒にこの学校をもり立てていきましょう!」

「え、ええと・・・」


 ずるいと思います。

 目を潤ませながら両方の拳を胸の前で握りつつ上目遣いでそんなことを言うのは反則だと思います!


「ねえ護、護さっき教室で咲月がいればいいっていったじゃん。だったら私と一緒にいてよ!」

「おっとこれは衝撃の事実が飛び出した。どう思いますか、隣で二人のやりとりをきいていたであろう解説の綾瀬さん」

「ちょっと主観が入っている気はしないでもないけれど、概ねそんなやりとりをしてましたね」

「なるほど、なんだかんだ言っても護は咲月と離れられないということですね」

「中学3年間見てきましたけど、トイレと着替え以外で離れているのを見たことがないですからね、あの二人」

「ほほー」


 嘘である。さすがにそこまで一緒にはいないし、そもそも綾瀬と僕たちが一緒のクラスだったのは中学2年の時だけだし生徒会室には咲月を連れて行っていない。というか、そもそも咲月は放課後になるとさっさと帰って陽奈と紅葉と、ついでにうちの攻と遊んでいたし。


「ふたりがもうそんなに深い仲だったなんて・・・」

「ふふん、わかったら諦めて!護は絶対渡さないよ!」


 いや、別に僕は咲月のものというわけじゃ――


「それはそれで、こっちに来なくなると思うから好都合なんだけれど・・・」

「え?」

「な、なんでもないですよ!そ、それより関君、どうするんですか?邑田さんに好き勝手やられている現状のままでいいんですか!?満足ですか!?」

「そういう風に言われてしまうと不満足なんですけれど・・・」

「目を覚まして、護。ハレちゃんのところに行ったからって護が満足するようなことは起らないよ!どうせ護のことだから、声をアラームにするだけじゃ飽き足らず、生徒会の仕事が終わった後に疲れたとか言ってハレちゃんに膝枕してもらったり、逆に居眠りしているハレちゃんを膝枕してあまつさえそのまま流れでキスできたらいいなとか考えているんだろうけど」

「待て待て待て待て!!なんだその妄想は!どこからでてきた!?」

「せっちゃんがちょっと前に長文のメッセージ送ってきた」

「攻と咲月は僕を社会的に殺す気なのか!?ち、違いますからね川上先輩。僕はそんな――」


 あ、ゴミを見る目ですね。はい。


「っていうか、ハレちゃんはユイちゃんと付き合ってるんだから、護の妄想を実行したら大問題だよ。新聞部兼文芸部とかに書かれちゃうよ。文芸砲だよ」


 ああ、そういえば生徒の人数が少ない上に部活動が自由参加だから部活自体がそんなに盛んじゃなくて、人数が少ない部は似たような部と一緒になってるって学校説明の時に・・・・・・


 ??????????

 ん?

 んんん????


「・・・・・・・・・・・・・・え?なんだって?」

「だから、ハレちゃんとユイちゃんは付き合ってるの」

「いやいやまさかあ。そんな・・・」


 え?アレ?どうしたんですか、川上先輩、唯先輩。なんで二人は恥ずかしそうな顔でそっぽ向いているんですか?

 なんですかその、今朝の陽奈みたいな顔は。


「ごめん関君、実は私も知ってた」


 綾瀬さん!?


「あ、やっぱりそうなのか。なんとなく距離感がそうなのかなとは思ってたけど」


 ユータくん!?


「ええと、お二人はお付き合いを?」

「・・・」

「・・・」


 二人は一瞬だけ視線を交差させてから小さく頷いた。


 そっか。


 そっかぁー・・・・・・。


「咲月」

「うん?」

「僕はこの先も絶対に咲月がいれば良いなんてことは言わないし、そもそもこの先ずっと咲月と一緒にいるとは限らないけど、今日の所は一緒にバカップルをぶっ潰そう」

「護のそういう単じゅ・・・純粋なところ好きだよ」


 と、僕らと生徒会チームとの交渉決裂が確定した瞬間、近くに雷が落ちたような音がして、すぐに強烈な突風が僕らを襲った。

 

「ねえ護、これって」

「ああ。多分陽奈と紅葉だろう」


 以前、紅葉のやらかす大体のことは当日一日の絶交で許してしまう陽奈が本気で切れて、一週間絶交という大記録を打ち立てたことがあった。

 その一週間絶交が始まる直前、VMWの中で二人が激突したときに今のような音と衝撃波が広範囲にわたって観測された。


「あの二人が本気になるなんて、一体何があったんだろう」

「いや、どうせあれじゃないか。紅葉がロリスタの三人を見せびらかすようにして『陽奈の元彼はあたしにぞっこん』みたいなことを言ったんじゃないかな」

「・・・煽りベタと煽られ耐性ゼロだから本当にそんな事情な気がして嫌だなあ」

「まあ、さっきの控室での様子をみるに、すとりーとふぁいたーずの三人も紅葉にはかなり思うところがあったみたいだし逆もあるかもね」


 と、咲月に続いて女子更衣室のあれこれを唯一第三者視点で見ていたであろう綾瀬がそんなことを言いながらため息をついた。

 なるほど、咲月がキレていた『陽奈に捨てられた』云々の話については、咲月はすとりーとふぁいたーずVS紅葉のとばっちりを受けただけというのが本当の所なのだろう。


「つまりどういうことなんだ護。紅葉のチームと陽奈のチームはもうバトルを始めているってことか?」

「いや違う違う、多分ぶつかったのは陽奈と紅葉だけだよ。で、これも多分なんだけどさっきの衝撃波を間近で受けただろうロリストとすとりーとふぁいたーずは強制ログアウトさせられていると思う」


 距離が離れていてあれだけの衝撃波。前回の衝突時も僕と咲月はとっさに防御魔法でガードしたけれど、攻撃力全振りの攻を含めて周りにいた防御魔法を持たないプレイヤーはダメージオーバーで強制ログアウトを食らっていたし、陽奈と紅葉本人達もかなりのダメージを負っていてログアウトギリギリだったくらいだ。


「まあ、でもこれチャンスだよね、相馬さんと紅葉が瀕死のところを倒せば私達のチームは少なくとも二位は確定だし」

「むっちゃんって結構考え方エグいよね・・・」


 とはいえ、綾瀬の言う通りであるといえないこともないわけで。


「まあ綾瀬の言う通りチャンスはチャンスかもな」

「あ、ルール説明がまだでしたけど、今回のバトルは学年対抗なので、私達対一年生の皆っていう形式で、こちら側にはあともう2人参加者がいるんですよ」


 え?なんですって?


「えっと、ちょっとまってハレちゃん。つまり本当は12対6だったってこと?」

「本当は8対4という話もでていたんですけど、さっちゃんたちが居るからもう少しこちらの人数を増やしてほしいなっていう要望を出していて」

「つまり、上級生チームは魔法少女化できるメンバーを増やしつつ、新入生側に雑魚を増やすことでこちら側の強さの濃度を薄めて戦況を有利にしようとしていて、さらに僕を引き抜いて戦力低下を狙ったってわけですね」

「ま、まあ悪い言い方をすればそうなりますね」

「きったねえ!ああほんときったねえ!これだから彼氏持ちの女はよぉっ!!」

「・・・護、お前声に出しちゃいけない心の声が声に出てるぞ。あと、お前そんなんじゃロリストの二人のこと言えねえぞ」


 おっといかんいかん。冷静になれ僕。


「まあ、護の気持ちもわからないでもないけどな。それより咲月。陽奈と紅葉が無事なら衝突をとめて綾瀬の魔法で治してもらった方がいいんじゃないか?今の状態ですでに6対6なのに、これ以上戦力が減るのはまずいだろう」

「そうじゃん!護!ダッシュで二人を止めに行くよ!」

「ちょっと待て咲月、僕はかんけいなあああああぁぁぁぁぁぁぁ」


 この後全力の咲月にめちゃくちゃ引きずられた。


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