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魔法少女はじめました   作者: ながしー
第一章 朱莉編

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グランドエピローグ 朱莉 6 JKデート


翌土曜日。


 昨日はああ言ったものの、あかりだけに任せておくのも心配なので、俺はミーナと茉莉花ちゃんとあかり、それに来宮さんの後をつけて、人工湖そばのショッピングモールにやってきていた。

 ・・・駅でばったりでくわしたハナとエリスと一緒に。


「ええと、何度も言ってるように今日はお仕事なんだけど・・・」

「尾行するなら代わる代わるやったほうがいいじゃないの」

「そうそう、手伝うよー」

「いやまあそうなんだけどね」


 魔力を消せないハナがいると、ミーナはともかく魔力検知できるあかりにはバレバレになる。

今日俺はあかりには言わずに来ているので、それで難癖つけられるのも面倒くさいなかなとは思う。

ちなみに、エリスはほぼ完璧に魔力のコントロールができるようになっているのでエリス一人だったら全く問題はなかったりする。

さてどうしたものか――――あ、そうか。


「ごめんエリス。ちょっと一人であかり達のことつけてもらっていい?」

「構わないけど、どしたの?」

「ちょっとハナとショッピングにね」

「・・・」


 あ、ちょっとそんな蔑んだ目で見るのやめてくださいエリスさん。


「いやほら、ハナって魔力のコントロールが下手でしょ?だからその対策をちょっとさ」

「下手・・・」


 ああっ!今度はハナさんの目から光が消えた!!


「と、とにかくお願い」

「んー、じゃああとでハナと交代したら私もジュリになんか買ってもらおっと」


 なんでみんな俺がお金出す前提で話するんですかね!?




「で?魔力のコントロールが下手くそな私になんの用なのかしら」


 エリスと別れてすぐにハナはむすっとした表情で腰にてをあててそう言った。


「下手くそっていうか、ほら、人間何事も得手不得手があるじゃない?」

「さっきジュリが下手って言ったんじゃない」


 う、うーん、思ったより怒ってるなあ。


「だけど、だからってハナのこと嫌いとか見下しているわけじゃないんだよ。できないことは仲間と協力したり、デバイスを使ったりすればいいだけの話だしね。だからはい、これつけて」


 そう言いながら俺はバッグの中から魔力封じのブレスレットが入った袋を取り出してハナに手渡した。


「え、かわいい。なにこれ」

「翠が試作したやつなんだけど、魔力封じ用のブレスレット。ミーナが暴走した時用にって持っていたんだけど、ハナにあげる」

「いいの?」

「道具は弱点を補って長所を伸ばすためにあるからね。それがあればハナの弱点は十分補えるでしょ?」

「そうよね!わたしはこの弱点さえなくなれば一人前よね!」

「あ、うん、まあ・・・防御魔法は国内屈指だからね」


 これは真面目な話で、ハナはそっち方面に使うときだけ魔力の燃費が著しく良くなる。

 昔柚那が開発したピンポイントバリアもハナだけが異常に長い時間動かし続けられるし、訓練でだけど、ピンポイントバリアをさらに3重に重ねるなんて離れ業もやって見せた。

 とはいえ攻撃手段に乏しいという弱点はどうしようもなく、一人前というにはまだまだバランスが悪かったりする。

 まあ、戦技研内でのキャリアパスがもうちょっと成熟すればワンチャン教官の道とかもありそうではあるけれど。



「どうしたの?」

「ええと、ハナの将来のことをちょっと考えてた」

「えっ、ちょ・・・将来とかっ、たしかにジュリのことは好きだけど、わ、私別にジュリに対してそういうんじゃないんだけど!?」


 いや、別に俺もそういうつもりじゃないんですけどね。

 てか、君のお姉さんに『妹さんをください』って言った瞬間俺の首が飛ぶわ。


「そりゃあ、お姉ちゃん所もそうだし、同姓婚も認められるようになりそうだって話はあるけどそんな私達まだ高校生だし・・・」

「あ、私もハナのことは大事だけどそんな風には思ってないから大丈夫だよ」

「はぁっ!?じゃあ私をからかったの!?」

「いや、だからそういうんじゃなくてね」

「・・・・・・」

「そういうんじゃないけど、勘違いさせたならごめん」

「むぅ・・・」

「ごめんて」

「・・・じゃ、じゃあこれをジュリがつけてくれたらさっきのは許してあげないでもない」


 やだもう、顔真っ赤にしちゃってハナってばかーわいーい。




 しばらくハナと一緒にウインドウショッピングをした後でお茶をしていると、エリスから『そろそろ交代して~』というメッセージが入ってきた。

 たしかにちょっと遊びすぎたと思った俺は、エリスと交代するために立ち上がったのだが、ハナに「私が行ってくるから大丈夫、魔力のコントロールができるようになった(※できてない)私に任せて!」と言われて座らされてしまった。

 まあ、それならお言葉に甘えようと、おかわりの珈琲と、エリス用のカフェラテ、そしてケーキを頼んでしばらく待っていると、追加注文したメニューが出てくるのとほぼ同時にハナと交代したエリスがやってきた。


「お待たせー・・・って、おおっ、さすがジュリ、気が利く!」

「でしょ」

「ハナだったらこうは行かないよぉ」


 そう言ってホクホク顔で席につくエリス。

 悪い子でも気が利かない子でもないんだけど、ハナってちょっと残念なところがあるからね。しょうがないね。


「あ、そうそう。この間はありがとうね、エリス」

「え?・・・ああ、佳代さんのこと?別にあたしはなにもしてないよ。佳代さんと少し話をして、あとは憂さんが説得しただけだし。むしろあれしかしてないのにうなぎなんてごちそうになっちゃって申し訳ないくらいだよ」

「いや、生倉達が来るまで佳代を守ってくれたし、エリスとハナはよくやってくれたと思うよ。だから俺としてはむしろうな重くらいじゃ足りないかなって思ってるんだけどね」


 問題はなぜかうな重じゃなくて、特上鰻懐石を食べた佐藤夫妻だ。

 時計坂さんに蹴られるだろうけどダメ元でもらった領収書とレシートを見ながら星宮に聞いて、あの夫婦がハナよりエリスより高いの食べてたからビビったわい。


「あ、じゃあ私もブレスレット買ってもらおうかな」

「エリスは魔力のコントロールできるだろ。ってかアレは売り物じゃないよ」

「そういうんじゃなくて・・・ほんと女心がわかってないなー、そんなんじゃモテないよー?」

「おっと、あらかじめエリス好みのドリンクとスイーツを注文しておいたジュリちゃんにそんなこと言っちゃう?」


 俺はどっちかと言えば女心がわかってる方だと思うよ?こういうの、左右澤くんとかには望めないホスピタリティよ?


「それは女心じゃなくて乙女心」

「なるほどわからん」


 というか、その二つって違うものだったのか・・・。


「そういえば、今日ってあかりちゃんと茉莉花ちゃんと来宮ちゃんとミーナちゃんだけなんだね」

「ああ、異星人組は月例ミーティングの日。和希と真白ちゃんは真白ちゃんの実家に行ってて、みつきちゃんは最近張り切ってお父さんしているひなたさんに呼ばれてバーベキューだってさ」


 おかげで同行する人数がそれほどでもなく、一万円札一枚とさよならするだけで済んだのは非常によかった。

 まあ、この地域が普段に比べて若干手薄になってしまっている感は否めないけど、この辺魔法少女居すぎじゃないかって話もでているくらいだし、そもそも今日は俺もいるのでこれだけみんなが出かけていても他の地域に比べてまだまだ戦力は厚い。


「ふーん、朔夜と蜂子も柚那さんとこ行ってるし、今日はこのへん戦力あんまりいないねぇ」

「え?そうなの?」

「うん。二人とも咲月ちゃんにメロメロだから」

「うちの娘はかわいいからね。しょうがないね」

「うっわ、親バカがいる。・・・でも、たしかにかわいいよね、咲月ちゃん」

「だろ?」

「うん。だからさ、ジュリ・・・朱莉さん」

「え、どうしたの真剣な顔して」

「あのかわいい子が大人になるまで、死んじゃダメだからね」

「・・・ああ、もちろんだよ。俺は咲月を嫁に出すまで死ねないからな」


 色々な人に言われてきた言葉だけど、咲月を引き合いに出されてエリスに言われると重みが違う。


「あはは、嫁とか古風だねえ。今は女同士って可能性もあるんだよ?」

「うーん、まあそれはそれで」

「いいんかいっ!」


 もしかしたら俺の運命の相方はエリスなんじゃないかってくらいしっくりくる流れるようなツッコミありがとうございます。

 でもね――


「って、あれ?もしかして本気?」

「変な男に取られるよりはそのほうがいいまである」

「え・・・えぇ・・・?」

「少なくともひなたさんはそう言ってたぞ『みつきも陽奈も嫁になんか出さないんだいっ』って」


 だから俺だけじゃなくて、娘が思春期にさしかかった世のお父さんはそんな感じだと思ってたんだけども。


「えっと・・・ダメパパだけでつるんでると娘に嫌われると思うよ?」

「ダメですかね」

「ダメだね」


 とはいえ、周りにダメパパ以外がいない件。


「例えばほら、尾形さんとかさ、佐藤さんとか、あと楓さんとか」

「ええーっ・・・ゆきりんはともかく佐藤くんは・・・って、え?ちょっと待って、今なんか聞き捨てならない名前が入ってなかった?」

「楓さん?」

「そうそれ。その脳筋先輩」

「え、知らなかったの?」

「知らなかった・・・え?ドッキリとかじゃなくて?」

「いやいや、ちょっと話題になったじゃん」

「知らないんだけど・・・」


 何?いじめ?そういう話を回さないところから始めて、そのうち出勤したら机の上に花とか置かれてるようになっちゃうの!?


「そんなはずは・・・・・・・・・あ、そうか。イズモさんの妊娠がわかったのって、朱莉さんたちが閉じ込められてるときだ」

「それじゃあわからないよ」


 にしても誰か教えてくれても良かったじゃんとは思う。いやまあ、戦技研で話題になったらなら、みんなまさか俺が知らないなんて思わなかったんだろうけど。

 あれ?でもこれもしかしたらひなたさんも知らないんじゃないの?

 一応ラインで確認してみるか。


「どしたの?」

「一応ひなたさんが知ってるか確認してみる」


 お、即レス。

 『俺も今みつき達に聞いた。月齢がうちの天使(陽奈)と同じらしい』

 おいおい、娘のこと天使とかあの人もとんだ親バカだな。

 『じゃあうちの天使(咲月)と学年いっしょですね』っと。


「ひなたさん知ってた?」

「今知ったって。さすがに狂華さんは知ってるだろうけど」

「聞いてみ聞いてみ」

「うーん・・・最近、狂華さんに若干距離を取られてるんだけども」

「ああもしかして『総隊長フルボッコ事件』のせい?」


 あの事件にそんな名前がつけられていたとは・・・っていうか、そのタイトルだと俺の方が悪く聞こえない?あの件に関しちゃ悪いのはあっちだぞ?


「おっと、こっちも即レスだ」

「なんだって?」


『実はそれを聞いていたみやちゃんが、ボクがこっちに戻ってきてから、うちの子も同じ学年にするってはりきってて毎日大変』

 何が大変なのかとは聞くまい。というか、これ未成年に見せて良い奴かな。ダメっぽいよな。

 っていうかもうこの時期に妊娠してないんじゃ同じ学年は無理じゃないだろうか。


「・・・知ってたって」

「やっぱりね。都さんはそういうのちゃんと狂華さんと話しそうだもん」


 肉体言語だけどね。




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