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魔法少女はじめました   作者: ながしー
第一章 朱莉編

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グランドエピローグ 朱莉 5 スクールデイズ 2

5/5 後半追記しました。

 構ってほしがっている飼い犬のように俺と翠のほうを授業中にチラチラみていたハナが怒られたり、授業参観で緊張した子供のようにミスを連発した朔夜をハッチがいじったり、休み時間の度に正宗に寄ってくる女子をナッチが牽制したり、母乳の管理をミスった翠が制服をぬらしてしまって初日からジャージに着替え、4時間目に来た担任にいじめでもあったんじゃないかと心配されたりしているうちに午前中の授業が終わった。

 で、昼休み。

 JK2の面々にはお仕事だと言ってお昼を辞退し、あかりとの待ち合わせ場所にやってきた。


「おに・・・ジュリ先輩遅い!」

「ごめんごめん、ハナをまくのに時間がかっちゃってさ」

「前から思ってたけど、華絵先輩ってジュリ先輩の一体何がいいんだろう・・・」

「にじみ出る男気とか?」

「・・・」

「調子に乗りましたすみません」


 ウケ狙いでどや顔したのにその目は辛いです。本当にごめんなさい勘弁してください。


「それで、ミーナの様子はどうだ?」

「クラスでは普通だし、どうということはないって感じかな。今は茉莉花とくるみが見てくれてる」

「あれ?他の三人とえり達は?」

「作戦会議中。スクランブルがあるかもしれないからあんまり遠くに行かないでねとか、そういう話を真白ちゃんがしてくれてる」

「そっか」


JK1はなんだかんだそういう所がちゃんとしているというか、ちゃんとチームとして形になっている感じがする。JK2も早めにブリーフィングしないとなぁ。

 できれば今の状況をきちんと知っているだろう翠とか、どうせ俺の心を読んだであろうハッチあたりがやっておいてくれると嬉しいんだけど。


「って、そういえば翠が転入してきたの知ってるか?」

「ああ、うん。私は都さんから聞いてたけど、ジュリ先輩はもしかして知らなかったの?」

「知らなかった・・・」

「なんか休職して学校に行きたいとか言い出したらしくてね」

「いや、でもハレちゃんの面倒があるだろ」

「だから旦那さんも一緒に休職して、今は家で主夫やってるらしいよ」


 え、基礎研のトップ二人が二人とも休んでるの?大丈夫なのそれ。


「ってか都さんはなんで俺にそんな大事な話をしてくれなかったんだろう」

「お兄ちゃんが狂華さんぶん殴った挙句、都さんにガチ説教するからでしょ」

「あれは俺悪くないもん」

「悪くなくても向こうからしたら超怖いって」

「怖い?」


 こんなにやさしい朱莉さんを捕まえて何を言うのか。


「いや、だって国内であの二人に喧嘩売るのなんてよっぽどのバカか、お兄ちゃんくらいだよ?しかも無傷で狂華さんに勝っちゃってるし、二人からしてみれば天敵くらいに思っているんじゃない?」

「いや、そこまで嫌われてはいないと思うんだけどな」


 一応、作戦のためとはいえ、茉莉花ちゃんを預けてもらえる程度には信頼をしてもらえているわけだし。

 でもまあ、確かにあの一件以来若干二人がよそよしい感じは受けなくもない。

 あ!もしかして佳代のチームへの引き抜きってそういうことなのか!?俺をちょっと遠ざけようとかそういう二人の意志が働いているのか。となると、やっぱりあの事件の後危惧していた『戦技研クビ』っていう悪夢のシナリオが現実の物になってしまうじゃないか。


「どうしたの、変な顔して」

「・・・いや、なんでもない。それより午後も頼むな、もしなにかあったら俺たちもすぐ行くから」

「んー・・・まあ、みつきと真白ちゃんと和希と私がいて、さらに茉莉花とえりと静佳もいるのにおにいちゃんとか先輩達に手伝ってもらうようなことはないと思うんだけどね」

「そうは言うけど、外国の魔法少女にはネームドがいるってことはかなりの抑止力になるんだぞ」

「ああ、そういえばお兄ちゃんは10位までに入ってるから一応名前付き(ネームド)なんだっけ」

「おう。こう見えて国内4位だからな」


 『おめえ何中の誰だよ』とか『俺誰々先輩知ってるんだぞ』みたいなヤンキー的なアレじゃないけど、どこの誰だかわからない魔法少女よりは、どんな規模の国であれその国で10位までに入っていて、最近国連で始まったネームド制度に登録されている魔法少女がその場にいるというのはかなりの抑止力だ。

実際、この制度の狙いである、国と国の間の余計な衝突を回避するという狙い通りアメリカのネームドであるジャンヌが現れたことで越境してきていた東ロシアの有象無象達は一旦国境線まで戻ったわけだし。

 まあ、あかりに聞いた話や今現在判明している諸々の情報を合わせて考えると、人の少ない東ロシア的にはミーナもネームドクラスという可能性がなくはなかったりするのでネームドだから引いてくれるということはないかもしれない。

でもまあ、それでもあの子はこの間の一件で俺が狂華さんと戦っていたところを見ていたわけだし自分と俺との実力差はわかっているだろうから、なにかしようとしていたとしても俺が出て行けば多分諦めると思う。

最悪、彼女が自爆覚悟で来ていたら退かないかもしれないけれど、自爆のターゲットになりそうなジャンヌとアビーに会わせなければ大丈夫だろう。

ちなみに余談だが俺のネームドとしての登録名は『赤い旋風』。別にこれはトゥリス結成の時のラジオで名乗った名前を俺が気に入っていて決めたというわけではない。都さんの独断だ。


「・・・」

「なんだよ」

「思ったんだけどさ」

「ん?」

「今回、ジュリ先輩になる必要あった?ミーナを牽制するんだったらおにいちゃんはおにいちゃんのままのほうが良かったんじゃないかなって思うんだけど」

「あったよ。ミーナに余計なストレスかけずにすむし、なによりネームドどころか今までまったく目立った活躍をしていないジュリのほうがミーナの本音を聞き出しやすい」

「本音ねえ・・・私が午前中みた感じだと、あの子は別に本気で共産主義?とかじゃないと思うよ。私達と変わんない感じに見えたけど」

「それはわかってる。問題は、ミーナがミーナの意志を持っているかどうかってことだよ」

「なにそれ、どういう意味?」

「洗脳暗示その他諸々、世の中には怖い薬や魔法がいっぱいあるからな」


 正気のミーナになら話せることも、正気でないミーナには話せない。そういうことだ。

 例えば、ユーリアの死をトリガーに何かコトを起こすような暗示。そんなものが掛けられていたら、ユーリアの死が確定したことをミーナには伝えられない。

 だから真実を知らせる前に、ミーナをちゃんと慎重に注意深く観察しなければならない。


「一応、ユーリアとジャンヌの事は話題にするなよ」

「もちろん。そこはもう皆にも言ってあるから大丈夫だよ」





 あかりと別れて教室に戻った俺は、すぐに翠に手を引かれて教室を出ることになった。

 というか、JK2が俺たちの後をみんなでぞろぞろついてきたので全員集合だ。


「さてジュリちゃん、一体なんの用で転校してきたのか教えてほしいの」

(どこまで話したものか判断つかなかったから朱莉さんからみんなに説明してほしいそうです)


 人気の少ない校舎裏で、腰に手を当てて詰問するようにそう言った翠の台詞に被せてハッチが同時通訳のように話してくれる。


(ちなみに、朔夜には?)

(わたしも翠も何も言ってないので、朔夜含めてみんなにどう伝えるかは朱莉さんにお任せします)


 なるほど、了解。っと。


「ええとね、報道されているから東ロシアとのことはみんなも知っていると思うんだけど、その東ロシアからきた連絡係の子を遊ばせておくのももったいないし、異文化交流をしてもらおうっていうことになったんだ。で、その子が編入したのは一年生なんだけど、一応監視役というか本部のパイプ役として私が来たってわけ」


 おおっと、俺の口調のせいか、ジュリの正体を知っている子達が微妙な顔しているのが思ったより辛いぞぉ。

っていうか、もうこの学校の戦技研関係者でハナとナッチと正宗だけなんだよな、ジュリの正体を知らないの。ほとんどのメンバーが正体を知っているという状況でジュリをやり続けるというのはかなりいたたまれないんだけど・・・


「なるほど、さすがジュリ!しっかり本部に食い込んでいるっていうわけね!!」


 ハナにくもりなきまなこで見られてこんなことを言われてしまうと、全部バラして終わらせちゃおうって考えは引っ込めざるを得ない。

 前にエリスの言っていたとおりジュリ=朱莉をハナがそう簡単に信じるとは思えないけれど、もしここでバラしてハナが信じたら、いままで気づいてなかったことに関して顔を真っ赤にして怒るだろうし、万が一恥ずかしさに耐えかねたハナが世をはかなんで・・・なんてことになったら俺はこまちちゃんに殺されてしまう。

 というか、みんなもそう思っているから黙っていてくれているんだと思う。


「そ、そうなんだよ。ハナ達のおかげだね」

「何言ってんの。ジュリがちゃんと頑張ってるからよ」


 ああっ、辛い!みんなの『んんんんんんんんん・・・』って表情が超辛い!!


「ま、まあ私のことはともかくとして、翠は一体何で転校をしてきたの?」

「ああ、私は単純に勉強しに来たの」

「勉強って言ったって・・・」


 お前博士号何個持ってんだよって話だ。

 いまさら高校で勉強するようなことはないはずなんだけど。


「ほら、私って学生生活全部すっ飛ばして学問だけ修めちゃったから」


 ああそうか。

 そうだよな。学校に興味がなかった頃ならともかく、同じ年代の友人ができて、みんなが学校に行っていたら行ってみたいと――


「将来、晴に学生時代の話とか聞かれたとき超困るの」


 そこかよ。


「それと・・・蜂子達がいつも楽しそうだから、ちょっと学生を楽しんでみたいっていうのもあったの」


 翠はちょっと照れくさそうな顔でそんなことを言いながら、皆を見る。


「コウちゃんも休職して子育てに協力するって言ってくれたし、都さんも緊急時だけ対応すればOKって言ってくれたからお言葉に甘えることにしたの」


 なんだ、やっぱり思った通りみんなと仲良くしたかったんじゃないか。

 うんうん、おじさんはそういうのいいと思うぞ。


「そっか、楽しい学校生活になるといいね」

「・・・あと、学生ならではのチープな恋とかしてみたいの」


 なんか黒い笑顔を浮かべて楽しそうにしてますけど、それ不倫ってやつじゃないですかね。


「んー、いや、それはどうかなあ・・・ええと、旦那さんの川上博士になにか不満があるの?もしそうなら晴ちゃんもいるんだし、ちゃんと話をして不満を解決した方が――」

「コウちゃんの学生時代の話に大江恵がちょこちょこ登場するのがなんかムカつくから、私もちょっと仲いい男子作ってコウちゃんに同じ気持ちを味合わせてやりたいってのがあるのー」

「あ・・・そ、そうなんだ。が、がんばってね」


 まあね、年の差婚だとどうしてもね、そういうことあるよね。

 俺と柚那はお互い清い身体だったし、柚那が佳代とか星宮と仲いいからそんな不満は出なかったけどね。

 まあ、ガチで不倫したいとかじゃないみたいだし『他の家のことには口を出さないのが一番』ということを、ひなたさんとか都さんところの件で学習したばかりだし、翠は放っておこう。






色々あった転入初日から5日。

ミーナは毎日ちゃんと学校に通い、充実した毎日を送っている。

最初に見せていた妙な冷静さはどうやら気を張っていたがためだったらしく、翌日には家でヘタレはじめたし、あかりによれば3日目あたりから教室でも例の鳴き声を上げはじめたらしい。

つまり、ミーナには暗示や洗脳、その類いの疑いはなし。と考えていいと俺は思っている。


「とはいえ、どうやって伝えたものか」

「それなんだよね」


 お弁当を一緒に食べようとしつこいハナをエリスにお願いしてからやってきた屋上で兄妹並んで仲良く弁当を食べながら、俺とあかりはミーナにどう伝えればうまく事が運ぶかを考えていた。


「とりあえず、暴れられると面倒だから一旦どこかに移動してもらって、それからかなあ」

「まあ、ユーリアさんが亡くなったって話をするわけだしね」


 そう。その話をしなければならないのだ。

 ミーナのユーリアガチ勢っぷりを目の当たりにしている俺と茉莉花ちゃんの共通見解として、その話をした途端に話にならない状態になるだろうと予想している。


「とはいえ、個人的には友達をどこかに閉じ込めるって話をハイどうぞっていうのもなあ」

「じゃあ魔力封じでもしてから話をしてみるか。嫌がられそうだけど」

「ああ、たしか最近アクセサリータイプを作ってたよね?」

「まあ今までのいかにも手錠ってのだと色々問題があるからな」


 魔力を一次的に封じさせてもらうのはなにも囚人や犯罪者ばかりじゃない。

 魔力感知の能力者もすくなからずいる現在、例えばネームドクラスなんてのは不用意に一般人を刺激しないようにある程度魔力を抑える必要があるし。

 とはいえ一種の賓客とも言える外国のネームドに手錠をかけるなんてのはさすがにまずいし、簡易魔力封じの腕に巻き付けるあれを付けてもらうのも見栄えが悪い。

 なので、すこしファッショナブルな魔力封じブレスレットを開発したのだ。


「あ、そっか、それだ。明日土曜日だろ?お前らちょっとミーナと一緒にショッピング行ってブレスレットをプレゼントしてくれよ。ミーナもそれならつけるだろ」

「ええー・・・それってつまりだまし討ちってことじゃん」

「べつに魔力封じだってことを隠す必要はないよ。ミーナの実力が高いからとかなんとか言ってプレゼントすればいい」

「う・・・うーん・・・」


 わかる。言いたいことはわかる。

 ミーナって、あかりよりは強いけど、和希より弱い。当然、真白ちゃんやみつきちゃん、それに茉莉花ちゃんよりも弱い。そんな彼女に対してその口実はないと思う。


「ほら、お前らって皆普段から魔力抑えているからミーナより弱く見えてるだろうしさ」

「って言っても、北海道の時に茉莉花は見られてるんでしょ。それにユーリアさんの秘蔵っ子だっていうなら、あの人がミーナに私達の話をしていないって言うのは考えにくいよ」

「まあなぁ・・・」

「でも、ブレスレットをプレゼントするのは無理でも一緒に出かけてそれとなくミーナの感じを探るのはありかも」

「そうだな。とりあえずユーリアの件はまだ東ロシアには伏せてあるしもう少し時間を掛けられる。一番良さそうなタイミングで話そう」

「んじゃまあそういうことで、経費をいただけますか、邑田一尉」


 そう言ってあかりは右の掌を上に向けて俺の方に差し出した。

 そうだなあ、みんなをつれてお昼食べてってなると大体・・・って、あれ?俺の依頼じゃないのにおかしくない?





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