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魔法少女はじめました   作者: ながしー
第一章 朱莉編

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グランドエピローグ 朱莉 4 スクールデイズ 1


「ということで、今日の夕方から、また2週間ほど俺はジュリになるんだ・・・」

「いやいや、どういうわけよ。あんた今3、4日すっ飛ばさなかった!?マンガとかなら軽く一話分くらいすっ飛ばしてるわよね!?」


 俺の話を聞いていた佳代がなんか突然メタ的なことを言い出した。

 なんだよマンガならって。現実とフィクションをごっちゃにするんじゃないよ。


「すっとばしてないって。というか省略した日は生倉と面談してただけだって」

「だとしても、ジュリちゃんをやる理由ってのを省略されちゃうと、まったく話がつながらなくなるんだけど」

「佳代は勘が悪いなあ・・・星宮は俺がまたジュリをやらなきゃいけなくなった理由、ちゃんとわかったよな?」

「いや、私もわからんし。 というか、そもそもあたし佳代どころじゃなく部外者なんだけど、今の話聞いて良かったわけ?」

「別に言いふらさないだろ?それに事件の概要はもう報道されてるし知ってたろ?」


 ユーリアの侵入の件は『東ロシアからの攻撃目的の侵入か!?』とか『日本を守ったアメリカの聖女』だとか。各社いろんな見出しをつけて、いまいち真実がつかめてないというのに色々書いている。


「まあ言いふらさないけどさ・・・ちなみにこれを報道に売ると私はどうなる?」

「世界情勢とか時期的に俺も星宮も執行猶予なしで軽く懲役だと思う」

「そんな情報軽々しく聞かせないでよ!!」

「うちはマシュマロ感覚で機密情報を投げつけあうアットホームな職場だからな」

「私はあんたの職場と関係ないでしょうが!」

「冷たいこというなよ 幼なじみぃ」

「あんたそのこと、ついさっきまで忘れてたでしょ!?」


 個人的に星宮のツッコミって勢いがあって割と嫌いじゃなかったりする。


「で、邑田くん。あんたはなんだってまたジュリちゃんになるわけ?」

「なんていうかだな、その――――」





 麗らかな朝の日差しに目を覚ますと、そこは寮でも実家でもない、あまり見慣れない天井だった。

 あくまで『見慣れない』だけで、『知らない』天井というわけではない。

 だって俺は昨日の夕方、佳代達と別れた後自分で電車と徒歩でこの家まで来て、彼女達と一緒にこの部屋で就寝したんだから。

 

「おはよう、ミーナ」

「おはようございます。ジュリさん」


 俺が目を覚ますと、ミーナはもうすでに起きていて部屋の隅でスクワットをしていた。

 ちなみに茉莉花ちゃんはまだまだ熟睡中で、ビール一口で潰れた時の狂華さんみたいな安らかな顔で熟睡している。


「茉莉花ちゃんはまだ寝てるね」

「ダー・・・」

「じゃあ朝ご飯は私が作るから一緒に食べようか」

「マリカは起こさなくて良いのでありますか?」

「いいっていいって。まだ学校に行くまでにはちょっと時間があるし、ゆっくり寝かせてあげよう」

「わかりました」


 俺がジュリをやることになった原因は、昨日の昼間に東ロシアから調査官として派遣されてきたミーナだ。

 一応ミーナは調査官として派遣されてきてはいるものの、実はミーナが本部に居たところでなにもできることはない。なぜならユーリアの捜索には東ロシアからも人が出ているので、一旦ミーナが情報を受けてそれから本国に送るというのは非効率が過ぎるからだ。

 だから正直言って、本国ではそんな連絡を待っていないだろうし、彼女になんの期待もしていないと思う。

 だとしたらミーナは一体なにをしに来たのか。理由はいくらでも考えられるが俺個人としては、ユーリアのことか何かで暴れて厄介払いされたとかそんなことではないかと考えている・・・というか、ぶっちゃけ俺をはじめ、都さんや狂華さん、茉莉花ちゃんにセナにこまちちゃんまで、ミーナのことを知っている人間はそんな感じの理由なんだろうということで一致している。

 まあ、なんにしてもとりあえずやることがないなら、ミーナにはついでだから日本の文化を学んでもらおうということで、ミーナと顔見知りの茉莉花ちゃんと、茉莉花ちゃんの家に住み込みしている(という設定の)ジュリが案内役を買って出たと、そういうシナリオで、現在東ロシア所属になっているミーナと揉めそうなカチューシャをはじめ、見習い組には一旦JC寮に移ってもらっている。

 もちろん表向きのシナリオがそうなだけで、あってこれは機密情報が集まっている本部に目的のよくわからない、越境しての追跡を行うコトも辞さないような隣国の士官を置いておけないというのと、一緒に生活することでミーナの真の目的を探るという狙いがある。

 そして、彼女が何かコトを起こそうとしたときには国内で最も戦力が集まっていると言っても過言ではないこの地区のJC、JK+俺とチアキさんの全員で鎮圧にあたることになる。

 



「ええと、パンで良いかな?ご飯だとちょっと時間かかるんだけど」

「ハイ!日本の食パン大好きです!」



 昨日の夜は日本のゴハン大好きです!って言ってくれていたし喜んでもらえて何よりだ。

 なによりなんだが、前に会ったときの印象だと、こうして俺たちがもてなそうとしても遠慮したりしそうな雰囲気だったし、何よりユーリアが行方不明だというのに、取り乱すでもなくずいぶんと情緒が安定している。

 正直、ミーナってユーリアが絡むともっと取り乱したりするタイプだと思っていたんだが・・・。


「どうしたんですか?」


 ジャムをたっぷり塗ったトーストをかじっていたミーナが手を止めて俺の方を見る。


「いやその、朱莉さんに聞いていた感じだとミーナってユーリアさんのこと大好きって印象だったから、もっと不安定な感じになるかなって思っていたんだけど、意外と普通だなあって」

「少佐殿がこんなことくらいで亡くなられるわけないじゃないですか」


 そう言ったミーナの顔は、本当に微塵もユーリアの生存を疑っていない顔だった。


「・・・そうだね、ユーリアさんはきっとすぐに見つかるよ」


 最終的にこの子をどうするか。

 俺が直接この子の監視についているのはその最終判断を下すためでもある。

 ほとぼりが冷めた頃に東ロシアに返すのか、もちろん彼女が希望すればカチューシャに話を通してもらってロシアに帰るという選択肢もあるだろう。

 もしくは・・・ユーリアのように死んでもらうことになるのか。


「どうしたんですか、なんだか怖い顔をしていますが」

「ん、なんでもないよ。それより制服のサイズは大丈夫だった?」

「はい、大丈夫です。 でも私は少佐殿を探さずに学校に通っていていいのでしょうか、私は少佐殿の件の連絡係なのですが」

「それは向こうの政府とも話がついているから大丈夫だよ。ミーナにはうちの国のことを知ってもらって、東ロシアとの橋渡し役になってもらいたいっていうのが、うちの大人達の考えだからね」

「わたしのような一士官がそんな大層なことを出来るとは思いませんけれど」


 ・・・うーん。やっぱり冷静だなあ、この子。

 本当にミーナか?




「じゃああとはよろしくね、あかりちゃん」

「はいはい、じゃあジュリ先輩も頑張って勉強してねー。じゃあ行こっか茉莉花、ミーナちゃん」


 そんな感じで、校門の前でまったりと引き継ぎを終えた俺は、転入するクラスを確認するために職員室へと向かった。


「失礼しまーす」


 勝手知ったるとは言わないが、初めてではない職員室の扉を開けて中に入ると、思わぬ先客がいた。


「あれ?翠?」

「あ、ジュリなのー、おはようなのー」


 ・・・え?

 なにこれ、俺聞いてないんですけど。

 というか、翠ってまた休職するんじゃなかったっけか。確かちょっと前に、大学戻って勉強し直すとかなんとか言ってた気がするんだけど。


「お、そろったな。じゃあ教室に行こうか」


 俺が入ってきたのを見て、翠の前に座っていた男性教諭がそう言って立ち上がった。

 どうやら、この男性教諭が俺と翠のクラスの担任ということらしい。

 というか、なんで翠がこんなところにいるんだろう。

 あと、この先生って確か朔夜達のクラスの担任だ。

 別のクラスがよかったかと言われればそうとは言い切れないけれど、今日俺が転入してくることについては朔夜にもハッチにも何も言ってないのでちょっと反応が怖い。


「田村は去年もいたから大丈夫だと思うけど、川上は分からないことがあったらなんでも先生に聞いてくれな」

「はいなのー」

「うんうん、素直な生徒が増えて先生は嬉しいよ」


 えっ?何上翠さんが素直ですって!?


「それと、あまりうるさく言うつもりはないけれど、こう、行き過ぎた男女交際はしないようにな。うちのクラスにもちょっとスキンシップが過度なんじゃないかなーっていうグループがあるんだけどあまり悪い影響を受けないように」


 男女交際どころか、翠は子持ちの人妻なんですがそれは。


「ちなみに先生、その行き過ぎた男女交際をしているのって、なんていう子達なんです?」

「ああ、たしか去年田村と同じクラスだったと思うんだが、去年はそんな感じじゃなくてなあ――」

「あ、はい。もうなんか大体わかりました。大丈夫です」


 っていうかごめんなさい。多分うちの子ですそれ。

 うちの子と嫁と親友カップルだと思います。


 そんな感じで学校の近況を聞いたり、途中ですれ違った左右澤君にギョッとした顔で見られたりしながら歩いているうちに教室についた。


「えー、転入生を紹介する。今日から短期で転入してきた田村と、こっちは普通に卒業までいる予定の川上だ。田村のほうは去年も在籍していたから知っている者も多いと思う。仲良くしてやってくれ」

「なんで父さ――ジュリとせん――翠がここに!?」

「わー、ジュリとみどりんだー、ジュリー、みどりん、おーい!」

「二人とも来るなら連絡の一つもよこしなさいよねー」

「そうだそうだ!冷たいぞ!」


 ちなみに上から朔夜、ナッチ、ハナ、正宗だ。

 ハッチは頬杖をついたままこっちを見てニヤニヤ。エリスは苦笑いをしながら小さく手を振っている。

 っていうか、なんかハッチのニヤニヤ加減がちょっと怖いんですけど。


「じゃあ二人とも自己紹介をして」

「川上翠です。特技はナノマシンの研究、趣味は子育てです。こう見えて子持ちの人妻ですが、よろしくおねがいします。なのー」


 あ、先生固まってる。やっぱり翠が既婚子持ちだって知らなかったんだな・・・。

 ちなみに翠は『つかみはオッケーなのー!』とばかりにフンスと鼻息荒くどや顔をしているが、JK2の面々以外どういう反応をしたらいいのか分からないのだろう。困惑顔で苦笑いをしている。


「ええと、田村ジュリです。結構知っている人のいるクラスで嬉しいです。短い期間ですがよろしくおねがいします」


 無難にそんなことを言って頭を下げると、頭の中に『あれ?趣味子育てって言わないんですか?』という某息子の嫁からのテレパシーが飛んできた。

 ってか、咲月が生まれてからこっち、ずっと忙しくてまだ胸を張って趣味って言えるほど子育てできてねえよ!!



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