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魔法少女はじめました   作者: ながしー
第一章 朱莉編

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グランドエピローグ お見合い『ぶっ潰し』大作戦 1 

アンケートありがとうございました。


 それは、こまちちゃんのプロポーズも無事に済み、面倒な書類仕事はすべて終わらせ、クローニク関連の仕事も入れていないので今月はもうやることはない。そんな、『いよいよあとは咲月の誕生を待つばかり』となったある日のこと。


「朱莉さん・・・」


 いつものようにノックもなしにテレポートで部屋の中に入ってきた愛純の表情は暗く沈んでいた。


「どうした?ついに柿崎くんに振られたか?」

「いや、それはないんですけど。というかあり得ないですよ。私達ラヴラヴですし」


 暗い表情をしながらも『ヴ』で、しっかり下唇をかむところが本当に鬱陶しい。

 けど、柿崎くんがらみじゃないとしたら、愛純は一体なんだってあんな表情をしているのだろうか。


「柿崎くんがらみ以外で愛純に悩みなんてあるのか?」

「え?ありますよ。例えばどこかの息子さんからねちっこい視線を送られたりとか」

「・・・・・・まあ、あいつの気持ちもわからないでもない」

「そっちをわかっちゃうんですか!?」

 

 俺だって高校の頃に若い頃・・・っていうか出会う前のちっちゃい頃の姉貴が目の前にいたらめちゃくちゃ見ると思うし。

 そういうところ、あいつは良くも悪くも俺の息子なんだなあって思う。


「はあ・・・朱莉さんも朔夜くんに同じような絡まれ方しているから鬱陶しいと思っているんじゃないかと期待した私がバカだった・・・」

「いや、というかあいつがお前らを変な目で見るってのは『一緒にお風呂入ろう』とか言って朔夜をからかってたお前と朝陽の自業自得の部分もあるだろ」

「それはもう柿崎さんにも『年頃の男の子をからかっちゃだめだ』って朝陽と二人でめちゃくちゃ叱られたんで勘弁してくださいよぅ」


 柿崎くんの言うとおり!年頃の男子はある意味超ピュアなんだからな。からかったりしちゃだめだぞ!


「んで?どうしたんだ?そんなあからさまに『ほらほら、落ち込んでいますよ。落ち込んでいる私にかまってください、かまってくれないとかまってくれるまでねちっこく絡みますよ』って顔して」

「予想以上に朱莉さんが私のことをわかってくれているみたいでうれしいやら悲しいやらなんですけど・・・朱莉さんはお見合いとかっていう旧世紀の悪習ってどう思います?」

「え?別に当人がいいならいいんじゃないか?」


 昔はお見合いのおかげで人口が維持できていた部分もあるわけで、特に悪習なんて言うほどのことでもないと思う。

 実際自由恋愛になってから人口減ったしな、この国。

 

「ええっ!?まさかの容認派!?」

「いや、俺も昔オタ婚活とか言ってお見合いパーティみたいなの行ってたし。まあ、条件ガバガバにしても相手が見つからなかったから3回くらいで辞めたけど」

「ええー・・・三回はちょっと諦めるの早くないですか?合コンだって一回二回で相性のいい相手が見つからないなんてことザラですし――」

「いい感じの子や条件のいい男は一発で抜けて行って男女ともに売れ残った連中は毎回『あっ・・・』って感じでお互い目をそらすんだぞ?続ける意味ないだろ」

「あ・・・・・・・なんかすみませんでした」

 

 同情するなら嫁をくれ!もういるけど。


「それにお前の大好きな合コンだって要するに集団お見合いだろ」

「でも合コンとお見合いって違わないですかね。っていうか私別に合コン好きじゃないですからね!柿崎さんに余計なこと言わないでくださいよ!?」

「はいはい」


 そんなこと言って、愛純がトイレ協定を破って他の子が狙ってた男にコナかけて場を荒らし回るのが大好きだったって話は大橋さんから入手済みなんだからな。

 でもなんとなくわかったぞ。

 あれだ。

 またあいつがらみだ。


「でもお前の悩みはわかった。小崎プロデューサーが愛純にお見合い話でも持ってきたんだろ?で、俺にそれをぶち壊せと」

「全然違いますけど」

「あっれーーーーーーー!?」


 じゃあお見合いのくだりはいったい何だったんだ。


「というか、私Pにはちゃんと柿崎さんのことを紹介してますし」

「あ、そうなんだ、じゃあ一体なんなんだ?」

「いや、実はですね、昨日私が朝陽と一緒にいたときのことなんですけど――」

    


  その日、特にやることがなかった私と朝陽は、朝陽のバイクで私の服を買い出しに原宿まで――


 

「って、ちょっとまて」

「何ですかもう!人の回想を邪魔しないでくださいよ!」

「いやいや、お前また朝陽のこと足代わりにしてるのか?柿崎くんがいるだろ」

「何言ってるんですか、柿崎さんとのデートに着ていく服を選びに柿崎さんといけないじゃないですか」

「お、おう」


 正論・・・なのか・・・?


「ま、まあ100歩譲って一緒に出かけるのはいいけど、お前の用事なら駐車場代くらい払ってやれよ?バイクだって駐車違反なんてしたら罰金が地味に痛いんだからな」


 まあ、俺は原宿に車で行ったときにコインパーキングの看板に書いてある『400円/10分』を『400円/1h』と見間違え、『お、安いじゃないか』とかお気楽な考えで停めて駐車違反の罰金どころじゃない出費をしたことがあるけどな。

 あまりの金額にちょっと固まっているうちに目の前で料金が上がって一緒に来ていた姉貴にお金を借りたのは今ではいい思い出だ。

 

「やだなあ。私が買い物している間、朝陽がバイクのところで待ってるから大丈夫ですよぉ」


 全然大丈夫じゃねえよ。一緒に買い物に連れて行ってやってくれよ。


「って、もう!そんなことはどうでもいいんですよ!私と朝陽が原宿行って渋谷行って新宿行った後にもう一回原宿に寄ってもらったときの話なんですけど」

「行った場所が増えてる!!」

「だからそんなことはどうでもいいんです!そのときにですね――」



 バイクだと買った服が持って帰れないんで、配送の手続きをしてから朝陽のところに戻ったら、朝陽が電話をしていたんです。


「――――ええ、わかっておりますわ。もうすぐ――ですものね。今年は私も予定が空けられそうなので、向こうで。はい、お見合いも――ええ。もちろんですわ。嫌がる理由なんてないじゃないですか。普段秋山朝陽と名乗ってはいても、私は蛇ヶ端姉子なのですから」

「朝陽」

「あ。愛純が戻ってきましたので切りますわね。ではお父様、また明後日」

「電話、お父さん?」

「ええ」

「ちなみにさ・・・・・・なんかちょーっと聞き捨てならない単語が聞こえたような気がするんだけど」

「え!?な、何のことですの?ほほほ・・・私まったくわかりませんわー」



「ってなことがありまして」

「・・・・・・前から思ってたけど愛純ってみんなの声まねっていうか、ものまねめちゃくちゃうまいよな」

「え?そうですか?」

「なのになんで俺のものまねだけあんなにクオリティが低いんだ?」

「・・・・・・大好きな朱莉さんのものまねなんて畏れ多くてぇ」

「本音は?」

「えっとぉ、よく見てる人はものまねできますけど、あんまり興味ない人はやっぱりどうしてもクオリティがさがりますよね」


 ・・・・・・・・・えっと、本気じゃないよね?照れ隠しだよね?

 い、いや、俺にはわかってるぞ。愛純のあれは照れ隠しだ。そうに違いない。


「どうしたんですか?いつにも増して変な顔して」


 一応、試してみるか・・・?

 

「愛純、ちょっと柿崎くんのものまねしてみて」

「え・・・・・・・・・っと・・・・・・?・・・オッス邑田パイセン。オラ柿崎」

「お前ただ単に男のものまねをやる気がないだけじゃないか!」


 いやむしろホッとしたけど!俺だけじゃなくてホッとしたけれども!


「だって男の人のものまねしたって私に得がないじゃないですか。別にそれで私のかわいさがあがるわけでもないですし」

「はあ・・・んで、どうしたいんだ?朝陽が自分の意思でお見合いするっていうなら俺は別にかまわんと思うぞ」

「・・・・・・本当にいいんですか?」

「いや、いいって。確かに朝陽がいなくなるのは寂しいけれど、俺が寂しいからって朝陽の人生に口出しするのは違うだろ」

「いや、そういうことじゃなくて」

「え?」

「あの子がいなくなったらもれなく私のお使いは朱莉さんにお願いすることになりますよ」


 ・・・自分で免許取れって言えないくらいひどいんだよなあ。愛純の運転。

 

「それに、あの子がいなくなったら、私や柚那さんと揉めたときに仲裁してくれる子がいなくなりますよ」


 いや、まず俺と揉めないようにしような。争いは何も生まないぞ?


「あと、朱莉さんが私に振った仕事がそのまんま朱莉さんに戻っていくことにっ!」

「それはお前が仕事しろや!」


 っていうか、朝陽がお見合い決めたのはそれが決め手なんじゃないのか!?愛純に仕事を押しつけられまくるから寿退職しようとか考えたんじゃないのか!?


「とにかく!私が仕事できるようになる・・・わけないから朝陽のかわりが見つかる・・・までは朝陽に辞められたらみんなが困るんです!」

「ん?お前今小さな声でなんか言った?」

「なんにも言ってませんよ」

「そうか?」

「そうですよ。それにさっき朱莉さんも言ってましたけど、朝陽がいなくなったら寂しいじゃないですか。私達仲間じゃないですか!仲間だったら結婚するときも、子供を育てるときも一緒にいたいじゃないですか!」


 なんだろう。

 愛純はとても真に迫る表情で情感たっぷりにしゃべっているのに、今後のライフプランで直面するであろう面倒ごとを朝陽に押しつけたいとしか聞こえないんだけど。


「うーん・・・」


 愛純のことを朝陽に押しつけるのもなあ。かといって笑顔で朝陽を送り出せるかというと、愛純の言うように俺の中には寂しいなって思いもあるわけで。


「大体、今時お見合いですよ!?しかも朝陽の家柄的に相手も金持ちのボンボンでしょう?金持ちボンボンっていうチートを持っていながら自分で恋愛すらできないようなやつぶっさいくな中年童貞野郎に決まってるんですよ!そんなやつに朝陽をくれてやろうって言うんですか!?」


 おう、中年童貞とかって四文字熟語やめろや。朱莉さんのライフが削られるだろうが。

 でもまあ、愛純のせいでそんな相手と朝陽が結婚するのもなあ。


「・・・ちなみに愛純」

「なんですか?」

「お前もうちょっと仕事する気あるか?例えば朝陽と二人で同じ待遇にして副隊長を二人制にして今の半分だったらできるか?」

「なんで今そんな話になるんですか?」

「本音でいいか?」

「かまいませんけど・・・」

「お前が仕事を押しつけすぎたせいで朝陽が逃げたって可能性もあるかなって思ってる。で、俺の中でそういう考えがある以上朝陽に戻ってくれって言うには朝陽の仕事に対してちゃんと質や量を保証してやらなきゃいけないかなって思ってる」

「ぐっ・・・・・・」

「できるな?」

「・・・・・きっついなあ・・それに、嫌な聞き方するなあ、朱莉さんは」


 ちょっと直球過ぎたのか、愛純は普段とは少し違う、本気で落ち込んだときの表情でうつむく。

 でもこれが原因だった場合、今回朝陽を呼び戻せても次も、そのまた次も起こりえるし、最悪の場合、キレた朝陽がお見合いとか結婚とかそんな回りくどいやりかたをせずに戦技研を辞めて他にいくなんていうことを言い出す可能性だってある。

 いつか別れが来るとしてもそんな喧嘩別れみたいな別れ方は嫌なのだ。

 

「最悪、お前が仕事したくない、朝陽もオーバーワークだっていうなら別のところから誰か副隊長をできる子を引っ張ってくるってこともできるし、それでみんなハッピーに丸く収まるならそれでいいかなとも思う。お前はどうしたい?」

「・・・やりますよ。まだもう少し朱莉さんと柚那さんと朝陽と一緒にいたいですし,今更他の人が入ってくるのも面倒くさいですし」

「言ったからには守れよ」

「わかってますって」

「よし。じゃあ朝陽に話をしに行こうか」

「えっと、それがですね。実は朝陽はもう今朝早くに出かけちゃったんですよね」

「ええっ!?」

「いや、明日お見合いだって言ってたから今日行くとは思わなくて・・・で、しばらく待ってたんですけど、予定表見たら今日から三日間休みになってて」

「あ、本当だ!ま、まあほら。俺たちには文明の利器、携帯電話があるじゃないか。なあ」

「・・・・・・」

「どうした?」

「部屋にスマホ忘れていったんですよ。衛星電話も」


 もしくはわざと置いていったか。だな。

 一応平時だし、きちんと休暇申請しているので電話を持ち歩かないのは問題ないと言えば問題ないけれども、朝陽があえて置いていったのだとしたら、それはつまり「お見合いに本気」「お見合いの邪魔をされたくない」ということの意思表示だ。


「万策尽きた感半端ないな」


 お見合いをセッティングしたのが朝陽の父親の蛇ヶ端大使なら、蛇ヶ端大使に連絡して『お見合い邪魔したいんですけど今どこにいますかー?』なんて聞いたらとんでもない場所に誘導されてしまう。

 いやさすがにバカ正直に『お見合い邪魔したいんですけど』とは言わないが、こんなタイミングで連絡したら俺たちの目的を気取られること請け合いだ。

 あとは休暇申請を受けたであろう時計坂さんだが、彼女が何か聞いていたとしても、俺たちに情報を渡さないほうが面白そうな今の状況で素直に教えてくれるとも思えない。


 いや・・・待てよ。時計坂さんルートなら・・・


   

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