グランドエピローグ JK2-8 朱莉とこまち
セナがこまちちゃんに扮し、こまちちゃんと俺はティアラとジュリのまま、そして朝陽が俺に、愛純がセナに変身して挑んだ、対錆山戦。
まあ、曲がりなりにもトップ20に入るセナが後れを取るはずもなく、ちょっと離れたところから威力を弱めた銃撃で戦うという戦法を取ったセナは、何度も何度も錆山の武器をはじいたり、拾いに行ったお尻を打ったりといった嫌がらせを続けて錆山を泣かせ(なんか前にどこかで見たことある光景だった)セナは無傷、錆山は軽傷という状態で幕を閉じた。
いやまあ、別にまだなんの行動も起こしてなかった錆山からすれば、いきなりJKに踏み込まれるわ、国内上位の魔法少女に取り囲まれるという、もはやいじめのような戦闘を余儀なくされるわでたまったものじゃなかっただろうけど。
とはいえ、行動は起こしてなかっただけで錆山はバッチリテロの準備をしていたので『それについて情報をつかんで踏み込んだということにしよう』ということで、頼りになるこまちさんと朱莉さんが事実をもみ消すことになった。
もちろんそんなことを言い出した朝陽とセナがやるわけではなく俺が後処理をした。
まあ、俺がというのは語弊がある。今回は休みを延長してまでこまちちゃんが手伝ってくれたので俺一人でやったわけではない。
「お帰り。ちょうどお茶が入ったよ」
「お、サンキュー」
俺が書類を提出して執務室に戻ってくると、こまちちゃんは執務室の応接セットのソファーに腰を下ろして二人分の紅茶を入れているところだった。
「ごめんね、一人で蒔菜のところに行かせちゃって」
「ああ、そのくらい別にいいよ」
相変わらずこまちちゃんと時計坂さんは顔を合わせれば喧嘩をするので下手に一緒に行って時間がかかるのも面倒だしね。
「まったく、ちゃんと謝ったのに蒔菜のやついつまで根に持ってるんだか」
「時計坂さんのあれは一種のツンデレだからね。まあ本人はもう気にしてないって言ってたからコミュニケーションの一種だと思って付き合ってあげてよ」
「はあ・・・まあ、自分で蒔いた種だからしょうがないけどさ」
そう言ってこまちちゃんは自分のティーカップに口をつける。
「あ、そうそう朱莉ちゃん」
「んー?」
「今回は本当にありがとうね」
「俺は特に何もしてないでしょ。ティアラっていうアバターを使った上でではあるけど、ハナの信頼を勝ち取ってちゃんと引き取れたのはこまちちゃんの努力のたまものだよ」
セナの戦いかたにドン引きしていたので、あの戦闘でお姉ちゃんを見直したということはないだろうが、ハナは救出をした後比較的素直にこまちちゃんから提案されていた後見人の件を受け入れた。
もちろんそれはエリスもだし(エリスはそもそも佐藤夫妻の提案を蹴る気はなかったらしいけど)、JK2の解散なんて話にもなっていない。
だから、二人は今まで通り二人暮らしをするし、こまったことがあればそれぞれ遠慮なく頼れる大人ができた。多分この形は、二人にとっても二人を見守りたい大人達にとっても最良の結果だろう。
「朱莉ちゃんのそういう身内に甘いとこ結構好きだよ」
「ちょっと気にしてるんだから身内に甘いとか言わないでくれい」
「あはは、ごめんごめん・・・それはそうと、ちょっと教えてほしいんだけど」
「うん」
「朱莉ちゃんとこって、プロポーズってどうした?」
「ええと・・・何回目のになるんだろう」
「何回もしたの!?」
1回目は指輪をポンと渡して怒られて、あと何回かしたけどタイミングが悪くて・・・まあ、結局妊娠発覚したときに佳代の家のワンボックスの中でしたのがプロポーズといえばプロポーズだけど・・・。
「タイミングが悪くて未遂みたいなのが何回もあってさ。多分去年の年末に咲月がおなかのなかにいるのがわかったときにしたのが最後のプロポーズになると思うんだけど」
「なんて言ったの?」
「ええと・・・」
確か・・・・・ええと・・・・・・・・・・・・・・・・い、言えるかああああああああああっ!
「なになに?なんて言ったの?」
「・・・お、俺の子供を身ごもってくれてありがとう」
「朱莉ちゃんって普段は嘘がうまいのに、肝心なところで嘘つくの下手だよね」
「う、うるへー。とにかくプロポーズの言葉なんてこっぱずかしくて言えますかっての」
「そっか・・・・・・まあ後で柚那ちゃんに聞くからいいや」
と、満面の笑顔でこまちちゃん。
「やめて!朱莉さんのライフはもうゼロよ!?」
「まあほら、マイナスになったら柚那ちゃんに癒やしてもらえばいいじゃん」
「自らマイナスになるような秘密を話しておいて俺を癒やすとかマッチポンプもいいところじゃん」
「それもまた愛だよ」
「なぜそこで愛・・・って、でもいきなりどうしたの?今まで俺がなんてプロポーズしたかなんて聞いてきたことなかったじゃん」
「いやさ、実は元女性同士のカップルで子供が作れるようになりそうだって話で、もしよかったらテストケースににならないかって・・・それでその、セナにプロポーズをしようかなって」
「え!?マジで!?」
「ん。技術は確立してるからいつでもOKって話で、翠が使った人工子宮も使えるって。とはいえ、さすがにセナに遺伝子だけ頂戴っても言えないから、けじめをつけなきゃなって思ってさ」
「そっか、それでプロポーズの言葉が知りたいってわけだ」
すぐに子供ができればまだギリ咲月と同級生。仲間内で幼なじみが増えるのは幼なじみキャラ好きの俺としては歓迎だ。
「・・・・・・まあその、俺のは恥ずかしいから言えないけど、最近ホットなのはひなたさんとこだし、ひなたさんに聞いてみるってのはどうだろう、あとはチアキさんとこのゆきりんとか、あとはええと・・・あ!佐藤くん!」
「朱莉ちゃんのそういう自分に甘いところどうかなって思う時がある」
自分に甘いっていうのやめて!結構気にしてるんだから!
『は?一美のプロポーズの言葉?『できちゃったみたいです』だぞ』
ビデオ会議システムの向こう側で夢も希望もないプロポーズの言葉を聞かせてくれたひなたさんはそう言って疲れ切った表情でため息をついた。
「それ、一美さんのほうからっすよね?ひなたさんからはなんかなかったんですか?」
『・・・ああ、俺からは言ってないな、そういえば』
言ってあげなさいよ。
『でもどうしたんだ?いきなりビデオ会議に呼び出されたと思ったらプロポーズの話なんて』
「いやあ、俺じゃないんですけどね。ちょっと友達の参考にしたいなって」
『お、じゃあこまちはいよいよセナとくっつくのか』
「わ、私のことだって言ってねえですよね!?わたしはたまたまここに居たっていうだけで」
『はっはっは、動揺が丸わかりだぞ・・・・・・でも、よかったな彼方。幸せになれよ』
「いや、まだセナはOKって言ってないし、そもそもそれ、ひなたさんに恋してた女の子にかける言葉じゃないでしょ」
『あの頃の俺じゃお前を愛せなかったし、お前と幸せになることはできなかったんだよ。悪いな』
「うっわ、ここに来て本気でふりにくるかな普通」
『まあ俺は大人だからな、お子様とは付き合えねえんだよ』
「・・・・・・一美ちゃん私と同い年だけどね」
『え!?』
あー・・・・・・言われてみればそうだ。
「このロリコン」
『ひどい中傷するのやめろや!・・・・・・ま、まあとにかくだ、今のこまちならともかく、あの頃の彼方とは無理だったって話。俺もまだまだガキだったし、彼方なんて完全にひねくれたガキだったからな』
いや、ガキみたいな言い訳しながら何大人ぶってるんだこの人。
『とにかく、お互い幸せになろうぜ。いまんところ世界は平和なんだからさ』
「だね。ひなたさんも今度は桜の時みたいに逃げられないようにね」
『おう、任せとけ』
そう言って笑うと、ひなたさんは『じゃあまたな』と言って通信を切った。
「あーあ、ガチでふられちった」
「なにを今更。セナがいるだろ」
「まあそうなんだけどね・・・」
「・・・・・・なに?」
「こういうときは慰めてくれないんだよなあ朱莉ちゃんって」
「弱ってる女の子の弱みにつけ込むようなことしたくないだけだよ」
「うーん・・・私はそれでいいけど、他の親しい子のときは慰めてあげなよ?弱みがあるってことは、目の前の女の子は弱ってるんだからさ」
「はいはい、善処します。で、どうする?ゆきりんは海上だから無理だけど、一応佐藤くんにも聞いてみる?」
「一応聞いてみようか」
彼は今日たしかJC寮の夜勤だったはずだから管理人室にいるだろう。まあそこにいなくてもJC寮の下層に住んでいるし呼び出してもらえば良いだけなんだけど。
『え?プロポーズですか?ええと・・・責任を取らせてください、的な?』
どいつもこいつもロマンのかけらもありゃしねえ。
「まあ考えてみれば佐藤さんと夏樹ちゃんだもんね。そんなだよね、うん」
「だな。よし、終わり」
『ちょ、ちょっと待ってくださいって。いったいなんなんですか?いきなりプロポーズの言葉を教えろなんて』
「こまちちゃん今度セナにプロポーズするんだって」
「ちょ!?朱莉ちゃん!?」
『フゥ~っ!』
「なんでばらしたなんでばらしたなんでばらしたぁっ!」
「いやだって、どうせすぐバレるじゃん。ひなたさんにもあっさりバレたし」
「だからってさあ」
『えー、何?こまち結婚すんの?』
そんなことを言いながら横から顔を出す深谷さん。
「深谷さん、いたんですか」
『そりゃいるよー。っていうか私もう深谷じゃないんだけど』
「芸名みたいなもんなんだから深谷でよくないですか?佐藤くんと佐藤さんって紛らわしいし」
『・・・・・・前から思ってたんだけど、朱莉ちゃんってなんで私のことだけかたくなに名前で呼ばないの?』
「俺の後ろの処女を奪ったのがあなただからです。あの件ってぶっちゃけ未だにトラウマで深谷さんは怖い人っていうか、畏怖の対象みたいな感じで」
「え!?なにそれ初耳」
『僕も初耳なんですけど』
『ちょ、朱莉ちゃん言い方!風邪の時にお尻にネギ突っ込んだだけでしょ!』
人のケツにんなもん突っ込んでおいて『だけ』って言われましても。
『朱莉ちゃん気にしすぎなんだよ!ねえ?二人もそう思うよね?風邪を治すためだっただからしょうがないじゃんね!?』
「夏樹ちゃんないわぁ・・・」
『僕は普通に風邪薬飲むんでそういうのやめてくださいね』
『あっれーーーー!?』
ということで、かたくなに戦わないシリーズです。
っていうか、JKの二人というか、錆山と朱莉達との実力差がありすぎて書いてもおもしろくならないんですよね。
JK周りは次でおしまい(前回も今回もJK出てきてないけど)。
その次は朝陽・愛純か都・狂華のどっちかになると思います。
では久しぶりのキャラ語りです。
・深谷夏樹
本名は大垣夏妃。埼玉県深谷市出身。深谷ネギをこよなく愛するアラサー女子。
日本でいちばんおいしいネギは深谷ネギだと思っている。
男運が最悪で、付き合う男付き合う男みんなクズというダメンズ好き(浪費だけの佐藤はましな方)
桜とは高校時代の同級生で、警察学校でも同期。
公安時代はこまち(彼方)のことを怖がって目も合わそうとしなかったが、現在は普通に強い(朱莉談)レベルの実力があるためか、こまちとも普通に接しているし、トップレベルが相手でも物怖じせずにしゃべれるし、異星人組(JC)のマネジメントなどもできる。
もともと初期の設定では関東チーム五人目のメンバーになるはずだった。
柚那がわがままを言い
愛純が煽り
朝陽がご飯を食べ
夏樹が火消しをするという役回りになる予定だったが、朝陽でいい、朝陽がなにもしてなさ過ぎるということで夏樹は今のポジションに。
朱莉との仲良しエピソードとして尻ネギだけが残った。
・佐藤雄一
ガンマニア、グラサン、あごひげ、黒服、極めつけにハゲでマフィア顔という泣く子がもっと泣くような見た目をしている。
警察官としての能力が相当高く、特に拳銃射撃の腕は国内でもトップクラス。かつ、ラグビー選手のような体格のため膂力も強く格闘もかなり高いレベルでこなす。
趣味に全部使ってしまうためお金が貯まらずJKに食事をたかっていたが、『まさか魔法少女である二人の給料がそんなに少ないとは思っていなかった』というのが彼の弁。弁というか実際知らなかった。まあ知らなくても女子高生にメシたかるなよという感じではある。
夏樹とくっついた後は給料は全部渡しているため趣味につぎ込むようなこともなく家庭は円満。
JKと同時に生まれたキャラクターで、夏樹との絡みも最初はまったくない予定だったが、バックボーンを考えていったときに公安かなあ、だったら駄目男好きとは絡むだろうなということで夏樹とくっつくという着地を決めた。エリスとくっつくというエンドも考えていなかったわけではない。




