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魔法少女はじめました   作者: ながしー
第一章 朱莉編

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散歩する”元”侵略者 7  エピローグ

◇◆



「まさかあんたたちが宇宙人だったとはねえ」


 リオと理央が復縁した翌日。

 関西支部から戦技研本郡に移動した二人は朱莉を通して招いてもらっていた紫と話をしていた。


「私は先輩が卒業して私たちがいなくなる時にそう言ったんですけどね」

「俺も何度となく言っていたと思うんだけどなあ…」

「ごめん、二人ともなんかそういうお年頃なんだと思って聞き流してた」

「酷いですね」


 紫の言葉を聞いてリオが苦笑した。


「まあ、おかげで騒ぎになったりしなかったってのはあるだろ?結果オーライだって」

「そういうのは先輩が言ってはいけない気がしますけどね。しかしまあ…」

「ん?」

「先輩って本当に地球人なんですか?若すぎません?」

「あんたたちだって全然若いじゃないか」

「私たちはそもそもナノマシンで若い時代が長いように調整されているんですよ」

「で、寿命がきたらいきなりぽっくり死ぬと」

「うらやましい話だね」

「ああ、でも先輩もナノマシンを取り込んだならそのうちなると思いますよ」

「若返るの!?」

「逆行はしないと思いますけど、そこから老いづらくはなると思います」

「あと十年早くナノマシンを取り込みたかった…」

「いや、ですから十分若いですよ先輩は」

「そうかねえ…ま、あたしの話はもういいや。あんたたち結局どうなったの?都ちゃんはくっついてくれるといいなーとか言ってたけど」

「くっつきました」

「そういうことです」

「おお、おめでとう。って言ってもあたしが最後にあった時は付き合ってた時で、今も付き合ってるわけだから、あたしにはあんたたちが一回別れたって実感はないけど…というか、そもそもあんたたちなんで別れたの?」

「………今」

「それを聞きますか…」


 ふたたび付き合いだしたばかりの恋人達に「前なんで別れたの?」なんていうこと、普通だったら聞かない。だが、紫はそういうことをする人間で、それについてどうこう言ってもしょうがないということをリオも理央も理解していた。


「リオが俺の顔を二度と見たくないって言ったんですよ」

「理央さんが私にもう付き合いきれないって言ったんです」

「「え!?」」

「「そんなこと言ってないぞ(わよ)!?」」

「「は!?」」

「リオからマザーが暴走したっていう話を聞いたときにそんなことだろうとおもったよ」

「どういうことですか?」

「要するに娘離れができてなかったマザーは20年前にもエラーを起こした。で、なんらかの方法であんたたちに幻を見せたか、もしくはナノマシンで作った人形でもつかったのかな。とにかく別れるように仕向けたんじゃない?」


 紫に言われてリオはマザーの暴走の一番大きな理由に思い当たった。

 マザーにとってリオたちは娘同然。その娘たちがないがしろにされるような事件が起こった。というのがマザー暴走の主原因だったのだ。

 そういう意味ではマザー…彼女はつい最近まで子離れができていない親も同然だったのだろう。

 今のマザーが完全に子離れできているかどうかはわからないが、今はほぼ全権を、リオを中心とする議会に預けてくれているし、開戦前後よりは子離れできているとみていいだろう。だが、最近まで子離れができていなかったマザーが20年前の時点で子離れができているかと言われれば、それは…


「なるほど…」

「そう言われるとわからない話ではないな」

「…あのポンコツ、もう一回壊しましょうか」

「怖えよ!」

「あはは、リオの気持ちはわかるけど、もう勘弁してやってよ。あたしとしては同じ母親としてはマザーの気持ちもわからないでもないからさ」

「マザーの気持ち?」

「あたしだってうちのかわいい娘を遊び半分に弄ぼうとしてる奴がいたら拳骨のひとつやふたつくれてやるつもりはあるからね」

「だから二人とも怖いって」

「いや、これは別にあたしが母親、女だからってことじゃないよ。あんただって自分のところの正宗くんがへんな女に引っかかったら止めようとするだろう?」

「まあ、正宗の周りにいるのが普通の女の子かっていうのには疑問があるけど、それはそうかもしれませんね…」


 紫の指摘を受けて理央がうなずく。


「リオも、えりちゃんや、まあ静佳ちゃんには彼氏いるけど彼はいい子だしね…ああ、でも里穂ちゃんの相手はヤバいってあかりと千鶴が言ってたな…まあとにかく、えりちゃんが変な男子に引っかかってたら助けようとするでしょ?」

「それは…まあ…」


 リオはやや納得いっていない様子だったが一応頷く。


「もちろん20年前にマザーがやったことは許せないことではあるけど、こうして誤解も解けてハッピーエンドなんだからもう許してやって二人で前を向いて歩いて行きなさいって話」

「…そうですね、そうします」

「よしよし。じゃあ私はそろそろ帰ろうかな」

「え!?もう帰るんですか?」

「主婦って意外と忙しいんだよ。というか、しばらく日本にいられるなら今度うちに遊びにおいで。泊まってもらえるくらいには広いから歓迎するよ」

「はい、必ず」

「待ってるからね。それと、今度は別れるんじゃないよ」


 そう言って笑うと、紫は部屋を出ていった。


「なあリオ、お前そんなに時間あるのか?俺はもう主要国を回り終わったから急いで艦に帰る必要はないけど」

「んー…まあ、そこはそれですよ。あ、ついでですし、理央さんもどうです?」

「どうですって?」

「そろそろ次世代を育てる時期じゃないかなって思いまして」




◆◇


「さて、聖」

「さて、大和」


 昨日までとは打って変わって、戦技研本部での面談は、二国一緒に行うことになった。

 ……という段階で、聖はなんとなく嫌な予感がしていた。

 朝起きた時点でリオが部屋にいなかったので、これは昨日の夜になにかあったなと思ったし、まだ戦技研本部までエスコートし終わっていないというのに、虎徹が本当に申し訳なさそうな顔で「詳しいことは言えないが」と言って東北に帰っていったのも責任感の強い彼にしては珍しい。


「あなたの勤務態度を鑑みて」

「お前の勤務態度を鑑みて」


「「私(俺)の代理を頼みたい」」




「え?なんですって?」


 聖はたっぷりと間を開けてから聞き返したが、隣に座っている大和は腕を組み、目をつむったまま『ついに来たか』と言わんばかりにうんうんと頷いている。


「だから、よく働いてくれた聖にはしばらく私の代理をお願いしたいの。昇進よ、おめでとう」

「いや……いやいやいやいやいやぁ、ちょっとおかしいですよね?いや、ちょっとじゃない。かなりおかしい、その理屈はおかしい!なんで私がこんなホワイトな職場を離れてわざわざブラックな環境に行かなきゃいけないんですか!」

「そんなにブラックなのかリオ」

「まあ、マザー破壊の件が少し後を引いているので、私派の聖としては少し窮屈な思いや大変な思いをすることもあるかもしれないけれど―――」

「少しじゃないでしょう!?私にだって月にコネの一つや二つあるんですからね!?リオさんは自分が先月何回襲撃されたか覚えています!?」

「えーっと…40回くらい?」

「60回ですよ!日に二回平均!」

「平均ってことはもっと多い日もあるということだな!!治安の悪いことだ!!」

「大和、お前はうるさいからちょっと音量落とせ。リオ、そんなところに帰らなくてもいいんだぞ?うちの艦に来てくれてもいいんだからな?」

「いえ、さすがに後処理をせずにというのは無責任ですので、そこまではやらせてください」

「えらいな、リオは。そういうまじめなところ好きだぞ」

「ふふ……ありがとうございます理央さん」

「ああもう…なんか頭痛くなってきた」


 聖はそう言って大きなため息をついた。

 虎徹が帰ってからこっち、というか貸し切りの新幹線の中からずっとこれだ。

 Wリオは新幹線での移動中からイチャイチャイチャイチャ、肉体的接触こそそんなにないものの、ずーっとイチャイチャしているのだ。


「大和のほうは問題ないか?」

「ありません!こんなこともあろうかと戦技研スタッフの女の子に化粧も習っておきましたぁっ!」

「ああ、あの制度は廃止するぞ。もうトップが女装しなくてもちゃんと女性がいる国と国交を樹立したからな。とはいえ、パートナーを見つけようと思ったら各自の努力が必要なのはまちがいないけれどな」

「そうですか…」

「なんでちょっと残念そうなんだお前は。そういえばお前は気になる子はできたのか?」

「狂華が都と別れるの待ちです!」

「それは可能性がほぼゼロだからあきらめてほかに行け。ほかにいないのか?」

「他ですか?……ああ!!いますいます!」


 ポンと手を叩いて大和が聖の方を見る。


「え?ちょ…そんないきなり…仕事でもそんなに絡んでないし、私あんたのことあんまり知らな――」

「堆田聖の上司のアーニャさん!」


 顔を赤くしてわたわたしていた聖をあざ笑うかのように大和が別人の名を口にする。

 そして、今まで紅潮していた聖の顔は怒りで真っ赤に染まり、怒りのままに聖は大和の顔面にパンチを炸裂させた。


「お前ふっざけんなよ!?」

「くっ…お前が選ばれないのはそういうところだぞ堆田聖!」


 椅子から転がり落ちた大和は殴られた頬を抑えながら聖を非難するが、聖はゲシゲシと大和に追撃の蹴りを入れる。


「お前に言われたくないわ!」

「アーニャ?」


 うちにそんな子いたかしらとリオが首をかしげ、聖を見る・


「ああ§ΔΧμΩおΘ先輩のことです」

「ああ、ジェーンね。そういえばあの子とほかにも何人かここでお世話になってるって聞いているけど」

「リオさんが来るって聞いてみんなで休暇取ってましたよ」

「そう……ジェーンとジェーンについていったうちの子はあとでお説教ね」

「今度来た時にでも是非そうしてください」

「あら、今回やっちゃうわよ。私と理央さんは、明日日本との調印を終わらせたらそのまま新婚旅行がてら地球を回るからどこかで会えるでしょ。それで聖にはその間の代理をお願いしたいんだけど」

「どうせそんなことだろうと思ってましたよ!」

「まあまあ、将来の予行練習だと思って」

「いやですよ、私はシスターなんてやりたくないんですから。それこそジェーン先輩にでもやらせればいいじゃないですか」

「あの子あなた以上にやりたいことしかやらないんだもの」

「私はやりたいことしかやってないんじゃなくて、やりたいこと以外は手を抜いているだけですからね」

「同じことじゃないの」

「違います。あの人はできるけどやらない、私はやりたくないけど一応成果は出す。この二つは全然違うものです!」

「じゃあジェーンに会ったら『聖がお前仕事できねーなって言ってた』って言っておくわね」

「そうは言ってないじゃないですか!というかあの人リオさんと同じくらいこわ――」

「ん?よく聞こえなかったけれど、私に何か言いたいことがあるのかしら?」

「いえ…」


 満面の笑顔で問いかけるリオのプレッシャーに負けた聖は自分の椅子に座り直し、目をそらす。


「いいのよ、言ってちょうだい。これはそういうことも含めた面談なんだから」

「いや、ほんと、特に言いたいことはないですから」

「あるでしょう?ほら」

「ないですって」

「そう?あなたはこう言いたいんじゃないの?わたしは、リオさんの代わりにしばらくシスターを……?」

「……やりたいです」

「はいよくできました」


(ブラック企業だ)

(ブラック企業だ)


 リオと聖のやり取りを見ていた理央と大和は心の中でそうつぶやき、理央は今後リオに逆らうのだけは絶対にやめよう。と、心に誓った。





異星人編終了。

書いててある意味新鮮でした。特に聖。

いや、なんかごめん、ほんとごめん聖。



・堆田聖

 まじめ系怠け者。なまけたい、何もせずにだらだらしたいが、ちゃんとやる(外注含む)のほうが結果としてダラダラできる時間は増えるということに気が付いた系女子。要するにただの効率厨の働き者である。

 得意魔法のワームホールは全開状態なら日本国内ならどこへでもつなげられるくらいには強力。

 攻撃力ではえりに劣るが総合力ならこの人がトップ。

 もともとは面倒くさい、月に帰りたいとおもっていたが、戦技研が想像以上にホワイトな職場(戦闘があるときは除く)なので帰りたくなくなってしまい、さらに月の面倒くさい状況を聞いて絶対に帰りたくないでござる!と思っていたがそれがフラグだった。

 一年ほどリオの代理を経験し、その後再び地球にやってくる。


 なんか、最後ほんとごめんね。



・虎徹斗真

 虎徹はまだでると思うけどキリがいいのでここで。

 男性型異星人のリーダー格。

 虎徹、大和が同年代で、犬猫が同年代。正宗だけがずっと下でさらに下に弟の琢磨。

 月がDNAからの再生・クローニングなのに対してこっちは男性同士で生殖可能。なので兄弟という概念がある(月はリオ聖のようにもともと姉妹のDNAからクローニングしても姉妹という概念にならない。あえて言うなら全員姉妹という扱い)

 虎徹という名前はもちろん地球用の名前。こちらは月とちがい、偏差がどうこうじゃなくて、好きな名前を名乗っている。

 新選組好きで彩夏とはそこで一番盛り上がったが、最近自分と彩夏の中にある隊員同士の関係の見解に違和感を覚えている。

 彩夏の両親祖父母との関係は良好で婿入りを強く請われている。



・武蔵大和

 最初は男性異星人で一番強くするつもりだった。(虎徹と犬山のほうが強い)

なので、大艦巨砲主義の権化のような名前が重なっている。

もちろん狂華とうまくいくわけもなく、かといって一生独身というわけでもなく。普通に嫁さんもらって……うーん、艦と地球の間を取り持つ合コン司会業とかやってそう。


自分はあまり具体的にCVイメージして書かないんですけど彼だけはなんとなく檜山修之さんのイメージで書いてたというある意味でレアキャラ。(ほかに声のイメージがあるのは愛純と朝陽、あとは作中で朱莉が言っている黒須警視とゆきりんくらい。柚那・朱莉にすらない)最後あんまり出番もセリフもなくてごめんよ。



・紫

 リオ理央の先輩。JCJK朔夜の大先輩で朱莉の姉で、あかり千鶴沙織3姉妹の母。

 ……この人も属性多いなあ。

 料理中に話しかけると包丁持ったまま来ちゃう困った人。高校時代告白千人切りを達成したみたいなこと書いたけど、考えてみると授業のある日に3人ふっても1000人にならないんですよね。意外と三年間って短い。

 特に何もしなくても若い全盛期の容姿と身体能力が長く続くというサイヤ人みたいな人。

 苗字がないのは旦那に設定してないから。だから千鶴も沙織も苗字の設定がない。

 あかりだけ邑田家の養子なので邑田。優陽じゃないけどややこしい家やで。


・リオ

 紫の後輩でJKJC朔夜の大先輩にあたる人。そして月の最高責任者。

 もともと理央とはラブラブで卒業したら結婚しようねという話だったが、マザーの妨害で流れてしまい、気づけばオールドミス。マザーの件や諸々でストレスマックスだったところで理央と再会し、夏緒に背中を押されてゴールイン。すぐにとはいかなくても、理央と一緒に地球に移住することを前向きに検討中。



・理央

 紫の後輩でJKJCそして朔夜の大先輩。艦の責任者。総統。

ドゥーチェと呼んでもいいよ。艦全体のノリもそんな感じ。

男は別フォルダの例にもれず、リオ以上に未練たらたらだったおじさん。お幸せに。



 リオと理央の話はなんとなく考えていて、でも書く機会はないんだろうなーと思っていたところに各章ボスのリクをいただいて、生倉は今度やるし、じゃあ異星人組ついでにやるかということでこんな話に。突然出てきたといってもいいくらい唐突にリオ理央をやったので「なんだかなあ」と思われた方も多いと思いますが自分的にはやってよかったなと思っています。


 次は相馬さんち!……の予定だったけど朔夜書きたくなったので緩いの一本やろうかなと。

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