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魔法少女はじめました   作者: ながしー
第一章 朱莉編

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グランド・エピローグ JK 未来は僕らの手の中 4

エピローグはそれぞれ2~4話だと言ったな?アレは嘘だ!



『蜂子には色々期待しているの』


 食事の後みんなと一緒にラボに戻ってきた私は、ドアごしに翠からそんな思念受け取った。

 まったく意味がわからないけど、期待されるのは悪い気はしないし、多分デバイスの件で朱莉さんをうまく丸め込んでほしいとかそんなことだろう。


「やあやあ、みんないらっしゃいなの」


 そう言って、私に思念を飛ばしたことなどおくびにもださないで私達を出迎えた翠は、ラボの中に並べられた椅子に座るよう皆に促すと、リモコンでスクリーンを下ろし、私達の前に立った。


「あらためて、ようこそなの諸君。本当はもう少しあとに話をする予定だったんだけど、ちょうど関係者が揃っているので、今日に繰り上げることにしたの」

「繰り上げるって、どういうことだ翠」

「うん、実は今日、蜂子から一つお願い事をされたの。『私達が朔夜と一緒に未来に行っても戦えるデバイスを作って欲しい』って」


 翠がそう言うと、朔夜と朱莉さん達が私の方を見た。

 朔夜は驚いたような表情を、朱莉さんと柚那さんは優しい表情を、朝陽さんはなぜかドヤ顔を、そして愛純さんはニヤニヤとした、ゴシップ好きな近所のおばちゃんのような表情をしていた。

 うん、朔夜がこの人の何が良いと思っているのかまったくわからない。


「まあ、でも知っての通り、ぶっちゃけ無理なの。予算もつかないし、そもそも内規違反なの」


 そう言って、翠は肩をすくめてみせる。


「でも別にJKが行かなくても俺が朔夜と一緒に行けばいいだけの話だろ、それにもう少し増援を送ることを考えてもいいと思うし」

「うん、だから今日はその話をするの」


 そこで言葉を切ると、翠は一本のビデオテープを取り出した。


「これが、朔夜くんが未来の私から、今の私に渡すよう頼まれた未来に戻るためのデバイス…というかビデオテープだったの」

「ビデオテープ?」


 流石に私達は知っているけれど、純然たる未来っ子の朔夜にはわからなかったらしく、一人だけ首を傾げている。

 とはいえ、なんとなくわかった。つまりは、あの中に朔夜が未来に戻るためのヒントが入っているということだろう。


「つまり記録媒体なの、今で言うDVDとか、メモリーカードみたいなものなの。まあ、10年前くらいから減ってきているから、今年生まれの朔夜くんが知らないのは無理もないの。というか私も実物見たことなかったから一瞬なんじゃこりゃって感じだったの」


 翠はそう言ってプロジェクターに繋がれたビデオデッキにそのビデオを差し込んだ。


『あれ?これもう映ってる?』


 画面に映し出された、少し歳をとった柚那さんがこちらをじっと見ながらそう言った。


『映ってるはずですよ』


 愛純さんの声が画面の外から聞こえ、その後15年後の愛純さんともうひとり、なんとかの拳に登場しそうな顔と体つきなのに髪型はツインテールという違和感しかない人物がフレームインした。


『OK。じゃあ……ええと、これを見ているということは、多分朔夜はお父さんを救えたっていうことだと思います。お疲れ様、よく頑張ったね、朔夜』


 画面の中の柚那さんはそう言ってすごく優しい笑顔を浮かべ、その笑顔を見た朔夜の頬が少し照れくさそうに緩む。


『まあ、朔夜ならやってくれると信じてたけどね』


 と、画面の中の愛純さん。


『私達は、あなたのことを誇りに思いますわ』


 と、いい笑顔で親指を立てる世紀末覇者……って、え!?この人朝陽さん!?

 どうしてそんな姿に!?というか骨格からしてまったく別人なんですけど!?


『もしかしたら、そっちで彼女の一人くらい作ってたりしてね』


 画面の中の愛純さんに言われて朔夜のほうを見ると朔夜と目があったが、朔夜は顔を赤くしてすぐに目をそらしてしまった。

 ういやつめ。


『一人ならいいんですけど……』

『ああ……朔夜は朱莉さんの息子だからなあ…』


なんとも言えない顔でため息をつく画面の中の二人を見て、今度はみんなの視線が朱莉さんに集中する。

 私の知る限り、というか心を読んだ限り、朱莉さんから誰かになにかしたとか、そういうことはなかったはずなのに、なんであの人ってこんな評価なんだろう。


『ま、まあ、でも若い時のそういうのは勲章みたいなものだしね。私も若い頃はいろいろあったしね』


 フォローなんだかフォローじゃないんだかよくわからない事を言う画面の中の愛純さん。


「そうそう。さすが未来の私。よくわかってる」


 いや、だからそれフォローじゃないですからね、愛純さん。

 そして暫くの間、画面の中の三人はああでもないこうでもないと雑談を続け、私達が、朔夜の小さい頃の話や未来の状況について詳しくなったところで、少しの間が空いた。

 そして、その間のあと、画面の中で朝陽さんが柚那さんの肩に手をおいた。


『柚那さん』

『……うん』


 朝陽さんがなにかを促すように柚那さんの名前を呼ぶと、柚那さんはすこし寂しそうな顔で頷く。

 そして――


『……お母さん達は朔夜に謝らなければいけないことがあります』

『朱莉さんたちを助けたら、戻ってきて私達を助けてねと言いましたけど……』

『ごめーん、あれ嘘』


 申し訳無さそうな、泣き出しそうな顔をしている朝陽さんと柚那さんの前に出た愛純さんが、二人とは違う軽い口調と笑顔で言うが、愛純さんの表情にもどこか陰があるように見える。


『朔夜は、こっちに戻ってこられませーん』


 画面の中の愛純さんの予想外の発言に、朔夜の方を見ると、朔夜は呆然とした表情のままで固まっていた。

 そんな朔夜の状況を知ってか知らずか、愛純さんは話を続ける。


『どうやっても、今の私達の戦力では生倉軍に対抗することはできないし、多分、歴史も変わらない。それは例えば朔夜が帰ってきても覆らないし、例えば都さんが増援を送ってくれても変わらない――』


「ふざけるなよ!なんだよそれ!僕は、皆を助けられると思ったから!だから……だからがんばったのに!なのに……なんだよそれ…っ!」


 愛純さんの話をかき消すように朔夜が叫ぶ。


『――あー、多分今、朔夜超キレてんだろうなあ…まあでも、ほら、大人の責任っていうやつよ。大人のお姉さんたち的には若い子を無駄死にさせることはできないっていうか……』


「ああキレてるよ!なんだよ!くそっ!いつもそうだ!僕のことを子供扱いして!」


『……その……だから…ごめん…ごめんね』


 少し目を潤ませた愛純さんはそう言って口元を手で抑えると、カメラの前から居なくなった。


『ごめんね、わかっていると思うけど、愛純は愛純なりに気を使った結果なのよ』


 愛純さんが話している間に落ち着いたのだろう。画面の中の柚那さんがそう言ってひとつ深呼吸をして、真剣な表情でこちらを見つめる。

 朝陽さんが後ろを向いて肩を震わせているのは、多分――。


『さっき愛純が言ったように、朔夜はこっちの時代に戻ってくることはできません。これは、時計坂副司令と川上博士にも確認しています。そして、この選択は戦技研現総司令、邑田柚那の決定です』


「………」


 もう、朔夜は画面を見ていなかった。

 うつむいて座ったまま膝の上で拳を握って、痛みに耐えるように歯を食いしばっていた。


『多分、翠のことだから朔夜のほかに朱莉さんと私はいるかな、あとは朝陽と愛純、それに…朔夜の友達やひょっとしたら恋人もいたりして』


 柚那さんはそう言って司令官としての顔とはちがう、楽しげな、少しお茶目なお母さんの顔で笑う。


『朱莉さん、愛純、朝陽、それに過去の私。朔夜のことをよろしくおねがいします。それと、朔夜の友達……もしかしたら恋人さん。朔夜は同年代の友達がほとんどいなかったから、もしかしたらわがままだったり、態度が生意気だったりするかもしれないけど仲良くしてやってね……それと、朔夜』


 名前を呼ばれて上げた朔夜の顔は、涙でぐちゃぐちゃだった。


『幸せになってね。私達は、あなたが居てくれたおかげで幸せだった。本当にありがとう。今度はあなたが幸せになる番。こんな酷い世界のことは忘れて、平和な世界で、好きな人と、幸せに生きてね』

「………」


 ふざけるな!なにが幸せになってね。だ!それじゃあ朔夜の気持ちはどうなるんだ!?

自分勝手な幸せの価値観を押し付けて、そんなことで朔夜が幸せになれるものか!

未来の柚那さんが言いたいことも、気持ちも痛いくらいわかる、だけど、それでもそんなことを柚那さんに言われることで朔夜がどれだけ傷つくか、親ならわかるだろう!


「ふざけるな!!そんなの朔夜が……」


 そう叫んだ瞬間、自分の中で渦巻いていた怒りがスッと消え、皆から注がれた視線のおかげで急に頭が冷えた。


「……あ、ごめんなさい」


 朔夜もあっけにとられたような表情でこっちを見ているし超恥ずかしい。


「にひっ」


 というか、翠がこっち見て親指立てているんですけど。


『……まあ、こんな自分勝手なことを言ったら、朱莉さんとか朝陽あたりは怒っているかもしれないけれど』


 すみません未来の柚那さん、部外者が勝手に切れちゃったせいでみんな怒るタイミングを失っちゃったみたいです。本当にごめんなさいっ


『それと、今朔夜のそばに私に対して怒ってくれている友達がいたらその友達を大事にするように。その子はきっと朔夜のことをちゃんと考えて、朔夜と同じ視線で怒ったり、泣いたり、笑ったりできる子だと思うから』


 あ!これか!翠が私に期待していたことって。

 多分翠は先にこのビデオを見ていたんだろうし、この流れで私があんなことを言えば素直すぎる朔夜は……ああ……やっぱりすっごいキラキラした目でこっちを見てる……うう…なんだろう、謎の罪悪感が…こころなしか胃も痛いような…。


『もしもその子が女の子なら彼女…ううん、お嫁さんにしちゃいなさい!』


 そう言って、未来の柚那さんはぐっと拳を握ってみせる。

 そのお墨付きはすごく嬉しいんですけどなんかもう、まんまと翠の策略に乗せられた朔夜に申し訳ないやら、翠のやつをぶん殴ってやりたいやらですごく複雑です…。


『もしも男の子だったら……まあ、お母さんはそういうのも応援するから、朔夜がそれでいいならそれでもいいからね!』


 なんかいろいろ台無しです、お義母さん。






JK Aパートは多分次で終わる?予定なので次にリクエストをもらった異星人組『散歩する”元”侵略者』をはさみたいとおもいます。

その次がJK Bパート

異星人組話では挟み込む場所がなくて書いてなかった『なんで月組の本部が協調路線→侵略路線→協調路線とシフトしたのか』『リオと理央(男性側司令官)はなぜ仲が悪いのか』という話も織り込めればなと思ってます。

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