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魔法少女はじめました   作者: ながしー
第一章 朱莉編

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グランド・エピローグ JK 未来は僕らの手の中 3


 翠のラボを出て関東寮にやってきた私はラウンジで柚那さんを見つけた。


「柚那さん」

「あれ、どうしたの?蜂子ちゃん一人なんて珍しいね」

「実は朱莉さんを出迎えようと思ってチーム全員で来たんですけど……まあ、空振りでした」

「ああ…朱莉さんたちお昼には帰ってきちゃってたもんね」

「そうなんですよ、それで朔夜ったらがっくり来ちゃって」

「あはは……一緒にいないっていうことは、どこかで拗ねてるの?」

「いえ、みんなと買い出し行ってます…というか、私がちょっと那奈と喧嘩しちゃって、そのあてつけみたいな感じで無理やり引剥足られていった感じなんですけどね」

「そう…仲良くやってるみたいでよかった」


 そう言って、柚那さんはとても穏やかな表情で笑う。

 柚那さんはもともと美人さんで、実は私は朱莉さんと同じくらい彼女のファンだったんだけど、最近の柚那さんはお腹に子供がいるせいか、ただの美人さんというより、それこそ聖母のような神々しさがある。


「不肖の息子だけど、仲良くしてあげてね」

「はい!もちろんです!むしろ朔夜とは仲良くというか、末永くというか、死が二人を分かつまでというか」

「じゃあ、将来私は蜂子ちゃんの姑になるわけだ」

「そうですね、姉妹くらいしか歳が離れていないのに変な感じですけど……」

「どうしたの?」

「いえ、その…一つ聞いてもいいですか?」

「うん、別にいいけどどうしたの?真剣な顔で」

「朔夜ってそれこそ柚那さんからしたら弟くらいの歳じゃないですか。でも柚那さんは……うーん…なんていうか…」


 誤解がないように伝えるのが難しい。


「ああ、なぜ息子として扱えるのか?」

「はい」

「私があの子の母親であの子が私の息子だからかな」


 いやいやいや。


「いえ、だからそう思えるのはなんでなんだろうって思って」

「根拠みたいなものってこと?」

「そうです」

「そうだなぁ…多分、一年前の私ならピンとこなかった…それどころか、朔夜を排除しようとしてたかもしれないんだけど」

「は、排除ですか!?」


 なんかすごくいい笑顔で言っているけど、言っていることすごく怖いですよ!?


「うん。自分で言うのもどうかなと思う話だけど、あの頃の私は朱莉さんしか見てなかったから、意味のわからない事を言って朱莉さんと私の間に入って来ようする人間とか、ましてや朱莉さんが死ぬなんて話を持ってくる人間は完全に敵認定してたと思う」

「はは…」


 忘年会の時に初めて対面した時から、この人朱莉さん好きすぎだろとは思っていたけど、そこまで極端だとは思っていなかったので少し驚きだ。


「あの頃は子供だったんだよね。ただ、今の私は咲月の母親だからね。だからこう、母親の勘みたいなのが働いた感じかな」

「母親の勘ですか」

「うん、はっきり言っちゃえば、根拠とかなんにもないけど、会った瞬間電気が走ったというか…そんな感じ。多分蜂子ちゃんも子供ができればわかると思うよ」

「子供かぁ…朔夜と私の……子供…」


 可愛いんだろうなぁ。


「………フヒッ」

「蜂子ちゃん、顔、顔」

「あ、すみません…ちなみに柚那さんは、朔夜はこっちに戻ってくると思いますか?」

「朔夜はなんて言ってた?」

「戻ってくるって…言ってくれました」

「だったら戻ってくるよ。私が育てたんだったら、そういう所で嘘を付くような子には育てないからね」

「そうですね…」


 朔夜のことを信用していないわけじゃないけれど、それでもだめなことがあるかもしれない。例えば――


「大丈夫、大丈夫朔夜はそんなに弱い子じゃないし、未来の愛純や朝陽もついているんだもの」


 私の考えていることがなんとなくわかったのだろう。柚那さんはそう言って私の不安が吹き飛んでしまうような優しい笑顔を浮かべた。


「…はいっ!」

「お、声がきこえたとおもったら、やっぱりハチちゃんだ。どうしたの?」


 なんとなく私と柚那さんの話が一段落ついたところで愛純さんがそう言ってラウンジの入口から顔を出して声をかけてきた。

 って、なんか山程荷物を抱えた柿崎さんが一緒にいて、明らかに今買い物から帰ってきましたっていう感じなんだけど。


「どうしたのって……」

「あ!もしかして私、何か約束忘れて待たせちゃった!?……でも確か連絡会は来週だったと思うし、今日ってなんかあったっけ?」

「いえ、今日は朱莉さんが帰ってくる日だからお出迎えをしようとおもって学校の後にJKみんなで来たんですけど……」

「………あっ!!!」


 『あっ!!!』?


「愛純さん、まさかやっぱり…」

「や、やっぱりって何かな?お、覚えてた!覚えてたってば!……さあ、じゃあみんなで朱莉さんを迎えにいこうか」

「お昼過ぎに出て来て、今は翠のところで検査受けてるよ」


 心を読むまでもない、明らかな愛純さんの嘘に白い目を向ける柚那さん。


「うっ…違うんですよ柚那さん、これはその…不幸なすれ違いです!まれによくある物忘れです!と、というか!柿崎さんもちゃんと教えてくださいよ!!私のマネージャーも兼ねているんですから!」

「いや、俺は今朝出かける前に言ったでしょ。今日は邑田さんが戻ってくるから早く帰ろうねって」

「確かに言われたような……で、でも結局間に合ってないじゃないですかー!!マネージャーとしてどうなんですかー!」

「愛純ちゃん」

「愛純」

「う…うう…ごめんなさい…」




「あー…つまり、ハチちゃんはさっくんが帰ってこないんじゃないか、もしくは死んじゃうんじゃないかって不安なんだ」

「愛純はどう思う?」

「うーん、私は別にさっくんの肉親ってわけじゃないから柚那さんみたいに母親の勘とかそういうのは無いですけど、未来の私達がいて、JKのみんなが行くなら大丈夫なんじゃないですかね」


 愛純さんはそう言ってのんびりとコーヒーを口に運ぶ。


「だって、さっくんってなんだかんだ言って、こまちさんくらい強いし、未来の私と朝陽はもっと強いんでしょ?そこに今のJK、それに正宗くんが加わるんだったらあのアラクネを倒すくらいどうってことないって」

「まあ、それはそうなんですけど…でも翠にはデバイス作るのはだめだっていわれちゃいましたし、私は非戦闘員だし、ハナも攻撃魔法はほぼ使えないですし…」

「んー…まあ、攻撃に参加するだけが戦いじゃないしね。実際、今回のアラクネ戦はハチちゃんの協力なしでは朝陽を助け出すことはできなかったし、華絵ちゃんの防御魔法は使い方しだいでアラクネの再生を防ぐこともできたじゃない?」


 柚那さんとはまた違った観点の話で、これはこれで参考になるなあ。


「それに、さっくんが未来にいくまでにまだ一ヶ月くらいあるでしょ?それだけあればみんなまだまだ強くなれると思うしね」


 それに、と愛純さんは続ける。


「JK大好き朱莉さんがみんなだけ送り出して自分だけこっちに残ってるなんてことあるわけないじゃない。どうせ朱莉さんかジュリちゃんが一緒に行くんだろうし、未来の翠の言い分だと私と朝陽は行けないみたいだけど、華絵ちゃんがいくならティアラちゃん…つまりこまちさんも行くでしょ?そうなると、セナも行くだろうし、寿さんも行くでしょ。まあ、東北チームが回らなくなっちゃうから彩夏は残るだろうけど、それでも結構な戦力だと思うし、勝てそうな気がしない?」


 なるほど、そう言われると結構な戦力だ。


「というのが私の見解だけど、朝陽はどう思う?」

「ふぉう……そうですわね」


 いつの間にやってきていたのか、隣の席に座っていた朝陽さんが食べていたチョコレートを飲み込んでからこっちに向き直る。


「概ね愛純と同じですわね。朱莉さんが朔夜くんをほうっておくとは思えませんし、JK大好きなジュリちゃんがそれをよしとするとも思えません」

「でしょ」

「それに、都さんもあれで身内に甘いですからね。さすがにJCを戦地に投入することはないにしても、朱莉さんだけでなく楓さんとか、ひなたさんも投入するかもしれません」

「トップクラス三人を未来に送られちゃうと、この国の防衛がちょっと不安だけどね」

「そこは未来に行けない私達もいますし、何より狂華さんがいますから」


 たしかに都さんって、狂華さんだけは手放さなそうだし、映像ログで見たアラクネ戦の時の、本気を出した狂ヒ華はとんでもない威力だった。

流石に有事の対応は狂華さんひとりで大丈夫なんてことは思わないけれど、あれを見たら普通の魔法少女なら攻めてくるのを躊躇すると思う。


「まあ、国の守りはいいとして、ハチちゃんは結局なんで柚那さんとこに来たの?」

「あ、そうだった。翠が、朔夜の件で説明会をするから、柚那さんと愛純さんと朝陽さんにも来てほしいそうです」

「柚那さんはわかるけど、未来に行けない私と朝陽までっていうのはなんなんだろう」

「愛純はなんだかんだ言ってJKの修行の相手をしていますし、そのあたりのお話ではないでですか?この先の修行方針とか」

「ああ、そういうことか。でもそれなら朝陽はなんだろう」

「JKが強くなってきたから私も修行の相手をする…とかでしょうか」

「いや、あんたの魔法じゃ修行はできんでしょ」

「そんなことありませんわよ、電撃でも、合体でもバイクでもやり方で次第で修行にも使えますわ」

「朝陽ってなにげに多才だよね」


 っていうか、前の二つはいいとして、バイクってなんですか。

初めて聞いたけど、もうなんか詳細を聞くまでもなく嫌な予感しかしないんですけど。


「まあ、何の用件かは後で翠の所に行けばわかるでしょ。蜂子ちゃん、朱莉さんはまだ翠の所にいた?」

「いえ、ちょっと本部の時計坂さんのところに顔を出すと言ってました」

「了解。じゃあ、朱莉さんに顔見せにいく人」

「はい!」

「あ、私は愛純と違って、朱莉さんにはさっきちゃんと会ったので大丈夫です」

「う…朝陽が遠回しに私を責める…」

「自業自得ですわ」

「うえーん、柿崎さーん」

「今回ばかりは朝陽ちゃんに同意だなあ…」

「私の味方がいない件!」

「はいはい。だから私が一緒に行ってあげるって言ってるでしょ。柿崎さんもどうです?」

「あ、行く行く。荷物置いていきたいから一回愛純ちゃんの部屋に寄っていいかな?」

「いいですよ。どうせ朱莉さんは時計坂さんに難癖付けられているだろうからしばらく総務にいるでしょうし」

「よし、そうと決まればみんなで朱莉さんところにレッツゴーです!」


 そう言って愛純さんは柚那さんと柿崎さんを伴ってラウンジをでていった。


「さて、じゃあ私も少しやり残した作業があるので、ガレージに行ってきますわね」

「バイクですか?」

「ええ。今度後輩ライダーができる予定なのでその子のためのマシンをいじっているんです」

「後輩ライダー?」

「みつきちゃんが夏休みまでに免許をとって、バイクでお父さんを探しに行くそうですわ…」

「え、でもみつきちゃんのお父さんって確か……」

「……まあ、大阪までゆっくり旅をするのも良いのではないですか?危なっかしいようだったら私が付き添っても構いませんし」


 あ、やっぱり朝陽さんも知ってたんだ。

 というか、みつきちゃんも薄々感づいているみたいなんだけど、夏休みに本当に大阪まで行くのかな。





毎回割り込むのが面倒なので男子会3を一旦撤去しました。

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