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魔法少女はじめました   作者: ながしー
第一章 朱莉編

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むらたけ


「えー、無理無理。だってその日って生徒会長選挙の日だもん」


 鏡音と話をした翌日。都さんと情報共有をしたあとで実家に帰ってきた俺は、あかりに文化祭警護の協力要請をした。

 これはJCだったら入学予定の学校の文化祭見学に来ていても目立たないというのに加えて、あかりの魔力検知力の高さで事件を未然に防ぐという理由もあったのだが、あかりはけんもほろろに断った。


「いや、生徒会長選って別にお前が出るわけじゃないだろ。三年なんだし」

「確かに私は出ないけど、千鶴が出てるんだもん。やっぱり最後まで見守ってあげたいじゃない」

「あれ?お姉ってばいったいいつからそんなに妹思いになったの?というか、みつきちゃんとか和ちゃんや真白先輩はポスター作りとか色々手伝ってくれていたけど、お姉は手伝いに来たとか言いつつずっと高山先輩とイチャついていただけじゃなかったっけ?」

「う…」


 キッチンからコーヒーを持ってリビングにやってきた千鶴の一言であかりがギクっと背中を震わせた。


「なに!?イチャイチャしてサボってたのか?それはけしからん!そんな奴とはすぐに別れなさい」

「いや、けしからんとかそれ叔父さんが言う?柚那さんと泊まりに来るたびになにしてるか私が知らないとでも?」

「あいすみません」

「はあ…私はともかく、沙織には知られないように気をつけてね」

「気をつけます。というか、柚那と別れたからそれも今後しばらくはないと思うけど」

「「………え?なんだって?」」

「いや、柚那と別れたんだよちょっと前に」

「お母さん!大変!叔父さんが!」

「柚那さんに捨てられた!」

「なんだって!?」


 二人共そんな大騒ぎするほどじゃないし…って、キッチンから走ってきた姉貴の顔が超怖い!っていうか、包丁!包丁置いてください!


「あんた一体柚那ちゃんに何したの!ちゃんと謝ったの!?」

「いや、俺は何もしてないっていうか、柚那の方から唐突に別れを切り出してきたんだよ。ちょっと冷却期間を置きましょうって」

「おお……」

「もう……」


 なんだかんだ言ってあかりと千鶴って仲いいよなあ。


「で、何が原因でそんなこと言われたのあんたは」

「別に原因なんてないよ。ずっと一緒にやってきて、柚那も俺も初彼、初カノであんまりそういう経験がないまま来ただろ?だから少し距離を置いてお互いの関係とか見つめ直しましょうってそういうこと」

「ふうん…まあ、いいや。後で柚那ちゃんに直接聞くから」


 そう言って姉貴はキッチンの方へ戻っていった。

 っていうか、姉貴ったら俺の言ったこと微塵も信じてないっすね!


「で、こまちさんとか他の他の女の子と好き放題遊んでるってわけだ」

「いや、遊んでいるんじゃないってさっきも言ったじゃん。俺もこまちちゃんも恋も佳代もちゃんと仕事しているの!」

「……佳代って誰?」

「ああ、俺の中学の頃の同級生だよ。今は公安から出向してきてうちのチームで一緒に生倉の捜索をしてる」

「ふぅ―――っ!」

「あーやしー!」

「怪しくねえよ。普通の友達だ、普通の」

「ねえねえ、叔父さん。その人の写真ないの?」

「ねえよ」

「ええー…見たいなあ」

「ないものはないの」

「あ、こまちさんが今一緒にいるってよ。写真撮って送ってもらうね」

「ナイスお姉!」


 あかりの人脈が着々と広がってきていて最近すごく生きづらい件。


「……え、この人本当にお兄ちゃんの同級生?ウチのママほどじゃないけどすごく若くみえるんだけど」

「うわっ、ほんとだ。叔父さんって周りに綺麗な人が多いからこれでも普通とか言っちゃうんだろうねえ」


 あかりと千鶴はこまちちゃんが送ってきた佳代の写真を見てワイキャイしながらそんなことを言う。



「佳代が普通レベルじゃねえのはわかってるっつーの。普通っていうのはそういう意味じゃなくて普通の友人だって意味だよ。 とにかく、生徒会選挙の後でもいいから警備手伝ってくれないか?」

「ええー…どうしよっかなー。私もこれで忙しい身だしなあ」

「いや、どうせ当日なんてもう殆ど大勢は決しているしやること無いから、別にお姉は最初から連れて行っていいよ。人手が必要なら現生徒会枠で来賓みたいにすれば最初から居ても怪しまれないでしょ?」

「おお、なるほど。そういうやりかたもあるな、それならみつきちゃんと和希と真白ちゃんもこっちの警備に組み込めるし」

「なんで当事者そっちのけで決めちゃうのよ!っていうか千鶴はよけいなこと言わないでよね、お小遣いせしめるチャンスだったのに!」

「どうせお姉はこっちにいても働かないんだからそのくらいしても別にいいでしょ。それに高山先輩も連れて行ければ文化祭デートができるよ」

「はっ!……ねえ、おにいちゃーん」


 急に猫なで声になったなあかり。っていうか、千鶴はあかりの操縦がうますぎだろ。


「はいはい。手を回しておくよ」

「わーいありがとー大好きお兄ちゃん。お礼に今回は特別にお小遣いなしで私と和希とみつきと真白ちゃん、そして龍くんが手伝ってあげる」


 いや、高山はともかくお前達にはちゃんと給料出てんだろうが。


「あれ?そう言えばさっきからタマの名前が出ないけどタマは手伝ってないのか?」

「なんか、バスケ部のほうで二年生を一人擁立してて、部活もクラスも同じだからってそっちを手伝ってるんだよね。というか、なんか推薦者にされちゃってて、立場的に最近あんまりマガ部の方にも顔出さないんだよね」

「そっか。まあ学校に溶け込んでいるならいいんだ」


 推薦者になっているなら敵陣営と仲良くしているのは色々問題あるんだろうしな。

元気にやってるならタマの様子をしきりに気にしている小金沢さんにもそう報告ができるし…ああ、そういえば実際の学校での様子を聞いてきてくれと保護者から頼まれた子がもう3人いたっけ。


「一年生ズはどうしてる?」

「みんな元気だよ。私も含めて相変わらず5人でつるんでる。というかそういうのは私じゃなくて皆の保護者に聞いたほうが良いんじゃない?ちゃんと報告上がってるでしょ?」

「ん…まあな」


 実はうちの国で生倉が逃げたように、他の国でも似たような重犯罪者やらテロリストやらが暗躍を始めているらしく、ジャンヌもユーリアもヒルダも一時帰国していたりする。

 もちろん恵はそっちには関係ないのだが、関係がないだけに他国は敵の規模やら目的やらの状況把握に時間がかかっているらしく状況によっては配置転換なんかでもう帰ってこない可能性もあるとか言っていたので場合によっては一年生ズも帰国になる可能性もあるんだけど、これはまだ黙っておいたほうがいいだろう。


「報告じゃなくてナマの声が聞きたくてさ。千鶴から見てどう?調子は良さそう?」

「うん。魔法に磨きがかかってきたしお姉達が卒業しても安心だねって話もしてるくらいだよ」


 そういえば前のチーム戦の時にJCチームの練習相手になって善戦したとか言っていたっけ。あれからさらに修行しているんだとしたら、確かにあかりたちが卒業しても安心だ。

 それだけじゃなくて、千鶴の表情からすると楽しくやっているみたいだし、できれば三年間通わせてあげたいなあ…。

 いや、通わせてあげられるように全力を尽くそう。

 それが大人の責任ってもんだ。


「どうしたの?」

「いや。なんでもないよ。楽しくやってるなら何よりだ。じゃあ俺はこれからこまちちゃん達と警備計画の詰めをしないといけないからそろそろ帰るな」

「うん…ねえ叔父さん」

「ん?」

「叔父さんやお姉のしている仕事は大変な仕事だと思うし、大切な仕事なのもよくわかってるつもりだけど、あんまり頑張りすぎないでね?なんか怖い顔になってるよ」

「ああ。大丈夫、大丈夫。ちょっと本気出そうかなって思っただけだから心配すんな」













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