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魔法少女はじめました   作者: ながしー
第一章 朱莉編

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318/809

むねたいらに3000点 1

4話くらいの軽いやつです。

 関東寮での宴会の翌日。

 俺が小崎さんの事務所に行くと、すでに愛純と朝陽が応接室で待っていた。


「おはようございます。朱莉さん」

「おはようございまーす」

「おう、おはよう」


 俺は短く挨拶を返して、愛純の隣に腰を下ろす。


「ふたりとも随分早いな。昨日の任務って都内だったのか?」

「いえ、前に愛純が捕まえた沼崎さんを護送する任務があったんです。で、終わってから都内に前泊してたんですのよ」

「へえ、どこに護送したんだ?」

「秘密です。誰にも言うなと言われているんで…というか、私達が運んだ先に九条さんがいて、そこからさらに護送するって話だったんで、どこにいるか知らないっていうのが正直なところなんですけどね」


 なるほど、沼崎さんを万が一奪還されたりしたら面倒だし、殺されるのも色々問題がある。だったらどこにいるかわからなくしてしまえというのが、都さんの考えなんだろう。


「……」

「……」

「……なに?」


 チラチラ見られるとすごい気になるんですけど。


「いえ、ラジオの時の感じだと、根掘り葉掘り柚那さんのことを聞かれるんじゃないかと思ったんですけど」

「だって、お前ら柚那派だろ?」

「はい」

「だったら何があるのかなんて言わないだろ。それに、俺派だって言う都さんが知っているにもかかわらずあえて俺に隠そうとしてるわけだし、聞かないほうが良いんだろうなって思ってさ。しばらく柚那についてあれこれ詮索するのはやめるよ」

「そうですか。柚那さんが落ち着くまでそうしてあげてもらえると助かります」


 落ち着かないんだったらなおさら傍で力になってやりたいと思うんだが、そう言ってもだめって言われるんだろうし、ここは愛純と朝陽に任せよう。


「ただし、俺の分までしっかり柚那を支えてやってくれな。あと、俺が必要になったらすぐ呼ぶこと。別れても俺は柚那のことを大切に思っているし、何かあったときに可愛いお前たちに全部の責任をおっかぶせるようなことはしたくないから」

「大人になりましたね、朱莉さん…」


 しみじみとした表情でそんなことを言う愛純。

 そんなこと、一回り以上下の子に言われたくないんだけどな。


「それより今日打ち合わせする企画って何か聞いてる?」

「いえ、私は聞いてないですわ」

「あ、なんか他のアイドルと対決!みたいな感じらしいですよ」

「対決?」

「そうなんですよ…あ!そういえば、小崎Pからアンケートを書いておくように言われたんだった!」


 そう言って愛純がスマホと取り出してポチポチと操作すると、すぐに俺と朝陽のスマホが鳴った。


「えーっと、なになに…ああ、なるほど。クイズ番組ね」


 アンケートの入力フォームには、クイズのジャンルやらなんやらが色々と書かれていて、そのジャンルが得意かどうかを自己申告で1~5までの数字で選びレーダーチャートが描かれるようになっていた。


「えーっと、国語…4くらいかな。政治経済…3芸能…はさっぱりわからん。1。サブカル…4…地理歴史…5あとは…数学が…」


 レーダーチャートを埋めながらふと隣に座った愛純のスマホを覗いてみると、なんと愛純は全部5を選択していた。


「ええっ!?」

「ちょ、見ないでくださいよ!」

「あのなあ、お前、少なくとも地理歴史は壊滅的じゃん」

「そ、そんなことないですし」


 東北地方にある県の数を聞いたときに一都六県って言ったり、織田信長を知らないと言っていた口でそんなこと言われても全く信憑性がないのだが。


「というか愛純は消費税の計算もできないじゃないですか…」


 おおっと、それは初耳だがかなりやばいと思うぞ。


「いいの!どうせカードで買うから勝手に引き落とされるし、現金で払うときもお金はあるから5%とか計算するなんてみみっちいことしなくたって平気なの!」

「愛純、今は消費税8%なんですけど」

「どっちでも同じ!」


 ええー…うちの副隊長こんなに馬鹿だったの?普通副隊長って、頭のいい切れ者がやるイメージなんですけど。これは愛純から朝陽に副隊長をチェンジする日も遠くはないかもしれない。

 そんなことを考えながら俺がレーダーチャートを埋め終わったところで、小崎プロデューサーが「おまたせしましてー」と言いながら三人の女の子を連れて入ってきて、俺達の正面に座った。


「アンケート書いていただけました?」

「ああ、はい。今丁度終わって送信したところです」

「ありがとうございます。それでですね、邑田さん。アンケートページの企画概要にも軽く書いておいたんですけど、今回はお三方と、私の隣にいるTRI-あんぐるがクイズで対決するという内容でして…ちなみに邑田さん、秋山さんはTRI-あんぐるは…」

「最近テレビでよく見かけますので知っておりますわ。ええと――」

「三人で夕方のレディ5に出ているよね、たしかクイズのコーナーを持ってて」

「あの朱莉さんが!?」

「二次元でなく、生身のアイドルの情報を知っているなんて!」

「失礼なこと言うなよ君たち。俺だって普通にテレビ見るし、かわいいなと思ったアイドルくらいは覚えてるっての」


 まあ、この間たまたまこまちちゃんと一緒にテレビを見てたときに話したから覚えてただけだけど。


「愛純は当然覚えているよな?」

「……?」


 朝陽の親友宣言のときも思ったけど、一体どうやってんの、その(´・ω・`)みたいな顔。


「ええと……ごめんなさい、どちら様でしたっけ?」

「嘘だろ!?三人共TKOに入った時、お前と同期だったんだぞ!?」

「でしたっけ?あのころはあんまり他のアイドルを見ている余裕がなくて」

「お…お前な…すまんな、瞳」


 おお!愛純の物覚えの悪さから来る失礼な発言に小崎さんが焦っている。これはすごいレアな気がするぞ。


「いえいえ、宮野さんが覚えていないのも無理はないですよ。あのころの私達は愛純さんに比べたら素人みたいなものでしたから」


 真ん中に座っているリーダーらしい子がそう言ってころころと笑う。笑うが、目が全く笑っていない。


「あ、あはは、ごめんね。私って物覚えが悪くて」

「いえいえ、しかたないですよー……記憶領域が少なそうな胸をしてますし」


 今この子小声でなんかとんでもないこと言わなかったですか?

 確かに愛純に比べるとリーダーの子は胸がかなり大きい。大きさ的にはチアキさんや精華さんほどではないものの、グラビアとかを撮るのであればかなり映えそうなスタイルだ。

 とは言え。


「え?何かな?よく聞こえなかったんだけど」


 見れない!なんかすごいプレッシャーで、愛純のほうを見れない!

 ていうか、前に『気にしてない、貧乳は個性だ、ウリだ』とか色々言ってたけど、やっぱり気にしているんじゃないか!


「ねえ、よく聞こえなかったんだけどさあ!」


 すごみのある声でそう言いながら、隣で愛純が身を乗り出す気配がする。

 だがやっぱり怖くてまったく愛純のほうが見れない。


「お、落ち着け愛純!というか!邑田さんも秋山さんも知らん顔してないで止めてください!」

「あ、俺と朝陽のことはおかまいなくー」

「おかまいなくー」


 今ここにいる中で変身無しの状態で一番強いのは愛純なんだから俺や朝陽にできることなんてなにもない。

 というか、ああいう時の愛純に下手に絡むと後が怖いからはっきり言って巻き込まれたくないのだ。


「ちょっとP!私とその子とどっちが大切なんですか!」

「どっちがって、そういうことじゃないだろ」

「やーん、こわーい。愛純さんって本当はそういう人だったんですねー。やだー、興奮して鼻の穴が広がってブタさんみたいー」

「やめろ!愛純を煽るな瞳!」

「そこをどけP!そいつ一発殴るから!」

「落ち着けー!いや落ち着いてくださいお願いしますから!お願いですから」

「おちついてくださいブヒー」

「キーーーーーーーッ!」


 なんか既視感があるなと思ったら、愛純が最初に俺達のところに来た時の柚那と愛純のやり取りを見ているみたいなんだな。

というか、もしかしていつもの俺って、今の小崎さんみたいなのか?あんなにみっともない感じなのか?

 まあ、何にしても。


「君達も大変だね」

「あなた達も大変ですね」


 おっと、向こうの眼鏡の子とセリフがハモってしまった。


「私は、大橋 いずみ。宮野さんとやりあっているのが、原 瞳。こっちが竹下 英里紗です」


 大橋さんがそう言って目で合図を送ると、竹下さんが頭を下げる。


「あ、俺達は…」

「知っています。邑田 朱莉さんと、秋山 朝陽さんですね」


 大橋さんはそう言いながら手のひらを上に向けて、順に俺と朝陽を差す。


「あ、はい」

「そうですわ」

「で、そちらが、宮野愛純さん」

「何よ!」

「小崎護さん」

「どうしたんだ、突然名前を呼んだりして」

「ああ、間違えました……邑田 芳樹さんと、蛇ケ端 姉子さん」

「私はともかく。どうして朱莉さんの名前を!?」

「やばい!こいつら敵の魔法少女だ!」


 俺と朝陽が反応すると、大橋さんはニィっと口の端を釣り上げ、嬉しそうに目を細める。


「全員、反応しましたね?」


 大橋さんが小さな声でそう言った次の瞬間、部屋の中が強い光に包まれ俺は反射的に目を閉じる。そして――



「こんばんは!お元気でいらっしゃいますか?大橋いずみです!」


 ――光が収まった後、そんな元気いっぱいの大橋さんの声に目を開くと、俺と小崎さんはクイズのセットが組まれたスタジオのようなところに立っていた。

 そしてあたりを見回すと、司会者席には大橋さんが回答者席には、原さん、竹下さん、朝陽、そして


「え!?え!?なにこれ!」


 『むねたいら』と書かれた回答者席に愛純が座っていた。


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