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魔法少女はじめました   作者: ながしー
第一章 朱莉編

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恙なしや友がき

 翌日。

 俺達は真白の家が持っている裏山にあるオートキャンプ場へやってきた。


「と、言うわけで私と柿崎さんは、あっちのちっちゃなバンガロー。で、そっちのおっきな3つで適当に男女まぜてチーム分けしてねってことで、かいさーん」


 俺達から遅れること約1時間、東京から今日直接こっちにやってきた愛純さんは、俺と真白、それにあかりとタマとみつきを集めてそう指示を出すと、さっき柿崎さんが荷物を運び入れていた小さなバンガローへ向かって歩き出そうとした。


「いやいやいや、愛純さん。それはまずいですって。俺達はあくまで不純じゃない異性交友しにきたんですから」


 あ、異性交友じゃなくて林間学校か。


「でも、そうは言っても、どうせバンガローの中は部屋分けされているんだし、どうってことないでしょ?男子部屋と女子部屋だけ分けるようにすればいいじゃん」

「いやどうってことありますって。年頃の男女ですよ?」

「んー…じゃあ、あかりちゃんと真白ちゃん、それと和希がリーダーになって、責任持って自分の棟を管理すること。はい、それじゃあチーム分けして、お昼ご飯の用意と、夜ご飯の仕込み、キャンプファイヤーの準備をよろしく。手が空いたら自由行動ってことで、かいさーん」

「いやいやいや、だからそれじゃあまずいでしょって、せめて愛純さんと柿崎さんがそれぞれの棟を管理してくれないと」

「なるほど…じゃあ私はあかりちゃんを指名して、柿崎さんは真白ちゃんを指名するってことで」


 『今私が良いことを言った!』みたいな顔で胸を張る愛純さん。


「仕事しろよ!」

「仕事じゃないもん、バカンスだもん。都さんだって別に形式上いるだけでいいって言ってたし、そもそもみんなしっかりしてるから心配いらないと思うし、というか普通の男子が何をしたって、嫌ならみんな自分でどうにかできるでしょ?」

「そりゃそうだけど」


 男子と言っても、参加しているのは身体が女の俺と、静佳一筋の井上、タマに気があるんだか、来宮が好きなんだかイマイチわからない高橋、あかりにまったく頭が上がらない高山くらいなものなので、例えばお互いのパートナーに強引に迫ろうとしても…… ダメだ、高橋と俺以外はパートナーのほうが積極的に行きそうだ!


「愛純さん、一ついいっすか」

「なに?」

「あかりと高山、井上と静佳は分けてください」

「ん?どうして?」

「男子の貞操が危ないです」

「いやいや、私は別に龍くんの貞操が危なくなるようなことしないって」


 そう言いながらも、あかりの目がものすごく泳いでいる。

 これは性犯罪者の顔ですわ。


「嘘だ」

「嘘よ」

「嘘でしょ」

「嘘に決まってる」

「皆酷い!」


 そう言ってあかりは嘘泣きを始めるが、ここであかりを相手にすると時間がかかって面倒くさいということはわかりきっている。俺達はアイコンタクトで、あかりはスルーするということを決め、話を元にもどすことにした。


「愛純さん、さっき言ったのって本気なんですか?」

「もちろん本気だよ。そのほうが面白いでしょ?チーム分けをすることで普段とは違うメンツで、普段夜は一緒に居ない異性が同じ建物にいる生活をすれば、見識が広がり友好の輪も広がる。ほら、良いことづくめじゃない」


 なんか朱莉先輩みたいに胡散臭いことを言い出したぞ、この人。


「愛純さん、言ってることが朱莉さんっぽくてすごく胡散臭い」


 さすがタマ。言いづらいことをはっきり言う。そこにシビれる憧れるぅ


「いや、まあ朱莉さんっぽいっていうのはそのとおりだけどさ、でも林間学校なんてこんなもんじゃない?大人が駄目って言ったって結局男女の部屋で行き来はあるし、そこで何か起こる時は起こる。だったら自主性に任せるよってことで放任しても結果は変わらないでしょ」

「身もふたもないこと言わないでください!」

「で、その監視の先生役をあかりちゃんと真白ちゃんと和希に任せることで私は楽ができると」

「そっちが本音じゃねえか!」

「つまり、私が和希の部屋に言っても問題にならない…!?」


 みつきも『ハッ!』みたいな表情で何言ってんだよ。昨日の夜諦めるって言ったばっかりだろお前。


「じゃあみつきちゃんは私と一緒の棟ね」

「そんなー」


 『そんなー』なんて言いながらみつきが楽しそうにしていたりするのは一体何なんだ?真白もなんか楽しそうだし、なんかもう女子…というかこいつらの考えていることは俺の理解の範疇を超えている。


「まあ、夜這いでもなんでもかけたらいいんじゃないの?人数の対比的に男子から女子にかけることはほぼムリなんだし、女子から男子に行く限りは別に犯罪じゃないし」

「……愛純さん、女性から男性に対してでも無理やりしたら犯罪」

「え!?嘘でしょ!?」


 ……ダメだこの人、もうどうにもなりそうにない!




「というわけで、今日のお宿はどこだろな。チキチキ、組分けドラフトー」


 特にやる気のなさそうな抑揚のあまりない声で、タマが組分けの開催を宣言した。

一応、リーダーは愛純さんの指示通り、あかりと真白と俺。この三人と、高山、井上、静佳だけはもう所属が決まっている。俺のところに高山、真白のところに静佳、あかりのところに井上だ。

 ちなみに、愛純さんは「私達の分のご飯も作ってね。あ、林間学校なんだからバンガローのミニキッチン使っちゃ駄目だからねー」なんて、正直ふざけんじぇねえよって感じのことを言いながら、さっさと自分のバンガローに引きこもってしまった。


「まあドラフトと言っても、くじ引きだけど」


 そう言ってタマはティッシュ箱の中身を横からごっそり取り出して、今回の林間学校参加者の名前を書いた紙を入れて作った即席抽選箱を振って見せた。


「じゃあ…あかり先輩から」

「え?私から?じゃあ、誰が来るかなぁっ…と…亜紀ちゃんか。はい、真白ちゃん」

「ええと、私は…あら、深雪ね。はい、和希」

「はいはい……うーん、えりかぁ」


 別にえり自身になにか不満があるわけではないけれど、少しだけ不安がある。

だって、一緒に料理したり、なんやかんやする相手としてはもう少しこう、頭がいいというか、機転の効くやつが良かった。

 その後も順々にくじを引いていった結果、あかりのチームは、あかり、井上、井上妹、千鶴、みつき、マリカ、アビーと、なんか普通になんでもこなせそうなチームになり、真白チームは静佳、深雪、里穂、ベス、来宮という、真白の負担がものすごく大きそうなチームができあがった。

そして俺のチームは、俺、高山、えり、高橋、カチューシャ、タマという、料理とかその他諸々問題はなさそうで俺はまあまあ楽だが、高橋が一緒ということで、タマにとって良いんだか悪いんだかわからないチーム編成になった。




「というわけで、今日、明日とこのチームで行動することになるからよろしく。一応俺がリーダーで、タマがサブリーダーな」


 少人数だし別に必要ないかなとは思うけど、一応副リーダーを決めておいたほうが何かと便利な気がしたので、ミーティングの最初で俺がそう言うと、えりが「異議あり!!」と言いながら手を上げた。


「ちょっとまて和希よ!リーダーは和希でもいいが、学年的に我がサブリーダーではないか!?」

「……いや、どう考えてもタマだろ、もしくは高橋とか」


 年齢的には上でも、えりは自由人過ぎて団体行動の責任者には全く向かないと思うし。


「何故だ!?」

「……最上級生がリーダー格でいるよりも、私がリーダー格にいることで、同学年の高橋、高山は意見が言いやすくなるし、カチューシャも2つ上の先輩に意見するよりも言いやすいと思う」

「なるほど!それならば仕方ないな」


 それっぽい理論でえりを納得させた!タマすげえ!


「じゃあそういうことで、今日の昼飯なんだけど…飯盒で飯炊ける人」


 男子が二人いるしどっちかできるだろうと踏んでいたのだが、高橋も高山もあまりアウトドア派ではないらしく俺が視線を向けると首を横に振った。そんな中、一人黙って手を挙げる人間が2名。


「祖国にいた時に訓練を受けたから、アウトドアにはちょっと自信がある」


 そう言ってもう一人を一瞥して立ち上がったのはカチューシャだった。


「え?マジ?カチューシャって、結構アウトドア料理できるの?」

「ダー」


 得意げにそう言って胸を叩くカチューシャ。意外なスキルだが、俺もタマも文明の利器であるガスコンロがないと料理があまりできないのでこれは非常に助かる。

 これで今日の昼と夜、それに明日の朝は楽ができそうだ。


「無視をするな和希よ!我もラノベやアニメでキャンプのシーンを見たことがある手練だぞ!?」


 いや、それは手練って言わねえよ。





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