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魔法少女はじめました   作者: ながしー
第一章 朱莉編

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ジュリ先輩の☆出張なんでも相談室☆ 2

 俺と真白ちゃん、そして援軍のタマが少しだけミーティングと意識合わせをしてから部屋に戻ると、みつきちゃんは真白ちゃんのベッドの上で、ゴロゴロと転がりながら一人で頭を抱えていた。

 どこまで気づいているのかそれとも全く気づいていないのかは分からないが、どちらにしても煮詰まっているようではある。


「ごめんね遅くなって。たまたまそこでタマちゃんと一緒になったから連れて来ちゃった」

「いいよいいよ。それに、タマにも相談したかったから」


 そう言ってみつきちゃんはベッドから降りてテーブルの前に腰を下ろした。

 おおっと、小金沢さんの娘であるタマに相談したいということは、やっぱり気がついているパターンか?

 むしろ気がついていてくれるならそれはそれで好都合。俺の言葉がきっかけでバレたとかでなければさすがのひなたさんも俺に手出しは……いや、みつきちゃんがグレたらどっちにしてもきっとメッタ打ちにされるな。

 ひなたさんにも、都さんにも、チアキさんにも、そしてあかりにも。


「で、どういう話なの?私で相談に乗れる話?」

「ジュリ先輩って、お父さんいる?」

「もちろんいるよ」

「真白のお父さんは旅館をやっているし、タマのお父さんはガネちゃんだよね?」

「そうね」

「うん」

「私のお父さんって、今まで死んでいるのか生きているのかもわからなかったんだけど、最近は生きているんじゃないかなって思ってて」


 みつきちゃんはそこで言葉を切って一つ深呼吸をした。

 ゴクリ。と真白ちゃんとタマがつばを飲む音が聞こえる。


「それでね、そのお父さんって、実は身近にいるんじゃないかって考えていて」

「……うん」

「私って、もしかして…」

 

 そう言ってみつきちゃんはタマの顔を見た。

 

「ガネちゃんの娘で、タマのお姉ちゃんなんじゃないかな!?」

「……」

「………」

「…………」


 みつきちゃんの言葉があまりに斜め上だったせいで俺たちは言葉を失った。

 いや、確かに真白ちゃんもそういう発想をしたけど、それはタマと小金沢さんの関係を知らなかったからであって、現時点のみつきちゃんと同じ人間関係の知識を持っていたらそういう発想にはならないと思う。


「タマ!お姉ちゃんだよ!」

 

 斜め上の発想に俺達が固まっているのを、というより、主にタマが呆然とした表情で固まっているのを、何か別の意味と勘違いしたのだろう。

みつきちゃんはそう言ってタマのほうを向きながら飛び込んで来いとばかりに両腕を広げるが、我に返ったタマは冷めた目でみつきちゃんを見ながら顔の前でパタパタと手を振った。


「……いやいや、ないから。小金沢秀一と多摩境桂の間に生まれた娘は、後にも先にも私だけだから。大体私とみつき先輩は全然似てないでしょう」

「いやいや、例えばガネちゃんが浮気して…」

「ないから。あれであの人はそういうところはちゃんとしている」

「ごめん。自分でも今のは冗談にしても言っちゃダメな冗談だったと思う」

 

 険しい表情と厳しめの口調でタマにピシャリと言われたみつきちゃんはそう言ってしょんぼりと肩を落として頭を下げた。

 確かに小金沢さんはあれでちゃんとしてはいるのだ。

 温泉の時に狂華さんが言っていた『都内に囲っている愛人』っていうのはデマで、その住所に住んでいるのはタマの面倒を見てくれていた家政婦さんで、小金沢さんとそういう関係ではない。…まあ、タマのお母さんとは死別しているし、タマという連れ子がいるものの、付き合っている女の人がいたとしても別に不思議はないし悪いことでもないのだけど。

ちなみに俺がはっきり「小金沢さんは家政婦さんとはそういう関係ではないない」と言い切れるのは、狂華さんには言ってなかっただけで実は都さんが調査済みでその情報を聞いたからだ。


「じゃ、じゃあ小金沢さんがみつきちゃんのお父さんじゃないってはっきりしたところで、そろそろご飯にしない?さっきからいい匂いがしてきているから私お腹へっちゃって。チアキさんのところに食べに行こうよ」

「そ、そうだね。真白ちゃんの言うようにいい匂いがしているし、冷める前に食べないと、チアキさんに怒られちゃう」


 そこまでお腹が空いているわけではないが、この場を切り抜けるためにはこの相談の場を流すのも一つの手。真白ちゃんが部屋への再突入の前に提案してくれた作戦を後押しするために俺も真白ちゃんに同意する。

 が…


「あ、今日はチアキさんいないよ。だからさっき二人が用事で出た時に、自分の部屋から材料を持ってきて私が作っておいたんだ。勝手にキッチン使ってごめんね、真白」

「う…ううん、良いのよ」


 三部屋ぶち抜きで、ここでも小料理屋をやっているチアキさんの部屋はワンフロア下なのにいい匂いし過ぎだなと思ってたけど納得した。

 まあ、何にしてもこれで、さっきのミーティングで真白ちゃんが提唱した『ご飯の時間に合わせて場を流して、とりあえず今日のところは緊急回避する』はできなくなったわけだ。


「じゃあさ、お兄ちゃん」

「え!?」

「……どうしたのジュリ先輩。変な顔して」

「あ…う、ううん。なんでもない」


 突然お兄ちゃんと呼ばれて一瞬正体を見破られたのかと思ったが、どうやらそうじゃないらしいらしく、みつきちゃんは俺のことをジュリと呼んだ。

 しかしホッとしたのもつかの間、みつきちゃんはまたトンデモ理論を展開し始めた。


「お兄ちゃんが私のお父さんなんじゃないかな!」

「ないない」

「さすがにないわよ」

「むしろどうしてそうなったの」


 俺たちは三者三様に否定するが、みつきちゃんは即座に否定されたのがお気に召さないらしく、不満そうにプクっと、ほっぺを膨らませた。

 

「なんでそんなこと言えるの?私やあかりが生まれた時、お兄ちゃんは二十歳くらいだったんだから、もしかしたらわかんないじゃん!」

「いや、むしろ、みつきちゃんはそれでいいの?その説の通りだったとしたら、朱莉さん最低ってことになるし、お母さんもどうしてそんな産み方したのって話になるし」

「いいわけ無いじゃん!でもさあ、だとしたら…いやいや…うーん…」


 あ、みつきちゃんがオーバーヒートしそう。

 というか、みつきちゃんはそんなトンデモ理論を振りかざして、真白ちゃんをキレかけにさせてまでひなたさんが父親であるということを認めたくないのか。そこまでって、どんだけみつきちゃんに嫌われているんだ、ひなたさんは。


「例えばね、みつき先輩」

「うん」

「仮に楓さんがお父さんだとする」

「え!?う……うーん…」

「しっくり来る?」

「来ないなぁ…」

「同じようなことを朱莉さんやうちのパ……」


 おそらくパパと言いかけたのだろう。タマはそこで顔を赤くして黙ってしまった。

 わかる。わかるぞタマ。言いかけて自分のキャラにあってないと思ってしまったんだろう。だけどおじさんはそういうのもアリだと思うぞ。

 それはさておき。


「でもさ、みつきちゃん。それを朱莉さんや小金沢副司令に置き換えたらどう?しっくり来る?そういうことをしない人徳者の朱莉さんがしっくり来ないのはもちろんだけど、小金沢副司令もしっくりこなくない?」

「それは…まあ、たしかに…特にお兄ちゃんはそういうことしそうにないよね……」


 よし、朱莉さんのイメージアップに成功した!


「女の人に縁がなさそうだしね」


 間違ってない。その認識は間違ってないけど、お兄ちゃん傷ついたぞ。


「逆に、みつき先輩は誰だとしっくり来るの?」

「え?」

「近くにいると思うなら、しっくりくる人がいるんじゃないの?」


 パパ呼びのダメージから復活したタマがみつきちゃんにそう質問をする。

 って、これでみつきちゃんが「ひなた!」って言ったら大変まずい気がするんですがそれは…って!タマが完全に『もう面倒くさいから早く終わらせよう』って顔している!


「狂華…は私の事本気で殺そうとしたしなあ…」

「そもそも狂華さんまだ20代だからありえないんだけどね」


 可能性は0ではないが、13歳差では限りなく0だろう。そこはみつきちゃんも納得したらしく俺の言葉に深く頷いた。


「そうだよね…だから、楓も候補から消えるんだけど……そうすると、アレよりはお兄ちゃんのほうがマシなんだよなあ…」


 え?マシ?みつきちゃん今、俺のことひなたさんよりはマシって言った?

 『お兄ちゃん大好きだからお兄ちゃんがお父さんだったら嬉しいな』とかじゃなくて?


「どうしたのジュリ先輩」

「な、なんでもない。それよりみつきちゃん、どうしてお父さん探しを魔法少女限定で考えているの?この世界…ううん、そんな大きなことを言わなくても、みつきちゃんの周りに限定したって、黒服さんとか、他にも沢山の男性がいるのに、どうして朱莉さんとかひなたさんとか狭い視点で物事を考えているの?近くにいると感じていなら、もしかしたらそういった男の人達のなかにいるかもしれないじゃない」


 決まった。これでみつきちゃんの興味は俺やひなたさんから黒服やその他大勢の男性に向くはず。

 そうすれば俺はみつきちゃんに真実が知れて嫌われたひなたさんの八つ当たりを受けることもないし、みつきちゃんがグレてしまって都さんやチアキさんからお叱りを受けることもないはずだ。

 もちろん、そんなやってやったっていう表情を表に出すことはない、そんなのを表に出してしまったら二流だからな。ここでドヤ顔するのなんてヒルダくらいなもんだ。


「え、どうしたのジュリ先輩。いきなりドヤ顔でお兄ちゃんみたいなこと言って。なんかすごく胡散臭いんだけど」

「ぷっ…」

「たしかに…」

「ぐぬっ」


 どうやら無意識にドヤ感を出してしまっていたらしい。

 というか、真白ちゃんとタマもなにげに失礼な。


「というか、ひなたなんて、私一言も言ってないんだけど」

「え?他にいるの?朱莉さんとひなたさん以外で?」


 いるならむしろ聞いてみたい。というか、男性魔法少女協会に入れて会長職を押し付けたい。


「えっと……九条さん?も、元男の人だよね?」

「無茶いいなさんな。あの人もうすぐ米寿だよ」

「ベージュ?ってなに?」

「お米の米に寿ちゃんの寿で米寿。米っていう漢字をバラすと八十八になるでしょ。だから八十八歳のお祝いのこと」

「そうなの!?」

「だからあの人がみつきちゃんのお父さんだと…73歳の時の子ってことになっちゃうんだよね」

「うーん…それは無いかなあ…」

「というか、むしろ何故みつき先輩はひなたさんを除外するのか」


 むしろ何故タマは積極的に教えてやろうとするのか。

 ……ああ、そうか。小金沢さんの手前、ひなたさんからの八つ当たりなんてありえないしこの子は別にバレてもどうってことないんだ。


「え?」

「もしも、ひなたさんがお父さんだったらどう?先輩は嫌なの?」


 俺も真白ちゃんも避けていた質問をタマはまっすぐにぶつけた。

 確かにそれがわかって、もし嫌な感情を持っていないなら「ひなたさんがお父さんだ」ってバラすという選択肢も出ては来る。


 とは言えこれは本当に両刃の剣。みつきちゃんがひなたさんに対して嫌な感情を持っていて、なおかつこれで確信を持ってしまったら、それこそひなたさんとみつきちゃんの親子関係は始まる前に崩壊する。

 そんな不安を抱きながら俺と真白ちゃんが生唾を飲んで見守る中、みつきちゃんはしばらく黙りこんだ後で、ぽつりと口を開いた。


「私は……私はね…」


他の方の作品を参考にして本文の書き方変えてみました。

こっちのほうが読みやすそうなので、加筆修正しながら前の方から順次変えていきたいと思います。

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