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魔法少女はじめました   作者: ながしー
第一章 朱莉編

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ジュリ先輩の☆出張なんでも相談室☆ 1

 放課後、早めに帰ってきてくれた華絵ちゃん達としばらくああでもないこうでもないと、最後の打ち合わせをしてから俺達がJC寮にやってくると、ちょうど真白ちゃんとみつきちゃん、それに和希が帰ってきたところだった。


 で、朝陽が単身和希の部屋に乗り込み、俺がとみつきちゃんと真白ちゃんに”さん付け”の件を伏せて、朱莉から和希の悩みを解決するように言われてきたとか適当な言い訳をつけて軽く説明をして、真白ちゃんの部屋でお茶をしているというのが、今の状況なのだが…


「………」


 …なんか、すごい笑顔でこっち見ている真白ちゃんの無言のプレッシャーがすごいんですけど。


「あ…あの、真白ちゃん?」

「はい。なんですか?ジュリ先輩」

「な、なんでもないです」


 無言じゃなくてもプレッシャーすごいんですけど!?

 何?俺最近真白ちゃんに何かしたっけ?


「そうですか?私の方はなんでもなくないですよ。というかあまり部屋の中をジロジロみないでくださいね」


 なんでもなくないのかよ!?ってか、部屋を見られたくないとかそういう話か。よかった、また無意識のうちに真白ちゃんを怒らせるようなことしてたのかと思ってすげえ焦った。


「ねえ真白、なんでジュリ先輩にへんなプレッシャーかけてんの?」

「別にプレッシャーなんてかけてないって…ねえジュリ先輩?」


 なんでスマホをチラ見せしてくるんでしょうか。まさかあかりに連絡するつもりとかじゃないですよね。

 たしかにこの間あかりにジュリの正体がバレた時、ジュリの格好は「二度とすんな」って怒られたけど。


「そういえば、ジュリ先輩って家電とか詳しかったですよね?ちょっと聞きたいことがあるんですけど~」


 そう言って、真白ちゃんは部屋の外をちらりと見る。

 おおっとこれは俺達が本当は何しに来たのかを追求する流れか!?

 まあ、真白ちゃんは頭がいいから本当のことを話しても、朝陽に気づかれずに自然な流れで“さん”にシフトしてくれるような気がしないでもないんだけど、それはそれで自分の努力で“さん”に持って行こうとしている朝陽に対して申し訳ないというか、なんというか。


「そういうのは和希も得意なんだから後で和希に聞けばいいじゃん。あと、正宗も得意でしょ」

「そ、そうそう、実は私、そんなに得意じゃないし」


 みつきちゃんからの助け舟は予想外だったけどありがたく乗せてもらおう。


「だってさ。それにせっかく年が近いジュリ先輩がいるんだから、どうせ相談するんだったらそんな家電とかじゃなくてさ、もっと身の回りのこととか悩みとか相談とかしようよ。ねえ先輩、そういう相談に乗ってもらってもいいかな?」


 年は近くないけど真白ちゃんに追求されずに済むなら相談くらいどうってことはない。

 あとみつきちゃんに上目遣いで先輩って呼ばれるのすごくいい!


「もちろんだよ、なんでも相談して」

「じゃあ、早速相談なんだけど」


 先輩呼びとかそういうことをおいておいても、ナイスクリアだ!例えるなら真白ちゃんにドリブルで突破されてゴール前まで持ってこられていたボールを見事にみつきちゃんが――


「相談っていうのは、私のお父さんのことなんだ」


 ――笑顔で自軍ゴールに蹴りこむまさかのオウンゴールだった…だと…!?


「って、ジュリ先輩どうしたの!?すごく汗かいてるけど」

「う、ううん、なんでもないよ。うん、なんでもない」


 どうしようどうしよう。まかり間違って俺経由でみつきちゃんにひなたさんの正体がバレたりしたら大変なことになるぞ。

 想像してごごらん…

 父親がひなたさんだと知ったみつきちゃんは、きっと世をはかなんで悪の道へ。

 学校をサボって悪い友達と付き合ったり、校舎のガラスを壊して回ったり、盗んだバイクで走りだしたりするに違いない。

 と、そんなことになれば、俺は諸々の責任を問われて多分ひなたさんとか都さんとかチアキさんに血祭りにあげられる。

 つまり俺の口からバレることだけは絶対に避けなければならないわけで、そうなるとここは協力者(生け贄)が必要だ。


 万が一みつきちゃんにひなたさんのことがバレてもそんなに怒られなくて、俺だけに責任が集中しない生けに…じゃない……バレないようにフォローをしてくれる協力者(生け贄)が。


「ま、真白ちゃん、ちょっといいかな?」

「え?なんですかいきなり」

「み、みつきちゃんの相談の前にさっき真白ちゃんの言っていた家電の件を片付けちゃおっかなって思って」


 そう言って俺は精一杯可愛い笑顔でウインクをする。

 そう、俺は可愛い笑顔でウインクをしたはずなのだ。なのに真白ちゃんはすごく胡散臭いものを見るような目で俺を見てくる。


「じゃあ私も手伝うから三人でやろうよ。そのほうが早いし」

「だ、大丈夫大丈夫。二人でちょちょいと片付けちゃうから。ね?真白ちゃん?」

「……」


 警戒してる!真白ちゃんがめちゃくちゃ警戒してる!


「まあ…いいですけどね」


 しばらく俺をじっと見た後、真白ちゃんはそう言ってため息を付きながら立ち上がった。

 よかった!どうやら話を聞いてくれるみたいだ。


「で、どうしたんです?みつきちゃんに言いづらいことでもあるんですか?」


 みつきちゃんを部屋に残し、少し離れたエレベーターホールまで移動してから、真白ちゃんはそう切り出してきた。


「いや、みつきちゃんの父親の件なんだけどね」

「ああ…朱莉さんは何か知っているんですか?」

「一応確認ね。真白ちゃんはみつきちゃんのお父さんが誰かって知ってる?」

「いえ、知りません。この間小金沢さんにあった時に、もしかしたら小金沢さんが父親なんじゃないかと思ったんですけど、それは本人に否定されちゃったし…というか、それ以前に小金沢さんはタマのお父さんだったわけですし、だったら流石にみつきちゃんの父親ってことはないだろうと思うんで、今は『誰なんだろうな、ちょっと気になるな』くらいの感じです」

「興味ある?」

「ありますけど…そういう風に言うってことは、朱莉さんはみつきちゃんのお父さんがだれかちゃんと知っているんですよね?…あ!というか、そうやって勿体つけるってことは、まさか厄介事ですか!?やめてください、絶対言わないでくだ―」

「ひなたさん」

「……え?」

「だから、ひなたさんがみつきちゃんの父親」


 真白ちゃんは一瞬ぽかんと口を開けて名前の通り真っ白になった後、すぐに再起動して俺に掴みかかってきた。


「な……なんで言った?なんで言った!?なんで言ったあぁっ!?」


 普段の敬語で少し距離を感じる真白ちゃんもいいけど、こうして完全に取り乱して、俺の胸ぐらをつかんだ上、俺の頭がガクンガクンなるのも構わずに前後に激しく揺さぶってくる真白ちゃんもいいねえ。


「反省はしているけど後悔はしていないぜ!」

「キリッとした顔で言わないでください!」


 だって、「言うな言うな」ってのはつまり「押すな押すな」ってやつでしょうが。そんなフリをした真白ちゃんにも責任の一端はあるんだ……なんて言うと怖いから言わないけど。


「ああもう…こんなに知らなければよかったと思った知識は初めですよぉ」


 そう言って真白ちゃんは俺の胸ぐらを掴んでいた手を離して、頭を抱えてうずくまる。


「深雪とか里穂達がいなかったのが唯一の…」


 そう言いかけた真白ちゃんの後ろでぎぃっと重い音を立てて、非常階段の扉がゆっくりと開く。


「嘘でしょ!?」


 そう言って真白ちゃんが振り返るのと同時に、開いた扉から、ネコモードのタマが入ってきた。


「?どうしたのふたりとも」

「タマかぁ…よかったぁ…」


 首をかしげるタマを見て、真白ちゃんがホッと胸をなでおろしてこっちを向いた。


「って、思うじゃん?」

「え!?」


 俺がそう言って真白ちゃんの背後を指差すと真白ちゃんがそっちを振り返るが、そこには誰もいない。


「え?え?」

「あはは、うそうそ。場をなごませるためのちょっとしたジョー」


 クまで言い終わらないうちに、真白ちゃんの平手がスパーンといい音を立てて俺の後頭部を襲った。


「タチが悪すぎです!」

「はい、ごめんなさい」


 俺は、真白ちゃんに叩かれた頭をさすりながら謝った。


「で、なんの話?」

「ああ、みつきちゃんのお父さんがね…っと、タマ。面倒なことに巻き込まれることになるから、面倒事に巻き込まれたくなかったら、みつきちゃんのお父さんが誰かは言わないけど」

「え?誰かもなにも、ひなたさんでしょ?」


 俺と違ってうっかり言いそうになったところで、ブレーキをかけた真白ちゃんは先輩の鑑だと思うけど、タマはあっさりとひなたさんの名前を口にした。

 まあ、タマは小金沢さんの娘だもんな。

 知っていてもおかしくないし、知っていてもみつきちゃんの前ですっとぼけるくらい平気でできそうだからね、この子。


「で、それをみつき先輩に気づかれたとか、気づかれそうとか……もっと言うと、朱莉さんが『自分の口からバレたらまずい、そうだ!真白ちゃんを巻き込もう』とか考えて真白先輩を巻き込んだとか、そんなところ?」

「そう、そうなのよ。なんとかしてタマエモン!」


 頼りにされているなあネコ型後輩。

 というかこの子は俺のことをなんだと思っているんだ、想像で俺を批判するなんてあまりに失礼じゃないか!……まあ、その想像は何一つ間違ってないんだけど。


「ん?っていうか、俺、この格好している時に自分の正体をタマに言ったっけ?」

「聞いてないけど、しぐさとか匂いでなんとなくわかる」

「あ、そう?」


 この子洞の察力すげえな。まあ、俺がわかりやすすぎという線もないではないけど。


「そういえば戦闘中でもないのに、どうしてタマは変身しているんだ?」

「あの日の狂華さんリスペクト」

「やめたげてよぉ!」


 俺とか都さんだけならまだしもJCにまでイジられたらさすがの狂華さんも引きこもったりしかねないし、傷心のあまりまたオタサーの姫になりにあの島へ行くかもしれない。


「というのは流石に冗談。エレベーター待つより変身して登ってきたほうが早いからいつもそうしているだけ」


 ああ、それで真白ちゃんは突っ込まないわけだ。


「それで、朱莉さんはどうして話をそらそうとしたの?」


 バレた!!


「いや、俺を糾弾する流れになりそうだったから矛先をそらそうかと思って」

「……ねえ真白先輩。先輩はどうしてこの人のことが好きだったの?」

「最近ちょっとわからなくなってきたわ…」


 二人からすごく白い目で見られたでござる。


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