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魔法少女はじめました   作者: ながしー
第一章 朱莉編

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268/809

NMJC vs JC

 楓の攻撃で砂浜に沈んだ敵の幹部らしき男を拘束しようとしたJC達は、その幹部らしき男の服からこぼれ出たカプセルの中に、バラバラに閉じ込められてしまっていた。

 そして――


「努力じゃどうにもできないことってたくさんあるよねえ、見た目もそうだし、能力とか才能もそう。持って生まれたステータス差ってさ、すっごく不公平。いつも冗談っぽく言っているけど、本当はみんなのこと大っ嫌いなんだよね、私」


「お父さんが生きているなんて本当はこれっぽっちも信じてなんていないくせに。そうやって悲劇のヒロインをしていれば、誰かが可哀想だと同情してくれると思っているの?それとも……和希が振り向いてくれるかもしれないとか思っている?そんなことありえないのにねえ!」


「よくもまあ恥ずかしげもなくそんな所にいるわよね。裏切り者のあんたがどの面さげてそんな所にいるわけ?しかもみつきちゃんから和希を奪い取ったりして。ああ、そうか。そうやって裏切り続けることが私のアイデンティティだものね!」


「誰のせいかなんて、本当はわかっているんだろう?そうだよ。オレのせいだよ。全部オレのせいさ。二人が死んだのも、自分が死にかけたのも。今ならわかるだろう?嫌いな奴と仲直りしろって強要されることがどれだけ苦痛かってことが、奪った相手を許すっていうことが!……だからさあ、死んで詫びようぜ。その前に関係者全員殺して回ってあの世で一緒に詫びさせようぜ!」


――4人はそれぞれのトラウマやネガティブな気持ちを色濃くした自分の分身と向き合っていた。




「なんだかなあ」

 あかりはそう言って頭をかきながら溜息をつく。

「定番すぎて突っ込む気にもならないって感じなんだけど……」

「はあ?何よ定番って、私はあんたの影。あんたの負の心が色濃くなった存在、つまりあんたは私には――」

「勝てるわよ」

 口上が終わらないうちに、あかりは影を殴り飛ばす。

「悪いんだけど、自分の気持ちの裏側だの妬み嫉みだの、そんなものを知って動揺するほど今の私はウブじゃないの」

 そう言いながらあかりは影との距離を詰め、起き上がろうとしていた影に何発もパンチを叩き込む。

「確かに私は嫉妬深いさ、妬みっぽいさ、それは認めるよ。みつきの顔や性格の可愛らしさが羨ましい!和希のバカ正直さが素敵だと思う!真白ちゃんみたいな真面目な性格だったら、もっと自分を好きになれたかもしれない!タマみたいに普段我関せずみたいな顔をしていても、いざとなったらしっかり助けてあげられる実力が欲しかった!」

 そう言ってラッシュを止めたあかりは両足に力を入れ、腰を落とし、使い魔の魔力もすべて使って右腕に力を集中させる。

「それがなんだ!妬みもやっかみも、全部含めて私だ!そんな私をみんなは受け入れてくれた!だから私はどんな自分も受け入れるし、みんなも受け入れてくれると信じてる!」

 影はあかりが放ったパンチを両手で受け止めようとしたが、受け止めようとしたところからボロボロと崩れていき、やがてあかりの拳は影の身体を突き抜けた。

「こんっ…な…こと…でぇぇぇぇっ!」

 あかりのパンチは一撃で影を吹き飛ばし、透明なドーム状の空間にはあかり一人になった。

「悪いわね。私はJCのチームリーダーなの。こんなことで足止め食っているわけにいかないのよ」

 あかりはそう言って柚那の回復飴とパワーアップクッキーを口に放り込んだ後、影が消えたあたりを一瞥して、この空間から出るための方法を探し始めた。



 影の言葉に動揺したみつきは、影の放った魔法の威力に膝をついた。

 影の魔法は威力はみつきほどではないが、精神力の強さ、気持ちの安定がモノを言う魔法少女同士の戦いにおいて、動揺するというのは致命的な結果をもたらすこともある。

「あはは、動揺がまるわかり。やっぱりパパが生きているなんて思ってないんだ」

「そんなこと…ないっ!」

 みつきは意地の悪い笑顔を浮かべる影に言い返すが、否定するのが精一杯でそれ以上の言葉が続かない。

「だったらなんで、気持ちが揺れているのかな?本当はわかっているんでしょ?私のパパはもう死んでいるんだって」

「……死んでないもん」

「いや、死んでるんだって。まったく、なーんでわかんないかな。だいたい、生きているならなんで私が病気で苦しんでいる時に助けにこなかったの?意味分かんないじゃん。なんで魔法少女になって治るっていう話をみやちゃんとかひなたが持ってくるまで、「大丈夫か?」の一言も連絡してこないのさ」

 みつきは影の言葉を聞いて驚愕する。

「なんであんたがそんなこと知ってるの!?」

 確かに影の言うとおりみつきは魔法少女になる少し前、命に関わる大病を患い、長い期間苦しんだ。

 しかしその話は都や狂華、ひなたといった限られた人間しか知らない話だ。

「なんでって、わたしはあんたの影。つまり、あんたの記憶からできているからだよ。で?生きているとしたら、お父さんから連絡がなかった理由は?」

「そ、それは…きっと仕事が…忙しかったり…」

「命が危ない娘のことを仕事以下にしかみないお父さんなんて、死んでいるのと同じじゃない」

「ち、違う!お父さんは…警察官で‥…警察官だから…ガネちゃんだって『あいつはしっかり頑張っている』って…あれ?…警……察官?お父さんは、ガネちゃんの部下で……佐藤さんもたしかお父さんを知っているって…でもひなたが警官だったころの話は聞いたことなくて…あれ……?」

 みつきは、今まで鑑みることのなかった小金沢と父、それに元部下である公安組の関係を口に出してみて違和感を覚える。

「……たしか、前に一美さんが昔私のお父さんにお世話になったとかって……そういえば二人はなんか仲が良い気がするし、いや、まさか……」

 脳の処理能力を超える人間関係やら立ち位置やらの情報が頭のなかを駆け巡り、ちょっとしたパニックを起こしたみつきは、うーん、と唸りながら両手で顔を覆って座り込んでしまった。

「まさか泣いてるの?恥っずかしー」

「…うるさい、ちょっと黙れ」

 顔を覆ったまま、みつきは棘のある声で短くそう言ってまたうんうん唸りはじめる。

「うわ、完全に鼻声じゃん。マジ泣きじゃん、やだー恥ずかしい私―」

「…黙れって言っているんだけど」

「泣いちゃったの?泣いちゃったの?戦闘中に泣いちゃって今どんな気持ち?ねえねえ、今どんな気持ち?」

「黙れって、言っているの」

 棘のある声では足りない。もっと冷たい、吹雪のように冷たい響きの声でみつきはそう言って影をひと睨みした。

「ちょっとさ、黙っててくれないかな?今いいところなんだよね。もしかしたら…いや、そんなことないといいなと思っているけど、私にとって重要な事がわかるかもしれないんだから」

「重要なこと?なにそれ。お父さんが死んじゃってましたーって認めるってこと?」

「だから、うるさいって」

「やだ私ったらこわーい。そんな顔していると、和希もお父さんも怖がって私のそばに近寄らなくなっちゃうよー?あははははは!」

「私って確かに人の話を聞かないところはあるけどさ、そこまでひどくないよ?そういうのすごくバカっぽく見えるし、ちょっとは人の話聞いたほうが良いんじゃないかな」

「あははは……はぁ!?バカっぽいだって!?この私がバカっぽいって言うということは、つまり、私自身がバカっぽいって言われているのと同じなんですけど!?」

「なんかわかりづらいけど、要するにあなたが言いたいのは、私がバカだってことでしょ?知ってるよそんなこと」

「……え?」

「知ってるって。自分がどれだけバカかってことくらいはね、おかげで今もうまく考えがまとまらないんだし」

「そ、そう…」

「でさ」

「う、うん」

「もう一度言うけど、邪魔」

「そりゃあ、私は私の邪魔をするためにマスターの魔力で作られたんだし、私が私のことを邪魔だと思うのは――」

「はぁ…一応聞くね。あなたは生き物なの?魔法少女?それとも男性型異星人?」

 影の言葉を遮ってみつきが詰問する。

「だからどっちでもないって言っているでしょ?私は私自身が生み出した負の感情の固まりなんだから」

「そっか、じゃああなたは私なんだね?」

「そう、私の中から切り離された負の感情が――」

 影がそう言いかけたところで、みつきの手のひらから魔法が放たれ、影の腹部にぽっかりと丸い穴が空く。

「え……?やだ…なにこれ…意味分かんな…い」

「考え事したいから、ちょっと私の中に戻っていて。自分の嫌な部分のことは後で考えるから」

 みつきはそう言って、崩れ落ちる影のほうを見もせずに再びブツブツと考えを巡らせ始めた。



(さて、困ったぞ)

 真白はそんなことを考えながら、何度となく倒した自分の影を見る。

「何度倒しても無駄だって言っているでしょう?私はあなたなんだから、あなたが生き残っている限り、復活し続けるのよ」

「それはもう何度となく聞いたわ」

 真白が他のカプセルに目を移すと、それぞれのカプセルの中では他の三人がそれぞれの影と戦っていた。

 真白が見る限り、最初のうちはあっさりと影を打ち破っていたあかりとみつきだったが、疲れが出てきているのか、それともこの影達を倒すとパワーアップして復活するせいか、今は少し苦戦しているようにも見える。

「まあ、問題は……」

 あかりとみつきは苦戦しながらも戦えているし、負けるほど分が悪いというわけではない。

 問題は和希だ。

 あかりもみつきも影を倒してはカプセルの内側をペタペタと触ってみたり、頭を抱えて考えこんだりしているが、それはあくまで外に出る手段がないからであって、影から逃げようとしているわけではない。ところが、和希だけは影に背を向け、逃げ回りながら外に出る方法がないか探して回っているように見える。

 いや、見えるというよりは実際そうなのだろう。

「ほらほら、あなたのトラウマを刺激してあげるから、あの彼氏みたいに無様に逃げまわりなさいよ」

「そういうことはもう少し強くなってから言うのね」

 真白はそう言って、直線に影を倒した攻撃よりもほんの少しだけ強い攻撃を影に仕掛ける。すると影は一撃で霧散するが、すぐにまた元の姿にもどってニヤニヤとした表情を真白に向ける。

「だから無駄だって言ってるじゃん、殺せば私は強くなるし、殺さなきゃあなたは私に殺される。つまり打つ手なし、ゲームオーバーなのよ」

「ふーん…本当にそうかしら」

「そうに決まっているでしょう。あなたはセコくちょっとづつちょっとづつパワーアップすることで、私を何度でも殺せるように調整しているみたいだけど、その調整はあと何段階あるの?そんな回数でこの空間から逃げ出す手段が見つかると本当に思っているの?」

「ああ、やっぱりそういう仕組なのね」

「そういう仕組みよ」

 影がそう言うのを聞いて、真白は小さくため息をつく。

「はぁ?何ため息とかついてるの?」

「つまり、ゾンビアタックを防ぐにはどうしたら良いかっていう話でしょう?」

「防ぐ手段なんてない!あなたは死ぬまでゾンビアタックを受け続けるの!」

「あらそう?」

「そうだって言っているでしょ」

「その手足でどうやって攻撃をするの?」

 真白がそう言った瞬間、影の視点が揺れ、カプセルの天井を見上げるような形で背中から地面に倒れた。いや、たたきつけられた。

「残念だけど、魔力は節約したいのよ。この先どれだけ長期戦になるのか、どんな奴が現れるかすらわからないし」

 真白はそういって影の顔を覗き込むと、腱を切った影の手足の先に鉄輪を嵌めて動きと魔力の供給を止め、生かさず殺さずの状態を作り上げ、さらに魔法でギロチン台のようなものを作り出して影を固定した。

「あ、あんた…こんな発想ができるなんて正気じゃない!」

「というか、あなたが本当に私の記憶や人格から生まれているなら、このくらいはするって分かりそうなものなんだけどね」

「………」

「あと気になるのは、なんで四人にそれぞれ一人しか分身があてがわれないのか、かしらね」

「っ…」

「あなた最初に自分はフルオートで動く人形だって言ったわよね」

「そ、そうよ」

「だったら、あの魔法使いは魔力を絞り出してでももう少し人形を出してくるんじゃない?それをしてこないってことは、あなたたちの制御はせいぜいセミオートで、あの人が同時に動かせるのが四体だけってオチなんじゃないの?」

「…………くっ、殺せ!」

「いや、殺さないけどね」

「殺してください、お願いします。じゃないと強くなれないんです!」

「まあ、そうでしょうよ」

「というか、なんなのあなたたちは!突然島にやってきてマスターを殴ったりして!」

「ねえ……セミオートってことは、あなたはその…外で立っている男の人なのよね?なのに自分をマスターとか呼ぶの?そういうロールプレイなの?」

 真白はドン引きの顔でそう尋ねる。

「私はデミパーソナリティなので、厳密にはマスターとは違う人格よ。読み込んだあなたの記憶とマスターの人格がミックスされて生成されたのが私と言ったらわかりやすいかしら」

「なるほど、それなら私の性格とブレがあるのも納得できるけど…まあいいわ。ねえ、一つあなたにしてほしいことがあるんだけど」

「くっ…殺せ」

「だからなんで、そこでくっころになるのよ…」

「私にひどいことするつもりでしょう!?袖机の三番目の引き出しの奥に入っている原稿の和希みたいに!」

「具体的にいうなああああっ!なんで!?なんで今その原稿のこと言ったの!?もっと抽象的でもいいじゃないのおおおおおっ!」

「あなたの記憶を読み込んで作られたんだから、あなたが最近何にハマっているとかそういうのはわかってるのよ」

 形勢逆転とばかりに影真白がギロチン台で胸をそらせようとして勢い余って後頭部を板にぶつける。

「ところで、なんでお話の中で彼氏と他の男を絡めてるの?」

「もう黙ってくれない!?あなたが口を開くと私のライフが削られるんだけど!」

「真白ちゃんのライフがもうゼロよってなる前に私のライフをゼロにしたら良いんじゃないかしら!」

 影真白はそう言ってキラキラとした視線を真白に向ける。

「その手に乗るか!…はあ、あかりちゃんとかみつきちゃんのところは、本気のバトルをしているのに、なんで私の影はこんな性格なんだろう…」

「それは記憶を読んだ段階での感情が大きく作用するからじゃないかしら」

「……いや、それにしても私はあなたみたいな性格じゃないんだけど」

「あくまで予想なんだけどね」

「なによ」

「三人はこの戦いで死ぬかもしれないあなたを守ろうと緊張していた。対して、あなたはそこまで緊張せずにリラックスをしていた。その差が出ているんだと思うわ」

「なるほど…ぐうの音もでないほどの考察ね」

「納得はできるでしょ?」

「ちなみに一応聞くけど、私が死ぬかもしれないという話は私の記憶から読んだのね」

「ええ。何やら面白そうな運命背負ってるみたいだけど?」

「面白く無いわよ、こっちはあんたみたいに復活しないんだから」

 口にしてから、形勢逆転とまではいかなくても、対等なところまでは持って行かれてしまったか。と、真白は感じた。

「頼みごとっていうのはその話?」

「そんなところ。このままやっても、あなた達に勝ち目はないから降参してほしいっていう話をあなたのマスターに伝えてほしいの」

 そう言って真白が目線を向けた先では島から出撃しようとした怪人級が、飛んできた魔法によって一瞬にして灰になっていた。

「島の上空にこまちさんの魔法が飛んできたっていうことは、包囲網はもう1km以内。あなたたちの力がいくら強力でもその十倍の人数を、戦力にしたらもっと開きがある相手に喧嘩を売るのは得策じゃないと思うの」

「なるほど、『朱莉さん』の影響ね」

 真白の言葉を聞いた影真白はそう言ってくくくと笑った。

「……そうね、否定はしないわ」

 記憶を読まれている相手に隠し事やごまかしごとは無駄だと思った真白はそう言って頷く。

「それで説得、ね。でも『朱莉さん』のやり方は、あえて負けて得取るやり方だと思うんだけど」

「そこは私のオリジナリティね。というか実質負けてるでしょう?」

「なるほど、確かに個性だし、実質負けていると言えなくもないかも……まあ、言いたいことはわかるし確かに大した知恵のない私でもわかるくらい絶望的な状況だってことは理解したよ。私だってもともとのベース人格にあなたというアレンジが加わってできてるとは言っても、マスターが死ねばベース人格も消える。そうはなりたくないと思うから、この絶望的な状況から脱出するためのお誘いというのは吝かではないの」

「そう。よかったわ」

 影真白はフッと笑い、真白も表情を緩めたが、真白は影真白の表情にはすこしだけ影があるように感じた。

「だから、私達を出している時のマスターはトランス状態のオートカウンターモードで、誰の言葉も届かない、なんて状況でなければ私も協力したでしょうね」

「………はい?」

 影真白の言葉を聞いた真白の表情が引きつる。

「マスターが魔力切れなり、誰かに気絶でもさせられるなりすれば魔法は解除されるんだけど、カプセルは中からは絶対に壊せないようになっているからあなたがマスターと戦うことはできないし、魔力は島から供給されているから切れることはほぼない。つまり…どうしようもない」

 得意げな声色で喋るわけでもなく、得意げな表情を浮かべるでもなく、影真白はそう言って、少し悲しそうな目で真白を見る。

「私がこうして戦うのを辞めたいと思ったっていうことは、多分マスターも事情を知れば同じような気持ちになると思うけど、説得すること自体が無理なの。ごめんなさい」

 そう言って影真白は、ギロチン台に固定されたまま、申し訳無さそうにうなだれた。

「じゃ、じゃあせめて、あかりちゃんとみつきちゃん、それに和希が戦っている相手にだけでも―」

「それも無理。私たちは普段からマスターを通してつながっているから、マスターがトランス状態だとハブが壊れたネットワークみたいなものだから通信ができないの」

「そんな…じゃあ三人は……」

 真白が三人のカプセルを見回すと、みつきとあかりは三回目の影を倒したところで、和希は相変わらず防戦一方だった。

「誰かが早めにマスターを止めてくれなければ、死ぬまで自分と戦うことになると思う…」

「そんな!……それじゃ、それじゃあ私が生き残っても意味ないじゃない!何か!何かいい方法はないの!?」

「誰かがマスターを攻撃してくれれば、この魔法を使っている時のマスターはそれほど強くはないから、例えば流れ弾ででもなんでも、ショックを受けて気絶しないまでも、トランス状態から意識を取り戻させることができればあるいは…って、何する気?」

 絶望的な条件を口にした影真白の目の前で、真白は魔白へと変身をした。

「……全力でこのカプセルを攻撃するわ」

「む、無理だってば!下手に強い魔法なんて使って自分に返ってきでもしたらただじゃすまないかもしれないのよ!?」

「それでもね、私は三人を見殺しにはできないの」

 真白はそう言って全力の魔法をカプセルにぶつける。

 幸いにも弾き返されはしなかったものの、魔法はカプセルにぶつかると霧散した。

「あなたが最初に言った通り、私は裏切り者なのよ」

 二発目も霧散する。

「だから、お前はこの戦いで死ぬんだって言われた時も、最悪死んでも良いかなって、それも因果応報なのかなって思ってた」

「……」

「でもね、みんなが死ぬのは嫌。どこまで私の記憶を読んだか知らないけど、私が裏切り者だってことを知ってても、あかりちゃんはお見舞いに来てくれて背中を叩きながら『私なんてお兄ちゃん達に不満があっても実行できないんだからすごいよ』って言って励ましてくれたんだか、焚きつけているんだかわからないことを言ってくれたし、一緒にお見舞いに来てくれたみつきちゃんは『確かに真白のしたことは良くないことだったかもしれないけど、それでなんでもしますっていうのは、自己犠牲がすぎるよ』ってさ。自己犠牲が強すぎる子が何を言っているんだかって感じでしょう?それにね、和希は私なんかのことを『好きだ』って言ってくれたの。こんな私のことをよ?意味分かんないわよ!意味わかんないうちに好きになっていたわよ!それに今日ここに来ていないタマだって―――」

 そう言って三発目を撃とうとした真白の視線の先に、二人の男女が降ってきた。

NMJCはナイトメアJCの略です。


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