戦技研の一番長い日 4
都さんがいない状態で一番上の権限なんて持たされたら、そりゃあ彼女が普段やっている仕事は全部俺に回ってくるって言う訳で、都さんの病室を出た俺と松花堂ちゃんは急ぎ足で司令部に向かって歩いていた。
「はい、じゃあ次は女性型異星人代表との週次通信会談。司令部まで駆け足。ノロノロしない」
「あのさ…素でいいって言ったけど、一応今は司令代理である俺の秘書なんだから、仕事の話の時はですますくらいつけようね。松花堂ちゃん」
「はいはい、わかりましたですます」
クソっ!ちょっとオモシロ可愛いじゃねえか……まあ、嫌いじゃない。嫌いじゃないぞ、こういう娘。
まあ、都さんの仕事全部。なんて言ったが、いきなり一人ですべての仕事なんて賄えるわけがない。今日明日で片付けなければいけない案件のみということにはなるが、狂華さんがいないので、それでもかなりの量があるし、その仕事の中にはどこかの高難易度シューティングゲームのようにコツがわかってないとクリアがほぼ不可能な初見殺しの仕事も混じっている。
まあ、混じっているというか、この週次会談なんだけど。
「…苦手なんだよなあ、あの人。俺や都さんどころじゃない地雷持ちだから」
おっとりとした物腰で、えびす顔でニコニコ笑っていて近づきやすそうに見えるのに周りがすべて地雷原という聖達の上司、鷹鍋リオさん(年齢不詳・聖よりは年上に見える)は初見殺しどころか、現状地球側でまともに話ができるのが、彼女の周囲の地雷原を突っ切って殴り込みをかけられる都さんだけという、怒がいくつついても、大往生してもおっつかないくらいの難易度を誇っている人だ。その難易度たるや、彼女の部下である聖ですら苦手すぎて、自分でするべき報告をすべて都さんに丸投げしているくらいだ……聖の場合はただ怠けているだけかもしれないけど。
「まあまあ、元気を出してくださいよ。私がしっかり補佐しますですますから」
……うーん…わかってやっている…んだよな?ちょっと不安になってきたぞ。
「なるほど、それは災難でございましたね。突然のことで大変だとは思いますが、頑張ってくださいね」
こちらの事情を知ったリオさんは俺のことをそう労ってくれ、地雷を華麗に避けてなんとか会談を終了することができそうな段階までやってきた。
まあ、華麗に避けてなんてかっこいいこと言葉で言ってみたが、実際は松花堂ちゃんに手を引かれ、時には地雷を踏んでも無視して駆け抜けるというまるで都さんのような荒業を駆使して話しを終えたというのが正しいのだが、どうやらリオさんは松花堂ちゃんのやり方が気に入ったらしく、少し不機嫌になりかけたのもどこへやら、今は会談開始前よりもニコニコしているくらいだ。
「それで、こちらの戦力が足りないんですが…その…」
「それは流石に無理ですね。聖達を戦わせてしまうと、私達も彼らと事を構えなければならなくなってしまいますから」
まあ、そうなってしまうと、月の裏側のリオさん達と衛星軌道上でぐるぐる回っている虎徹達の母艦との間で戦争になってしまうだろうし、そうなると、地球もただでは済まない可能性があるので、それはあまり期待せず、ダメ元だったので、まあいいんだけど。
「……ただ、例えば、聖達がクルージングしている最中にクソ男共に襲われてやむなく正当防衛をしたというのであれば仕方ないのではないでしょうか、もしくは住まいを襲撃された。ですとか、訓練をしているところを襲われた。ですとか」
「いいんですか?」
「正当防衛なら仕方ないでしょう。ただ、突撃部隊には入れないようにしてくださいましね」
「ありがとうございます!彼女たちにはすぐに休暇をとってもらいます!」
なんだ、リオさん超いい人じゃないか!「クソ男」って言った時、すごい顔していた気がしないでもなかったけど、俺は見てない。見てないぞぉ。
なんにせよ、とりあえずこれで守備隊にはだいぶ余裕ができるはずだ。
「でもそうか…休暇か…」
「何かやるべきことができたという顔をしていますね。では今日の会談はこの辺りにしておきましょうか。来週の会談で良い報告が聞けることを楽しみにしておりますね」
「うまくいったら、その時はもう俺だけじゃなくて、幹部クラス全員土下座でお礼をさせてもらいたいと思います」
「ふふふ…貴女と都のだけで十分ですよ」
「俺の土下座なんかでよければ、いくらでもさせてもらいますんで」
「都も聖も言っていましたけど、貴女は面白い人ですね。都なんて貴女が面白すぎて狂華に会う前に出会っていたらもしかしたら…なんてことも言っていました」
「いや、それ絶対社交辞令ってやつですから」
あの人が狂華さんより俺を上にみるなんてことは絶対ないはずだ。
「どうでしょうね」
リオさんはそう言って意味ありげに微笑むと「ご武運を」と言い残して通信を切った。
「さて、じゃあ次のメンバーをスカウトに行こうか」
俺がそう言って出口に向かって歩き出すと、松花堂ちゃんが首を傾げた。
「次、ですます?」
あ、戻っちゃうんだ。リオさんの時の対応がものすごくしっかりしてたから、そのキャラのままで行ってほしいなと思ってたんだけど。
「松花堂ちゃんでもわからない?」
「私なんてたいしたことないですからですます」
「ごめん。やっぱり、ですますつけなくていいや。何が言いたいのかわからなくなるし」
「そう?じゃあ誰のことを言っているのか早く教えなさいよ、この雌豚。本当に鈍くて使えない豚ね、あんたは」
なんか前より酷くなったでござる。
「……ごめん、やっぱりですますで」
「そう?じゃあ誰のことを言っているのか早く教えなさいよ、この雌豚。本当に鈍くて使えない豚ね、あんたは……ですます」
なんていうか……生きるって辛い。
現在国内にいる連絡将校組は15名。そのうち戦闘力が高くて、俺が頼んで防衛戦に出て貰えそうな人は5人。松花堂ちゃんにみんなの進捗を確認するように頼んだあとで、その5人のうち4人を呼び出した俺は、いろんな問題を回避するために聖達と同じように「私用でたまたまそこにいた」を演出しようと思い休暇を取るように頼んだのだが……
「はぁ?休暇を取れ?おまえは何を言っているんだ」
細かいところまで話し終える前に、ジャンヌが噛み付いてきた。
「都が襲われ、宣戦布告までされて一大事だというのに、私たちに助けを求めるでもなく、休めだと!?見くびるな!」
「まあまあ、ジャンヌ。落ち着きなって」
「ユーリア!お前は何をのんきに笑っているんだ!」
「朱莉の話はまだ終わってないでしょ。ほら、朱莉」
「すまん、ユーリア。つまり、ジャンヌ達に頼みたいのはたまたま休暇でそこにいたという設定で、俺達の作戦を手伝って欲しいということなんだ」
「ああ、なるほど」
「そういうことですか」
ドイツのエルザとインドのララは納得したように頷いたが、ジャンヌだけは「回りくどい!」と鼻息が荒いままだ。
「まあ、いい手なんじゃないの?ジャンヌは変な義憤にかられてるけど、自分の国のことを考えたら、大義名分は必要だからね」
「変な義憤だと!?」
「あのさあ、真っ向から手伝えばあんたは満足だろうけど、自国やその国民に迷惑がかかるかもしれない、ひいてはそれが都や朱莉にも迷惑になるかもしれない。そういうところ、考えたほうが良いよ」
「う……」
「元々頭はいいんだから突っ込んでいく前に少し冷製に考えろって、この間旦那にも言われてたでしょ」
「うう……すまんユーリア、朱莉もすまない」
「いや、ジャンヌの気持ち自体はうれしいんだ。ありがとうな。それで、みんなには島の周りの防衛隊の更に外を守ってほしいと思う。まあ、つまり防衛隊の撃ち漏らした敵を掃討する役割だ」
「わかりました」
ララはそう言ってうなずいてくれ、ユーリアと、その横でちょっとしょんぼりしていたジャンヌもうなずいてくれたが、エルザだけは「うーん…」と首を傾げている。
「どうしたエルザ」
「いや…守備隊のさらに外ってことになると、結構広い範囲になるよね?だったら、あんまり言いたくないけどジャンヌや私より…」
「あー、あー、聞こえない!」
というか、聞きたくない!
「ここは、私の出番ではないでしょうか」
聞きたくなかったのに、後ろからものすごいドヤ声が聞こえてきた。
っていうか、しっかり鍵を閉めたはずなのにいつからここに居たんだこいつ。
「なあ、今日は俺、お前のこと呼んでないよな?」
「ええ、不思議な事に。ですが、呼ばれなくてもやってくる……それがわたくし、みんなの友達ヒルデガードさん!」
声を聞いただけでもわかっていたが、名乗られてしまってはもう気のせいだと思うこともできない。ため息と一緒に魂を半分口から出しながら俺が振り返ると、ブルネットの髪をギブソンタックに結い上げた魔法少女が、グレーの瞳をらんらんと輝かせてこちらを見ていた。
「お引き取りください」
「またまたご冗談を」
呼ばれなくてもなんてドヤ顔とドヤ声で言えるその神経の太さがちょっとだけ羨ましい。羨ましいが、ここはお引き取り願おうと思ったのだが、あいてもさるもの。一筋縄では行かないというか、話を聞いてくれない。
「いや、冗談じゃなしに。なんなの?なんで出てきちゃったの?」
「私がみなさんのお友達だからですよ!」
ちなみに、みんな彼女の登場からこっち目が死んでいるので、100人に聞いたら90人以上はヒルダがみんなの友達かどうかは疑わしいと答えると思う。
紹介などしたくもないが、一応紹介すると彼女はイギリスの連絡将校、ヒルデガード・ボーデン。通称ヒルダ。
ララやエルザは奪還作戦後に派遣されてきて、そこから仲良くさせてもらっているのだが、ヒルダは5月の奪還作戦の前からいたにもかかわらず、俺が相手にしたくないという理由であまり仲良くしていなかった連絡将校だ。
そして、その相手にしたくない理由というのが……。
「報酬はあなたの身体と心を一晩じっくり調べさせてもらえれば結構です」
…俺のことが好きすぎるっていうことだ。というか、自分より強い相手にやたらとなつくのでヒルダを苦手にしている人は多い。というか、今ここにいるみんなは大なり小なり彼女が苦手だ。
彼女との縁は、彼女がこの国に派遣されてきた初日に俺に喧嘩を売ってきたこと。
一応都さんの許可を取って決闘した俺は、その日調子の良かったおかげもあって、見事にヒルダを返り討ちにしたのだがこれがよくなかった。こんな辺境の島国の魔法少女に負けると思っていなかったらしい(イギリスも島国じゃねえかっていうのは一応言ったが、ドヤドヤしてて聞いていなかった)ヒルダはその日から軽いストーカーみたいになってしまったのだ。
とはいえ、俺はそのうち収まるだろうと思って仕事以外では無視していたし、幸い柚那は経験上ストーカーに追い回されるというところには理解があるため、俺が柚那から何か言われるとか、それで揉めるということはないが、とにかく気配が鬱陶しい。
あと、ドヤ顔とドヤ声も鬱陶しい。
ちなみに、その俺の経験から万が一にもあかりに矛先がむいたりしないように、ヒルダとあかりが出会わないように極力気をつけていたのだが、結局ヒルダの弟子であるベスとあかりの間で心配していたようなことが起こってしまったのは痛恨のミスだと思う。
まあそれはさておき。
「手伝っても何も出ないし、俺も何もさせる気はないから帰れ」
「高いものをよこせと行っているわけではないのですよ。あなたが、裸の一つでも差し出してくれれば良いと言っているだけで」
「嫌だっつってんだろうが。つーか、俺多分死ぬし、その後の保証なんてできねえっつーの」
「…ん?」
「おい」
「ちょっと待ってください」
「どういうこと?」
「……?」
「このままだと、明後日俺は多分死ぬ。事情はこれから四人には話すつもりだったんだけ――」
もののついでなので話してしまおうと思った俺は、次の瞬間ジャンヌに胸ぐらをつかまれて壁にたたきつけられた。
「……痛いんだけど」
「どういうことだ貴様」
「だからこれから説明をしようと思ってるんだって」
「お前はまたあかりを泣かせるつもりか!あかりだけじゃない、柚那を、愛純を、朝陽を泣かせるつもりか!」
「お、落ち着けジャンヌ、苦しいって」
「なんだ、多分死ぬって!死ぬ可能性があるならその可能性を1%でも下げる努力をしろ、あがいてあがいてあがき続けろ!」
「おちつけっつの」
ユーリアがそう言ってジャンヌの首筋を叩くと、ジャンヌは「あうっ」と可愛らしい声を上げて気絶した。
「…首筋叩いて気絶させる人はじめて見た」
「そういう魔法だよ」
達人技すげえと感動しかけたのに、残念。
「で?ジャンヌじゃないけど、何であんたは諦めて達観しちゃってんの?もう少し努力したら?」
「とりあえず色々努力した結果覆らなかったんだからしかたないだろ」
しかも前倒しで事件が起こってしまっていて、これ以上の対策はもう打てそうにもない。
一応、もう一つ手は考えてあるが、今さっきおもいついたことだし、正直屁理屈みたいな手なのでこれで死なずにすむとは思っていない。
「とりあえず事情を聞こうか」
ユーリアに促されて俺はみつきちゃんの予言についてのこと、これまでやってきたこと、どのケースでも俺が死んでいるという話を4人にした。
「うーん…それで、最後にみつきさんの予言を聞いたのはいつ?」
「先週。それからも色々やってるから、もしかしたら状況が変わっている可能性はある」
「今日なり明日なり、聞くのは可能?」
「あれをやるとみつきちゃんの消耗が激しくて、数日は戦力がダウンしちゃうからやる気はないよ」
みつきちゃんを突入部隊に選ぶというのを、親のひなたさんや同期の楓がOKするとは考えにくいけど、それでも彼女の生存率が下がるようなことはしたくない。
当然のことだが、なんらかの原因でみつきちゃんが死ぬケースというのもないわけではないはずだ。
そして、そのケースがあったとしても、みつきさんはその事実を認識することはできず、俺たちはみつきさんが五年後に存在しないケースの世界の話を入手することができない。で、ある以上は、少しでも彼女が弱体化するようなことは避けなければいけない。
「自分よりみつきのほうが大事?」
「みつきちゃんに何かあればそれはそれであかりが悲しむし、他のみんなも悲しむ」
「ま、そりゃそうだ」
ユーリアはそう言ってイスに腰を下ろすと、「フーッ」と大きな息を吐いた。
「この間のパワーアップもそれに絡んでってこと?」
「結果的にはね。実は弱体化した時点で、死ぬしか無いんだろうって覚悟はしてたんだ。それがユーリア達のおかげでパワーアップして、もしかしたらって思ったんだけどな」
結果、未来は覆ってないが。
「47本」
「え?」
「これが終わったら、全都道府県回って、朱莉が選ん日本酒を持ってきな」
「いや、だから俺は」
「休暇中の私達を働かせようっていうんだ、支払い無しで死に逃げは許さないよ」
「ああ、では私はジンギスカンを奢ってもらいましょう」
「私はユーリアのを探しに行くついでに地ビールでいいよ」
「お前ら…」
「あ、休暇で遊んでればいいっていうんだったら小花も呼ぶか」
そんなことを言いながらユーリアが携帯を取り出して、いたずらっ子のように笑いながら振ってみせる。
「やめて、俺の財布が空になる!」
「よしよし、金の心配ができるなら大丈夫だ、じゃあ小花を呼ばない代わりにお酒にあうつまみもよろしく~」
「くっ…足元見やがって」
ただ、ユーリアのおかげで、未来のことを考えている自分に気づけた。そう考えれば、つまみくらいなら安いもんだ。
「私は、朱莉の身体で大丈夫ですよ」
そう言って顔を赤らめながら袖を引っ張ってくるヒルダは少しだけ可愛い。いや本当、少しだけ、少しだけね。
「………だから嫌だっての」
「すごい間があったねえ。ちなみに私は現金がいいなあ。とりま、30万くらい?」
そう言って、見習い組のまとめ役であるマリカちゃんがユーリアの隣のイスに現れた。
「だから君もヒルダも、どうしてここに入れるんだよ!」
戦技研のセキュリティはザルじゃない。それは狂華さんが監修していることからも確かだし、そもそもこの本部の中で使える魔力というのはかなり制限されている。さらにはこの部屋は現在高セキュリティモードで、本部内でも特に魔力が制限されているし、外部に繋がるダクトなんかもシャッターで遮断されている。にもかかわらず、彼女は間違いなくさっきまで部屋の中におらず、忽然と現れた。つまり、どうにかしてなんらかの魔法を使ったということだ。
「あ、私はこんなこともあろうかと、朱莉がこの部屋の予約を入れた時からカーテンの影に隠れていました」
「ストーカー乙!」
ヒルダはそんなこったろうと思ってたよ!
「マリカちゃんは?」
「私はほら、魔力がもともと低いし、セキュリティとか引っかからないですから」
「うそこけ」
もはや国内トップクラスのチームと言っても差し支えないJCの誰とやってもケロっとしていて、見習い組を短期間であそこまで引き上げた彼女が普通以下だと言われてしまったら、日本の戦力なんて戦力ではなくなってしまう。
「あはは、まあ細かいことはいいじゃないですか。ああ、そうそう見習い組も戦線に投入して大丈夫ですよ。あの子たちもうそこらのご当地よりは強いですから」
真白ちゃんから聞いてはいたけど、本当にやり手だよなあ、マリカちゃん。
「……マリカちゃんさ、真面目な話、日本の国籍選択する気ない?今ならJC枠じゃなくて正規枠で入れるように交渉するけど」
別に俺はこの組織のトップとかでもなんでもないし、ましてや愛国者とかでもないが、それでもこの子が他国に行くのではなくこの国に残ってくれるならそのほうがいいと思う程度には愛国心や組織に対する愛着はある。
「んー…まあ条件次第で考えないでもないですけど、パパの事情もあるからなあ…それに茉莉香って画数多いから書くの面倒くさいんですよね。国籍どっちつかずの今のままだとマリカって書いても先生に怒られないし」
「え?そんな理由!?」
「え?そんな理由ですよ」
「……そ、そっか、そういうこともあるよね」
だめだ、この子の考えていることが全くわからない!っていうか、わからなさすぎてなんか怖い!
「まあ私のことはいいとして、掃討部隊は掃討部隊で計画立てて、あとで報告しますんで」
「うん、よろしく。ユーリアもララもエルザも頼むな。あと、悪いけどジャンヌのほうもうまく説明しておいてくれ」
「了解。まかせといて」
ユーリアはそう言って胸を叩いてくれた。彼女がこうして請け負ってくれるなら安心だ。
「ちょ、私は!?」
「じゃあ、俺は他のみんなの進捗確認をしてくるよ」
なんかもう当然のように仕切っちゃってるからここはマリカちゃんにお任せしよう。そう思って俺が部屋のセキュリティモードを解除すると、マリカちゃんが、今思い出したかのような白々しい声を上げた。
「ああ、そうそう。言い忘れるところでした。次にあかりを泣かせたら、私もくるみも朱莉さんのこと許しませんから、そこんとこ忘れないでおいて下さい。とりあえず殺しますんで、死ななくても殺すし、死んでても殺しますから」
「……はい」
あかりって、本当に女の子にはモテるんだよなあ…っていうか、目と声が怖いよ、マリカちゃん。




