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魔法少女はじめました   作者: ながしー
第一章 朱莉編

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ある日の東北チーム+α 2

 まあ、彩夏ちゃんには悪かったとは思っている。

面白半分で『彼氏とどうよ』とか聞いたことについては本当に悪かったと思っているし、女子の集団ではそういう迂闊な一言から噂があっという間に広がるということも知ってはいた。

しかしこれはいくらなんでも広まり過ぎではないだろうか。


 東北寮の一室……というか麻雀卓からテレビゲームまで揃った、彩夏ちゃんの城。

去年の武闘会優勝の賞品である東北チーム専用ネットカフェの半個室で、俺たちはαテスト中で魔法少女以外は入れない、魔法少女クローニクオンラインにログインしてチャットで会話をしていた。


 これは、声に出して話をしていると虎徹に聞かれちゃうかもしれないっていう配慮もあるのだが、ついでに俺達に義務付けられているαテストの必修時間の消化をしちゃおうという一石二鳥な考えと、どこから聞きつけてきたのか、他のチームからの参加者もいるので、そのメンツとのコミュニケーションを円滑にするためというのもある。


あっかりーん:まあ、これも一種の『朋有り遠方より来るまた楽しからずや』ってやつかね。


 現状、チャットに参加しているのは、俺、彩夏ちゃん、寿ちゃん。それにこまちちゃんが出かけていたせいで暇をしていたセナに、何故か愛純と喜乃くん。ちなみに愛純と喜乃くんの後ろには、それぞれ朝陽と柚那、鈴奈ちゃんと松葉がいるらしい。

なんというか、仲いいなあみんな。


さやさや:というか、誰ですか!根も葉もない噂を関東どころか、関西にまで流した人は!


ぶっきー:関東はワシが広めた(ドヤァァ


音速の貴公子:関西は私~ノシ


ちなみにこのゲーム、何故かセナは男キャラでプレイしている。魔法少女オンラインなのに。


さやさや:絶許


みゃすみん:で、なんだっけ?***のしかたが聞きたいんだっけ?


 愛純はいくらなんでも直接的すぎんよ。思い切り伏せ字になっちゃってんじゃん。


あっかりーん:違うっつーの。告白されて断った相手とつきあう方法だよ


 愛純に任せているといつまでたっても話が進みそうになかったので、俺は軌道修正を試みる。


みゃすみん:ああ、そういえば前にさやさやがそんなこと言ってたね


鈴奈様のしもべ:そんなん、逆に告ればいいだけじゃん


「できるかー!」と、近くのブースから、彩夏ちゃんの声がした。喜乃くんってこういう時に直接的な物言いしちゃうところが、男の子だよなあって思う。


さやさや:それができたら苦労してない。


鈴奈様のしもべ:ぜったいにOKもらえるんだからつべこべ言わずにやればいいだろう。で、その後kwskだ。


あ、しもべから鈴奈様にチェンジしたな、これ。


鈴菜様のしもべ:それとも何か気がかりがあるのか?理由があるのか?


さやさや:いや、だって私だよ?w


みゃすみん:大丈夫。さやさや世界一かわいいよ!\(^o^)/


さやさや:……


あっかりーん:……


 無責任に持ち上げるのはやめて差し上げろ。彩夏ちゃんが結婚できなくなってしまう。


さやさや:まあ、なんというか…いろいろトラウマがあるんですわ。手ひどく振られた思い出とか、嘘告白とか。


 ああ……嘘告白なあ、俺もされたことあるけど、あれ辛いよな。っていうか、告白されるほうもする方も完全にいじめられてるよな。


あっかりーん:とは言ってもだ。虎徹はそういうタイプじゃないだろ?あいつは君のことが本当に好きだと思ったから、わざわざ俺に…手違いで実際にはあかりになっちゃったけど、相談して、告白をしたわけだし。あとは、信じてあたって砕けたらいいんじゃないか。


 チャットで云々なんて言う前に、これだけ言えばよかったんだろうけど、寿ちゃんとセナがすごい速さでチャット相談会を決めちゃったせいで、言いそびれてしまった。

 だがこれが俺の本心で、俺が彩夏ちゃんに伝えたい唯一の事だ。


さやさや:……


 ふふ…彩夏ちゃんめ、さては俺の言葉に感動しているな。


みゃすみん:朱莉さん酷すぎ。


 ええっ!?なんで俺駄目だしされてるの!?


鈴奈様のしもべ:これはひどい。


あっかりーん:えっと、何が?


音速の貴公子:なんであたって砕けてるんですか……


あ……しまった。これは本当に指がすべった。


あっかりーん:ごめん、悪気はなかったんだ。勢いが大事だって話だよ。マジで。


ぶっきー:で、どうする?ぶつかってみる?


さやさや:え、それじゃあ結局何も対策がないままじゃないですか。せめてこう、なんかもっと具体的なアドバイスくださいよ!


とは言ってもなあ……愛純は伏せ字連発になるし、俺と柚那はハッキリ言ってアドバイスなんてできるほど、経験があるわけじゃない。そしてそれは朝陽も同じで、松葉も同じだ。鈴奈ちゃんと喜乃くんはわからないが、いろいろ壮絶な人生だった鈴奈ちゃんと、10代の間、ずっと楓…もとい、雅史くんを追いかけていた喜乃くんに恋愛のアドバイスができるとも思えない。となると…


あっかりーん:寿ちゃん、セナ、頼んだ。


 結局二人に頼むんなら、他の皆はただの出歯亀になっちゃうし、何しに来たんだって感じだけど…まあこの際仕方がない。


音速の貴公子:え!?私ですか!?無理無理!無理です!男性とお付き合いしたこともないのに!


鈴奈様のしもべ:ぎえうhwtぎうぇ「」おj


 セナの発言の後、突然喜乃くんのチャットがバグった。


鈴奈様のしもべ:しもべがご主人様に痛めつけられているのでしばらくお待ち下さい。


 あ、松葉になったな。


あっかりーん:でもなんでいきなり痛めつけられてんの?


鈴奈様のしもべ:処女厨喜乃が、セナの発言を見てガッツポーズを取って問いつめられた。


 気を使ったのか、松葉はウイスパーでそう返してくれた。

それにしても迂闊だな喜乃くん…。


音速の貴公子:あ、ユウさんとかチアキさんとか、ひなたさんとかなら男性側の意見も聞けるのでは?


ぶっきー:彩夏の純愛にそんな爛れた情報が役立つわけ無いでしょうが。


音速の貴公子:それもそうですね


ふたりとも酷いこと言うなあ。俺もちょっと思うけど。


ブッキー:とは言え、私もそんなに経験ないしなあ…だれかまともな恋愛をしてそうな、大人のメンバーっていないかしらね。


大人のメンバーねえ……ああ。そういえばギークなくせにリア充して、しっかり結婚している人が一人いたな。確かアカウント持ってるはずだから入ってきてもらおう。


あっかりーん:心当たりがあるからちょっと待ってて。


 俺はそう発言してスマホに手を伸ばし、登録してある番号に電話をかけた。





JFK:なるほどな。確かに異なる組織で、お互いそれなりの地位にいる人間同士の付き合いと言うのは非常に難しいと思う。


 そう言って画面の中でウンウンと頷くアバターの持ち主は、普段偉そうなのに隙だらけ、本気を出せば強いのに本気を出させてもらえないでお馴染み。元FBI分析官であり、在日米軍高官の妻、ジャンヌだ。ちなみに彼女、実は娘までいたりする。


さやさや:いやいや、こてっちゃんはともかく、私は立場なんてもの、特に無いですよ。


JFK:東北チームサブリーダーが何を言っているんだ?


さやさや:…はい?何言ってるんですかジャンヌさん。


JFK:いやいや、君のアバターのステータス画面にもしっかり書かれているじゃないか。


さやさや:え、ちょ!?何ですかこれ!私知らないんですけど!


 彩夏ちゃんは本当に知らなかったんだろうけど、実は俺は知ってた。

寿ちゃんが持ってきた書類を、彩夏ちゃんが知らないのを分かってて、時計坂さんが面白半分に書類通しちゃったのも、ろくに見もしないで「東北はシノの管轄なんだから勝手にやってよねー」とかいいながら都さんがハンコ押したのも知っていた。

まあ、言うと怒られるから言わないけどもね。


さやさや:ちょ…寿さん!?


ぶっきー:それなりの立場の人とお付き合いするならそれなりの肩書が必要でしょ?


 いや、寿ちゃんその肩書を彩夏ちゃんにつけた時、虎徹とのこと知らなかったじゃん…。


JFK:というか、朱莉


あっかりーん:ん?


JFK:一応私は連絡将校だぞ。いいのか?こんな話を漏らして。


あっかりーん:ああ、だってジャンヌは適切に情報を扱ってくれる連絡将校だと思っているからな。


これがユーリアだったら酒の肴にされる心配があるし、奪還作戦でうっかり活躍しすぎて本国に戻されちゃった小花だったらあっちこっちに話が広まりかねないが、ジャンヌはよくも悪くも大人だ。


JFK:はあ…まあ、我が国に害になるような話でもなさそうだし、今後同じようなケースが起きた時の参考になりそうだしな。とりあえず黙殺しよう。


あっかりーん:さすがジャンヌ。で、どう思う?一度断っちゃったんだけどさ。


JFK:「女は上書き保存」「男は名前をつけて保存」というだろう?だから彼の中には彩夏への気持ちは残っていると思う。だから彩夏が気持ちを伝えればとりあえずつきあうことはできると思うぞ。


さやさや:とりあえずっていうのが怖いですね。


JFK:男は女の名前をつけた、沢山のフォルダを持っているからな。フォルダが増えてしまった可能性がある今となっては、どう転ぶかはよくわからん。


 聞いた所によると、虎徹は東北寮においてもらう代わりに、炊事や掃除をしたりして寮母さんみたいなことしてたらしいし、その中で色々と他の子とも交流があっただろうから、ジャンヌの言うとおり、もう既に他の子が気になっているという可能性もなくはないだろう。


JFK:そういうことだから、私としてはとりあえず付き合うだけ付き合ってみて、努力をするべきだろうと。それくらいしか言えないな。私は彼のことは知らないが、そうして悩むということは君自身、彼の人となりよくわかっているんじゃないのか?それで一緒にいたいと思える相手なら、自分の気持をしっかりぶつけてみるといい。


さやさや:ありがとうございます。なんか少しだけ吹っ切れたというか、気持ちが固まった気がします。


 あれ?俺さっきジャンヌと同じようなこと言ったと思ったんだんだけど。


鈴奈様のしもべ:では善は急げだ。行って来い彩夏、そしてその後kwskだ。


 あ、おかえりなさい鈴奈様。


さやさや:うん。じゃあ行ってくるね。


みゃすみん:みんなで成功を祈ってるからね!


ぶっきー:自信を持って行ってきなさい


音速の貴公子:彩夏が素敵な女の子だっていうのは私が保証するし、彼もちゃんとわかっていると思うから。頑張ってね


さやさや:ありがとう、みんな。


みゃすみん:ほら、朱莉さんも何か激励してあげてくださいよ。


 ええー……ここで俺とか、彩夏ちゃんも別に望んでないと思うんだけど…


あっかりーん:えっと…勝利の栄光を君に?


さやさや:わかりました。朱莉さんは邪魔する気なんですね、私を特攻させて無駄死にさせる気なんですね?


あっかりーん:君は良い友人であったが、君の姉上がいけないのだよ。


さやさや:^^


だからその顔文字怖いってば。







うん、すごい読みづらい。もうやらない!

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