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魔法少女はじめました   作者: ながしー
第一章 朱莉編

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十年目の浮気 結

 ダブル・ダブルデートの翌日。

 前日の疲れから、昼過まで寝ていた俺がラウンジに降りると、狂華さんが優雅に珈琲を飲みながら資料を見ていた。

「ああ、朱莉。今起きたの?随分遅かったね、珈琲飲む?」

「あ、頂きます。…まあ、昨晩はいろいろありまして…ちなみに、狂華さんはいつ帰ってきたんですか?」

「つい、今さっきだよ」

 一言文句を言ってやろうと、一晩中柚那にいろいろされながら、俺が必死で意識を保って待っていたにもかかわらず、狂華さんは結局朝帰りを決めてくれちゃったらしい。

 それならそうと先に言ってくれれば半分精神崩壊するまで頑張ったりしなかったのになあ。

「都さんは?」

「本部で仕事してる。ここ一週間、まともに仕事にならなかったせいで、なんか蒔菜とかニアから、相当愉快な突き上げを食らっているらしいよ」

 そう言って狂華さんはクスクスと可愛らしい声で笑いながら、俺の前に珈琲を置いてくれた。

「いただきます」

「どうぞ召し上がれ」

 ……なんだかんだ言って、可愛いんだよなあ、狂華さんって。

「ああ、そうだ。昨日の…というか、ここの所ボクとみやちゃんの件で迷惑かけちゃってて、ごめんね。もう大丈夫だから」

「大丈夫なら良いですけど、結局どうなったんですか?というか、そもそもどこからどういうつもりで動いていたんです?」

「最初にみやちゃんと喧嘩した時からなんとなく青写真は描いていて、こう、悲劇のヒロインっぽく朝陽とか柚那とか愛純に話をしたら協力してもらえないかなと思ってて、いざやってみたら、そこからトントン拍子に話が進んでいっちゃってね。最初はJKまで巻き込むつもりはなかったんだけど、柚那とか愛純が『どうせ朱莉さんは都さんに味方するに決まっていますから、朱莉さんの足を引っ張れる人材が必要です』とか言って、強引に話を進めちゃってね」

 そう言って狂華さんは、申し訳無さそうな表情で「ごめんね」ともう一度謝ってくれた。

「なるほど、そんな感じですか」

「うん、そんな感じ」

 まあ、朝陽が出てきたあたりで、そんな感じだろうとは思っていたけどね。

「まあ、あそこまでやる気はなかったとは言っても、ボクもなんだかんだで三人にのせられて迷惑かけちゃったわけだし、朱莉には今度なんかお詫びするから」

「あ、そうだ。それならお詫びがてら、すこし教えてほしいことがあるんですけど」

 こういう言い方をするのはあんまり好きじゃないけど、ここは少し弱みにつけこませてもらうことにした。

「……あんまり、変なことでなければ」

「変なことって?」

「別に具体的に何かあるってわけじゃないから、それは質問を聞いてから判断するよ」

「佐須ちゃんのことなんですけどね」

「霧香?」

「はい。佐須ちゃんって、みつきちゃんとか、真白ちゃんとか、いろんな世代にいるらしいんですけど、何か探ってたりしたんですか?」

「ああ、それか。まあ、今となってはっていう感じなんだけど、公安系の魔法少女いるじゃない」

「ええ、ひなたさんとか、桜ちゃんとかですよね?」

 あとは一応こまちちゃんとか、他にもいっぱいいるけど。

「そうそう。みやちゃんって、昔は小金沢さんのこと信用してなかったから、その公安系の見張りに霧香とか、瑞季とか佳純とかをローテで、別の名前を名乗らせて別の格好に変身して、その世代に怪しい奴がいないか、いるなら誰かってことを探るためにクラスに突っ込んでいたんだ。一応、正式な登録名を決めるのはカリキュラム修了後だから、登録した時点で同期にはその名前で登録したよ、顔や背格好もこういう風にしたよって連絡したりして、卒業後に連絡が取れなくなってあやしまれたり、連絡を取った時に名前を名乗り間違ったりしないようにしてね」

 なるほど、俺が真白ちゃんたちと話した時に立てた予想は、大体あっていたというわけだ。

「でも、俺達の世代にはいなかったですよね」

「いたよ。朱莉達の世代は…確か佳純だったかな。最初の一週間くらいで『この世代は大丈夫』ってことで離脱しちゃったから、全然覚えてないかもしれないけど」

「……いや、あの子、男子会の時とかもその後もそんな様子おくびにもださなかったんですけど」

「三人とも…いや、霧香はともかく、二人はプロだから」

 プロ怖え…。

「まあ、世代が違うと、そんなに同期の話をすることもないしね。今まではあんまり話題にでなかっただけじゃないかな。霧香以外はあんまり目立たないしさ」

 確かに佳純ちゃんも瑞季ちゃんも佐須ちゃんに比べるとかなり影が薄い。

「まあ、そういうことなら納得です」

 それであれば、都さんと二人でいろいろ対策するときに使った、公安系魔法少女リストに書かれていた詳細な情報の出どころも納得だ。

 ちなみに、みつきちゃんの予言によれば、都さんの暗殺未遂後、公安系が中心になり、正宗、虎徹、大和を襲撃。

 最終的にはお互いに大きな被害を出しながらも最終的には再び休戦ということになったらしい。

 その話を受けて俺と都さんが打った手は大きく言って2つ。

 一つは、全面戦争に突入する契機となった、正宗襲撃。その実行部隊になったJCを、クッションになるJKと共に正宗のそばに配置。お互いに親交を深めさせることで、襲撃を行いづらくするという細工だ。

 もうひとつは、事件発生時、俺との連絡が断絶したことで、公安系の情報操作に良いように操られてしまったJCの指揮系統をチアキさんに譲渡。現地に常駐してもらい、間近で指揮をとってもらうことで正宗の襲撃を防げるようにした。

 まあ、他にもこまごました対策はとっているのだが、大きいのはそこだ。

「どうしたの?なんか考え込んじゃっているみたいだけど」

「いえ、転ばぬ先の杖って大事だなって思って」

「まあ、その資料も、もう必要ないかもしれないけどね」

 狂華さんはそう言って笑う。

「そうですね」

 そうだといいけど。

 俺は異星人相手だとしても、顔見知りで切った張ったの命をかけた刃傷沙汰っていうのは勘弁してほしいので、切にそう願っている。

「あ!大和のほうもフォローしないといけないんだった!」

 結局、狂華さんがどう返答したのか、それとも返答してないのかは知らないが、今回、こういうことでゴタゴタして狂華さんとのデートはなくなったわけだし、現在の大和が断られて落ち込んでいるのか、それとも連絡がないことで憤っているのかはわからないが、フォローしておく必要はあるだろう。

「え?なんのフォロー?」

「いや、断られて落ち込んでいたりとか、あと、もしかしたら連絡がなくてまだ待ってたりするかもしれないかなって思って」

「え?断ってないよ」

「……え?」

 な、なんですと!?

「ボク、このあいだ言ったじゃん。『一回だけじゃなくてもいいんだよね?』って。実は、一日だけ朝陽にボクの代理をしてもらって、大和とデートをしてきたんだよ。これでもう、みやちゃんにも朱莉にもボクが大和を怖がっているなんて言わせないんだからね!」

 そう言って狂華さんは得意気に薄い胸をそらして鼻息を荒くするが、狂華さんが大和を怖がっているって言ってたのは都さんだけだ…というか。

「じゃあ、既に狂華さんは、大和と一発済ませた後だと?」

「ちょ…その言い方だと、ボクと大和が何かいかがわしいことをしたみたいに聞こえるんだけど…」

「……」

「いやいや、してないからね。っていうか、ボク男の子だからね?」

「……」

「なんか言ってよ!」

「いや……なんか、狂華さんって、押しに弱いし、合コンとかデートの後で土下座したらやらしてくれそうだよなって、もっぱらの評判で」

「どこで!?どこでそんな評判が立ってるの!?」

 まあ、どこでというか、俺と都さんの間でだけなんだけど。

「それは最高機密なんで勘弁して下さい」

 都さんがふざけ半分ででもそんな話をしていたと知られて、またへそを曲げられても面倒だし。

「ちなみに、狂華さんと大和はどこまで行ってなにしてきたんですか?」

「いや、別にいかがわしいことはしてないよ!普通に遊んで、その…ちょっとだけ、一回だけで、もうこれ以上何もしないって言うから……ほっぺにキスしてあげただけだし」

 ……今まで俺は、関東一のチョロインはチアキさんだと思っていたんだけど、どうやら真のチョロインは狂華さんだったらしい。

「いや、俺は昨日ディスティラリーランドに行って、乗り物乗ったみたいな話を聞きたかったんですけど。…っていうか、それって、今後会うたびに『これだけ』って要求がエスカレートしていくから気をつけたほうが良いですよ」

「いやいや、大和って意外と紳士だからそんなことないって」

「ほら、もうなんか、狂華さんすごいチョロい感じになっちゃった」

「なっちゃったってどういうこと!?いや、本当に大和って最初に思っていたイメージと違うから!あの時はまだ女の子の扱いが良くわかってなかったって言ってたし」

 駄目だこの人、早くなんとかしないと攻略されちゃう。そんなことになったら、JCがどうこうじゃなくて、都さんが自ら全面戦争の火蓋を切りかねないぞ。

「女の子の扱いがわかってきた男が、狂華さんが喜ぶ紳士的なエスコートができるようになったわけですよね?」

「うん」

「大和に、狂華さんがしてほしいことがわかってもらえて、嬉しいですね」

「そうだね!」

「……ほら、もう大和にハマりかけてる」

「ち、違っ……違…わないかも…」

 おかえりなさい、狂華さん!危ないところだったね、狂華さん!

「いや、でもね、朱莉――」


 結局、『おたくの彼女、間男に寝取られかけてますぜ』という俺からの連絡を受けてすっ飛んできた都さんと共に、狂華さんを説得し終わるまでに3時間ほどかかってしまった。




二周年おめー(セルフ)


いつの間にかシリーズ書きはじめてから二年経ってましたね。

相変わらず誤字脱字や文章の推敲不足が目立ちますが、ゆるゆる直していきますので、長い目でお付き合いいただければ幸いです。


『二周年だからなんかやるぜ!』という事は特に考えてませんでしたが、感想欄にでも、なにかキャラとシチュのリクとか貰えたら、今後の展開に影響ない範囲で書かせていただきたいと思います。


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