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魔法少女はじめました   作者: ながしー
第一章 朱莉編

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220/809

男子+女子 中学生の日常 2

 なんだこりゃ。どういうことだこれは。


 俺と高山が待ち合わせ場所で井上と高橋を待っていると、後ろから声をかけられた。

 掛けられた声は男だったので、俺は『またか』と思った。

 この身体になってから何度も経験してきたことだが、こうして人の集まるところでぼんやり立っていたりすると、結構な割合でナンパをされる。

 一人だけだったり、みつきと二人だったりすると断るのも一苦労だが、今日は高山がいる。

 俺は一つため息を付いてから高山の腕に自分の腕を絡めて振り返った。

「すみませーん。私、彼氏連れなんでぇ……って…」

「ちょ…何言ってるんですか!そんなこと言って邑田先輩に見つかったりしたら…」

 振り返った俺と高山は思わず言葉を失った。

「彼氏がいたのか…」

 俺達が振り返った先にいたのは正宗だったからだ。

「いや、まて。違う、そうじゃない!っていうか、お前はいったいなんでこんなところにいるんだ!」

「なんでもなにも、普通に街を歩いていたらお前を見かけたから声をかけただけだ。暇ならデートでもしようかと思ってな」

「だから!俺は!男と付き合う趣味はねえって言ってんだろ!」

「でもそいつが彼氏なんだろ?」

 まさかとっさについた嘘が裏目に出るとは!

「違うって、知らん奴がナンパしてきたのかと思ったからそういう風に言っただけで、こいつは本当はあかりの彼氏だよ」

「あかりって…お前のチームの?」

「そう」

「物好きだな」

「な、俺もそう思うよ」

「な。じゃないですよ平泉先輩!この人敵じゃないですか」

 あ、物好きってところには突っ込まないんだ。

「そうなんだけどな。フォロワー研修の時に聞いたろ?一応、敵対はしているけど色々ルールがあるんだよ」

 だからこんな街中で出会ったところでこいつは俺に手出しすることはできないし、こっちから喧嘩を仕掛けるのもアウトだ。

「そう言えばいつもの巨乳メガネはどうしたんだ?」

 正宗はそう言ってきょろきょろと警戒しながらあたりを見回す。正宗は真白に口喧嘩で勝てないので苦手に思っているらしく、俺が真白と一緒にいる時はあまり近づいてこなかったりする。

「安心しろ。真白は検査で本部に行ってる」

「検査って、どこか悪いのか?大丈夫か?」

「何かあっての検査じゃなくて、何かないかの検査だからな。多分大丈夫だろ。今日もちゃんと朝飯食べてから行ったし」

 まあ検査以外にもち野暮用があるから、戻ってくるのは夕方過ぎになるだろうけど。

「そうか」

 正宗はそういって少しホッとしたようにため息をもらした。

 真白の方もこの間の試合の時に正宗が九条さんにふっとばされたっていう話をしたら心配していたし、真白と正宗は仲がいいんだか悪いんだかって感じだ。

「というか、ついてくるつもりかもしれないけど、今日は女っ気はないぞ。なんて言ったって男子会だからな」

「男子会?」

「ああ。今日は女子抜き。男子だけで親睦を深めようっていう会なんだよ」

「ふうん…」

 正宗はそう言って、少し考えるような素振りを見せた後で俺と高山を交互に見た。

「どう見てもデートだけどな」

「このあともう二人来るからデートじゃない」

「まあ、平泉先輩を取り合ってる奴らみたいには見えるかもしれないですけど」

「ああ、それはそうかも」

 たしかにちょっと前の千鶴とかそんな感じだったし、そう見えるかもって言われればそう見えるかもしれない。

「男子だけで巨乳メガネがいないなら、俺も一緒に行ってもいいか?」

 正宗の言葉を聞いて、俺と高山はちょっと驚いた。

「だってお前、今日のメンツってお前に脈なしの身体だけ女子である俺と他は男ばっかりだぞ。嫁取りとかとは関係ないっていうか…」

「いや、別に俺たちも毎日毎日ずっと嫁探ししているわけじゃないからな。虎徹さんなんか、お前のところのメガネの女と一緒に本を売ってるらしいし」

「……え?メガネって彩夏さん?」

 メガネの魔法少女は何人かいるけど、本を売ってる人ってなると限られる。

「そう、その女」

「仲いいの?」

「仲のいいお友達らしいけどな。そのせいで…いや、これはいいや」

 そのせいでなんだろう。ちょっと気になるけれど、正宗が話す気がないのなら多分無理やり聞かないほうが良いんだろうな。

「で、どうだ?行ってもいいか?」

「俺は構わないけど、これから来る二人のうち、一人の家に行くからそいつがいいって言えば別にいいんじゃないか」

「いや、勝手にそんな…でもまあ、井上先輩がいいって言うならいいのかな…」

「えっと…高山だっけ?その井上先輩ってのはともかく、お前はどうなんだ?」

 正宗はそう言って高山の方を見る。

「お前が嫌なら行かない。俺はあくまでお前らの集まりに混ぜてもらうっていう立場なわけだし。もちろんその井上ってのとか、もう一人が嫌だっていうなら行かないよ」

「ええと、平泉先輩…」

「大丈夫。これで嫌だって言ったからってお前になんかする奴じゃないよ。こいつは」

 この間の試合に乱入してきたのはともかく、基本的にこいつは筋を通すやつだし逆恨みとかもしない。海で真白とやりあったのだってお互いの立場の相違であって、筋の通っていない怒り方ではなかった。

「僕は別に嫌ではないですけど。本当に侵略行為はやめてくださいね。そうじゃないと色々と…」

「心配するなって。もしもの時は俺がなんとかするから。それに今日はみつきも寮にいるし、なんかあったらあかりと一緒にすぐ来てくれるだろうからさ」

「だからそんなことしないって。じゃあ、高山はOKな」

「はい」

「あ、うちもOKだよ」

「自分も特に反対する理由はありません」

 俺が後ろから聞こえた声に振り返ると、いつのまにか井上と高橋がやってきていた。

「って、お前らいつの間に来たんだよ」

「和希くんがナンパされているあたり」

「自分も井上先輩と一緒に」

「最初からいたんなら声掛けろって」

「ごめんごめん。僕は井上和幸。和希くんのクラスメートだよ。ええと…正宗くんでいいかな?」

「ああ、よろしくな。じゃあそっちが高橋か」

「はい。よろしくお願いします、正宗先輩」

「先輩……俺って仲間内だと一番年下だからそう呼ばれるのはなんか新鮮だ」

 こいつこんなことで感動するのか。今度千鶴とか深雪とか紹介してやろうかな。もしかしたら後輩萌えが発症して俺に向かっている嫁取りの矛先がそっちに向くかもしれないし。……まあ、それはさておき。

「じゃあ、自己紹介が終わったところでそろそろ行くか。井上の家ってどっち?」

「ああ、あっちだよ」

 そう言って指をさすと、井上は俺達の前を歩き始めた。




 なにこれ一体どういうこと?

 

 今日は研修もないし、軍団を解散したおかげで鬱陶しい男子たちもいないしで久しぶりに羽を伸ばせる完全オフの日曜日!…と思って外出をしたものの、他に友達のいない私は、結局平日の放課後と同じように深雪たちとつるんでいた。

 で、いつものように何をするでもなく五人で駅前をぶらぶらしていると、和ちゃんをみつけた。しかもお姉の彼氏つき。

 お、これは前に私が『彼氏とお姉を別れさせて』っていうお願いをした件かなと思って遠巻きにみていると、新たな男子がやってきて、二人と話を始めた。

「あれ、例の男性型異星人じゃない?」

 ベスにそう指摘されてよくよく目を凝らしてみると確かに例の男性型異星人の一人だった。

 何事だろうと思って見守っていると、私と同じフォロワーの高橋先輩と井上先輩が合流して五人で何処かへ歩いて行った。

「って、なにあれどういうこと!?人には男は危ないとか言っておきながら自分は四人も引き連れてるなんてどういうことなの!?和ちゃんだって今は女の子なのに!」

「ちょ…ち…ず…」

「このままじゃ和ちゃんが汚される!」

 真白先輩ならともかく、男に汚されてショックでむせび泣く和ちゃんなんて…和ちゃんなんて……ちょっと素敵かもしれない。

「…その前に深雪が死んじゃうから」

「え?」

「深雪の首、締めてる」

「あ、ご、ごめん深雪」

 カチューシャに言われて気がついたが、どうやら私は無意識のうちに近くにいた深雪の首を締めてしまっていたらしい。

「き、気にせずとも良い。このくらいで…ゲェッホ、この海堂深雪は…エッフ…死にはせぬ」

 いや、私が締めておいてなんだけど、めちゃめちゃ死にそうだよ。

「ごめん、お詫びにあとでなんか奢るね」

「マジで!?やったー儲けたー!」

 この子、テンション上がるとすぐに自分のキャラを忘れるけど、大丈夫なのかな。

「で、どうしようか。戦闘になりそうな雰囲気じゃないから救援を呼ぶ必要はなさそうだけど」

 真面目だなあ、アビーは。

「そうだね、人のいるところでは戦闘しない。この国と敵方の司令官で話がついているはずだから、ここは放っておいて良いんじゃないかな」

 カチューシャもそういってアビーに賛成するが、ここで尾行マニア、情報収集マニアのベスが黙っているわけもなく――

「戦闘にならないからといって、情報収集の機会をみすみす見逃すというのはどうかしらね。まったく、これだから頭まで筋肉の軍人さんは」

 ベスは、わざわざ嫌味を加えてそう言うが、もう慣れっこのアビーとカチューシャは『はいはい』といった感じで肩を竦めている。

「じゃあ決をとろう。このまま和希達はスルーしてダラダラ散歩を続けるか、それともベスの言うとおり尾行して面白そうなネタを探すか」

 まあ、深雪が言っていることは間違ってないけど、その言い方だとベスが嫌がりそうだ。実際すこし不服そうな顔をしているし。

「尾行して面白そうなネタを探したい者」

 そういって深雪は自ら手を上げ、ベスも手を挙げ、私も手を上げた。というか、アビーもカチューシャも手を上げているので満場一致だった。

「あらあら、脳筋共もやっと情報戦の重要さを理解したのね」

「救援を呼ぶ必要はないとは言ったけど、別に後をつける必要がないとは言ってないからね」

「そういうこと。今すぐ状況を動かす必要がなくても、状況がどう推移していくかは見守る必要がある」

 まあ、何を言ったところで、私を含め、異星人はおろか和ちゃんにも負けるだろう四人が状況を見守ったところで何も変わらないので、ただのヤジウマ根性だと思うけど。

「じゃあ決まりじゃな。そうと決まれば、後をつけるぞ」

 そういって張り切って歩きだろうとした深雪の襟首を、ベスが掴んで引っ張った。

「はいはい。じゃあ私が先頭で尾行するから、その後をアビーとカチューシャ。素人の千鶴と深雪はさらにその後をついてきて。途中で私とアビー、カチューシャで先頭をローテーションするから」

「はーいなのじゃ」

 深雪は襟首を掴んで思い切り引っ張られたというのに特に怒ってないのか、ベスの提案に元気よく返事をする。

「了解。よろしくね、三人とも」

「わかった」

「ウーラー!!」

「アビーうるさい…じゃあミッション開始」

 そう言って、まずベスが早足で歩き出し、その後を少し感覚を開けてアビーとカチューシャが追跡開始。少し行ったところでアビーがこっちを振り返って、手招きをしてついてくるように合図してくれた。

「さて、我々も行くか」

「そうね」

 私と深雪はそう言って頷き合うと、アビーとカチューシャを見失わないように歩き出した。


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