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魔法少女はじめました   作者: ながしー
第一章 朱莉編

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護国の鬼

 俺と高山が考えた霧香さん対策を聞いた真白は

「そんなにうまくいくわけないでしょう」

 と笑っていたが、現実というのは意外とうまくいくらしく、試合会場に到着した俺達の前に現れたのは、普段を知っている俺達からすると夏樹さんと並んで『そろそろきつくない?』と聞きたくなる制服姿の霧香さんと、一回戦で朱莉さんを倒した九条真希さんだった。

「よく来たな二人共。ここがお前たちの墓場だ!」

 カメラが回り始めてすぐ、なんか妙なテンションの霧香さんがそう宣言して俺たちを指差す。

「いや、死んじゃまずいですからね。試合ですからこれ」

「冷静に突っ込むなよ真白!なんかこっちがすごい恥ずかしくなるだろ」

「ところで霧香さん」

「流すなよ!」

「聞いておきたいんですけど、例えば霧になった時に強い風に煽られても、死んだりしませんよね?あと、例えば氷点下の上空でも霧になれるんですか?」

「……」

 にっこりと笑う真白の質問を聞いてこっちの作戦に気がついたのか、霧香さんの表情がこわばる。そして――

「そ、そんなことされたらしんじゃうからやめてほしいな☆」

 気持ち悪っ!なんだよそのどっかのケーキ屋のマスコットみたいな顔!なんだよその胸の前でぶりっ子っぽく握られたこぶし!あと片方だけぴょんって曲げた足!

 まあ、でもこれでわかった。霧香さんは吹き飛ばされても多分死なないし、上空まで登ったら霧化できない。

「よし、やろう真白。なんかムカつくし」

「そうね。バカにされてるみたいでムカつくわ」

「鬼かお前ら!」

「はっはっは、楽しそうだな霧香」

 俺達のやり取りを聞いていた九条さんはそう言って笑う。

 霧香さんは真白に任せればいいとして…問題はこの九条真希さんのほうだ。

「笑い事じゃないですよ…私あんまり勝ててないせいで肩身狭いんですから」

「まあ心配せずとも私一人で十分だ」

 うわぁ…朱莉さんに聞いてはいたけど、この人の自信満々な態度、結構ムカつくな。

 ただ、都さんに対してさえ半ばタメ口の霧香さんが敬語を使っているのはかなり気になる。戦績も三試合で2勝1敗。しかもその1敗も不戦敗だ。

 あの口から先に生まれてきた朱莉さんが聞き出せなかったものを俺が聞き出せるとは思えないけど一応聞くだけ聞いてみるか。

「九条さん」

「ん?なんだね?」

「あなた一体何者なんですか?朱莉さんに勝てるなんて相当なものだと思うんですけど」

「この間君も勝ったじゃないか」

「いや、勝ちましたけど…あれは工夫っていうか、完全に不意打ちが決まっただけで」

「不意打ちという意味では私も変わらんだろう。開始直後の不意打ちがうまく決まっただけだ」

「とは言っても…」

「和希、やめとけ。この人は自分の正体を言うつもりはないと思うぞ……言うと色々まずいし」

 まずい人なのか……だとすると、元犯罪者とかそういう感じの人なのかな…。

「霧香の言うとおりカメラの前では色々まずいのでな。聞きたければ後で控室に来るといい」

「じゃあ、さっさと終わらせて聞かせてもらいましょうか」

 俺がそう言って変身すると同時に試合開始のブザーが鳴った。

「その意気や良し!」

 そう言って九条さんはカッカッカと年寄り臭い笑い方で笑いながら九条さんも変身して――

「あっぶね!」

 やっぱりネギが足元に伸びていた。

「やはりそれなりに戦える者相手に二度三度は通じんか」

 九条さんはそう言って対して悔しそうでもない様子でネギをしまった。

「って、あれ!?朱莉さんの話だとネギがステッキだって言ってたのに!?」

「馬鹿者、敵に正確な情報を与えるバカがおるか」

「そりゃそうだっ!っと…真白!霧香さん任せるぞ」

「了解」

 真白はそう言って翼を広げると、霧香さんが霧化するのを待たずに突っ込んでいく。

「霧香!」

「が、がんばりまぁぁぁぁぁぁ」

 最後まで言えずに霧香さんは鷹に攫われるウサギのように真白に捕まって天高く登っていく。

「さて、1対1。不意打ちなしですよ」

「何を言っている?」

「何って…」

「1対2だぞ」

「おいおい、流石にあんだけ高く登ったら流石に霧香さんだって霧にはなれないだろ」

「だから私と君と彼女。2対1だろう?君の言うとおりあれだけのスピードで上空に向かわれたら霧香には何もできんよ」

 そう言ってニッと笑った『不利な状況で戦うのが楽しい』と言っているかのような、九条さんのやや狂気じみた笑顔は楓さんを彷彿とさせた。

 正直勝てる気はしない。この人の笑いは本当に自信のある人の笑いだ。

「つっても俺も負けるわけには行かないんですよ」

 俺にだって優勝してやりたいことはあるし、それは真白にも、みつきにもあかりにもえりにも…まあ、えりのやりたいことは置いておくとして、チアキさんにもやりたいことはある。

 俺以外のみんなも頑張ってくれているし、勝ってくれると信じてはいるが、俺と真白がここで勝っておくに越したことはない。

 俺だって強くなっている。朱莉さんにも勝てるくらいには強くなっているんだ。

「行くぞぉ!」

 前回のような森のフィールドではないので、俺は後ろに魔力で壁を作り出し、それを蹴って勢いをつけ、必殺の蹴りを九条さんに繰り出す。

「おいおい、まだ役者は揃ってはいないだろう」

 だが九条さんはそう言ってヘラヘラ笑いながら身体をずらして俺の蹴りを受け流した。

「受けるから痛い。だったら受けなければいいだけの話だ」

「わかってるのとできるのはまた別もんっすよ」

 すくなくとも朱莉さんはできなかった。

「そうだな」

 そう、あの人にはできなかった。こうして着地した次の瞬間、俺の後ろに立っているなんていうことは。

「……」

 圧倒的では全然足りない。月とすっぽんでもまだ足りない。この人と俺の間には太陽とミトコンドリア位の差がある。ちょっと修行してちょっと強くなって嬉しくなっていた自分が恥ずかしくなるほどに。

「まあ、君の恋人が帰ってくるのをのんびり待とうではないか」

 バトルマニア、バトルフリーク。初戦こそ朱莉さん相手に小細工したものの、やっぱりこの人は楓さんと同類の真っ向勝負が大好きなタイプだと思う。

「とは言っても、二人がかりでもどうかなという感じだがな。まだまだ君たちは若い」

「はあ…確かに九条さんの言うとおり、二人がかりでもきつそうっすね。で?実際あんた一体何者なんですか?」

 ちょうどカメラの死角ということもあるので、俺はマイクをオフにして、九条さんにもジェスチャーで同じようにするよう合図を送って尋ねてみた。

 すると、九条さんもカメラの位置を確認してからマイクをオフにして口を開く。

「……護国の鬼のなりそこないだ」

「護国の鬼?」

「私は前大戦の生き残りだよ」

 そう言った九条さんの顔は少し悲しそうだった。

「仲間たちに置いて行かれ、君達に大きな負債を残した世代だ」

「でもそうすると…ええと…」

 いくつだこの人。

「まあ、歳のことは言わないでくれ。これでも見ての通り今は女の子なのでな」

 そう言って指を立ててウインクする九条さんはとてもそんな年には、そんな年の…おそらくは爺さんだろう人間には見えなかった。

「なかなか楽しいものだな、女の子の身体というのも」

「ま…まあ確かに」

「女風呂にも堂々と入れるしな」

「おいこらジジイ」

 もっとこう、俺の中の一般的な爺さんのイメージってあんまり性欲とか無い感じのイメージなんだけどなあ…

「なんだ?ジジイだってエロいことを考えるぞ」

「…そうなのか?」

「男たるもの生涯現役。しかも今や若い身体を持て余しておるのだからな!」

 いや、そんな漫画だったら集中線が入りそうなドヤ顔で言われても…

「まあ、私は流石に特殊だろうがな」

 そりゃあ、魔法少女の年寄りなんて他にいないだろうし特殊だろう。

「ええと…もともと何をやっていた人なんですか?」

「色々だな。社長をやってみたり――」

 そこまで言いかけたところで、九条さんは俺を抱えて後ろに跳んだ。

 直後、今まで俺たちがいた場所のそばに上空から何かが降ってきて地面に衝突し、あたりに土煙がたちこめた。

「……まさか真白が生身の霧香さん落っことしたんじゃねえだろうな…」

 俺と九条さんが話をしているのを見て、何か勘違いしたとかそういうことで霧香さんを思い切り俺達に向けて投げつけた。そんな柚那さんみたいなことしないと信じているが、それでも絶対ありえないかというと、前回の魔白事件があるので絶対にないとは言い切れないのが怖い。

「だとしたら随分と怖い彼女だな」

「怖いか怖くないかって言ったら怖いですよ。その分可愛いですけどね」

「はっはっは、それだけ惚気られれば大丈夫だろう」

 そう言って笑うと九条さんは俺を地面に下ろした。

「まあ、幸いどうやら君の予想は外れているようだが」

 九条さんの言葉通り土煙が晴れると、そこには霧香さんが倒れているというようなことはなく、正宗が立っていた。

「よう、和希。迎えに来たぞ」

 政宗はそう言って手を広げて、まるで胸に飛び込んで来いと言わんばかりの笑顔で笑う。

「…ふむ。君のおホモ達か」

「うまいこと言ってんじゃねえジジイ!…つか、なんでお前ここにいるんだよ!基地への攻撃は禁止、市街地も禁止ってことで虎徹さんと話がついているはずだぞ」

 というか、侵略者相手になんじゃそれ、と思ってしまう話だが、いろんな取り決めをした結果、今は基本的に正宗達とのバトルは予約制みたいになっていたりする。

「だってここ、市街地じゃないだろ」

「……ああ、なるほど確かにここは山の中だし…ってなるほどじゃねえ!いや、待て待て…ええと…というか、俺を迎えにきたってなに?どっか遊びに行きたいの?」

「迎えにと言っているんだから、お前を連れ帰って嫁にするという話にきまっているじゃないか」

 やだ、何この子積極的。じゃなくて。

「何だよいきなり。今までそんな素振りみせたことなかったじゃん」

年齢が近いということでJC担当になった正宗はちょこちょこ攻撃を仕掛けてはくるが、誰にアプローチするでもなく(ちなみに大和さんは狂華さんに対してピンポイントで狙いすぎて接近禁止ということになった)ただダラーっと攻撃を仕掛けてきて怪人や戦闘員をけしかけてたり、俺だったりあかりだったりタマだったりとちょっと拳を合わせて帰っていくというのが常だった。

 要するに同年代には興味が無いとばかりに適当に遊んで帰っていく。真白とはガチの口喧嘩をすることもしばしばだが、最近では戦闘後に指揮車でお茶して帰って行くなんてこともあるくらい和気あいあいとした関係だ。

 っていうか、こいつ俺狙いなのかよ。元男子にばっかり興味持ちやがって、あの星の連中はみんなホモか!?

「色々あるんだよ。こっちにも」

「色々ってなんだよ」

「色々は色々だ。とにかく来てくれ、俺はお前に側にいてほしい」

「いや、その色々ってのを話してみろよ」

 事情がわかれば誤解というか…この正宗の変に思いつめた気持ちを少し解いてやることもできるかもしれない。そう思ったのだが、正宗は唇を噛んで首を振ると刀を抜いて構えた。

「……なるほど、青春だ」

 もう黙っててくんねえかなこのジジイ。

「いや、青春じゃないっすからね。俺、このままだと連れ去られちゃいますからね」

 まあ、最悪俺が正宗に負けても九条さんがなんとかしてくれるとは思うけど。

「かけおち…それもまた青春か…」

 どうやら全然なんとかしてくれる気がなさそうだ。

 ちなみに修行して多少強くなった俺だが、強くなった後でもかなわないなと思う相手の中に、実は政宗も入っていたりする。

 こいつの実力はなんだかんだ言っても朝陽ちゃんクラスなので、真っ向勝負だと勝つのはちょっぴり厳しい。とは言え、他には若者を見守る気まんまんで手助けする気0の人がいるだけで、正直手詰まりだ。

 まあ、真白が戻ってくるまで頑張ればなんとかなるか…。

「待てよ正宗。とりあえず落ち着け。俺はお前の嫁になる気はない。OK?」

「いや、なってもらう」

「いやいやいや。ならないってば。大体、俺じゃなくても真白だったりあかりだったりタマだったりみつきだったり、霧香さんだったり夏樹さんだったりいるだろ」

 まあ、後ろ二人はチェリーボーイ正宗には重いかもしれないけど。

「お前、自分が俺の立場だとして、自分を含めて誰と付き合いやすいか考えてみろよ」

「え?うーん…そうだなあ…」

まずはリーダーのあかり。

顔はややモブ顔だが整っている。胸は今のところ小さいが千鶴や紫さんと同じ血を引いているのだから将来性はある。性格はちょっとヒステリックだけど仲間思いで基本的にはいいやつ。だけど時々ものすごい呪いの言葉を吐き出したりするのでそこがマイナス。

家事についてはみんなわりと万能なので比較するようなことじゃないのでこのくらいか

エースのみつき。

顔は文句なし。美少女だ。胸もあかりよりはあるし、みつきさんで胸が大きくなるのも確認済み。性格はちょっとナイーブだけど基本的には前向きで純粋。時々悪巧みしようとするのが玉に瑕だけど、わかりやすくダダスベリするのでそれもまた魅力と言えば魅力。

今のところあかりよりはみつきかな。うん。

 後輩枠のタマ

 顔はいつも眠そうで半目だけど、驚いた時に見開いたりするとああ、こいつ美少女だわって思わされる。キャラ的に『せんぱーい』と慕ってくれるわけでもなく、人の失敗を指差して笑ったりするし、正直性格が良いとは言えないけど、真剣な場面では仲間思いだ。

 ……うーん、タマかみつき。この時点だと迷うなあ…というか、俺、なんであかりのこと好きだったんだろ…。

 大天使真白様。

 顔。本人は地味というが、それは大人っぽいだけだ。整っているしチアキさんや愛純さんにも化粧映えするって言われている。スタイルは四人の中ではダントツ。あかりあたりはコンプレックスがあるみたいで尻が~とか言っているが、アホみたいに大きいわけではないし、太っているわけでもない。というか、胸が大きいので別に気にならない。

 性格は普段地味でおとなしい風を装っている癖に意外と頑固でこうと決めたら突き進んじゃう。だがそこがいい。あと、柚那さんに何らかの影響を受けたのか、それとも朱莉さんに惚れるとみんなヤンデレ化するのかしらないが、若干のヤンデレ。だけどそれがまた愛されているって言う感じがして俺は嫌いじゃない。

前、朱莉さんに『柚那さんと付き合ってて怖くないですか?』と聞いたことがあってその時に『最初は怖かったけど今はそれくらいしてもらわないと物足りない』と言っていたのが今ならわかる。

 ということでみつき、タマ脱落。真白。

 まあそういうわけで真白が一番なわけだが、今回はここに俺という比較対象と、正宗の立場でという条件がつく。そうなるとまた話が変わってくる。

 俺。

 顔、みつきに負けず劣らずの美少女。胸。けっこうある。ウエスト。くびれてる。尻。小さいが美尻だと思う。性格。まあ結構男子受けはするんだと思う。細かいことを気にしないから友達みたいに気楽だと思うし、あんまり頭良くないから回りくどい嫌味とかもないし、悪巧みとかしないでもなんとかできちゃうし、人の失敗を指差して笑うようなこともあんまりしないと思う。ただ、反面無神経で無意識に怒らせちゃうことはあるので、そこはマイナスかも知れない。

 で、ここに正宗の立場という要素を入れると真っ先に真白が消えるので、そうなると俺とみつきとタマとあかりの中で誰かという話になる。

 政宗はプライド高いからタマに笑われるのは嫌だろうな。とりあえずタマ消えた。

 すねた時のあかりの面倒臭さはもうなんか本当に面倒くさいので俺が正宗だったらあかりも消えるな。

 となると、みつきと俺。

「みつきか俺だな。みつきは人見知りして親しくなるまであんまりしゃべらないから消去法で俺か」

「わかってくれたか?」

「考え方はわかったけど、俺はお前のこと友達以上には思ってないよ」

 たっぷりとシンキングタイムをくれたおかげで考えはまとまったが、だからといって返事がイエスになるというわけでもない。

 正宗には悪いが、俺は俺という立場で真白が一番好きだ。

「だったら力づくで連れて帰って俺の愛の深さを思い知らせてやる」

 そう言って切りかかってきた正宗の刀を俺はなんとか忍者刀で弾く。

「愛は思い知らせるものじゃないっての」

 …まあ柚那さんとか真白のは思い知らされてると言えなくもないのかもしれないけど。

「まあ、ゆっくりやろうぜ。時間はあるんだからさ」

「ない!最近仲良くしてたせいで忘れそうになっていたけど、俺達は侵略者なんだ。お前たちから奪わなきゃいけないんだ!奪わなきゃ奪われる…」

「いや、俺達は別に奪ってないだろ」

「それは……それは…!」

 政宗は何かを言いたそうにしながら、唇を噛む。

「落ち着け。な?」

「うるさい!俺は…俺は!」

 そこまで言ってその後を言わずに黙った正宗の様子を見かねたのか、九条さんが俺と正宗の間に入ってくれた。

「異星の少年。本人が嫌がっているし話は平行線だ。今日は一旦引いたらどうだ?」

「うるさい!関係のないやつは黙ってろ!」

「関係無くはない。私はこの国を護る者だからな、侵略者だと名乗るものをそのままにしておくわけにもいかないのだよ」

「守る?笑わせるな!俺達はお前たちの戦力を把握しているんだぞ!トップ10にも入らないような雑魚が何を守るっていうんだ!守るためには力がいる、力がなければ何も守れない!」

「やれやれ、若いな」

 ため息混じりに小さく笑うと、九条さんは左手で正宗の刀を払い、右手の手のひらを正宗の胸に当てた。

「そんなものは必要ないのだよ。ランキングの順位、魔力の量。そんなものには意味が無い」

 そう言って九条さんが正宗の胸に当てたまま右手を上げると、右手と一緒に正宗の身体がふわりと持ち上がる。

「どうしても数字で優劣を付けたいのなら教えてやろう、最初に来るのは0だ。数字の大小など意味が無い」

 左手を引き、一つ呼吸をした後で、九条さんは引いた左手を突き出し、持ち上げている正宗の身体へとぶつける。すると正宗の身体はジェット風船のようにキリモミしながら空の彼方へと消えていった。

「……なんすか今の」

「ついつい熱くなってしまってやってしまったな」

 そう言って九条さんはまたジジ臭い声を上げて笑う。

「いや、やってしまったな。じゃなくて。いまのって魔法ですか?体術ですか?」

「まあ種明かしをしてしまうと私の一番得意な魔法は、重力操作。まあ、流石に彼にかかる重力を0にはしておらんからどこかに落ちてるだろうが、結構遠くまで飛んでいったのではないかな」

 そう言って笑った九条さんは、その後戻ってきた真白と俺を重力操作の魔法で地面にひれ伏させ、汗一つかかずに勝ち星をさらっていった。

 

 ああ、そうそう。霧香さんは高所恐怖症だったらしく、霧になれるとかなれないとか関係なしに、真白が気がついた時には気絶していたらしい。


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