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魔法少女はじめました   作者: ながしー
第一章 朱莉編
2/804

魔法少女生活のすゝめ

 狂華さんの戦闘にまきこまれた俺が手術を受けてからそろそろ半年が経とうとしていた。


 名前を邑田朱莉と変え、体のほとんどの部分がナノマシンの集合体になった新しい身体にもすっかり馴染んだ俺は、検査漬けだった入院生活を終えてすぐに講習と訓練の日々に突入してしまい、女の子ライフを楽しむ間もなく過ごしていた。


 ……というか、研修、訓練の連続で全くオフがないんだが。これは労働基準法違反なんじゃないのか?まあ、魔法少女に労働基準が適用されるのかはわからないけど。



「ハイハーイ!二人共あとトラック1周ですヨ!負けた方は今日の夕食抜きで強制ダイエットですヨー!わかってると思いますケド規定タイムを下回ったら二人とも食事抜きですヨー!」


 そう言って先輩魔法少女であるチアキさんがトラックの中央で大きな声を張り上げる。

 それを聞いた、俺の横を走っていた同期の魔法少女、伊東柚那がその声を聞いてペースを上げ、俺も負けじとスピードを上げる。


 何故ならば、チアキさんの言っていることは、決して俺達に発破をかけるためのリップサービスではないからだ。

 訓練の成績が悪い方や、例え勝ったとしても基準に達しないタイムだった場合、あの人は本当に晩飯を抜きにする。

それを何度か身を持って経験している俺と柚那は激しく肩をぶつけあいながらトラックを駆ける。


「昨日は私が夕食抜きだったんですから譲ってくださいよ!」

「嫌だね。俺だって1日訓練して腹ペコなんだから譲る気なんてない!」

「そういう性格だからモテないんですよ!」

「性欲より食欲だ!」


 お互い肩のぶつけあいだけではなく肘による攻撃も織り交ぜながら全力でゴールを目指す。


「ちょ!女の子に暴力振るうとか考えられないんですけど!?」

「男女差別すんな!それに今は俺だって女の子だ!」

「ああ、そう、です、かっ!」


 一瞬さらなる加速を見せて外側から俺を抜いた柚那は、急ブレーキをかけ、左足を軸にして走ってくる俺に向って右ハイキックを繰り出す。


「いつもながらワンパターンだな!」


 そう言って俺は身をかがめて柚那の足の下をくぐり抜けようと試みる。しかし、


「邑田さんこそワンパですっ!」


 その声の後、すぐに後頭部に強い衝撃。

 どうやら振りぬきかけた足を力任せに振り下ろす軌道に変えた柚那のキックが俺の後頭部にヒットしたらしい。

 だが俺だって魔法少女の身体になってからパワーアップしているのだ。多少のダメージでは倒れない。

 よろけかける足を踏ん張って加速し、柚那を引き離しにかかる。


「チッ!仕留め損なった!」


 恐ろしく物騒な舌打ちをした柚那がすぐに俺の後を追って走りだした気配を感じる。

 だが、もう遅い。このコンマ数秒が命取りだ。

「残念だったな!今日の晩飯は俺がいただいた!」

「…それはどうでしょうね!?」


 柚那がそう言ってパンっと手を叩くと俺の足に蔦が絡みつき、蔦の不意打ちに対応出来なかった俺は思い切り転ぶ。

 そして転んだ俺の身体にはさらに蔦が絡みついてくる。


「ざんねんでしたー。私がゴールするまでそこで寝てて下さいねー」


 そう言ってタッタッタと軽快な音を立てて柚那が横を走り抜けていく。


「卑怯だぞ!ルール違反だ!」

「ちゃんとチアキさんには確認しましたー。魔法使っちゃいけないなんて言われてないのに体力で勝負する邑田さんがバカなんですぅ」


 振り返って舌を出しながらそう言うと柚那は両手を上げながらゴールテープを切ってゴールした。


「やった!今日は夕食が食べられる!」

「残念。コンマ1秒遅いからユナもご飯抜きですネ」

「そ…そんなぁ…」


 まさに最後の攻防のコンマ数秒が命取りとなり、チアキさんの無情な宣告を受けた柚那がへなへなとその場にへたり込む。


「アカリもそんなところでいつまでも寝てないで早くゴールしてくださイ」


 俺はチアキさんに促されて仕方なく立ち上がり、ゴールへ向って走りだす。先ほど柚那が出した蔦はもう既に消えているので走るのには何の不都合もない。


「ハイ、お疲れ様でしタ」


 俺がゴールすると、チアキさんはポンポンと拍手をしながら近づいてくる。


「まあタイムはまだまだだけど、柚那は体力ついてきたし、朱莉も新しい身体には慣れたみたいだから、今日で訓練は終わりね。お疲れ様」

「あれ…?チアキさん。普通に喋ってる」


 俺の言葉に、チアキさんはニッコリと笑って口を開く。


「まあ、あのしゃべり方ってキャラ作りの一環だし、二人共もう訓練生じゃないんだからよそ行きのしゃべり方をする必要もないでしょう」

「あ、そっか。ハーフだから普通に日本語しゃべれるんだ」

「いや、実はハーフでもないしね。遠い先祖にはロシア人がいたらしいけど、元々の私は生まれも育ちも見た目も完全に日本人だし。ただ、私の資料を見た当時の長官が『どうせなら見た目をハーフっぽくしないか』って言い出しただけ。あの人アホだったから」

「あ、そっすか」

 今明かされる人気キャラの真実。どうやらテレビの前のお父さん達は騙されているらしい。

 いやまあ、本当は魔法少女の戦いがガチだという時点でほとんどすべての視聴者が騙されているのだが。


「そういえば、朱莉はその男みたいなしゃべり方のキャラでいくの?それはそれで人気が出そうだし、誰かとキャラかぶりもしないからいいけど。外国人風の私と無口キャラの狂華、朱莉がオレっ娘で、柚那が普通…まあバランスは悪くないけど、柚那も朱莉みたいにキャラ立てていかないと売れないわよ。まあ、柚那にはわざわざそんなこと言わなくてもわかると思うけど」

「別に私は売れたくて魔法少女になったわけじゃないからいいんですけど。というか、私は邑田さんみたいに性別が変わったわけじゃないし、そりゃあ普通になっちゃいますよ。元々普通の女の子だったわけですし」


 柚那のそんな主張を彼女の来ているパーカーの背中に書かれた『Normale』の文字がさらに強調する。チアキさんの贈り物らしいが、正直酷いことをする先輩だと思う。


「そう言えば柚那って見た目は全く変わってないのか?」

「いえ。変えましたよ。…というか変えないと人前になんて出られませんでしたし」

「どんな子だったんだ?というか、柚那っていくつなんだ?」

「…そういうこと、女の子に聞かないほうがいいですよ。まあ、一応答えられる範囲で答えると私も狂華さんも邑田さんよりは歳下です」

「ってことは、チアキさんは歳上か」

「まーね。そうは言っても見た目はこんな感じだし、私って心は十代だから何の問題もないわよ」

「アラフォー魔法少女…」

「それを言うなら魔法熟女ですよ。邑田さんもですけど」

「…何げに俺の事までディスるのやめてくれないか」

「だって、邑田さんって何かいじりたくなっちゃうオーラが出てるんですもん。実は結構モテてたんじゃないですか?」

「…男友達にいじられることをモテるっていうならそうなんだろうな」

 そもそも高校から男子校で、大学ではゲームサークル所属だった俺の周りには女子との接点はまったくない。

「ああ、じゃあこの先はきっとモテモテですよ。見た目は可愛い女の子になったんですし、男子にモテるならそれは正常なモテですし」

「…嬉しくない。男性に戻ってちゃんと女子にモテたい」

「それは無理じゃないですか?」

「それは無理じゃないかしら」


 俺の願望を二人が同時に否定した。


「もう少しオブラートに包んでもらえないでしょうか!」

「そうやって甘えてきたから邑田さんは童貞なんですよ!ねえ、チアキさん」

「あー……柚那。朱莉が涙目になってきたからそのへんにしておきなさい」

「な、涙目になんかなってねえし!」

「うわ…もうなんかマジ泣きじゃないですか。どれだけ温室育ちなんですか。邑田さんは。どうせ幸せな家庭でぬくぬくと―」

「柚那」


 そう短く言ったチアキさんにひと睨みされると柚那は不機嫌そうな表情に変わって一度舌打ちした後で肩をすくめた。


「…はいはい、わかりました。じゃあ私は先に戻りますから。おつかれさまでーす」


 柚那はそう言って地面に放ってあった自分の水筒を拾うとグラウンドから出て行った。


「…柚那は悪い子じゃないんだけど、ちょっと男性嫌いでね」


 確かに研修生時代から柚那は元男性である俺を目の敵にしていたフシがある。


「チアキさんは柚那の事、前から知ってるんですか?」

「朱莉も知っていると思うけど、あの子一回研修に入る前に不合格になってるからそこそこ付き合いは長いのよ。まあ、二人は同期だし、あの性格だから大変だとは思うけど、できれば仲良くしてあげて」

「柚那の男嫌いの理由ってなんなんです?」

「それは柚那の事情だから私からは話せないわ。でも朱莉はそういうの解決するの得意でしょう?柚那だけじゃなく、狂華にも色々あるからそっちも含めてあなたには期待してるのよ」


 チアキさんはそう言って俺の両肩にポンと手を載せた。


「は?なんで俺が得意なんですか」

「狂華に聞いたわよ。朱莉の趣味はエロゲーなんでしょ?ここは別に恋愛禁止じゃないし、柚那と狂華をパパッと攻略しちゃってよ。女同士ではあるけれど、そういうのもいけるでしょ?」

「現実とゲームをごっちゃにしないでください!あれは攻略するためのルートがあるからできるんであって、現実はそんな簡単にいきませんよ!」

「似たようなものよ。現実の恋愛だってちょっと手間がかかるだけで、相手に合わせて選択肢を選んで、フラグを立てていくだけなんだから。必要なのは、選択肢を選ぶ為に攻略サイトを覗くんじゃなくて、自分で選択肢を作り出すための洞察力とおもいやりを磨くこと。それと相手のために実際に動く行動力よ」


 簡単に言わないで欲しいとは思うが、チアキさんの言っていることは全く正しいことだったので、俺は反論ができなかった。

 大人っぽいとは言え、元の俺から見れば見た目は遥かに歳下の女性の姿であるチアキさん。そのチアキさんからは確かに経験豊富な年上のオーラが漂っていて、この人自身も簡単ではない人生を送ってきたんだろうなということを感じさせる。


「確かに規則では禁止されていませんでしたけど、そういうのって、狂華さんがうるさそうですよね」

「あら、狂華はああ見えて、ある意味私たちの中で一番奔放よ。奔放と言うか…発情期の犬?」


 チアキさんの口から驚きの情報が聞こえた気がする。


「……奔放、なんですか」


 奔放な狂華さんと聞いて、俺の頭の中には、一糸まとわぬ姿であんな格好やこんな格好をする狂華さんが浮かぶ。

 チアキさんや柚那はもちろん、俺よりも胸が控えめな狂華さんだが、それはそれで良い。というか、奔放でありながらロリ体型な狂華さんイイ!


「鼻の下、伸びてるわよ」

「え?あ…。ち、違うんですよ」


 チアキさんの指摘を受けて俺は手で口元を隠すようにして慌てて弁解した。


「まあ、どんな形でもリーダーがやる気を出してチームをまとめてくれるなら、私としては文句はないわよ。トランジスタグラマーな柚那をたらすもよし、奔放でロリロリな狂華と一緒に快楽の沼に沈んでいくもよし。あ、私は遠慮するけどね」

「いやいや、ゲームと同じ要領でいいならチアキさんも落としてみせますよ」


 おれは少し気取った声色で言ってみるが、それを聞いたチアキさんは、口元をひきつらせた。


「えっと…ゲームと現実を混同してるとか、あなた、頭大丈夫?」

「あんたがさっき同じようなもんだって言ったんでしょうが!」



 生真面目そうでいて実は奔放な狂華さん。男嫌いな年下の女の子柚那。

 そして、攻略できないという意味でも、何を考えているかイマイチわからないという意味でも食えないチアキさん。とりあえず一年はこの四人でチームを組むことになるらしい。

 正直な話、彼女いない歴=年齢だった俺が自分を含め周りがすべて女性のここでうまくやれるかはわからないが、なんとかやっていくしかない。


(まずは柚那よりも攻略難度の低そうな狂華さんから行ってみるか)


 そのときの俺は、なんの根拠もないのに何故かチアキさんの言葉を鵜呑みにしていた。

 そして俺はこの時の判断を後々後悔することになるのだった。




 彼女の名前は『己己己己 狂華』正直文字列だけ並べても全く読めないと思うので、一応解説すると、「いえしき きょうか」 と読むらしい。劇中ではみんなほぼファーストネームしか公開されておらず、劇中では女子高生小説家という設定の彼女は、実際に本も刊行していてそちらでは苗字もでているらしいが、正直言って俺は今日はじめて狂華さんの苗字を知った。


 視聴者だった頃は小説家として本を出したという話を聞いても、どうせゴーストライターが書いているのだろうと思っていた盧だが、どうやら本当に本人が書いているらしい。


「まあ、数学は苦手だったけど、元々文章を書くのは嫌いではなかったし」


 俺の質問に答えたあとでカフェのオープンテラスで向かいに座った狂華さんがそう言ってコーヒーカップを口許に運ぶ。


「友人から聞いた恋愛の話を文字に起こしただけなんだが、これが意外と好評でね。あと3冊出る予定だ」


 友人などといっているが、チアキさん曰く奔放な狂華さんのことだ。恐らく自分の体験談なのだろう。


「そういえば狂華さんって、なんで魔法少女になったんですか?」


 狂華さん攻略のためには相手の情報は多いに越したことはない。多少不躾かなとは思ったが、全員にとって共通である魔法少女の話題に切り込んでみた。

 しかし、どうやらこの選択肢は間違った選択肢だったらしく、狂華さんの眉間に皺が寄った。


「…そんなこと、君に話す義理はないと思うけど」


 そう言って狂華さんは不機嫌そうな表情のまま再びコーヒーを口に運ぶ。


「怒らないでくださいよ。ただの会話のきっかけじゃないですか」

「きっかけにしてももう少し内容を選べ。君は魔法少女になる前に死にかけたなんて話を新人にしたいか?…ここにいるものは大なり小なり何らかの過去を背負っている。楽しくそれなりに過ごしたいのならあまり余計な詮索はしないことだ」


(攻略失敗か…)


 狂華さんのため息を聞きながら、俺も心の中で嘆息する。


「ただ、まあ…君が積極的にチームをまとめようとしてくれているのは心強く思うぞ。そうやって積極的に動いてくれるなら私としても協力は惜しまないつもりだ」


(お、攻略の目が出てきたか!?)


「もしもチームをまとめていく上で、なにか問題や私で手伝えることがあったら、なんでも相談をしてくれ。ああ、もちろん女性になったことで、色々と戸惑うこともあるだろうから、そういうことも相談してくれて構わない」

「女性になって戸惑うこと…か」


 それはもう何と言っても風呂なのだが、これは狂華さんに相談しても仕方ないことだろう。

どこまでいっても自分の慣れの問題であって、他人が何か言ったからといってどうこうなるものでもない。お陰で寮(と言っても、設備はもはや高級ホテルなのだが)には大浴場があるというのに、内湯で済ます日々だ。

 それでさえ、風呂場の小さな鏡に写る自分の裸にすら未だに照れてしまうことがあるくらいで、これがもしも風呂場で狂華さんや柚那、チアキさんに出くわそうものなら、俺は次の日からまともにその相手の目を見られない自信がある。


「なんだ?変な顔をして。何か困り事でもあるのか?だったら今ここで聞くぞ」

「あ…いや。その」

「先輩の私が聞いてやると言っているんだ。遠慮なんかするな」


 そう言って笑顔を浮かべながら、あまりない胸をドンと叩く狂華さんは、知り合う前の俺の中の印象とは全く違うものだった。


 知り合う前の印象は『冷徹で無愛想、何を考えているのかわからない』といったものだったが、今の彼女は『無口だが、実は温和で面倒見がいい長女タイプ』という感じだ。

そういう頼りになる、尊敬できる先輩だと思ったからこそ、俺はこの半年で彼女に対する態度を改めてさん付けで呼んでいる。


「いや…狂華さんに話すようなことでもないんで」

「そんなこと、話してみなければわからないだろう?ほら、言ってみろ」

「いいですって」

「よくない。困ったときはお互い様だ」

「いえ、ですから俺は別に困っているわけじゃ…」

「…いいから話せ。な?」


 そう言って俺の肩に手をおいた狂華さんの笑顔はなぜかものすごく恐ろしく感じられた。

 その笑顔の恐ろしさを言葉で説明するならば『逆らうことは許さない。私に逆らうならばそれ相応の覚悟はしてもらおうか』言葉にしなくてもそんな雰囲気が伝わってくる笑顔だった。


「いや、別にそんなにたいした事じゃないんです。…その、風呂の事なんですけど」

「風呂?」

「はい。風呂だけじゃないんですけど、女性用の施設を使うのに抵抗があって」

「ああ、それで君だけ大浴場に来なかったのか。別にそんなことは私もチアキも気にしないぞ」

「皆が気にするっていうのも確かにあるんですけど、俺自身の理性がもたないといいますか」


 察してくれ。頼むから察してくれ。俺はそう願ったが、どうも狂華さんはそのあたり鈍いのか、小首をかしげてしきりに唸っている。


「…まあ、こういうのは慣れだ。せっかくの施設、使わないのはもったいないだろう。よし、じゃあ今日は私と一緒にお風呂に入ろう。それで徐々に慣れていけばいいだけの話だ」


 結局彼女が俺の気持ちを察してくれるようなことはなく、俺は狂華さんに引きずら大浴場へと向かった。

 普段のおとなしいイメージの狂華さんからは想像もつかない力と手際の良さで服をひん剥かれた俺は、いつも自分ではなんとなく気恥ずかしくて念入りに洗わないところまで彼女に洗われて湯に浸かっていた。


徐々に慣らすと言っていた通り、今日の狂華さんはバスタオル着用だし、湯の色も白濁していて、一緒に入っていても俺からは狂華さんの裸が見えないように工夫がされていた。


 それはさておき、やはり大きな浴槽はいい。昨日まで自分の部屋の内湯で我慢していたのがバカみたいだ。

さすがに今日からすぐ皆と入るのは無理だと思うけど、少し皆と時間をずらして入りに来よう。


「…君は、スタイリストの言っていたことをちゃんと聞いていたのか?」


 自分の身体を洗い終えた後、湯船に入ってきた狂華さんが巻いていたバスタオルを湯船の中で外しながらそういった。


「え?何かまずいことしてました?」

「髪、毎日ちゃんとブローしてないだろう。あっちこっち絡まっていたぞ。私のように短いならともかく君のように腰まであるのならきちんとブローして毎朝櫛も通さないとすぐにバサバサになってしまう」

「ああ…すみません。確かにやっていなかったです」


 狂華さんに指摘されたとおり、俺はそういう手入れを全くと言っていいほどしていなかった。


「私の友人にも君と同じでそういうところが無頓着な奴がいたが、しっかりしてもらわないと困るぞ。来週からドラマパートの撮影も始まるんだ。きちんと手入れをしておかないと、撮影スタッフや監督に迷惑をかけることになるからな」

「はーい…」


 そう返事をしながらも、俺はなんとなく上の空だった。白濁した湯ではっきりと見えないとは言え、俺は今、女性と同じ湯の中に浸かっている。

 今は俺も女の体とは言え、一糸まとわぬ、奔放でロリロリな狂華さんと同じ湯船に浸かっているのだ。


 もし、万が一彼女が不意に立ち上がりでもしたら、彼女のすべてが露わになってしまう。そう考えると、胸がドキドキして落ち着かない気持ちになる。

 男の身体だったころなら息子がいきり立つところだが、残念ながら今俺の股間には息子は存在しない。

まあ、とはいえ、かつて息子が存在していたところがまったく反応しないかというとそういうわけでもないわけで。


「…ちゃんと話を聞いているか?」


 先ほどよりも近いところで聞こえた声に我に返ると、狂華さんの顔がすぐ目の前にあった。


「うわあああっ!」


 俺は驚いて湯船の中でひっくり返る。そして、ひっくり返った拍子に俺の身体が立てた飛沫が狂華さんにかかり、びっくりした彼女は思わず立ち上がる。


「そ、そんなに驚くことないだろう」

「ご、ごめんなさい!」


 色んな意味で謝りながら、俺は慌てて狂華さんから目をそらす。

 だが、視覚から入ってきた情報はしっかりと記憶に刻み込まれていた。

 ロリロリボディの彼女の胸の先端はきれいな桜色で、下は生えていなかった。


「あの、狂華さん。すみません。その…湯船に入って下さい」

「?」

「み、見えてますから」

「……ああ。そういうことか。別に構わないぞ。むしろ慣れるという意味ではドンドン見たほうがいい。私は特に何も感じないからな」

「狂華さんが感じなくても俺が感じるんですってば!」

「……まあ、そこまで言うなら湯船につかるが」


 チャポンと軽い音がして、狂華さんが湯船に体を沈めた。


「私の未発達な身体では後ろめたいというのであればチアキに頼むか?あれに慣れればすくなくとも今よりは免疫がつくだろうし」

「いや…その。チアキさんだと速攻で鼻血を吹く自信があるんで、それは勘弁してください」


 言っていて顔がすでに赤くなっているのが自分でもわかる。


「まじめだな、君は。役得だと思って堂々と見てしまえばいいのに」

「だから、俺はそういう役得とか…」

「…まじめなのもいいが、そんなことでは何かあったときに後悔するかもしれないぞ」


 狂華さんは突然真顔になってそう言った。


「欲望に忠実に…とはあまりおおっぴらに言えないけれど、それでも欲望を変に抑圧するのはやめたほうがいい。私たちの体に使われているナノマシンは感情がそのまま力に直結する。感情のコントロールをすることは大事だが、コントロールするのと抑圧するのでは意味がまったく違ってくる。そこのところを覚えておくことだ」


 俺には狂華さんの言葉に返す言葉がなかった。


 彼女の言っている意味を俺はちゃんと理解している。歴代最強と言われているみつきちゃんは、良いか悪いかはともかく、自分の欲望に忠実に戦い、結果を出して、予備役扱いで魔法少女を休業する許可をえたらしい。


 一方俺は、柚那との最後の合同訓練の時、柚那が使った魔法に対して魔法で対抗することすらできなかった。

 あのときだけじゃない、実は俺は魔法少女になってから一度も魔法らしい魔法を使えていない。それどころか実はまだ変身すらコントロールしきれていない。


 そのことについて、俺たちのメンテナンスを担当しているドクターの見解は、たった今狂華さんが示唆したとおり、俺が感情を抑圧していることが原因だろうというものだった。


「例えば、柚那と付き合ってみてはどうだろうか」


 狂華さんの言葉を聞いて自分でも信じられないくらい顔が思い切り引きつったのを感じる。

 その表情を見た狂華さんは眉をしかめてため息をついた。


「そこまで嫌がらなくてもいいだろう。別に君が他の誰かと恋愛して女性に対する恐怖心をなくせるというのならいいが、それができるとも思えないしな。かといって、私には相手がいるしチアキは裸を見るくらいならともかく、深い関係になったらむしろ君の傷を深くしそうだ」


 狂華さんはそういって腕組みをしながらうーん…と唸った後でいきなりパッと明るい表情になったかと思うと、これしかないというような楽しそうな口調で言った。


「そうだ!欲望の開放をするだけなら女性でなくてもいいんだ!君が男性と…」

「お断りします!」


 俺は少し強めの口調で不穏なことを言い出した狂華さんの言葉を遮った。





 街に買い物に行こうと思い立ち、寮のラウンジで何かついでの買い物がないかみんなに聞いた所、柚那がついていくと言い出した。


 チアキさんから借りた車の助手席に座っている柚那一緒に行くと言って聞かなかったわりには、特に会話を振ってくるでもなく、黙って窓の外の景色を眺めていたが、しばらくして、突然「そういえば」と思い出したように口を開いた。


「ずっと考えていたんですけど、邑田さんは、チアキさんみたいなオトナの女性とお付き合いしたらいいと思うんです。チアキさんに女性が怖くないってことを優しく教えてもらえば、女性に対する積極性も出て欲望の開放、ひいてはナノマシンのコントロールもできるだろうし、私達のチームワークもよくなると思うんですよ」

「チアキさんなぁ……確かに好みだけど前にはっきり断られてるし。ん…?チアキさんは狂華さんを攻略しろって言っていて、狂華さんは柚那を攻略しろって言っていて、柚那はチアキさんを推してくるから…」


 もしかしなくても俺ってみんなの間をワンタッチパスで回されてないか?弄ばれていないか?


「どうしたんですか?ただでさえ変な顔がさらに変な顔になってますけど」

「…いや。俺って女になってもモテないんだなって」


 実はもうちょっとみんなとキャッキャウフフ仲良くリア充できると思っていたんだよ。

 だが蓋を開けてみればチアキさんは構ってくれないし、狂華さんは俺のことを恋愛対象として見てないし、柚那に至ってはこの通りだしで、モテるどころか人間関係の構築すら上手く行っていないのが現状だ。

 俺はそういう身近な話のつもりで言ったのだが、柚那は少し違う捉え方をしたようだ。


「まあ、私達はまだ画面に登場してませんし、これからだと思いますよ。本編に登場すればファンレターなんかは黙っててもくるだろうし、握手会なんかやったらきっと大盛況ですよ。もし一人しかファンがいなくてもきっとその人が何度も何度も何度も並んでくれると思いますし…まあ、たいていがお風呂にも入らず、着ているものも何日も着込んだTシャツだったりするんで、人気のバロメーターになるとは言ってもちょっと微妙ですけどね」


 そう言って柚那は大きなため息をつく。


「意外だな、柚那ってそういうアイドルのイベントに行ったりするのか?やっぱりジョニーズでも握手会みたいのがあるのか?」

「え?…ああ、そうですね。行きますよ。ジョニーズは行ったことが無いですけど、TKO23のは行ったことがあります」


 ああ、そういえばチアキさんが柚那は男嫌いだって言っていたっけ。そうなるとやっぱり男性アイドルよりも女性アイドルのほうに行ったりするんだろう。


「柚那が男嫌いなのって、なにが原因なんだ?何か嫌なことがあったのか?」

「……邑田さんみたいに無神経な人が多いからですよ」


 眉をしかめて刺々しい声でそう言うと、柚那は再び窓の外へ視線を移して黙ってしまった。

 もうすぐ目的地に着くとは言っても、また15分はある。先ほどまでの自然な沈黙ならともかく、柚那の不機嫌オーラが充満したこの車内でその時間を過ごすというのは正直勘弁してほしいので、話題の転換を図ることにした。


「えーっと…今日って、柚那は何の用事なんだ?買い物か?服とか買いに行くのか?」

「……ええ。もうすぐチアキさんや狂華さんと同じように、変装なしではその辺のお店で買い物するのが難しくなっちゃうと思うので、その前におもいっきりショッピングしておきたいんですよね。なので申請してお給料も前借りしてきました」

「前借りできるのか!?」

「できますよ。というか、魔法少女って基本的に退職がないですからね。現役を退いてもみつきみたいに芸能界で広報活動をしなきゃいけなかったり、他の裏方仕事に回されたりしますし。だから、毎月いくらの返済でって申告すれば、よっぽど大きな金額でない限り都合がつきます」

「そうだったのか…」

「どうしたんです?暗い顔して」

「それだったら今日発売の『オークと姫騎士』の限定パッケージ全部買えたじゃないか!……って、思ってさ」

「そのくらい買えるじゃないですか。見習い期間はお給料少なかったって言ったって、50万くらいもらったし」

「そうは言うけどな、限定版はもちろん、通常版も各店ごとの特別パッケージだし、ヒロイン50人のフィギュアがランダムに封入されているから、コンプリートするには結構かかるんだよ」

「結構かかるって…一ついくらですか?」

「1万5千円」

「うわ…TKO23の握手券商法よりよっぽど酷いですね。でもそれなら後で特典だけネットオークションで買ったりしたらいいんじゃないですか?」

「人の手垢のついたフィギュアなんていらん!」

「あ…ああ。そうですか」

「そうだ柚那!金貸してくれ!」

「お金貸してくれって…違いってフィギュアだけなんですよね?あと、特別パッケージってことは絵ですか?」

「ああ、それにサントラがついていたり、抱き枕カバーがついていたりする」

「ゲームの内容は同じ?」

「ああ」

「って、ことはフィギュアとCD、抱き枕カバーに1万5千円」

「…ああ」

「50体も飾れるんですか?夏樹ちゃんに聞いた話だと、邑田さんの部屋ってすでにフィギュアがいっぱいあるんですよね。それに抱きまくらって本当に使うんですか?」


 柚那の言う夏樹というのは見習いになるもっと前の研修生時代、俺と同室だった同期の魔法少女深谷夏樹のことだ。

 少し苦手にしていた深谷さんの名前を聞いたせいか、柚那の理詰めの質問のせいか、欲求に従って買い物をしようとしていた俺はだんだんと頭が冷えてくるのを感じる。


「50枚もの抱き枕カバーを本当に使うんですか?」

「いや、50枚はないって。中にはテレカとかさ…」

「むしろテレカなんか抱き枕カバー以上に何に使うんですか!?」

「え…いや携帯の電波が悪かったり、電池が切れたり…」

「私達に支給されてる電話っていうか、通信機ってソーラー充電できるし電池切れしないですよね。それに衛星回線だから空が見えれば使えるし、地下でも携帯の電波が届くところなら通話できますよ。むしろその範囲の圏外に公衆電話があるほうが稀ですよね」


 もうなんか、だんだんおふくろとか、節約上手な奥さんと話しているような気になってきた。


「う…うう…」

「無駄遣い、やめたほうがいいですよ」

「……はい。一本だけにします」


 こういう買い物は、勢いが大事だ。こうして勢いをそがれてしまうと一気に『実はいらないものなんじゃないか』という気がしてきて購買意欲が萎えてしまう。


「そういえば、そのゲームってジャンルは何ですか?」

「恋愛要素のあるRPGだけど…」


 だが、18禁だ。


「あ、じゃあ私の分も買ってきてもらっていいですか?もちろんお金は払いますし、特典は邑田さんに差し上げますから」

「意外だな。柚那ってゲームやるのか」

「ふふん。こう見えてRPGにはちょっとうるさいですよ」


 正直柚那の言葉は意外だった。俺から見た柚那はいわゆるリア充ってやつだと思っていたからだ。

 休日は友達とショッピングをしたり、恋人とデートに行ったり。そういう人種だと思っていた。


「でもいいのか?俺と同じゲームなんて」

「いいですよ。…と、いうか。この間狂華さんとチアキさんにちょっと叱られまして。邑田さんのことをもう少し理解してやって欲しいって。そうすることがチームワークを良くすることにつながるんだ。って。だからまあ、共通の話題を持っておくのもいいかなって思ったんです」


 そう言いながら、柚那は少し照れくさそうな表情で笑った。


 多分この照れ笑いはエロゲーの購入を俺に頼んだことに対する照れから来ているのだろうが、不覚にも俺は少しドキッとしてしまった。




 駐車場で柚那と別れた後に行きつけのゲーム店にやってきた俺は、とてつもなく大きな2つの壁にぶつかっていた。


 ひとつは、性別の壁だ。

 これは、俺が男だった時にも感じていたことだが、こういうデリケートなお店に出入りする男性にとって、自分たちの空間に女性が入ってくるのはあまり歓迎できない。

 それが、自分で言うのもなんだが、美少女だったりすればなおさらだ。

 いつものように店のドアを入った俺を待ち受けていたのは、以前うっかり店に迷い込んできたリア充カップル達に俺がむけていたそのままの視線…いや、時々こちらを値踏みするような湿った視線を感じるので、それ以上に居心地の悪い視線だ。

 そしてもう一つ。性別の壁を乗り越えてレジにやってきた俺を待ち構えていたのは、年齢の壁だった。

「申し訳ございません、お客様。こちら、18歳以上対象の商品となっておりまして、身分証の確認をさせていただきませんと、お売りすることができないものになっております」

 そう言って、作った声で申し訳無さそうに謝りながらも、髪が長くひょろひょろの体型の店員は俺のことをチラチラと興味深そうに観察してくる。


「いや、だから俺…私は……その」


 身分証と言われても、俺が今持っているのは劇中で使う学生証と非常時に警察や消防などに見せる用の特別パスだけだ。特別パスには写真は入っているものの年齢は記載されていないし、もちろん学生証にはしっかり17歳と書かれている。


「何かな?いけない子だなあ。もしかしてこういうことに興味があるのかな?」


 『ゲームに興味はあるけどお前にはねえよ。』と言えてしまえばどんなに楽だろうか。

 だが、ここでいくら俺が詭弁を弄してもきっと売ってはもらえない。それに下手に問題を起こしてしまうと、デビュー前にもう一度顔を変えるためのナノマシンの再調整が必要になるかもしれない。それは時間の無駄だし、費用だってかかるだろう。


 まあ、通販であれば問題なく買えるのだし、一旦寮まで戻ろう。俺はそう思ってこの店から出ることにした。


「…いえ。なんでもないです。すみませんでした」

「ちょっと待ちなよ。…き、君がお兄さんとデートしてくれたら、売ってあげてもいいんだよ」


 店員は興奮して少し荒くなった息を吐きながら俺の耳元でそう囁いた。

 正直言って気持ちが悪い。

 全身にゾワッとした寒気が走って鳥肌が立つのなんて、いったい何年ぶりだろうか。

 この空間に一秒だって居たくなくなった俺は、踵を返して出口に向かうことにした。


「結構です」

「いやいや、やっぱり警察に通報して、補導してもらおう。学生のうちからこんなところに来るようじゃ先々心配だからね」


 そう言って店員は俺の手を掴む。


「嫌だ!離せ!」


 そう言って店員の腕を振りほどこうとするが、変身もしていないか弱い女の子である俺の力ではそれもかなわない。

 警察に捕まったところでどうってことはないが、こんな騒動で組織に迷惑をかけるのはいやだ。組織はともかく、仲間たちに疎まれるようなことになるのは絶対にゴメンだ。


「おいおい、何やってんだ。お前は買い物一つ満足にできないのかよ」


 その声とともに、俺の手からゲームのパッケージが奪い取られ、そのままパッケージの腹でポンと頭を叩かれた。


「痛いな、何をするん…って、柿崎くん?」

「おう。君の彼氏、柿崎くんですよ」


 そう言って、久しぶりに顔を合わせた柿崎くんは白い歯を見せて笑った。


「え…いや、彼氏?え?え?」


 うろたえる俺をよそに柿崎くんは店員の手を離させ、俺と店員の間に割って入った。


「悪いね店員さん。ちょっと他の店に買い物に行ってる間にこの子に買い物を頼んだんだけど、このゲームが18禁なの忘れててさ。ほら、俺の身分証」


 そう言って柿崎くんは自分の免許証を見せると、レジに商品と代金を置いた。


「チッ…彼氏付きかよリア充が……」

「ん?何か言ったか?」

「…いえ、なにも」


 小さく舌打ちした店員に、柿崎くんがメンチを切ると、店員は面白くなさそうにレジを打ちをして袋詰をすると、慇懃無礼な態度で「ありがとうございましたっ!」と大きな声で言って頭を下げた。



「ダメっすよ邑田さ〜ん。中身は魔法使いだって言ったって、今は魔法少女なんすから。こういう買い物は俺ら下っ端に任せてもらえばいいんです」


 店から少し離れたところにある公園のベンチに並んで座った柿崎くんは、そう言って以前と全く変わらない笑顔で笑った。


「…ダメっすよじゃなくて。なんで君が俺の正体を知ってるんだ?」

「なんでって、最初に狂華ちゃんにあった時に俺ら一緒にいたじゃないっすか。邑田さんがかばってくれたおかげで、俺は無事に済んだんですけど、記憶を消されて、さらに監視つきで掃除夫に戻るのもなんか嫌だったんで、裏方として雇ってもらっちゃいました。あ、もちろん魔法少女みたいにやたらめったら給料がいいとかってことはないですけど」

「もらっちゃいましたって、そんな簡単に!?」

「いや…簡単じゃなかったっすけど。でも命を助けてもらって恩返しなしとか、そんなの男として最低じゃないっすか」

「柿崎くん…」


 俺は自分の目頭が熱くなるのを感じた。軽薄で俺のことを小馬鹿にしているとばかり思っていた後輩が、俺に恩返しをしたいと言ってくれている。こんなに幸せなことがあるだろうか。


「狂華ちゃんに命を助けてもらったのってきっと運命っすよ!だから俺…狂華ちゃんと幸せになるっす」

「って、恩返しって狂華さんにかよ!…。まあ、君らしいけど」


 俺はそう言いながら大きなため息をついた。


「で、買い物はもう終わりっすか?まだ他に18禁ゲーム買うなら、代わりに買ってきますけど」

「じゃあもう一本お願いしていいかな?」

「オーケーっすよ。なんてタイトルですか?」

「オークと姫騎士」

「…さっき買ったやつっすよね?」


 怪訝そうな表情で首をかしげる柿崎くんに先ほど柚那にしたのと同じ説明をして、別の店に買いに行かせるまでに俺は約10分を費やした。






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― 新着の感想 ―
[一言] 後輩柿崎君にあっさり身バレしたということは、顔は変わってなかったのだろうか?又はこっそり改造後の顔を知っていて、買い物からストーカーされてた?
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