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魔法少女はじめました   作者: ながしー
第一章 朱莉編

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タイガー&ドラゴン 2

クリスマスアンケート始めました。

もしよろしければご意見お聞かせください

http://www.smaster.jp/Sheet.aspx?SheetID=107818


※パスワードは小文字でakariです



※終了しています

 一応有名人の端くれということで大きめのキャスケット帽にサングラスという、柚那直伝の変装をしたあかりが地元の駅前で待っていると、バスから降りてきた龍騎が息を切らせて走ってやってくる。

「すみません、待ちましたか?」

「ううん、いま来たところだから大丈夫だよ」

 実のところあかりは今日のデートが楽しみで朝からテンションが上がりすぎ、待ち合わせの二時間も前から待っていたのだが、そんなことはおくびにも出さずにお約束のやり取りをする。

「えっと……初デート、だね」

「そう…ですね。あはは…」

 二人は微妙な距離で向かい合ったままそんなやり取りをした後、顔を赤くして目をそらした。

「じゃ、じゃあ行こうか」

「そ、そうですね」

 ぎこちない笑顔でそんなやり取りをした後、二人はもどかしい距離を保ったまま改札を抜け、ホームへと上がる。そして

「えっと、先輩。その…手を繋いでもいいですか?」

「う…うん…」

「じゃ、じゃあ…」

 そう言いながらも龍騎は最初は恐る恐る少しだけ指が触れるか触れないかというところで躊躇し、何度目かのトライを経てから意を決したかのようにあかりの手を取ってぎゅっと握った。


 傍で見ていれば『もどかしい!』と叫びたくなるようなやり取りをしている二人をホームの端で見ていた真白は「もどかしい!」と小さな声で叫びながら地団駄を踏んだ。

「まー、あかりは何だかんだ言ってウブだからしょうがないよね-」

 そう言いながら真白の隣でみつきが笑う。

「でもよかったの?彼氏放り出してきちゃって」

「和希は和希で用事があるって言ってたから、今日は大丈夫なの。っていうか、暇なら連れてきてたわよ」

「おー、おー、お熱いことで」

 真白の返事を聞いてみつきはそう言って笑った。

 前回の試合後のミーティング以降、真白はみつきに対して和希のことで遠慮をしなくなったし、みつきのほうも事情がわかって、和希のことをある程度吹っ切ることができ二人の関係はより良好なものになっている。

 ちなみに二人ともあかりのようにキャスケット帽をかぶってたりはしないが、真白は普段結いている髪を下ろし、みつきはメガネをかけて普段のツインテールではなくポニーテールにしているため普段とはかなり印象が違っている。

「結局あかり達、どこ行くんだろね」

 二人は、というかあかりも含めて魔法少女達は電車バスすべてのフリーパスを持っているので、お金が尽きて途中で追跡不可能になるということはない。

 しかしそれでも乗り換えのタイミングなでどで万が一見失ってしまわないとも限らないので二人としては、せめて事前に目的地くらいは聞き出したかったのだが、あかりはどうしても口を割らなかった。

「朱莉さんにも頼まれちゃったし、どこまででもついて行くしか無いでしょ」

(結局、こいつもよくわかんないよなあ…)

 なんだかんだ色々あってもいまだに朱莉に対して気持ちを残している様子の真白を見て、みつきは心のなかでため息をついた。


 隣の車両に真白とみつきがいて、自分たちを尾行しているなどということはつゆ知らず。あかりは龍騎との初デートを楽しんでいた。

「そういえば高山くん…じゃなくて…呼び名、どうしたら良いかな?」

「え?」

「いや、ほら。私達付き合い始めたわけだし、特別な感じ出したいなって…」

 そう言って顔を赤くするあかりを見て、龍騎の胸が高鳴る。

(か、かわいいぞこの人。なんだ、本当に年上か?誰だよこの人のことを可愛くないとか言ってたの!めちゃめちゃかわいいじゃないか!)

 龍騎から見た彼氏の欲目というものもあるだろうが、いまのあかりは確かにかわいい。少なくとも『年頃だし、別に彼氏くらい作っても良いんじゃね?』と、どちらかと言えば容認に回ってたみつきが、ちょっとだけ二人を別れさせたくなるくらいには。

「ぐぬぬ……取り戻したい」

「え?」

「…あかりとイチャイチャしていいのは私だけなのに…」

(歪んでいるなあ、みつきちゃんも。というかこれじゃベスや里穂みたいじゃない)

 爪を噛みながらブツブツ言っているみつきの様子を言葉から真白は微妙な気分になった。

「ねえ真白、もうあいつら別れさせようよ。魔法でガラの悪い男に変身して二人で絡もう。そんであのヘタレが頼りにならないって思い知らせよう!」

「絡まないわよ!っていうか、私達が絡んだって魔法なしじゃ普通にあかりちゃんにコテンパンにされるでしょうが。だいたい、みつきちゃんは朱莉さん達が高山くんとの付き合いをやめさせろって言っていた時に二人のことを認めろって言ってたじゃないの。なにを今更そんなことを」

「真白…私、人って変わっていくものだと思うんだよね」

 みつきはドヤ顔でそんなことを言い出すが、真白は冷静にチョップとともにツッコミを入れる。

「いや、だったらあかりちゃんの変化を応援してあげなさい」

「真白はまたそうやってすぐに正論言う…」

 口をとがらせてブーブー言うみつきを見て、真白は1つため息を付いてから口を開く。

「曲論ばっかり言う人よりいいでしょ」

「でもお兄ちゃんってそんな感じの人だけどね」

「ええっ!?そうなの?」

「だからきっと正論いう人より、その…曲論?言う人のほうが一緒にいて楽しいんじゃない?」

「………なるほど、一理ある」

(うわ…チョロ…)

 実際にはそんな理はどこにも無いのだが、真白は朱莉関連になるとどうしても思考がおかしくなってしまうようである。

「よし、じゃあ、そろそろ変身して絡もうか」

「いや、だからそれは絶対やらないって。痛い目にあうだけならまだしも、やられた時に他のお客さんがいる前で変身が解けたりしたら目も当てられないでしょうが」

「ちぇー…」

 隣の車両で真白とみつきがそんなやり取りをしている頃、あかりと龍騎はお互いなんと呼び合うかという話題から、これまでどんなアダ名で呼ばれていたか、果ては周りにどんなアダ名の人がいるかという話題に移っていた。

「わたしは、あかりんとかくらいかな。名前自体があんまり長くないし、そんなにバリエーションはないなあ。真白ちゃんはえりに白の真祖とか呼ばれてるけど」

「あ、それ廊下で聞いたことあります。甲斐田先輩がすごい嫌がってるのに、神田先輩が後ろから飛びかかっていって、おぶさったりしていますよね」

「まあ、あれは真白ちゃんも楽しんでいる気がするけどね。あとは…和希がカズキングとか呼ばれているかな。ちなみにこれは、シモネタを言いまくりのシモネタキングっていうのと和希が合わさったアダ名で…って、どうしたの?なんか顔が赤いけど」

「いや…その…平泉先輩ってこう…恥じらいとか無いんですかね」

「え?」

「ほら、シモネタとか言いまくっているとかっていうから。それにクラスの奴らがスカートのガードが甘いとか言ってましたし、実際その…僕もあの人のそういう恥らいがないところ見たことありますし」

「ああ、和希はちょっと変わってるからね」

 まさか『和希は元男だから全然そういうの気にしてないんだよ』とは言えず、あかりは適当にごまかした。

「あとはクローニク関係の人だと、こまちさんがあだ名が豊富かな。こまちん、こまさん、こまちゃん、こまちっち、あとはドMとか、淫獣とか、八股のコマチとか…あ、これはあんまり言わないでね」

「え、こまちさんってそういう人なんですか?なんかこう、もっとおとなしい感じの人なのかなあって思っていたんですけど」

 確かにドラマパートではこまちはわりとおとなしめのキャラクターで、寿の影に隠れているような、寿の後についていくような役回りが多い。なので龍騎がそう思ってしまっても仕方がないことだ。

「…龍くん、クローニクはね、ドラマなの。台本なの」

「は、はあ…すみません」

 龍騎はあかりの目が据っているのをみて『この話はこれ以上しないほうが良さそうだ』と悟った。

「龍くんのほうはどうなの?友達で面白いあだ名の人とかいない?」

「うーん…みんな普通ですね、慎一郎でシンチとか、夏彦でナッツンとか。八股のコマチみたいなインパクトのあるあだ名の人はいないですね」

「こまちさんはちょっと特殊だけど……じゃあ周りの女子とかは?」

 あかりは一見にこやかな表情でそんなことを聞いてくるが、『女子』といった時のあかりの一瞬の眼光の鋭さを、龍騎は見逃さなかった。

(これは、多分チェックされている。迂闊なことは言えないぞ)

 龍騎はそう考え、一呼吸置いて一旦頭の中を整理する。

「あんまり仲の良い女子っていないんですけど、聞こえてくるのだと、学級委員の子が普通に委員長とか、あとはなんとかちーとかそういうのが多いですね。よくわからないですけど」

「そっか、じゃあ龍くんはあんまり仲の良い女子はいないんだ」

「はい。あかり先輩だけですよ」

 龍騎がそう言ってニッコリ笑うと。あかりは顔を真赤にして席を1つ離れて顔をそむけて『ちょっと待って』と言ってから何度か深呼吸する。

(かわいいなあ、この人)


「あいつ一体あかりに何したのよーーーっ!」

 顔を真赤にして大きな呼吸をするあかりを見て、みつきが真白の首を絞める。

「みつきちゃん、苦しい…ちょっと…ほんと…苦しいって言ってんでしょうが!」

 ごちんと大きな音をたてて真白のげんこつがみつきの脳天に炸裂し、みつきは涙目になって真白の首から手を離して自分の頭を抑えた。

「……ねえ、みつきちゃん」

「何…?」

「さっきから気になっていたんだけど、あなたもしかして里穂じゃない?」

「……んなことないし、私、超みつき先輩だし」

 みつきは一瞬、叱られた猫のような表情を浮かべた後、真白の問いには答えず小さな声でそう言って顔をそむける。

「やっぱりか!はぁ……それで、みつきちゃんは?」

「『私は賛成派だし、邪魔するのも覗くのもあかりに悪いからパス。里穂行きたいなら行けば』って、チョコレート一枚で権利を譲ってくれた」

 里穂はそう言って周りの人が自分たちの方を見ていないことを確認してから変身を解除して元の里穂の顔に戻る

「なんか、一見あかりちゃんの味方をしているようにも見えるけど実はチョコ一枚で友情を売っているようにも見える話ね…で?」

「でって?」

「里穂は一体どうしたいの?あんまり表立って邪魔するつもりなら、あかりちゃんに悪いし、さすがに連れて帰るけど」

「邪魔したいけど、私がそんなことしたってバレたくない」

「あはは、なんだかんだ言っても、あかりちゃんのこと好きよね、里穂は」

 真白はそう言ってやれやれといった優しい笑顔を向けるが、里穂は真顔に戻って手をパタパタと振る。

「いやいや、それもあるけど魔法なしだと普通に命に関わるし」

「ああ…確かにそれはそうね…って、ああ!」

「え?なになに?」

「………外」

「え…?」

 里穂が真白に促されて窓の外を見ると、ホームをあかりと龍騎が歩いていた。

「お、降りなきゃ!」

「手遅れよ…」

 真白の言葉通り電車は無常にもゆっくりと動き出し、あかりと龍騎をホームに残して加速していった。


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